特発性門脈圧亢進症の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2022年  4月 2日

更新日:2022年  4月22日

本日は特発性門脈圧亢進症について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 特発性門脈圧亢進症とは
  • 特発性門脈圧亢進症の原因
  • 特発性門脈圧亢進症の症状
  • 特発性門脈圧亢進症の改善方法
  • 特発性門脈圧亢進症のまとめ
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銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

肝臓や門脈に特別な病変がなく門脈の圧が上がる病気

特発性門脈圧亢進症は、肝臓や門脈に特別な病変がなく門脈の圧が上がる病気です。門脈の圧が上がるため、食道静脈瘤ができたり脾臓が腫大したり貧血が現れたりします。

 

特発性門脈圧亢進症の原因は詳しくはわかっていませんが、発症する人は男性よりも女性の方が多いということがわかっています。女性は男性の約2.4倍多いと言われています。発症する年齢のピークとなるのは、40~50歳代です。

 

特発性門脈圧亢進症は、日本の方が欧米より少し多い傾向があります。さらに、日本の中でも都会よりも農村に多い傾向があります。

何らかの自己免疫異常が関係していると考えられている

特発性門脈圧亢進症の詳しい原因は明らかになっていません。今考えられていることとしては、何らかの自己免疫異常が関係しているということです。

 

これは、特発性門脈圧亢進症を発症する人が中年女性に多く、血液を調べた時に免疫異常が認められることがあることから考えられていることです。

 

遺伝するかどうかについて明らかなデータはありません。しかし、一般的に自己免疫異常が関係する病気は家系の中に多く発症しているという傾向はあります。そのため、遺伝子の異常が関係している可能性もあります。

 

最近の研究では、特発性門脈圧亢進症を発症している人の血液の中の一部のリンパ球の働きに異常があることがわかっています。このような免疫の異常に関係する研究が行われているため、今後の明らかになることに期待できます。

特発性門脈圧亢進症の「特発性」は、その原因が確定的には知られていないことを意味します。それでも、私たちは現在の研究からその可能性についていくつか推測することができます。

 

IPHは門脈の血流が正常に行われない状態であり、その結果として門脈内の血液の圧力が上昇します。門脈は、腸から来た栄養素を肝臓に運ぶ大きな血管で、この血管が詰まると、血流が他の小さな血管に偏り、過度の圧力が生じます。

 

IPHの具体的な原因は不明ですが、いくつかの可能性が考えられます。一つ目は、自己免疫反応により門脈が損傷を受ける可能性です。自己免疫に関する病気は、体の免疫システムが誤って自身の体を攻撃し、組織や器官を破壊する病態です。IPHの患者の中には、他の自己免疫に関する病気を持っている人もいます。

 

二つ目は、遺伝的要素が関与する可能性です。特定の遺伝子変異がIPHの発症リスクを増加させるかどうかについての研究がいくつか存在しますが、まだ確定的な結論は得られていません。

 

三つ目は、炎症反応や感染が門脈を損傷し、IPHを引き起こす可能性です。特定の細菌やウイルスがIPHの発症に関与しているとする研究報告もあります。

 

しかし、これらの可能性はあくまで仮説であり、IPHの原因は個人により異なる可能性があります。特発性門脈圧亢進症の詳細なメカニズムは現在も研究が進行中であり、医学者たちはこれを解明することを目指しています。

 

参照:

 

Sarin SK, Kumar A. "Idiopathic Portal Hypertension." In: Schiff ER, Maddrey WC, Reddy KR, eds

症状は、脾臓の肥大や腹水、貧血、静脈瘤の発生など

特発性門脈圧亢進症の症状は、脾臓の肥大や腹水、貧血、静脈瘤の発生などです。脾臓の肥大や腹水は、門脈圧が上がることによって起こります。

 

静脈瘤は、門脈圧が上がることによって、門脈血の一部が肝臓ではない方向に逃げるようになり、新しい血液が流通する側副血行路という経路ができることで起こります。

 

側副血行路のために腹壁の静脈が怒張したり食道や胃に静脈瘤ができるのです。

 

貧血は、脾臓が大きくなることで脾機能が過剰に働くようになり起こります。血小板も少なくなり、出血が起こった場合血液が止まりにくいという状態になります。

 

静脈瘤の圧が上がると、静脈の血管が上がった圧に耐えることができなくなることもあります。圧に耐えることができなくなると、破裂したり出血したりし、吐血や下血などの症状が現れます。

特発性門脈圧亢進症の主な症状は、その結果として生じる門脈高血圧に起因します。門脈は、腸から栄養素を肝臓に運ぶための血管であり、その血流が妨げられると、血液の圧力が上昇します。これにより、下記の症状が生じる可能性があります。

