公開日:2021年 9月10日
更新日:2021年 10月23日
本日はマルファン症候群について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
マルファン症候群の原因は遺伝です。遺伝子の異常が原因で発症する病気で、原因となる遺伝子は、FBN1です。
マルファン症候群になる遺伝子の変化を持っている人に発症するのです。しかし、遺伝子の変化があったとしても症状が現れるまで数年かかることもあります。
男性にも女性にも同じくらいの割合で発症する可能性があります。
マルファン症候群は遺伝性の病気で、主に体の結びつき組織に影響を与えます。人体の結びつき組織は、細胞間を満たし、細胞と細胞を繋げ、骨や血管など体の構造を強化し、保護する役割を果たします。このため、マルファン症候群は、心臓、血管、骨、眼など、体の多くの部分に影響を及ぼす可能性があります。
原因となる遺伝子:
マルファン症候群は、FBN1という遺伝子の突然変異によって引き起こされます。この遺伝子は、フィブリリン-1というプロテインの製造指示を提供します。フィブリリン-1は、主に結びつき組織で見つけられ、ここで重要な役割を果たします。それは組織の弾力性と強度を支えるマトリックスを形成するのに寄与し、組織の成長と修復を調節するタンパク質であるTGF-β(組織増殖因子β)の活動を制御します。
FBN1遺伝子の突然変異により、フィブリリン-1の形成が不適切になるか、または量が不足すると、結びつき組織が正常に形成されないか、またはその機能が損なわれます。特に、TGF-βの活動が過剰になると考えられています。これらの変化は、マルファン症候群の様々な特徴、特に心臓、血管、骨、眼に見られる問題を引き起こします。
遺伝のパターン:
マルファン症候群は自己優性遺伝のパターンをたどります。つまり、FBN1遺伝子の一方のコピーが突然変異している親から子へ病気が伝えられます。これにより、親が病気である場合、子が病気を継承する確率は50%になります。
一部の人々(おおよそ25%の患者)では、マルファン症候群は新たな(de novo)遺伝子突然変異によって発生します。これは、子供が親から突然変異を受け継がない場合でも、その子供自身のFBN1遺伝子に新たな突然変異が発生し、それがマルファン症候群を引き起こすことを意味します。
マルファン症候群の症状は人によって様々です。主に高身長や細く長い指、背骨の屈曲や胸の変形などの骨格の症状、水晶体のずれや強い近視や乱視などの眼の症状、動脈のこぶのようなふくらみや断裂などの心臓血管の症状が起こります。
強く骨格がある場合は、呼吸機能や腰痛などに影響することもあります。眼の症状が強い場合は視力障害につながります。
このような症状は全ての人に全ての症状が現れる訳ではありません。発症の仕方も様々で、血管の症状だけで体の症状がないケースもあります。
心臓や血管の症状は、弁膜症や大動脈解離が起こらなければ特に自覚症状は現れません。しかし、突然血管が裂け裂けた時、命に関わる危険があります。
マルファン症候群は、個々でさまざまな症状を引き起こすことがあります。これは全身的な病気であり、つまり、それが影響を及ぼす結合組織が全身に広がっているため、体の多くの部分に影響を及ぼす可能性があります。主な影響を受ける領域は心臓、血管、骨格、眼、そして皮膚であり、これらの影響は個々でさまざまな程度に現れます。
心臓と血管の症状:
マルファン症候群ではしばしば心臓と血管の問題を経験します。最も一般的な問題は、大動脈(心臓から体へ酸素を運ぶ主要な血管)の拡大、または大動脈解離(大動脈の内壁が裂け、血液が壁層間を流れる)です。また、心臓弁膜症(心臓の弁が正常に動作しない状態)も一般的です。これらの症状は重篤であり、時には生命を脅かす可能性があります。
骨格の症状:
骨格系にも多くの症状が現れます。一般的な特徴は、高身長、細長い手指と足指、そして長い手足です。他の特徴としては、柔軟な関節、腕の長さが身長よりも長い、胸骨が突出またはくぼんでいる、脊柱側彎(背骨が"S"または"C"の形をした曲線を描く)などがあります。
眼の症状:
眼の問題もマルファン症候群に関連して一般的で、これらには近視、網膜剥離、早期白内障、早期緑内障、およびレンズ(眼の一部)の変位などが含まれます。
皮膚の症状:
一部のマルファン症候群の患者は皮膚の問題も経験します。これらには、ストレッチマーク(特に急速な成長や体重増加がない場合に見られる)、および皮膚が薄く、弱いことが含まれます。
肺の症状:
肺の問題もマルファン症候群に関連することがあります。しばしば突然の肺の機能喪失や呼吸困難を経験することがあります。これは、肺が部分的にまたは完全に崩壊する気胸が原因であることが多いです。
神経系の症状:
マルファン症候群はまた、脊髄と脳の液体が流れる空間(脊髄管)が過度に広がることにより神経系に影響を及ぼす可能性があります。これは通常、下部脊髄(dural ectasia)として知られています。これは下背部痛、腰痛、腹部痛、または下肢の感覚異常や運動異常を引き起こす可能性があります。
口腔の症状:
口腔内でもマルファン症候群の特徴が見られることがあります。これには、高い口蓋、小さい顎、または歯が適切に並ばない(不正咬合)ことが含まれます。
マルファン症候群では、現れている症状に合わせて手術や薬などによって改善を行います。
動脈の膨らみが進んだ場合や動脈解離が起こってしまった場合は、手術を行い動脈を人工血管に置き換えます。
