神経因性骨盤臓器症候群【原因・定義・症状】

公開日:2019年 12月23日

更新日:2023年 12月15日

本日は神経因性骨盤臓器症候群について解説させていただきます。

足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

神経因性骨盤臓器症候群とは骨盤内の神経の炎症

神経因性骨盤臓器症候群とは、骨盤内の肛門や直腸、そして仙骨神経に沿って慢性的な痛みを伴う疾患です。

お腹の直腸がある辺りを押してみると、仙骨神経に沿って痛みを伴うしこりが見つかるのが特徴です。

神経因性骨盤臓器症候群は、下記で記載する5つの症候の中のいくつかが組合わさり出現します。

肛門痛

長く座っていると肛門の痛みでつらくなってきます。この痛みは「痔」の時のキリキリした痛みとは異なるずんとした鈍痛が特徴です。

仙骨の左右で仙骨神経に沿って痛みを伴うしこりがあります。
この神経を圧迫すると普段感じている痛みと合致します。

 

  • 肛門の動きの異常

便やガスがもれ、下着が汚れるなどの症状がみられます。肛門の運動や感覚は第2・3・4仙骨神経が合わさって会陰に入り、肛門を開閉する筋肉の運動と肛門の感覚を支配しています。この神経が障害されると、しまりが悪くなり便やガスがもれたり、反対に拡がりにくく便秘になったりと、肛門の運動や感覚障害が現れます。

 

排便・排尿障害

便が出にくく、出たとしても残便感が残ります。排便は、第2・3・4仙骨から出ている骨盤内臓神経が、直腸の感覚や運動を支配し起こります。この神経が何らかの理由で支障をきたすと、直腸の動きが鈍くなり、排便、または排尿が困難になります。

 

腹痛・膨満感

過敏性腸症候群と似た腹痛やお腹の張りといった症状が現れます。上記で説明した直腸と肛門の感覚・運動の障害で直腸から降りてきた便が出ないということになると、それより上の結腸が便を出そうとして収縮します。これによってかえって便が出にくくなります。

 

腰痛

第2・3・4仙骨から出ている骨盤内臓神経は坐骨の下から下肢に伸びる神経へと繋がります。そのため骨盤内の神経が圧迫されることで、その下の神経にも支障をきたし、腰痛や下肢のしびれを発生させます。

神経因性骨盤臓器症候群は、脳、脊髄、神経系の障害により骨盤内臓器の機能に影響を及ぼす状態です。この症候群によって引き起こされる症状は多岐にわたり、人によって異なりますが、以下は一般的な症状のまとめです。

 

排尿障害:尿失禁や尿漏れ。頻繁な尿意や夜間頻尿。排尿の開始が困難、または完全に排尿できない(尿閉)。尿道の痛みや灼熱感。

 

排便障害:便秘や排便困難。意図せず便が漏れる(大便失禁)。

 

性機能障害:性欲減退、性交時の痛み。勃起不全や射精障害(男性)。潤滑不足や性交時の不快感(女性)。

 

感覚障害:骨盤領域、股間、性器、肛門周辺のしびれや感覚鈍麻。

 

慢性骨盤痛:骨盤内に継続的な痛みや不快感を感じる。

 

下肢の神経障害:下肢の筋力低下、歩行困難。下肢のしびれやピリピリ感。

 

神経因性骨盤臓器症候群の症状は、基礎となる神経障害の性質と重症度に大きく依存します。

神経因性骨盤臓器症候群の原因と判断

神経因性骨盤臓器症候群は骨盤内の神経が何らかの理由で障害を受けることにより起こるので、画像では判断できません。

そのため、慢性的な会陰部の痛みが続き肛門科にかかっても、「痔」と判断されたり、泌尿器科では慢性前立腺炎と判断され改善に取り組んでも一向に改善しないというケースが少なくありません。

おなかやお尻の痛み・排尿便の異常に加え、慢性的な肛門の痛みや、骨盤の痛みをきたし、その痛みが仙骨や尾骨、場合によっては下肢にまでしびれを発生させるのがこの疾患の特徴です。

