神経細胞移動異常症の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2022年 1月20日

更新日:2025年 7月 2

本日は神経細胞移動異常症について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 神経細胞移動異常症とは
  • 神経細胞移動異常症の原因
  • 神経細胞移動異常症の症状
  • 神経細胞移動異常症の改善方法
  • 神経細胞移動異常症のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

神経細胞移動異常症は、生まれつき脳に形成異常があること

神経細胞移動異常症は、生まれつき脳に形成異常があることです。脳の中でも特に大脳の形成異常が起こっている状態を神経細胞移動異常症と言います。

 

神経細胞移動異常症では、6層の正常な大脳皮質が作られなくなり、しわのパターンが変わり、脳回の大きさや脳溝の深さに異常が起きるのです。

 

神経細胞移動異常症の中には、滑脳症や異所性灰白質、多小脳回、敷石様皮質異形成、裂脳症、孔脳症、脳梁欠損などの様々な病気が含まれています。病気によって脳の形が違うのです。

 

神経細胞移動異常症の中でも代表的な病気は滑脳症です。滑脳症は、表面が滑らかな脳の病気です。脳のしわの数が少なくなることで滑らかになるのです。

神経細胞移動異常症の原因は、病気によって違う

神経細胞移動異常症の原因は、病気によって違います。遺伝子の異常や先天性 サイトメガロウイルス感染などの胎内感染が原因であることが多いです。

 

病気によっては遺伝する病気もあります。生まれつき現れる病気のため、生活環境や生活習慣などは発症に関係ありません。

主な原因

最も主要な原因は遺伝子異常です。胎児期の神経細胞は、脳室の周囲で生まれ、皮質表面に向かって移動する必要があります。この移動には多くの遺伝子が関わっており、それらの遺伝子に異常があると正常な移動ができなくなります。

 

主な関連遺伝子は、LIS1、DCX、ARX、TUBA1Aです。遺伝様式は常染色体優性、劣性遺伝で、X連鎖性遺伝です。新生変異も多く、家族歴がなくても発症することがあります。

 

他にも、微小管や細胞骨格の異常や胎内環境や外因性因子の影響が原因になることがあります。具体的にはウイルス感染やアルコール、放射線被曝、栄養不足などです。

主にてんかん発作や発達の遅れ、知的障害、運動障害などが現れる

神経細胞移動異常症の症状は、病気によって違いますが、主にけいれんなどのてんかん発作や発達の遅れ、知的障害、運動障害などが現れます。神経細胞移動異常症では、脳に関係する色々な症状が起こるのです。

 

異所性灰白質、裂脳症、孔脳症、脳梁欠損の場合は、特に症状が現れないこともあります。

主な症状

1. てんかん発作

幼少期、特に生後数ヶ月〜1歳ごろに初発します。全身性けいれん、点頭てんかん、部分発作など多彩です。

 

2. 発達遅滞

言語、運動、認知、社会性など全般的な発達の遅れが現れます。重症の場合、寝返りや首すわり、歩行ができないなどの症状が見られます。軽度の皮質形成異常では知的障害が軽く、学習障害だけの場合もあります。

 

3. 運動障害、筋緊張異常

筋緊張の亢進または低下がみられ、バランスがとれない、歩行が不安定などの症状が現れます。重度では四肢麻痺や痙縮を伴うこともあります。

 

4. 構音障害、言語発達の遅れ

発語が遅い、言葉が増えない、言葉の意味が通じにくいなどの症状が現れます。聴覚障害ではないのに、言語表現や理解が困難になります。舌や口唇の筋緊張異常が原因となることもあります。

 

5. 学習障害、注意障害

小学校以降で明らかになるケースもあります。読み書きや計算が極端に苦手になり、注意欠陥、多動性障害との重複例もあります。

 

6. 行動、情緒面の異常

多動、自閉的傾向、感覚過敏などがみられ、感情のコントロールが難しくなります。

 

7. 脳の構造異常に伴う症状

滑脳症や皮質下異所性灰白質、多小脳回症、異所性白質病変が現れることもあります。

そのため、症状に合わせて改善を行う

神経細胞移動異常症の根本的な改善方法はありません。そのため、症状に合わせて改善を行うことになります。

 

てんかん発作が現れている場合は、薬を使って改善を行います。発達の遅れが現れている場合は、指導やリハビリテーションを行います。

主な改善方法

 1. てんかん発作のコントロール

神経細胞移動異常症の多くは改善の難しいてんかんを伴いますが、発作を安定させることが生活全体の質を大きく左右します。安定のためには抗てんかん薬を使うことが多いです。ケトン食療法や迷走神経刺激療法、外科的切除などの方法で改善することもあります。

 

2. 早期からの発達支援

神経細胞移動異常症では、神経の代替ネットワークが発達する可能性があります。早期に適切な刺激や学習環境を与えることで、残された神経機能を最大限に引き出すことが可能です。

 

3. 生活環境とケアの最適化

症状を抱える子どもや成人にとって、日常的な安定と安心できる環境づくりが非常に重要です。

 

4.心理的、社会的サポート

長期にわたる介護や通院は、家族にも大きなストレスや孤独感をもたらします。

鍼灸の期待できる効果

1. 筋緊張の緩和、運動機能の補助

NMDでは筋緊張が異常になることが多く、運動障害や姿勢保持の困難さに繋がります。鍼灸は、異常緊張の抑制や筋肉や腱の滑走性改善、関節可動域の拡大などの効果が期待できます。鍼灸で過敏になった筋や腱の神経反射を鎮め、運動学習のしやすい身体に整えることができます。

 

2. てんかん発作の補完的コントロール

鍼灸が直接てんかんを止めるわけではありませんが、発作閾値の安定化に貢献する可能性があります。脳の過剰興奮の沈静化や脳波異常に関与する視床、前頭葉の血流改善、副交感神経を刺激し、発作前の前兆不安、不眠を改善などに効果があります。

 

3. 自律神経の調整、不眠、情緒安定

睡眠障害や不安、情緒不安定、興奮といった神経系の乱れに対し、鍼灸は身体を通じて脳の緊張を緩めることができます。入眠障害や夜間覚醒の緩和、日中のイライラや過敏な行動の抑制に効果的です。

 

4. 消化、排泄機能のサポート

神経形成異常では、内臓の神経支配にも乱れが生じることがあり、便秘や消化不良などが二次的に起こります。腹部のツボや手足のツボを刺激し腸の蠕動運動を促進し、迷走神経系を整えて胃腸の動きを調整する効果があります。

 

5. 本人、家族のQOL向上

NMDのケアは長期戦であり、家族や本人のストレス・緊張の蓄積が避けられません。鍼灸では、家族も施術に同席しながら、一緒に癒される体験ができ、病院ではない安心できる場所としての役割も果たすことが期待できます。

症状が重い場合、感染症で悪くなることも多い

神経細胞移動異常症は症状が重い場合、感染症で悪くなることも多いです。そのため、家族など周りの人も感染症にかからないように注意をすることが大事です。本人だけでなく、周りの人もうがいや手洗いなど感染症の予防を行いましょう。

 

適度な運動や日光浴、栄養のある食事をすることも感染症の予防につながります。規則正しい生活を行うことを心がけることが大事なのです。

 
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