公開日:2019年 12月23日
更新日:2025年 7月15日
本日は胆道ジスキネジーの鍼灸について解説させていただきます。
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
胆道ジスキネジーとは、右上腹部の重い痛みをともなう病気。
吐き気や下痢を引き起こすこともあり、ホルモンバランスの乱れや偏食などが原因と推測されてはいるものの、未だ明確な根拠は定められていません。
また、うずくような痛みの質から、胆石・胆のう・がんにも似た病気ともいわれています。
上記3種類に該当しなかった人は、胆道ジスキネジーと判断されることが多いです。
また、食事などが原因とされることから、糖尿病などの合併症にも気をつける必要があります。
原因不明の厄介な病気である胆道ジスキネジーも、普段の食事の摂り方・栄養バランスに気を配ることで、症状を軽減することができます。
今回は、胆道ジスキネジーの原因・症状・改善方法について解説します。
胆道ジスキネジーの原因は、ホルモンバランスの乱れ、間違った食事の摂り方など、諸説あります。
私たちが食事を摂ってから、消化吸収差用作用を促し正常な排泄を保つためには、胆のうの収縮とファーター乳頭の開きが必要不可欠になります。
しかし、胆道ジスキネジーの場合、このファーター乳頭の開きが不十分なのです。結果として、摂取した食べ物はきちんと消化されることなく、消化吸収が正しく行われず、胆道が圧迫されてしまうのです。
消化吸収を作用するのは「腸内環境の改善のみ」と考えている人も多いのですが、実際はそうではありません。摂取した食べ物が排出されるにあたって、胆道の働きも欠かせません。
・自律神経系の異常
胆嚢とオッディ括約筋の収縮は、自律神経によって制御されています。副交感神経優位になると胆嚢収縮が促進します。交感神経優位になると胆嚢が弛緩、括約筋が収縮し、胆汁排出低下します。ストレス、慢性緊張、不安により交感神経が過剰に働くと、胆汁の流れが停滞し胆汁うっ滞が起きやすいのです。
・消化ホルモンの異常
胆嚢収縮はコレシストキニンによって刺激されます。CCKは脂肪やタンパク質の摂取で分泌されますが、ホルモン分泌が低下、受容体の感受性低下することで胆嚢収縮が不良になり胆汁排出不全から消化不良が起こります。
・オッディ括約筋機能障害
括約筋が過剰に緊張すると、胆汁や膵液の排出が妨げられます。
・ホルモン、代謝異常
甲状腺機能低下症の場合代謝低下で胆嚢運動も低下します。糖尿病の場合、自律神経障害で胆嚢収縮不良が起こります。女性ホルモンの影響では妊娠やピル使用で胆汁うっ滞が起きやすいです。
・食習慣、ライフスタイル
高脂肪、高カロリー食は胆嚢への負荷が増大します。長時間の空腹は胆嚢内で胆汁が停滞します。過食や早食いは胆嚢収縮リズムの乱れにつながります。アルコールや喫煙は胆道機能に悪影響を及ぼします。
・精神的ストレスと脳腸相関
胆道ジスキネジーは機能性消化管障害の一種とされ、脳腸相関が関与しています。ストレスは交感神経過緊張を起こし、胆嚢や括約筋の協調不全になり、胆汁排出障害が起こります。
・炎症や感染の影響
胆道炎、胃十二指腸炎、膵炎などが慢性的に影響し、胆嚢や括約筋の運動異常を引き起こします。
明確な定義づけのない胆道ジスキネジーですが、その症状は様々にあります。
最もよく挙がるのは、右上腹部の疼痛や吐き気といったものです。下記に、胆道ジスキネジーの諸症状についてまとめてみました。
これらの症状が続くのは、食後である場合がほとんどです。
はじめに、みぞおち、肋骨の圧迫感や満腹感が押し寄せ、消化の始まる頃には腹痛や下痢を引き起こす症例が多くみられます。
