公開日:2022年 11月 3日
更新日:2022年 11月15日
本日は結膜弛緩症について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
結膜弛緩症は、結膜が弛緩した状態です。 眼表面の中で、白目の部分は結膜という半透明の膜で眼球壁を覆っています。結膜は、適度に緩みがあることで上下左右などの眼球運動に耐えることができるような構造になっています。
結膜弛緩症は、この緩みが平均よりも強く緩んでいる状態のことです。結膜はが緩むと下まぶたに沿って存在します。緩みの程度が強いと場合は、黒目に乗り上がることもあります。
結膜弛緩症では、弛緩結膜がよく動くため結膜の毛細血管が引っ張られて、結膜下出血になることもあります。何度も繰り返し結膜下出血が見られる場合は、結膜弛緩症を発症しているというケースも少なくないのです。
結膜弛緩症の原因は今のところわかっていません。
しかし、年齢が上がるにつれて発症が多く見られることがわかっています。そのため、皮膚にできるしわのようなものである可能性もあると考えられています。
また、コンタクトレンズを使っている人の方が発症が多く見られるということもわかっています。
結膜弛緩症では、目の内側にある涙点への通り道が緩んだ結膜に塞がれます。そのため、涙が流れにくくなります。
結膜弛緩症は、結膜が弛緩して異常にたるみ、折り重なったりしわができたりする状態を指します。この症状は一般的に高齢者に見られることが多く、中高年以降の加齢に伴う変化と関連しています。しかし、その原因は複数あり、病理学的な観点から以下に詳述します。
加齢:結膜弛緩症の最も一般的な原因は加齢です。組織が年齢とともにその弾力性を失い、結膜のたるみを引き起こします。また、長年にわたる眼球の動きによる機械的な摩耗も結膜弛緩症の発生に寄与します。
慢性の眼瞼炎:眼瞼の炎症は、結膜の慢性的な刺激を引き起こし、それが結膜組織の弛緩を引き起こすことがあります。これは特に漸進的に進行するため、早期には症状が目立たないことがあります。
ドライアイ症候群:乾燥眼症は、涙の生成が不十分であるか、または涙の蒸発が過度であるために、眼が乾燥する状態を指します。この症候群は、結膜の乾燥と炎症を引き起こし、それが結膜組織の弛緩につながることがあります。
自己免疫に関する病気:特定の自己免疫に関する病気、特にシェーグレン症候群は、乾燥眼を引き起こし、それが結膜弛緩症の発症に寄与することがあります。
外傷や手術:眼の外傷や眼科手術は、結膜組織に影響を与え、結膜の弛緩を引き起こすことがあります。これは結膜が手術中に切除されたり、摩擦により損傷を受けたりすることで、その弾力性が失われ、弛緩症を発症する可能性があります。
眼のアレルギー:長期間にわたる眼のアレルギー反応も結膜弛緩症の一因となり得ます。繰り返しの炎症と組織の修復過程が、結膜組織の構造を変え、その結果、組織が弛緩する可能性があります。
涙道閉塞:涙道の閉塞や狭窄も結膜弛緩症を引き起こす可能性があります。涙の排泄が妨げられると、涙液が結膜の下に溜まり、その結果結膜が膨張し、弛緩する可能性があります。
薬物反応:一部の薬物、特に目薬は結膜に影響を及ぼす可能性があり、これが結膜弛緩症の原因になることがあります。
以上が結膜弛緩症の一般的な原因ですが、個々のにはさまざまな要因が重なって影響していることが多いです。このため、改善の計画を立てる際には、個人の病歴や生活習慣、現在の病状などを考慮することが重要です。
結膜弛緩症の症状は、流涙や異物感です。流涙は、緩んだ結膜が涙の流れや貯留、供給を阻害し、緩んだ結膜によってできたひだやシワの間に涙がたまり外にこぼれ落ちるために起きる症状です。
異物感は、眼球運動や瞬きによって、弛緩結膜が過剰に動くために現れる症状です。異物感は、強い痛みではなくごろごろしたりしょぼしょぼしたりするような不快感に近いよう症状です。
また、弛緩結膜がよく動くことは結膜の毛細血管を引っ張ることになるため、結膜下出血の原因になることもあります。