大動脈解離が起こってしまった場合は、手術してもその後再び発症する可能性も高くなります。動脈の膨らみが進んだ場合、医者と相談し適切に薬で改善をすることが大事です。
薬を使って血圧を下げ、動脈の変化を止めることが必要なのです。骨格の症状が強い場合や眼の症状が強い場合にも手術を行うことがあります。
マルファン症候群の改善方法は、その特定の症状や合併症に基づき、個々のニーズに対応するようカスタマイズされます。改善の目標は、新たな合併症の予防、既存の症状の管理、生活の質の向上、および可能な限りの寿命の延長です。
薬: マルファン症候群の一部の合併症、特に心血管の合併症は、薬で管理することができます。たとえば、β-ブロッカーやアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)は、心筋のストレスを減らし、大動脈解離や大動脈瘤のリスクを軽減します。最近では、アンジオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)であるロサルタンも大動脈の拡大を抑制する方法として使用されています。
手術: 大動脈の拡大や網膜剥離など、一部の合併症は手術が必要となることがあります。心臓手術(通常は大動脈根部の修復)は、大動脈の拡大が進行し、解離の危険性があるときに検討されます。
定期的な監視: マルファン症候群は定期的にチームにより監視を受ける必要があります。これは、新たな症状や合併症の早期発見、既存の症状の管理、改善計画の調整を可能にします。
生活スタイルの調整: 物理的なストレスを避け、心臓に対する負荷を減らすための生活スタイルの変更も推奨されます。これには、重い物の持ち上げや激しい運動を避けることが含まれます。
遺伝カウンセリング: マルファン症候群は遺伝性の病気であるため、本人とその家族は遺伝カウンセラーと相談することを検討するかもしれません。これは病気の理解、リスクの評価、そして家族計画に関する決定を支援します。
心理的サポート: 病気とその影響を理解し、適応するために、心理的サポートやカウンセリングが提供されることがあります。これは本人やその家族が感じる恐怖や不安を和らげ、生活の質を改善するのに役立ちます。
リハビリテーション: 骨格の異常や関節の過伸展など、マルファン症候群に伴う一部の症状は、理学療法や職業療法を通じて改善されることがあります。これらの治療法は、身体機能を最大限に利用し、日常生活での機能を向上させることを目指します。
眼科: 近視、白内障、網膜剥離などの眼科的症状は、適切な眼鏡やコンタクトレンズ、目薬、場合によっては手術によって管理されます。
教育: 本人とその家族がマルファン症候群について理解することは非常に重要です。これにより患者は自分自身の状態を理解し、その管理により積極的に参加することができます。
マルファン症候群の改善は個人で異なり、病状の変化に応じて改善計画は適応的に調整されるべきです。
動脈の膨らみの症状の程度が軽い時は、日常生活を送る上で特に注意することはありません。しかし、定期的に病院に行き、動脈の膨らみの変化を確認っしておくことが大切です。
動脈の膨らみが進んだ時は、日常生活を送る上で注意することが出てきます。重いものを持つことや激しい運動などの血圧が上がるような行動は避けることが大事になります。
30歳の男性患者、ジョンの例
彼は長身で細長い手指を持ち、定期的に視力の問題を経験していました。家族史から、彼の父親も同様の特徴を持ち、若くして大動脈解離で亡くなっていました。ジョンは相談の結果、マルファン症候群であると判断を受けました。
改善計画:
心臓血管系の監視:ジョンの大動脈の拡大を確認したため、年2回エコーを実施しました。これにより、大動脈の拡大が進行しているかどうかを監視し、大動脈解離のリスクを評価しました。また、彼は心臓血管外科医と定期的に面会し、状況に応じて手術が必要となるタイミングを評価しました。
薬:ジョンには、血圧を管理し、大動脈の拡大の進行を遅らせるために、βブロッカーを処方しました。最近の研究では、ロサルタンという血圧降下薬が大動脈の拡大を遅らせるのに有効であることが示されており、この方法も検討しました(参照:The New England Journal of Medicine, 2014)。
視覚管理:ジョンは眼科医と定期的に面会し、網膜剥離の早期発見と改善、および彼の近視を管理するためのアプローチを話し合いました。
生活スタイルの調整:彼はまた、身体的なストレスを最小限に抑えるための生活スタイルの変更についてカウンセリングを受けました。これには、競技スポーツや重い物を持ち上げるなどの活動を避けること、定期的な運動(特に心拍数を高めないもの)を取り入れること、そして健康的な食事と十分な休息を取ることが含まれています。
心理的サポート:マルファン症候群の判断は心理的ストレスを引き起こす可能性があるため、ジョンはカウンセリングを受けることも検討しました。これは彼が自身の病状を理解し、適切に対処するための重要なステップでした。
遺伝カウンセリング:最後に、ジョンは将来子供を望んでいましたが、マルファン症候群は遺伝的な病気であるため、遺伝カウンセラーと相談することをお勧めしました。これは彼と彼のパートナーがリスクを理解し、適切な選択をするのに役立ちました。
ジョンの改善方法は、彼自身の病状と生活環境に合わせてカスタマイズされました。それは病状の監視、薬、生活スタイルの変更、そして心理的サポートなど、幅広いアプローチを組み合わせたものでした。