腰椎部から肛門に続く 仙骨神経 や、その先に続く神経の枝 「陰部神経」 に

沿って圧痛があり、ここから痛みが発生していることが分かっています。

原因の多くは、高齢化による大腸・肛門機能の低下で、特に中年以降の女性に多く見られます。

若い方でも大腸肛門になんらかの病気を過去にされた方や、障害はないけど機能が弱っている方に起こります。

また、食生活の欧米化、ストレス社会なども大きく関係しています。

膀胱や子宮は自律神経の支配を受けているため偏食やストレスが長期間続き、自律神経系に支障をきたすと、骨盤内の仙骨神経や陰部神経が圧迫され炎症を起こし発症することが示唆されます。

神経因性骨盤臓器症候群は、骨盤内の臓器(膀胱、直腸、生殖器など)が正常に機能しなくなる状態で、これは神経系の障害によって引き起こされます。以下に、この症候群の主な原因を挙げます。

 

脊髄損傷:事故や外傷による脊髄損傷は、骨盤臓器の神経支配に影響を与え、神経因性骨盤臓器症候群を引き起こすことがあります。

 

多発性硬化症(MS):MSは中枢神経系の病気で、脳と脊髄の神経線維に影響を及ぼします。これにより、骨盤内臓器の機能障害が引き起こされることがあります。

 

脳卒中:脳卒中は脳の一部への血流が遮断されることによって起こり、これが骨盤臓器の神経制御に影響を及ぼすことがあります。

 

パーキンソン病:パーキンソン病は、脳の特定の部分の神経細胞が損傷を受ける病気で、これにより骨盤臓器の機能に影響を与えることがあります。

 

糖尿病:長期にわたる高血糖は神経損傷を引き起こす可能性があり、これにより骨盤臓器の神経支配が障害されることがあります。

 

脊髄腫瘍またはその他の脊髄病変:脊髄の腫瘍や他の病変は、神経経路を圧迫し、骨盤臓器の機能障害を引き起こすことがあります。

 

末梢神経の障害:手術後の瘢痕組織形成や慢性的な骨盤痛など、骨盤領域の末梢神経の障害も神経因性骨盤臓器症候群の原因となることがあります。

神経因性骨盤臓器症候群の改善法

保存する方法、薬での改善に加え、症状がひどい場合は炎症を起こしている神経に直接薬を使用する、「神経ブロック」も用います。繰り返し行うことで、痛みを徐々に軽減することができます。

 

また、痛みは身体を完全に休めてではなく、適度な運動を併用して行います。まずは完全に痛みをとることを目標にせず、日常の生活に支障が出ない状態を目標に無理のないよう行います。

 

神経因性骨盤臓器症候群は、神経系の障害によって骨盤内臓器の機能障害が生じる状態で改善方法は複雑で、個々の症状と基礎となる原因に基づいて行われます。以下に主な方法を紹介します。

 

・薬

抗コリン薬: 尿失禁や過活動膀胱の改善に用いられます。

アルファ遮断薬: 前立腺肥大による排尿障害の改善に用いられます。

抗うつ薬: 骨盤痛や性機能障害の改善に用いられることがあります。

筋弛緩剤: 骨盤底筋の緊張を和らげるために使用されます。

 

・物理的な方法

骨盤底筋トレーニング: 骨盤底筋を強化し、尿失禁や便失禁を改善します。

生体フィードバック: 骨盤底筋のコントロールを学びます。

 

・神経調整法

脊髄刺激: 電気刺激によって神経痛を和らげることがあります。

神経ブロック: 痛みの原因となる特定の神経を一時的にブロックします。

 

・カテーテルや尿道拡張

尿閉や排尿障害の改善に用いられることがあります。

 

手術

症状が薬や他の方法に反応しない場合、特定の手術が検討されることがあります。

 