結膜弛緩症は、目の白い部分と内側の瞼を覆う薄い膜、すなわち結膜が弛緩し、折り重なる状態を指します。この状態はしばしば慢性的な不快感を引き起こし、以下に主な症状を詳しく述べます。
乾燥感:最も一般的な症状の一つは、目の乾燥感です。結膜が弛緩すると、涙液の分布が妨げられ、十分に眼球全体を潤すことができなくなります。これにより、目が乾燥し、かゆみや痛みを感じることがあります。
異物感:結膜弛緩症ではしばしば目に何かが入ったような感覚を報告します。これは、折り重なった結膜がまぶたや眼球に摩擦を引き起こし、この不快感が生じるためです。
涙の過剰な流出(涙もれ):結膜が弛緩して折り重なると、涙道への涙液の流れが妨げられ、涙が過剰に流出することがあります。これは特に寒さや風、明るい光などの刺激に対する反応として起こります。
赤目:結膜弛緩症は、炎症や刺激により目が赤くなることを引き起こすことがあります。特に、目をこすったり、強い風や日光にさらされたりした後に症状が悪化することがあります。
眼瞼の腫れ:重度の結膜弛緩症はまぶたの腫れを引き起こすことがあります。これは、折り重なった結膜がまぶたの正常な機能を妨げ、腫れや刺激を引き起こすためです。
視力の低下:結膜弛緩症が進行すると、涙液の分布がさらに妨げられ、角膜の乾燥が進むことで、視力の低下が生じることがあります。
異常な眼の分泌物:結膜弛緩症では、眼から異常な分泌物が出ることを経験するかもしれません。これはしばしば、眼が自己防御の一環として分泌物を増やすことによるものです。
結膜の出っ張り:特に重度の場合、結膜弛緩症は結膜が出っ張ることを引き起こします。これは特にまぶたを閉じるとき、または目を動かすときに顕著になります。
光感過敏:涙液の分布が不適切であると、角膜が乾燥し、光への過敏さが生じることがあります。これにより、明るい光が眩しいと感じ、屋外や明るく照らされた環境での視力が低下する可能性があります。
瞼の痙攣:結膜の異常な摩擦は、まぶたの痙攣を引き起こすことがあります。これは特にストレスや疲労が加わった場合に顕著になることがあります。
これらの症状は、結膜弛緩症の程度や個々の体質により異なります。また、これらの症状は他の眼の病気でも見られることがあります。
結膜弛緩症の改善方法は、点眼薬です。点眼薬を使うことで症状は1〜2週間ほどで改善に向かいます。
点眼薬で改善が見られない場合は、手術を行うこともあります。行う手術は、弛緩した結膜を伸展させる手術になります。
結膜を伸展させる手術にはいくつか方法があります。下の方の結膜を熱によって凝固し角膜付近の結膜を伸展させる手術、下の方の結膜を引っ張りより奥に縫う手術、緩んだ結膜を切り取って縫う手術などです。
結膜弛緩症の改善法は、その症状の程度と原因によって大きく異なります。以下では、この病気の一般的な改善法について詳しく解説します。
人工涙液: 結膜弛緩症の初期段階では、症状の緩和として人工涙液がよく用いられます。これらは乾燥や刺激感を軽減し、眼の快適さを改善します。人工涙液には多くの種類があり、ゲル状や液状など患者の状態に合わせて選択することが可能です。
薬: 炎症を抑制し、眼の不快感を軽減するために、ステロイドや非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が使用されることがあります。これらは一般に眼科医によって処方され、症状に応じた量と頻度で使用されます。
眼蓋マッサージ: 眼蓋マッサージは、結膜弛緩症の症状を改善するための薬を使わない方法の一つです。これは、結膜の血流を改善し、その組織の健康を維持するのに役立ちます。
保湿眼鏡: 結膜弛緩症では、乾燥から眼を保護するための保湿眼鏡(もしくは保護眼鏡)が推奨されることがあります。これらは、眼周囲の空気の湿度を保つのに役立ち、乾燥や刺激を軽減します。