 

腹部膨満感や不快感:門脈高血圧により、肝臓が正常に働かなくなると、液体が腹部に溜まり、腹部膨満感や不快感を感じることがあります。これは、腹水と呼ばれる状態です。

 

下肢のむくみ:体内の液体バランスが乱れ、特に下肢に液体が溜まることで、下肢のむくみが生じることがあります。

 

青紫:門脈高血圧は、食道や胃の血管、いわゆる静脈瘤を拡大させる可能性があります。これらの血管は破裂しやすく、重度の出血を引き起こす可能性があります。これは、吐血や黒色便を引き起こす可能性があります。

 

貧血:長期的な出血や鉄の吸収不良は貧血を引き起こす可能性があります。これは疲労感、息切れ、めまいを引き起こす可能性があります。

 

肝硬変:門脈高血圧は時間とともに肝臓の組織を損傷し、肝硬変を引き起こす可能性があります。これは、黄疸、疲労感、体重減少などの症状を引き起こす可能性があります。

 

IPHの症状は、その病状の進行と共に慢性的になることが一般的です。そのため、これらの症状が現れた場合、すぐに専門家に相談することが重要です。早期に改善を開始することで、門脈高血圧による合併症の発生を遅らせる、または防ぐ可能性があります。

 

脾臓の肥大:門脈高血圧は、脾臓が大きくなる可能性があります。これは、脾臓が多量の血液を貯えてしまい、通常よりも大きくなる状態を指します。脾臓が肥大すると、全身の血液の循環が低下し、腹部の左側に重さや圧迫感を感じることがあります。

 

体重の減少:肝臓が正常に機能しないと、食欲不振や消化不良を引き起こし、体重の減少を招くことがあります。

 

肝性脳症:肝臓の機能が低下すると、肝性脳症という症状を引き起こす可能性があります。これは肝臓が毒素を適切に排泄できず、それが血流に乗って脳に達し、精神的な変化や混乱、昏睡を引き起こす可能性があります。

 

これらの症状が現れた場合は、可能な限り早く専門家に相談することが重要です。

 

引用文献:

 

Okuda K, Kage M, Shrestha SM. "Clinical features and prognosis of idiopathic portal hypertension compared with liver cirrhosis: results of a long-term follow-up study." Hepatology. 1996; 23(1): 17-21.

Sarin SK, Kumar A. "Idiopathic Portal Hypertension." In: Schiff ER, Maddrey WC, Reddy KR, eds. Schiff's Diseases of the Liver. 12th ed. Wiley-Blackwell; 2018.

"Idiopathic Portal Hypertension". National Organization for Rare Disorders. Available from: (リンク)

食道胃静脈瘤からの出血をコントロールできれば、経過は良好

静脈瘤が出血した場合は、出血を止める方法として薬やバルーンタンポナーデ法があります。内視鏡を使った方法や手術も行うことがあります。

 

脾機能が過剰になった場合で、血球の減少が高度な場合は、部分脾動脈塞栓術や脾摘術を行うこともあります。

 

発性門脈圧亢進症では、一般的に肝機能は正常な状態であることが多いです。そのため、食道胃静脈瘤からの出血をコントロールすることができれば、経過は良好であるとされています。

特発性門脈圧亢進症の改善方法は、症状の管理と合併症の予防に重点を置いています。目的は、症状を緩和し、生活の質を改善し、生命予後を改善することです。

 

症状の管理:IPHの改善は主に症状の管理に焦点を当てています。腹水や下肢のむくみなどの症状がある場合、利尿剤が処方されることがあります。これらは体内の余分な液体を排出し、むくみを軽減します。

 

静脈瘤の予防と管理:静脈瘤の出血は、IPHの最も重大な合併症の一つです。そのため、非選択性β遮断薬が静脈瘤の成長を遅らせ、破裂リスクを減少させるために用いられることがあります。破裂した場合、内視鏡的硬化療法(EVS)やバンディング(EVL)などの内視鏡的な改善が行われることがあります。

 

栄養管理:栄養状態を良好に維持することが重要です。必要に応じて、食事による改善や栄養補助食品が推奨されることがあります。また、肝臓にさらなるダメージを与えないように、アルコールの摂取を避けることが一般的に推奨されます。

 

外科的治療:症状が重度で、薬ではコントロールできない場合、シャント手術や肝移植が検討されることがあります。シャント手術は、門脈と体の他の部分をつなぐ新たな経路を作成する手術です。これにより、門脈の圧力を低下させ、IPHの症状を軽減することが可能です。また、肝移植は、肝臓が大きく損傷していて、その他の改善法が効果的でない場合に行われます。

