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公開日:2022年 7月 7日
更新日:2025年 9月14日
本日はギャロウェイ・モワト症候群について解説させていただきます。
☆本記事の内容
目次
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
ギャロウェイ・モワト症候群の原因は、遺伝子の異常です。WDR73と呼ばれる遺伝子に異常が起きると発症するということがわかっています。遺伝形式は、常染色体劣性遺伝です。
WDR73遺伝子に異常が起きると、脳が発生する過程で異常が起き、ギ神経系の障害が発生すると考えられているのです。
WDR73遺伝子は、腎臓の中にあるたこ足細胞と呼ばれる細胞が作られる過程にもが大きく関係していると考えられています。
たこ足細胞は体の中にタンパク質を保つために必ず必要な細胞のため、WDR73遺伝子に異常が起きると、たこ足細胞の機能が障害を起こし、タンパク質が尿から体の外に出て行ってしまうのです。
変異遺伝子によるKEOPS複合体機能不全やWDR73機能低下により、以下のような作用経路が考えられています。
1.細胞ストレス応答・代謝異常
RNA 修飾や tRNA の機能異常によりタンパク質合成ストレスが起き、細胞死や機能低下が起こる。
2.ポドサイト障害
腎臓の糸球体で、ポドサイトが損傷を受け、糸球体透過性が高まり、ネフローゼ症候群が発症します。
3.神経発達・ミクロチューブル系の障害
神経細胞の軸索伸長やシナプス機能に影響し、小頭症、発達遅滞、痙攣、脳構造異常が起こります。
4.広域性器官障害
複雑な細胞機能異常が腎臓や神経、消化管、筋肉など多臓器に波及します。
ギャロウェイ・モワト症候群の症状は、腎糸球体硬化症と小頭症、顔面や四肢の形成異常などです。
ギャロウェイ・モワト症候群の症状は人によって大きく違います。遺伝によって家族の中でギャロウェイ・モワト症候群を発症していても症状には個人差が見られます。
ギャロウェイ・モワト症候群の症状は神経と腎臓の異常に関係しており、脳の形成異常が現れるため、大脳や小脳の一部の構造に異常があります。
そのため、頭が小さく筋緊張が弱くなり、哺乳や呼吸に異常が現れることがあります。さらに、ジストニアやけいれんが起きることもあります。
運動面の遅れが現れるため、おすわりや起立をすることができず、精神的な遅れや知的発達面の遅れも現れます。症状が重い場合は、生まれて早い段階でネフローゼ症候群が起こることもあります。
全身がむくみ、血圧が下がったり感染症に弱くなったり、食道裂肛ヘルニアや逆流性食道炎、誤嚥性肺炎などが現れたりすることもあります。
・神経系・発達の異常
多くの子どもでは、まず小頭症が目立ちます。これは脳の発達そのものに障害があるためで、MRIやCTでは脳の萎縮や脳回の形成異常が確認されることがあります。その結果、発達の遅れ が生じ、寝返りや歩行、言葉の発達が遅くなることが少なくありません。さらにけいれん発作を繰り返す子どもも多く、神経症状が生活に大きな影響を与えます。
・腎臓の異常
一方で、ネフローゼ症候群 による激しいタンパク尿が早期から見られるのも特徴です。腎臓の糸球体を構成する「ポドサイト」という細胞に障害が起こり、尿にタンパクが漏れ出してしまうのです。ステロイド薬が効きにくく、数年のうちに腎不全へ進行し、透析や腎移植が必要になるケースも少なくありません。
・顔貌や体の特徴
顔つきに特徴が出ることもあります。耳が低い位置についていたり、あごが小さい、額が狭いといった形態異常が知られています。また、筋肉の緊張に異常が起こることで、体がやわらかすぎたり、逆に硬くなったりすることがあり、関節が動きにくくなる拘縮を引き起こすこともあります。
・消化器や呼吸器の問題
消化管では、食道裂孔ヘルニアや胃食道逆流症 が合併することがあり、食事のときに嘔吐や逆流、栄養不良が起こりやすくなります。嚥下がうまくいかず誤嚥する子どももいて、呼吸器感染や呼吸障害につながることがあります。
・眼の異常
視覚面では、視神経の萎縮や斜視 が見られることがあり、視覚障害が伴うこともあります。
ギャロウェイ・モワト症候群の根本的な改善方法はありません。そのため、改善するときの目的は、現れている症状を和らげることになります。
てんかんが現れている場合は、抗てんかん薬を使います。ネフローゼ症候群の進行を止めるためには、ステロイドなどの免疫抑制剤を使います。
ギャロウェイ・モワト症候群の改善において、ネフローゼ症候群の進行を止めることは大事ですが、ネフローゼ症候群の進行を抑えることは難しく、最終的には透析や腎移植が必要になることが多いです。
・腎症(ネフローゼ症候群/タンパク尿)への対応
GAMOS型では ステロイドや免疫抑制薬に反応しにくい例が多いと報告されています。Orphanet は「ネフローゼ症候群はステロイド、免疫抑制法に抵抗性になることが多い」点を指摘しています。 したがって、腎症に対して取られる方策は補助的・支持的管理となります。
レニン–アンジオテンシン系阻害薬(ACE 阻害薬や ARB)で糸球体内圧を抑制し、タンパク漏出を軽減します。
むくみ管理のために利尿薬や浮腫や高血圧を抑えるために低ナトリウム食を行ったりします。
・神経・発達障害・けいれんへの対応
けいれんや発作を起こす症例には、抗てんかん薬を用いることがあります。発達遅滞や運動機能低下に対しては、リハビリテーションを早期から導入し、機能保持や改善を図ります。栄養状態が不良だったり消化管症状を伴う場合は、嚥下訓練や胃腸ケアも重要です。
ギャロウェイ・モワト症候群の生命予後は厳しいと言われています。症状によりけいれんやネフローゼ症候群なども現れるため、乳児期の命にかかわることも珍しくはないと言われています。
しかし、ギャロウェイ・モワト症候群の原因がWDR73遺伝子の異常であるということがわかったのは、2014年であり比較的最近の出来事です。そのためまだまだ研究が進んでいく病気であると考えられるでしょう。