手術: 中等度から重度の結膜弛緩症の場合、眼科医は手術を推奨することがあります。結膜弛緩症の手術には、結膜の切除や縫合、膜移植など、様々な手法が存在します。手術は通常、局所麻酔下で行われ、手術後の回復期間は病状と手術のタイプによります。
生活習慣の改善: 結膜弛緩症の改善方法は、生活習慣を見直すことも含みます。たとえば、適切な眼の保護(直射日光や強風から保護する)、良好な環境状態(乾燥や風を避ける、適度な湿度を保つ)、十分な休息、適切な水分補給などは、症状の管理に非常に重要です。
栄養補助食品: 一部では、オメガ-3脂肪酸などの栄養補助食品が助けになることがあります。これらのサプリメントは、眼の乾燥と炎症を軽減する可能性があります。
これらの方法は、症状、全体的な健康状態、ライフスタイルなどによって異なる効果を示します。
結膜弛緩症では、痛みも視力の低下もありません。 白目部分が赤く染まっても、ほとんどは1~2週間で自然に吸収されて消えていきます。
症状が続く期間が長い場合は、改善まで数ヶ月かかることもありますが、期間が長くても大きな心配をする必要はありません。異物感が強い場合は、抗炎症剤点眼を使うことで改善します。
例1:
65歳の男性が結膜弛緩症の初期症状である目の乾燥と刺激感で眼科に行きました。医師は人工涙液を処方し、日常生活での眼の保護(風や直射日光からの保護)、適度な休息、適切な水分補給などの生活習慣の改善を勧めました。数週間後、症状は大幅に改善され、定期的なフォローアップと人工涙液の使用を続けることで、症状を管理しています。
参考資料:The Dry Eye Assessment and Management Study Research Group. n-3 Fatty Acid Supplementation for the Treatment of Dry Eye Disease. N Engl J Med. 2018;378(18):1681-1690. doi:10.1056/NEJMoa1709691
例2:
中度の結膜弛緩症を発症している50歳の女性が、人工涙液と生活習慣の改善だけでは症状が十分に改善しないため、医師に相談しました。医師は彼女に対し、オメガ-3脂肪酸のサプリメントと一緒に、トピカルステロイドを短期間使用することを提案しました。数週間後、女性の症状は改善し、オメガ-3脂肪酸のサプリメントを継続し、必要に応じて人工涙液を使用することで、症状を管理しています。
参考資料:Pinna A, Piccinini P, Carta F. Effect of oral linoleic and gamma-linolenic acid on meibomian gland dysfunction. Cornea. 2007;26(3):260-264. doi:10.1097/ICO.0b013e31802f541c
例3:
重度の結膜弛緩症の75歳の男性が、乾燥と刺激感、および視力低下に悩んでいました。保存薬フリーの人工涙液、オメガ-3脂肪酸のサプリメント、保湿眼鏡を使用していましたが、症状が続いていたため、手術を検討しました。結膜弛緩症の手術は成功し、術後数ヶ月後、彼の症状は大幅に改善されました。
参考資料:Yokoi N, Georgiev GA. Treatment strategies for dry eye in ocular surface diseases using rheological measurements of tear film. The Ocular Surface. 2020;18(3):335-346. doi:10.1016/j.jtos.2020.03.005
これらの事例は、結膜弛緩症がどのように個々によって異なる方法で管理されるかを示しています。最適な改善法は、症状の重さ、全体的な健康状態、ライフスタイル、個人的な選択など、多くの要素によります。したがって、医師との密接な協力と、本人の症状と生活習慣についての詳細な説明が、最適なプランを立てる上で重要となります。