偽性軟骨無形成症の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2023年  1月 5日

更新日:2025年  7月12日

本日は偽性軟骨無形成症について解説させていただきます。

本記事の内容

  • 偽性軟骨無形成症とは
  • 偽性軟骨無形成症の原因
  • 偽性軟骨無形成症の症状
  • 偽性軟骨無形成症の改善方法
  • 偽性軟骨無形成症のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

偽性軟骨無形成症という病名は、特に近位肢節の短縮が目立つ

偽性軟骨無形成症は、四肢短縮型低身長、下肢の変形、短指、関節弛緩性などの特徴を持つ遺伝性の病気です。

 

偽性軟骨無形成症という病名は、特に近位肢節の短縮が目立ち軟骨無形成症に似ている見た目をしていることからつけられました。しかし、軟骨無形成症とは違い、軟骨無形成症で現れる顔貌の異常はありません。

 

偽性軟骨無形成症では、明らかな低身長であることが見られ、最終身長は軽症の場合は-3~-4SD、重症の場合は-6SD以下です。さらに、手指や足趾の短縮や関節弛緩性も明らかです。

偽性軟骨無形成症の原因は、COMPの遺伝子の変異

偽性軟骨無形成症の原因は、COMPの遺伝子の変異です。COMPの遺伝子は、軟骨の細胞外基質成分で、 軟骨細胞の中ででカルシウムを接合する時に関わっている遺伝子です。

 

遺伝形式は常染色体優性遺伝です。しかし、実際には多くの場合が、散発性に突然変異として発症します。

・遺伝子異常

原因の中心はCOMP遺伝子です。COMPは軟骨基質の構造と安定性を保つ重要なタンパク質で、細胞外マトリックスの形成や細胞接着に関与します。この遺伝子に変異が起きると、異常なCOMPタンパク質が軟骨細胞に蓄積し、細胞死や成長板の異常が生じます。遺伝形式は常染色体優性遺伝ですが、家族歴がないケースも多いです。

 

・細胞レベルの異常

COMPは、軟骨組織の細胞外マトリックスに存在する構造タンパク質で、COMP遺伝子に変異があると、異常なCOMPタンパク質が産生されます。タンパク質は細胞内で作られた後、小胞体で折りたたみされ、正しい構造になってから分泌されます。しかし、異常なCOMPは正しく折りたためないため、小胞体に蓄積すると、小胞体ストレスが発生します。その結果、成長板の軟骨細胞層が薄くなったり骨端の成長が阻害されたり、長管骨が短くなって四肢短縮型低身長が現れたりします。

症状は、四肢短縮型低身長、下肢の変形、短指、関節弛緩性

偽性軟骨無形成症の症状は、四肢短縮型低身長、下肢の変形、短指、関節弛緩性です。ほとんどの場合、生まれた時の身長は正常で、明らかな異常が見られません。

 

幼児期に歩き始めることが遅かったり、あひる様歩行が見られたり、 身長が急激に伸びなくなったりすることがきっかけになり、偽性軟骨無形成症を疑われたり判断されたりすることが多いです。

 

股関節や膝関節などの下肢荷重関節では比較的早い段階で変形性関節症が見られるようになります。

 

低身長は著しく、最終身長は程度が軽い場合3~-4SD、 重い場合は-6SD以下です。関節弛緩性が強いため、下肢では明らかな内反膝や外反膝変形が見られます。

 

ただし、肘関節や股関節では屈曲拘縮が見られることも多いです。脊椎では、明らかな腰椎前弯が見られ、年長児になると側弯などの脊柱変形も見られます。

主な症状

・低身長

出生時は身長体重ともに正常ですが、生後1~2歳ごろから成長速度が低下します。成人身長は 男性100~130cm、女性90~120cm程度で、体幹はほぼ正常です。四肢が特に短いです。

 

四肢の変形

上肢下肢の骨が短く太く、膝がO脚またはX脚になります。大腿骨と脛骨の外側へのねじれが見られ、歩行開始時によろめき歩き、外反膝が顕著になって発覚することが多いです。

 

・関節の異常

関節の弛緩と可動域制限が混在し、特に膝、股関節、手首に強い弛緩が見られます。肘関節の伸展制限、関節不安定性から歩行障害や易転倒が見られます。

 

・進行性の変形性関節症

成長とともに、膝や股関節に早期の変形性関節症を発症します。思春期以降に慢性関節痛が顕著になり、成人では車椅子が必要になる場合もあります。

 

・脊椎異常

軽度の腰椎前弯や側弯が見られます。

 

手指の異常

短く太い指で、手のひらが広く、ほうき型手は見られません。

骨や関節の障害に対して、対処を行う

偽性軟骨無形成症の根本的な改善方法は今のところありません。骨や関節の障害に対して、対処を行うことになります。

 

比較的早い段階で大きい関節の関節症性変化が現れるため、小児期には下肢のアライメント異常に対して骨端線抑制術を行ったり矯正骨切り術を行ったりすることが多いです。

 

低身長に対して四肢骨延長術を行うと、変形性関節症が悪くなったり関節弛緩性によって関節変形が起こる可能性もあるため、低身長に対して改善を行う方法はありません。

主な改善方法

① 整形外科的方法

軽度の場合は装具を使い、重度の場合は骨切り術を行います。

 

② 理学的方法、運動

歩行訓練や筋力維持、変形進行を防ぐための荷重管理、関節に負担の少ない運動を行います。

 

③ 疼痛コントロール

NSAIDs、温熱や低周波、鍼灸などが役に立ちます。

鍼灸の効果

鍼灸は根本原因の改善はできませんが、合併する痛みや筋緊張、血流不良、自律神経の不安定さを改善し、生活の質を向上させる方法として非常に有効です。

 

エンドルフィンやセロトニン分泌促進や痛覚伝達路の抑制、関節周囲の血流改善による炎症性代謝産物の排泄促進の効果によって関節痛を緩和します。

 

筋緊張を和らげ、柔軟性を高めることで筋緊張の改善と可動域拡大にも効果的です。関節の可動域訓練前に鍼灸を行うと痛みが減って動かしやすくなります。

 

末梢血管拡張により血流量を増加し、炎症の吸収促進をすることで代謝が改善します。筋肉の酸素供給を高め、疲労感やこわばり感を軽減するためにも役立ちます。

 

鍼刺激により副交感神経優位化することでリラクゼーション効果があり、睡眠の質改善、疲労感の軽減に効果的です。メンタルストレスの緩和にもなります。

 

成人期以降も継続して改善に取り組みことが必要になることも多い

偽性軟骨無形成症では、早い段階から四肢や脊柱変形、変形性関節症が現れます。そのため、そのような症状に対して改善を行うことが必要です。しかし、改善を行っても必ずしも予後が良い方向に進むとは限りません。

 

成人期以降も継続して改善に取り組みことが必要になることも多いのです。小児期に関節の変性を防ぐために矯正骨切り術などを行いますが、成人してから最終的に人工関節置換になるなどの可能性もあります。

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