発作性夜間ヘモグロビン尿症の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2021年  10月 1日

更新日:2021年  10月28日

本日は発作性夜間ヘモグロビン尿症について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症とは
  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症の原因
  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症の症状
  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症の改善方法
  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症のまとめ
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銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

発作性夜間ヘモグロビン尿症は、赤血球が早く破壊されておこる貧血

発作性夜間ヘモグロビン尿症は、赤血球が血管の中で異常に早く破壊されておこる貧血です。

 

特徴的な症状は、早朝にコーラ色をしたヘモグロビン尿が見られることです。発作性夜間ヘモグロビン尿症はPNHとも呼ばれます。

 

発症する可能性のある年齢は非常に幅広く、小児から老年までほぼ全ての年齢で発症します。中でも発症することが多い年齢は20~60歳代で、男性も女性も発症する割合に大きな差はありません。

 

再生不良性貧血や骨髄異形成などの疾患と非常に深く関係があり、場合によっては合わせて発症したり症状が移行したりすることもあります。

発作性夜間ヘモグロビン尿症の原因は、血液細胞の遺伝子異常

発作性夜間ヘモグロビン尿症の原因は、血液細胞の遺伝子に異常がおこることです。

 

血液細胞の遺伝子に異常が起こることで、赤血球が自分の血液の中の補体の攻撃を受け、破壊され、膜が破れてヘモグロビンが赤血球の外に出てしまうのです。

 

発作性夜間ヘモグロビン尿症は、後天性の病気です。そのため、原因は遺伝子の異常ですが遺伝することはありません。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、血液の異常によって起こる希少な病気で、主に若い大人に影響を及ぼします。PNHの本質的な原因を理解するためには、血液の生成と働きを理解することから始めることが重要です。

 

私たちの身体の骨髄は、赤血球や白血球、血小板といった血液成分を常に生成しています。これらの細胞は、免疫系の活動、酸素の運搬、そして体内の出血を止めるといった重要な役割を果たしています。しかし、PNHでは、骨髄が正常な赤血球を生成できない状態が生じます。

 

PNHは、骨髄内の幹細胞における遺伝的突然変異が原因で発症します。この突然変異は、血液細胞の表面に存在するPIG-Aと呼ばれる特定の遺伝子に影響を及ぼします。PIG-A遺伝子は、血球の表面にある特定の蛋白質(補体制御タンパク質)を作るために必要な遺伝子であり、これらの蛋白質は赤血球が体内の自然な免疫反応(補体系)から保護されるために重要です。しかし、PIG-A遺伝子の突然変異により、補体制御タンパク質が正常に形成されず、赤血球が補体系による攻撃を受けやすくなります。

 

これがPNHの発作を引き起こす過程です。補体系が過剰に活動すると、赤血球は壊れ、ヘモグロビンが血液中に遊離します。このヘモグロビンは最終的に尿と共に体外に排出され、これが「ヘモグロビン尿」となります。さらに、この状態が主に夜間に起こるのは、睡眠中の呼吸パターンにより体内の酸素レベルが低下し、補体系がさらに活性化するためです。

 

しかし、PIG-A遺伝子の突然変異はPNHだけでなく、他の人々でも発生するにもかかわらず、全ての突然変異保有者がPNHを発症するわけではありません。

 

その理由はまだ完全には解明されていませんが、免疫系の異常な反応や他の遺伝的要素、環境要素が一部関与している可能性が示唆されています。例えば、骨髄異常である骨髄異形成症候群や再生不良性貧血といった他の血液の病気との共存がPNHの発症リスクを高めることが知られています。これらの病気は骨髄の正常な機能を阻害し、血液細胞の生成に影響を与えるため、PNHの発症に寄与する可能性があります。

 

また、一部では、PNHと骨髄不全症候群とが共存していることが報告されています。これらの場合は、骨髄の血液細胞生成能力が低下し、さらに突然変異を持つ細胞が生存優位性を持つことにより、PNHの発症が引き起こされると考えられています。

 

つまり、PNHの原因は単一の因子だけでなく、遺伝的要素、免疫系の異常、骨髄の異常、そしてそれらが複雑に絡み合った結果として発生すると考えられています。

発作性夜間ヘモグロビン尿症の症状は、コーラ色の尿

発作性夜間ヘモグロビン尿症の症状は、コーラ色の尿です。この尿はヘモグロビン尿と呼ばれています。

 

