公開日:2019年 12月23日
更新日:2024年 11月20日
本日は嗅覚障害の鍼灸について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
嗅覚障害を起こす病気は様々あります。副鼻腔炎の他に風邪や鼻アレルギー、頭部外傷、鼻内形態異常、中枢神経疾患があり、外部からの金属化合物、有機化合物を吸入して起こる場合や、 抗ガン剤などの薬物による影響もあります。
このうち約80%が副鼻腔炎、風邪、鼻アレルギーです。また、近年では新型コロナウイルスが原因で嗅覚障害を発症することも非常に多いです。
においを感じる嗅粘膜には、通常の粘膜とは違う、嗅神経という神経の先が嗅繊毛という非常に細く短い毛になって直接、外に飛び出しています。実際皮膚に触れていなくとも、体毛に何かが触れると分かるように、ニオイもその細く短い毛が感知しているのです。
嗅繊毛は粘液に覆われていて、 においの素である無機物や有機物の分子のうち、空気に乗って飛んでくるものが粘液に溶け込み、 嗅繊毛の先にある嗅覚受容体に結合し、刺激された受容体からの電気信号が嗅神経を通って大脳に伝わることで「におい」を感じます。ここでなんらかの障害が起こると嗅覚障害になります。
刺激される受容体からの信号のパターンや強度の組み合わせによって感知されます。受容体の数は、ヒトではなんと約400種類。 それにより様々なにおいを嗅ぎ分けることができるのです。
鼻の問題:鼻のポリープ、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎など、鼻の病気が嗅覚障害を引き起こすことがあります。
脳の損傷または病気:脳震盪、脳腫瘍、アルツハイマー病、パーキンソン病など、脳の損傷や神経変性疾患が原因で嗅覚障害が生じることがあります。
化学物質への曝露:一部の化学物質への過度の曝露が、嗅覚細胞を損傷し、嗅覚障害を引き起こすことがあります。
薬剤の副作用:一部の薬剤は嗅覚障害を副作用として引き起こすことがあります。
年齢の影響:加齢により嗅覚機能が自然に衰えることがあります。
新型コロナウイルスは嗅覚障害を引き起こすことが知られています。
鼻の粘膜にはアンギオテンシン変換酵素2というコロナウイルスに結合しやすい細胞が多く集まっています。コロナにかかると鼻の嗅烈が閉じてしまい、その近くにある嗅細胞や嗅繊毛という匂いを感じる部分が閉じるため感じにくくなるのです。
新型コロナウイルスに感染して起こった嗅覚障害には改善しやすいケースとしにくいケースがあります。
改善しやすいケースは、鼻の中でウイルスが暴れて細胞と構造が変化して匂いにくくなったタイプです。このタイプでは完全に匂いがしない、する匂いとしない匂いがありはっきり分かれている、違う匂いに感じる(異臭症)などの症状が見られます。
改善しにくいタイプは、鼻から脳にウイルスが入り込み脳で大暴れして嗅覚が感じ取りにくくなったタイプです。この場合鍼灸単体での改善は不可能で、匂いが遠く全体的に薄い、匂いがぼやけているなどの症状があります。
鼻から脳にウイルスが入り込み脳で大暴れして嗅覚が感じ取りにくくなったタイプは正直改善した人はいません。
実際当院に来院している方で回復している人もいますが、それは大阪の病院での改善を受けながら鍼灸を続けている人がほとんどです。
コロナ後遺症の中でも脳からくる嗅覚障害に関しては鍼灸単体では回復は不可能です。
嗅覚の減退:通常感じることができる臭いが弱く感じられるか、まったく感じられなくなることがあります。
嗅覚の喪失:全く臭いを感じることができなくなります。これは一時的または永続的な症状になることがあります。
歪嗅症:実際の臭いとは異なる、歪んだ臭いを感じることがあります。
幻嗅症:実際には存在しない臭いを感じることがあります。