生活スタイルの変更

食生活の調整、適切な水分摂取、禁煙などが推奨されます。

 

心理社会的支援

慢性的な症状によるストレスや不安を管理するため、カウンセリングや心理的介入が有効です。

 

神経因性骨盤臓器症候群の改善方法は、症状の種類と重症度、全体的な健康状態に応じて個別に計画されます。

神経因性骨盤臓器症候群に対する手術の方法は、症状の種類、重症度、および基礎となる原因に基づいて異なります。一般的な手術方法には以下のようなものがあります。

 

骨盤底筋の手術:骨盤底筋の機能不全に対処するため、骨盤底の修復や強化を目的とした手術が行われることがあります。

 

人工括約筋:重度の尿失禁に対して、尿道周囲に人工括約筋を設置する手術が行われることがあります。これにより、尿失禁のコントロールが可能になります。

 

神経切断術:慢性的な疼痛や特定の神経障害に対して、影響を受けている神経を切断する手術が選択されることがあります。

 

脊髄刺激:痛みの管理のために、脊髄に電極を設置し、電気的刺激によって痛みを和らげる手術が行われることがあります。

 

尿道拡張術:排尿障害に対して、尿道を拡張する手術が行われることがあります。

 

膀胱拡張術:過活動膀胱や膀胱の機能障害に対して、膀胱を外科的に拡張する手術が行われることがあります。

 

尿道スリング手術:女性の尿失禁の改善において、尿道を支えるためのスリング(支持帯)を設置する手術が行われることがあります。

 

これらの手術は、他の方法が効果を示さない場合や、症状が特に重度の場合に検討されます。手術はリスクを伴うため、手術の適応、方法、および期待される結果については、医師と十分に相談することが重要です。

神経因性骨盤臓器症候群の鍼灸

鍼灸は自律神経の不調からくる神経の問題に非常に有効です。

この場合、骨盤内神経の炎症が原因ですので、薬や保存する方法が中々効かない場合、鍼灸をぜひお勧めします。

神経ブロックを試す前に、一度ご相談ください。

どこに行っても良くならなった慢性的な症状のお力になれるかと思います。

 

神経因性骨盤臓器症候群によく使われるツボ

  • 膀胱兪
  • 中膂兪

  • 白環兪
  • 胞肓
  • 秩辺
  • 天枢
  • 腹結
  • 関元
膀胱兪

膀胱兪の効果は、腰痛の他にも頻尿や尿漏れなどの泌尿器系の病気やED、便秘、下痢といった症状や坐骨神経痛や子供の夜尿症などの改善などです。他にも、肩こり・首こり、顎関節症、こわばりなどに使うこともあります。

 

膀胱兪の場所は、仙骨の上から2番目のくぼみから指1本半分外側にいった場所です。膀胱兪を押すときは、3~5秒かけて圧迫し、3~5秒かけて指を離すことを3回ほど行いましょう。

中膂兪

中膂兪は、男性の尿道や陰茎に症状がある場合や前立腺炎や尿道炎、前立腺肥大症などの症状に対して使われるツボです。尿道の痛み、尿が出にくい、尿もれ、残尿感などの症状がある場合に効果を発揮するとされています。

 

他にも、腰痛、腹痛、下痢、大腿部の痛みなどにも使われます。

 

中膂兪の場所は、第三後仙骨孔の外側へ指の幅二本分近く離れた場所です。中膂兪を押すときは、最初は弱めの力でおしていき、段々と力を加えて少しずつ強くし、自分好みの力強さに調整すると良いでしょう。

白環兪

白環兪は、腰痛に効果あるとされているツボです。他にも、泌尿器系や婦人科系の病気、子宮内膜炎、生殖器系の悩みや便秘や下痢などの腸の不調、リウマチなどに対して使われることもあります。

 

白環兪の場所は、尾骸骨上方2cmの点より両外側水平方向に3cmのところです。白環兪を押す時、パートナーや家族など誰かに押してもらう場合は、遠慮せず力加減をリクエストしましょう。

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