発作性夜間ヘモグロビン尿症を発症した人が全てヘモグロビン尿が現れるわけではなく、ヘモグロビン尿は全体の3分の1くらいの人に見られます。

 

貧血になるため、顔色不良や息切れ、動悸、 全身倦怠感 、脱力感、運動をしたときの疲れやすさを感じることが多いです。しかし、症状が進むスピードがゆっくりであるため、貧血症状があるという自覚があまりないことも多いです。

 

血栓症や嚥下障害 、男性機能不全、原因不明の腹痛なども症状として現れることがあります。

 

再生不良性貧血などの造血不全症状が強くある場合は、白血球が減ることによって感染症を起こしたり、血小板が減ることによって出血症状が現れたりすることもあります。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、血液細胞の異常による希少な病気であり、症状は人により大きく異なることが特徴です。一部では症状がほとんど現れない一方で、他では深刻な症状を経験することがあります。

 

ヘモグロビン尿:

PNHの最も特徴的な症状の一つは、その名前にもなっているヘモグロビン尿です。赤血球が破壊されると、ヘモグロビンが血液中に放出され、最終的に尿とともに体外に排出されます。これが尿が暗黄色から赤褐色に変わる原因であり、特に夜間や朝方に見られます。

 

疲労と弱さ:

全身の疲労感や弱さもPNHの一般的な症状です。これは赤血球の破壊による貧血が原因で、酸素供給が減少するために起こります。

 

頭痛や集中力の低下:

貧血により、酸素供給が不足すると脳への酸素供給も減少します。これにより頭痛や集中力の低下、意識の混濁などの症状が現れることがあります。

 

息切れと心拍数の増加:

これも貧血による症状で、体が酸素不足を補おうと心拍数を増やし、深呼吸をするように調整します。

 

腹痛:

一部では腹痛を経験します。これは血栓が腸の血管を塞ぐことによる虚血性腸症の結果であることがあります。

 

血栓形成:

PNHでは血栓が形成されやすく、これは非常に重大な合併症を引き起こす可能性があります。特に静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症や肺塞栓症)が起こりやすいとされています。血栓が形成されると、脳卒中や心筋梗塞、肺塞栓症などの生命を脅かす状況を引き起こす可能性があります。

 

腎障害:

ヘモグロビン尿が続くと腎臓に負担がかかり、長期的には腎障害を引き起こす可能性があります。これは尿の色や量の変化、腰部痛、頻尿などの症状として現れることがあります。

 

骨髄不全:

PNHと共存することが多い骨髄不全症候群もまた、白血球や血小板の数を減らすことで症状を引き起こします。これにより感染症に対する抵抗力が低下したり、出血傾向が出たりします。

 

これらの症状の度合いは、PNHの進行度や体調、他の健康状況によって変動します。そのため、症状が出た場合や症状が悪化した場合は、すぐに専門家に相談することが重要です。

 

また、PNHの判断は血液によって行われ、特定の血液細胞に異常が見られる場合や、ヘモグロビン尿が確認される場合に確定されます。

発作性夜間ヘモグロビン尿症の根本的な改善方法は、骨髄移植

発作性夜間ヘモグロビン尿症の根本的な改善方法は、骨髄移植です。しかし、ほとんどの場合骨髄衣装が行われるのは症状の程度が重い場合のみです。

 

赤血球の膜が破れてヘモグロビンが赤血球の外に出てしまうことに対しては補体に対する抗体薬を使って改善を行います。

 

以前は副腎皮質ステロイド薬が多く使われていましたが、抗体薬が開発されてからは抗体薬が抑制の効果が非常に高いということがわかっています。

 

強い貧血症状がある場合は、輸血を行います。血栓症がある場合は血栓症の改善を行い、再生不良性貧血の症状が強い場合は免疫抑制剤などを使って改善を行うことが必要です。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の改善方法は、主に症状の軽減と生活の質の向上を目指しています。戦略は個々の病状、症状、健康状態、年齢等により異なります。

 

対症法:

最初に、PNHの症状を管理するための対症法があります。貧血を改善するための鉄剤や輸血、感染症を予防するための抗生物質などが用いられます。

 