味覚の変化:嗅覚は味覚と密接に関連しているため、嗅覚障害は食べ物の味を感じる能力にも影響を及ぼすことがあります。
〈改善する人〉
・少しでも匂いを感じることができる人
・ゆっくり良くなっている人
上記の場合は非常に良くなりやすいケースです。上限には個人差がありますが、当院では9割の人は完全に回復しています。
〈改善しない人〉
・全く匂いがしない人
・どんどん緩やかに悪くなっている人
上記の場合は、鍼灸のみでの改善で当院で改善した人はいません。
嗅覚機能で測定したところ、年齢とともに嗅覚が低下していることが明らかになっております。しかし他の感覚障害、聴覚や視覚と比べると、嗅覚は比較的老化による変化を受けにくいと言われています。
嗅覚障害全般でみると、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎といった鼻の病気の存在が原因となっている場合が多く、 年齢に伴う嗅覚障害は日常生活で自覚するほどにならない場合が多いようです。
嗅覚の低下が早期の判断に役立つ可能性が指摘されているアルツハイマー病やパーキンソン病との嗅覚障害との関連性については現在多くの研究が行われています。
アルツハイマー病の初期では、 何かニオイはするが何のニオイであるか判別できないという、ニオイの判別能が著しく低下してくると言われています。
点鼻ステロイド薬:フルチカゾン、モメタゾン、ブデソニド、リンデロンなど。
鼻の粘膜の腫れを減少させ、炎症を和らげる効果があります。
経口抗ヒスタミン薬:セチリジン、ロラタジン、フェキソフェナジンなど。
アレルギー症状を軽減し、鼻水やくしゃみを抑える効果があります。
抗生物質:副鼻腔炎が細菌感染によるものである場合、アモキシシリンやドキシサイクリンなどの抗生物質が処方されることがあります。
点鼻脱感作薬:アレルギー性鼻炎に対して、特定のアレルゲンに対する点鼻脱感作薬が使用されることがあります。
漢方薬:当帰芍薬散
当帰芍薬散がステロイド点鼻による改善方法と比較すると、感冒後嗅覚障害に対する改善率が高いことや原因不明の嗅覚障害に対しても有効である可能性があると言われています。
ビタミンB12:メチコバール
神経の修復を助ける目的で、ビタミンB群のサプリメントが推奨されることがあります。
他にも、複数のアロマで嗅覚を刺激する嗅覚刺激法を自宅で行うこともあります。
上記の方法で、6〜8割の人は回復すると言われています。それでも改善しない人が鍼灸を頼って当院に来院されます。
耳鼻科の先生は嗅覚障害が改善する施術はしていません。嗅覚障害の回復は自然回復のみだからです。
現在はIPS細胞を使った改善方法もありますが、まだ実用化されていません。病院ではビタミンB12、点鼻薬、Bスポット、抗うつ剤、亜鉛、血流をよくする薬、筋弛緩剤などを使って改善していきます。
医師は改善方法がないと言えないところがあります。そのため、医師からの観点で見てみると仕方がないことで、鼻の炎症を取ることと鼻の神経を回復させるためにメチコバールや点鼻薬を処方します。
今の薬で嗅覚障害が改善すると思わない方が良いでしょう。
最も多い嗅覚障害の原因は、嗅細胞にある嗅上皮の機能不全です。嗅上皮は鼻の奥深くにあり、眉間の奥に位置しています。匂いの分子が空気によって流れ、鼻を通る時、嗅細胞に届かないと嗅覚障害が発生します。
多くの場合は鼻の粘膜が腫れて嗅細胞まで空気が通らないで起こります。呼吸性嗅覚障害と言われており、中には鼻詰まりのような症状で悩んでいる人もいます。
嗅覚障害に対して鍼灸で狙うのは、嗅細胞の再生です。新型コロナウイルスによって鼻の粘膜で炎症が大きい場合は、匂いを感知する嗅繊毛や嗅細胞がボロボロになっている人が多いです。
そのため、嗅細胞の再生を狙うことが大事です。嗅細胞の再生を図るために恥骨動動脈を刺激して血流を促して栄養を送って再生を促すという手法を行います。主に、眼動脈と篩骨洞動脈を狙ってアプローチを行います。