胆道ジスキネジーが深刻化すると、食後に断続的な吐き気を催し、嘔吐にいたることもあります。嘔吐は心身ともに負担がかかるため、早期改善が必要です。
また、これらの症状は、消化器官の異常、ホルモンバランスの乱れ、自律神経失調、過食による肥満症などに共通しています。
上記の諸症状からも、胆道ジスキネジーの原因特定について研究が続いているのです。
右上腹部痛・・・脂っこい食後、肩や背中に放散
膨満感・・・食後のガス増加
吐き気・・・胆汁不足で消化不良
脂肪便・・・油っぽく水に浮く便
全身倦怠感・・・栄養吸収不良と自律神経失調
現状、胆道ジスキネジーを完全に回復させる特効薬は開発されていません。医学面での研究は日々重ねられているものの、病気の原因が解明されていない以上、確実に効く薬はないのです。
胆道ジスキネジーと判断された人は、食事を見直すことが重要になります。
医学的に解明された特効薬がない以上、自分自身で症状の緩和に努めるほかありません。胃腸に負担のかからない食品を中心に摂取していくことで、胆道の働きも徐々に元通りになるでしょう。
胆道をはじめとする十二指腸の働きをサポートするのは、栄養バランスのとれた食事。その中でも、脂身の多い肉、魚などは摂らないようにしましょう。炭水化物なども糖質が高いので、胃腸や胆道に負担をかけてしまいます。
野菜・白身魚・フルーツ類を中心とした食事に切り替えることで、過度な満腹感など胃腸部分に生じる不快な症状が緩和されるといわれています。あるいは、固形物ではなく、スープを多めに摂取するのもおすすめです。
・食事の工夫
少量で回数を増やす、脂肪の摂り方を工夫する、動物性脂肪や揚げ物を控える、オリーブオイルやMCTオイルなど消化しやすい油を少量使用する、高繊維食で消化を助ける、アルコールや刺激物を控えるなどが大事です。
・ライフスタイル
ストレス管理、適度な運動が大事です。
・薬
胆汁の流れを改善する薬や胆嚢、胆管の運動調整薬や鎮痛剤を使います。
・外科的方法
胆嚢機能が著しく低下し、薬や生活改善で症状が改善しない場合胆嚢摘出術を行います。
・胆嚢、胆管の運動改善
鍼刺激により、副交感神経を活性化し、胆嚢収縮を促します。胆汁排出を阻害しているオッディ括約筋の緊張を緩和することで胆汁の流れが改善します。
・自律神経のバランス調整
鍼灸は交感神経を抑え、副交感神経を優位にすることで胆汁流れがスムーズになります。さらに、自律神経の安定化によりストレス悪化サイクルを断ち切る助けになります。
・胃腸機能のサポート
鍼刺激は胃腸の蠕動も促進し、食後の膨満感や消化不良の改善します。
・疼痛、張り感の軽減
鍼灸は局所血流を改善し、筋緊張をやわらげて痛みを軽減します。
・全身のリラクゼーション効果
鍼灸はエンドルフィン分泌を促し、ストレスを軽減し睡眠が改善することで発作の予防にも有効です。
胆道ジスキネジーは、心的要因が原因の病気とする説もあります。自律神経失調症、うつ病などであれば、精神科も方法の1つ。
ただし、こちらは必ずしも完全回復が約束されているわけではありません。どちらかといえば、ヒーリング効果による「気つけ薬」のような役割を果たすものです。1つの方法のみを選択するのではなく、食事の見直しなどと合わせて取り組むのが吉。病院によっては、精神安定剤、睡眠薬などを使うこともあります。
このようなことが調べられたのち、手術日や段取りを進めていきます。胆道ジスキネジーの症状がおさまらない限りは、食後の不快感は消えないでしょう。
自然な改善が一番望ましいのですが、思うような回復の見込めない場合は、信頼できる医療機関での外科手術をおすすめします。