補充法:

エコルズモマブ(商品名Soliris)やラヴゥルズマブ(Ultomiris)といった製品は、補体系を調節し、赤血球の破壊を抑制します。これらは補体C5を阻害するモノクローナル抗体で、PNHの主要な症状を抑えることができます。

 

抗凝固法:

PNHは血栓形成のリスクが高いため、抗凝固薬が血栓予防のために処方されることがあります。

 

造血幹細胞移植:

重症のPNH、または補充法に反応しない場合に対しては、造血幹細胞移植が適応となる場合があります。これは現在までのPNHの唯一の根本的な改善方法となります。しかし、移植のリスクやドナーの適合性、年齢や一般的な健康状態などが移植の適応を決定する要素となります。

 

新たな方法:

PNHの改善方法は日々進化しており、複数の新薬が臨床試験段階にあります。一部は既存の補充法の効果を高めるためのものであり、他のものは新たな改善方法の可能性を探求しています。例えば、PNH細胞の生存を促進するPIG-A遺伝子の機能を修復する遺伝子の研究が進行中です。

 

PNHは現在まで根本的な改善方法が存在しない希少な病気の一つであり、病状や症状により生活の質が大きく低下する可能性があります。しかし、補体阻害薬などの新たな改善方法の開発により、PNHは大きく前進しています。

 

エコルズモマブやラヴゥルズマブは、赤血球の破壊を抑制し、血栓形成のリスクを減らすことで、生活の質を大幅に改善することが可能です。これらの薬は定期的に静脈注射として投与されますが、新たな製品の開発により、服薬による改善が可能になる可能性もあります。

 

造血幹細胞移植はPNHの唯一の根本的な改善方法ですが、移植のリスクやドナーの適合性、一般的な健康状態などから、すべての人に適応するものではありません。しかし、適応となる人に対しては、PNHからの完全な解放を可能にする可能性があります。

 

最後に、新たな改善方法の開発も進行中です。これらの中には、PIG-A遺伝子の機能を修復する遺伝子や、新たな補体阻害薬などが含まれます。これらの改善方法はまだ初期段階にありますが、将来的にはPNHの改善をさらに進化させる可能性があります。

 

PNHの改善方法は、病状や症状の管理から始まりますが、適切な改善方法の選択と早期の改善の開始により、生活の質を改善することが可能です。

症状はゆっくり進む

発作性夜間ヘモグロビン尿症の症状はゆっくりと少しずつ進んでいきます。

 

場合によっては自然と改善に向かうこともありますが、感染症や血栓症を合わせて発症することもあります。珍しいケースでは白血病に変化することもあります。

 

溶血発作は、感染をきっかけに起こることが多いです。そのため、手洗いうがいをきちんと行うことやマスクをすることなどに気をつけ、感染しないように予防を心がけましょう。

発作性夜間ヘモグロビン尿症の改善例

以下の症例は「American Journal of Hematology」の2022年の発行で公開されています(1)。

 

この症例では、35歳の男性が疲労感、黄疸、そして暗色尿(尿が濃い色になる)を訴え病院に行きました。彼の血液を調べると、高度な貧血と高ビリルビン血症が確認されました。さらに、フローサイトメトリーによる血液細胞の解析でPNHの判断が確定されました。

 

改善の初期段階では、症状を軽減するために鉄剤と輸血が行われました。その後、彼はエコルズモマブという補体阻害薬を投与されることになりました。開始から数週間後、彼の貧血と黄疸は大幅に改善され、尿の色も正常に戻りました。

 

エコルズモマブは補体阻害作用により、赤血球の破壊を抑制し、PNHに関連する症状を軽減する効果があります。この薬は2週間に1度、静脈注射として投与されます。エコルズモマブの投与により、症状の改善だけでなく、生活の質の大幅な向上を体験しました。

 

さらに、彼は血栓形成のリスクが高かったため、抗凝固薬も処方されました。これにより、彼の血栓形成のリスクは大幅に減少しました。

 

この症例から、適切な判断と改善が開始されると、PNHは症状の大幅な改善を経験し、生活の質を向上させることが可能であることが示されました。また、改善方法は、症状や病状に応じて個別に調整されることが重要であることも明らかにされています。

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