当院では、ウイルスが嗅細胞に直接感染しているケースと神経性嗅覚障害といいウイルスが嗅上皮で活性化し免疫を破壊しているケースが多いです。
特に1番多いのは新型コロナウイルスによる嗅覚障害で風邪やインフルエンザなどで起こる感冒後嗅覚障害とも似ています。風邪の症状が改善した後も匂いを感じられないケースは、ウイルスによる神経の毒性によって傷つけられて起こる嗅覚障害もよくあります。この嗅細胞は嗅神経の末端に位置しており、他の脳神経細胞とは違って再生能力が非常に高いです。
そのため神経性嗅覚障害に関しては必ずしも改善しないわけではなく多くのケースで完全回復、改善が見込めます。
全て自己回復能力が基本になっていて改善までに1年〜数年かかることが多いです。これは、再生された神経細胞が元の機能を取り戻すまでが時間がかかってしまうためです。
嗅細胞は約40日サイクルで新しい細胞に生まれ変わります。嗅覚障害の人は嗅覚刺激法が非常に大事です。朝晩30秒ずつ3種類の匂いを10秒間嗅ぐ方法です。
刺激を与えて嗅細胞の再生を促進させます。その観点を応用した改善方法が鍼灸です。嗅細胞が再生するにあたって栄養が必要なため、その栄養を送る篩骨洞動脈に刺激を与え、なおかつその周辺に刺激を与えることによって、この嗅細胞の再生を促すことが嗅覚障害のアプローチなのです。
①排泄物の匂いを感じることがどうか
コロナウイルスによる嗅覚障害では臭い匂いを感じることができないことがほとんどです。感じることができても、全然違う匂いとして感じる人が多いです。そのため、トイレに入った時の自分の排泄物の匂いを嗅いでもらいます。
※排便の匂いは回復のバロメーターと考えましょう。排便の匂いが嗅げることがゴールではなく、嗅ぐことができれば他の匂いも一緒に回復していきます。
②炊き立てのご飯の匂いを感じることができるかどうか
炊き立てのご飯の匂いが感じることができるようになれば、そのあとは自分の力で回復することができます。
嗅覚障害は、当院では1〜3回で改善する人がほとんどです。もちろん人によって症状も程度も違うため、改善までの回数は人によりますが、多くの人が3回ほど通うことで改善が見られます。
施術した後当院から帰宅するときには良くなったが、翌日匂いがしなくなったというケースは多く見られます。一度よくなると良くなったところが基準点になり基準点の差で悩むことになるのです。しかし、施術を行い効果を感じることができた場合、効果を感じた程度までは必ず回復するため、これは非常に良い傾向です。
なかなか改善しなかったケースでも改善した方もいます。嗅覚障害の改善には、嗅細胞、嗅繊毛の再生が大事です。なかなか改善しないからといって諦めることはありません。
新型コロナウイルスに感染して嗅覚障害が起こった場合、原因が鼻にあるのか脳にあるのか判別することはほぼ不可能です。刺激して回復に努めたほうが回復の近道になります。
自分で回復する上限はありますが、セルフケアで上限を上げていくことはできるため、ぜひ諦めないでください。
人間は内臓、脳、神経、血流など色々なところが支え合って生きています。その1箇所を再生することによって楽になる人もいますが、全部やらないと再生のメカニズムがうまく働きません。そのことから改善する人がわかるようになりました。
嗅覚障害で悩んでいる人の中でも、肝臓や腎臓の数値が悪かったり脳過敏症候群のサインがある人は、嗅細胞の再生がうまく進まない人がいます。
当院では現在、あらゆる再生を妨げる邪魔者を1つずつ潰すという改善方法を行なっています。再生を妨げる邪魔者を潰すことで細胞の再生をするのです。そのために篩骨洞動脈をぐりぐりするアプローチは非常に有効です。
当院にいらっしゃっていただければ、肝臓から腎臓まで全て施術して再生を促します!