 

心理的サポート:IPHは、生活の質に影響を与える可能性があります。長期的な不確実性、病気の進行による生活の制限、そして可能性のある合併症に対する懸念は、ストレスや不安を引き起こすことがあります。心理的サポート、カウンセリング、心理的な介入などは、これらの心理的問題を管理し、生活の質を改善するのに役立つことがあります。

 

これらの方法は、個人の病状、年齢、全般的な健康状態、そして合併症のリスクにより、大いに異なる可能性があります。

 

引用文献:

 

Okuda K, Kage M, Shrestha SM. "Clinical features and prognosis of idiopathic portal hypertension compared with liver cirrhosis: results of a long-term follow-up study." Hepatology. 1996; 23(1): 17-21.

Sarin SK, Kumar A. "Idiopathic Portal Hypertension." In: Schiff ER, Maddrey WC, Reddy KR, eds. Schiff's Diseases of the Liver. 12th ed. Wiley-Blackwell; 2018.

Khanna R, Sarin SK. "Non-cirrhotic portal hypertension - diagnosis and management." Journal of Hepatology. 2014; 60(2): 421-441.

"Idiopathic Portal Hypertension". National Organization for Rare Disorders. Available from: (リンク)

Schouten JN, Garcia-Pagan JC, Valla DC, Janssen HL. "Idiopathic noncirrhotic portal hypertension." Hepatology. 2011; 54(3): 1071-1081.

 

 

 

 

特発性門脈圧亢進症の改善では、食道胃静脈瘤と貧血に対して行う

特発性門脈圧亢進症の改善では、食道胃静脈瘤と貧血に対して行います。食道胃静脈瘤は門脈の圧が過剰になることによって起こる症状で、貧血は脾機能が過剰になることによって起こる症状です。

 

静脈瘤が出血した時は、そのまま放っておくと出血でショック状態になり、場合によっては命に危険が及ぶこともあります。そのため、静脈瘤が出血した場合はすぐに最寄りの病院に行くことが大事です。

特発性門脈圧亢進症の改善例

特発性門脈圧亢進症の改善方法は病状により異なり、それぞれに合わせてカスタマイズされます。

 

30歳の男性の例

疲労感、腹部膨満感、上腹部の不快感を主訴に病院に行きました。改善では症状の管理と、合併症の予防に重点を置いて行われました。

 

症状の管理:彼は腹水と腹部膨満感を訴えていたため、スピロノラクトンとフロセミドという利尿薬が処方されました。これらの薬は体内の余分な液体を排出し、腹水と腹部膨満感を軽減しました。

 

静脈瘤の予防と管理:彼の食道静脈瘤のリスクを低減するため、プロプラノロールという非選択性β遮断薬が処方されました。また、定期的に内視鏡で、食道静脈瘤の状態を監視しました。

 

栄養管理:彼には、バランスの良い食事と適度な運動を続けることが勧められました。また、アルコールの摂取は肝臓にさらなる負担をかける可能性があるため、避けることが勧められました。

 

心理的サポート:彼は病状について不安を感じていたため、心理カウンセリングを受けることにしました。これにより、彼のストレスや不安が軽減され、生活の質が向上しました。

 

彼の病状はこれらの方法により改善され、維持管理が行われています。

 

改善方法は個人によって異なります。その人の生活スタイルや希望、そして物理的、精神的な健康状態も、改善の計画の重要な要素であることを忘れてはなりません。

 

一部の特発性門脈圧亢進症ではさらに重度の合併症を経験する場合があります。このような場合、より進んだ改善法が必要となることがあります。

引用文献:

 

Sarin SK, Kumar A. "Idiopathic Portal Hypertension." In: Schiff ER, Maddrey WC, Reddy KR, eds. Schiff's Diseases of the Liver. 12th ed. Wiley-Blackwell; 2018.

Khanna R, Sarin SK. "Non-cirrhotic portal hypertension - diagnosis and management." Journal of Hepatology. 2014; 60(2): 421-441.

Schouten JN, Garcia-Pagan JC, Valla DC, Janssen HL. "Idiopathic noncirrhotic portal hypertension." Hepatology. 2011; 54(3): 1071-1081.

Qi X, Han G, Fan D. "Management of portal hypertension in patients with liver cirrhosis." Chinese Medical Journal. 2018; 131(11): 1339-1344.

"Idiopathic Portal Hypertension". National Organization for Rare Disorders. Available from: (リンク)

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