当院での改善では、嗅覚障害は1〜3回の来院で改善します。人によりますが、単純な嗅覚障害であれば1〜3回でケリがつきます。そのくらい嗅覚障害は改善するしないがはっきりしています。当院でも6回通って改善した人もいれば、4回で調子が良くなってきている人もいます。
・1回目の施術
当院を出たら匂いが感じられるようになった。しかし、翌日また感じなくなった。これは非常に良いことです。
感覚の症状は1度良くなると良くなったところが基準点になり、元に戻った時の差で悩まれることが多いですが、良くなった場所までは必ず良くなります。
・2回目の施術
今まで感じることができなかったカレーの匂いや部屋の匂いを感じられるようになった。排泄物の匂いはまだ薄いけれど、他の匂いを感じられるようになり始めた。
3回以上かかってしまう可能性もありますが、臭い匂いをはっきり嗅ぐことができるようになれば鍼灸と時間によって改善します。
・3回目の施術
排泄物を臭いと感じられるようになった。皮の匂いやゴムの匂いが違う匂いに感じてしまうことがある点に不安を感じる。
ベースは安定しています。何度か施術を行うことで不安点も解消できます。
ほとんどの方が上記のような改善の仕方をしています。回復能力には個人差があるため、Bスポットなどですぐに改善したという人がいても焦る必要はありません。正しい手順を踏めば嗅覚障害は改善します。
2021年2月18日初めて来院され、嗅覚障害の施術を行いましたが全く改善が見られませんでした。6回ほど施術を行っても全く嗅覚が戻りませんでしたが、施術をすることで体がすごく楽になって生活しやすくなったためメンテナンスで月1で来院していました。
初めて来院してから2年後の2023年9月、嗅覚が戻ってきました。お弁当の三つ葉の匂いがわかるまでに嗅覚が戻ってきたのです。その時の体は非常に良い状態で、悩んでいた五十肩、足のむくみ、血流障害も全て改善した上で生活をしていたら嗅覚が戻ってきました。
嗅覚障害は、嗅細胞、嗅繊毛の再生が大事なため、諦めることはないと実感しました。正直、私自身は改善しないタイプであると判断していましたが、嗅覚は戻ってきました。体のメンテナンスと並行して嗅覚への施術も行っていましたが、2年経っても再生することもあるのです。
このことから、体は全てが相互作用で動いているため全ての症状を改善する必要があるということがわかりました。
今現在嗅覚障害で来院する人の半数が無臭症で全く匂いがしない症状です。そういう人の中でも嗅覚を取り戻す人もいます。副鼻腔炎の手術後で全然匂いがしなくなったという人でも戻りそうな感覚を得ている人もいます。
嗅細胞の再生力を上げる状況を作り出すために鍼灸は非常にお勧めの方法です。
匂いが薄い、匂いがしない、再生途中の人も見ているとみんな回復が止まってしまっています。回復のフックが取り切れていないためです。当院では、このフックを取るようなアプローチを行っています。
・篩骨洞動脈
鼻の奥にある血管のため無理はしない程度に軟骨と尾根の間をなぞりましょう。強い力でなくて良いですが、鼻の間が真っ赤になるくらい押してください。篩骨洞動脈に刺激を与えることで、鼻の奥の血流をよくすることができ改善に近づきます。
・軟骨と鼻骨の境目
真っ赤になるくらいぐりぐりと刺激しましょう。皮膚の毛細血管が拡張するくらい押すことが大事です。
点鼻薬は使って良いです。薬と併用してセルフケアを行い、刺激をすることを続けてください。
・天迎香
・攅竹
・迎香
天迎香は脳の酸素量を増やす効果があります。脳の酸素量が増えることは、脳の活性化に繋がります。嗅覚と脳機能は繋がっています。そのため、脳が活性化することで、嗅覚障害の改善に対しても効果が期待できるのです。
天迎香は、鼻水や鼻詰まりなどに対しても使われます。
鼻通は、鼻水や鼻づまりに効果を発揮するツボです。鼻通のツボは香りを迎えるという意味があり、嗅覚異常の改善にも用いられます。
刺激をすることで血流をよくするため、毛細血管が広がるまでしっかりと刺激をすることをお勧めします。
迎香の意味は、香りを迎えるという意味です。そのため、嗅覚障害には効果的なツボなのです。
迎香は、手の陽明大腸経に属しています。手の陽明大腸経は、大腸や排泄に関係があるツボです。大腸や排泄に関係があるため、出るものはきちんと外に出すという効果が強いのです。
出るものを外に出すということは、通り抜けをよくするということでもあります。そのため、鼻水や鼻詰まりによく使われているのです。
天迎香は迎香の上にあるツボで、小鼻のつけ根の両脇にあります。
押すときには、人差し指の先を使って、上に向かって優しく押しましょう。天迎香は繊細なツボのため、優しく圧を与えることが大事なのです。
鼻通は、迎香の少し上にあるツボで、小鼻の付け根の両脇にあります。
押すときは、真っ赤になるくらいぐりぐりと刺激しましょう。1日何回という目安ではなく、毛細血管が広がり血流が良くなるまでの刺激をしっかりと毎日をこなうことが大事です。
迎香は、小鼻の脇にあるツボです。
押すときは、鼻を両脇から挟むようにして押すと押しやすいです。強く押しすぎないように注意して静かに優しく押しましょう。