公開日:2022年 2月10日
更新日:2024年 10月22日
本日は薬剤性過敏症症候群について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
薬剤性過敏症症候群の原因は、薬です。原因となる薬で1番多い薬は、抗けいれん薬です。けいれんやてんかんを改善するために使われるフェニトインやカルバマゼピン、フェノバルビタール、ゾニサミドなどです。
他にも尿酸を下げる薬などが原因になることもあります。
薬剤性過敏症症候群は、薬を飲み始めてから発症するまでに時間がかかるという特徴があります。
薬を飲み始めてから発症するまでの期間の平均は4週間と言われています。多くの場合は薬を飲み始めてから3週間以上で発症しますが、場合によっては、1年以上立ってから発症することもあります。
薬剤性過敏症症候群は、特定の薬物の摂取後に発生する重篤な副作用の一つです。その原因となるメカニズムについて説明します。
DRESS症候群の主な原因は、特定の薬物に対する過敏反応です。これらの薬物には抗てんかん薬、抗菌薬、非ステロイド性抗炎症薬などが含まれますが、全ての人がこれらの薬物に反応するわけではありません。なぜある人々が特定の薬物に反応し、他の人々がそうでないのかは、個々の遺伝的傾向と免疫応答の差によると考えられています。
薬物が体内に入ると、体の免疫系はそれを外来物質として認識し、攻撃することがあります。通常、免疫系は外来の細菌やウイルスを攻撃するために存在しますが、過敏症症候群の場合、体は誤って薬物を有害な侵入者と認識し、過剰な反応を引き起こします。
この反応には、体内の白血球の一種である好酸球が関与します。好酸球は、特定のアレルギー反応や寄生虫感染に対抗するために体が作り出す細胞です。DRESS症候群の場合、体は薬物に対して過剰な好酸球反応を引き起こし、これが多くの症状を引き起こします。
さらに、DRESS症候群では、薬物が特定の免疫細胞に取り込まれ、これが体内の他の細胞に対する攻撃を誘発することもあります。これは細胞傷害と呼ばれ、これが体の様々な器官に損傷を与え、症状を引き起こします。
DRESS症候群の発症は、遺伝的要素と環境要素の両方が関与している可能性があります。一部の人々は、特定の遺伝的マーカーがDRESS症候群の発症リスクを高めるとされています。これらのマーカーは、体の免疫反応を制御する役割を持つ遺伝子に関連しています。例えば、HLA-B*5801遺伝子型を持つ人々はアロプリノールによるDRESS症候群を発症するリスクが高いと報告されています。
一方で、環境要素もDRESS症候群の発症に影響を及ぼすと考えられています。特に、薬物の摂取量や使用期間、年齢、健康状態、既往症などが病態に影響を与える可能性があります。特定の薬物に対する個々の代謝能力も、薬物反応の差に寄与する要素となります。
DRESS症候群は、様々な薬物が引き金となり得るため、予防や早期判断が重要です。特定の薬物を初めて使用する際には、専門家との十分なコミュニケーションが求められます。新たな症状が出現した場合や既存の症状が悪化した場合には、直ちに専門家に相談することが重要です。
薬剤性過敏症症候群の症状は、38度以上の高熱と全身に発生する赤い斑点です。さらに、全身のリンパ節の腫れや肝機能障害なども現れることがあります。
全身に発生する赤い斑点は、かゆみがあることが多いです。圧迫部ではくっついて大きくなる傾向が強く、出血が混ざることで鮮紅色や紫紅色のような色が見られます。
原因となる薬をやめても、数日後には明らかに悪くなることがほとんどで、肝臓や腎臓などに症状が現れたり、神経症状が現れたりします。
薬剤性過敏症症候群は一部の薬物摂取後に発生する重篤な副作用であり、様々な症状が現れます。
皮膚症状:DRESS症候群の最も一般的な症状の一つは皮膚症状です。これには広範な発疹、皮膚の赤み、腫れ、そして痒みが含まれます。一部では、皮膚が脱皮したり、水泡ができることもあります。この発疹は通常、顔や上肢から始まり、全身に広がることがあります。
発熱:DRESS症候群の大部分は、高熱を経験します。発熱は通常38.5℃以上で、しばしば薬物摂取後2週間から6週間で発生します。
内臓症状:DRESS症候群は全身病態であり、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓などの内臓器官に影響を及ぼす可能性があります。肝臓は特に影響を受けやすく、肝臓の機能障害を示す症状がしばしば見られます。
血液学的変化:DRESS症候群は、血液中の白血球の数や種類に影響を与えます。好酸球の数が増加することが特徴的ですが、リンパ球の数が増えることもあります。これらの細胞は免疫反応に関与しており、その数の変化は体が薬物に対して過剰反応していることを示しています。
感染症状:一部のDRESS症候群では、症状が進行するにつれて再活性化したウイルス感染の症状を経験することがあります。これは、体の免疫応答が薬物に集中しているため、他の感染症に対する防御が低下するためと考えられています。
総合的な不調感:DRESS症候群では全般的な不調感や倦怠感を経験することがあります。この症状は人によって異なる程度で現れ、しばしば他の症状と並行して現れます。
腫脹の発生:リンパ節腫脹や脾腫など、体の一部が腫れることもあります。これは免疫系が薬物に対する攻撃を行っている結果と考えられています。
以上の症状がDRESS症候群の典型的な症状ですが、症状は個々で異なります。また、これらの症状が同時に出現するわけではなく、一部の症状が他の症状よりも先に現れることもあります。
薬剤性過敏症症候群の改善方法は、今のところ確立されていません。多くの場合は、ステロイドを内服して改善を行います。
ステロイドを内服しているとき、急激に量を減らすと、免疫を活性化させてウィルスに対して過剰な反応を起こすことになります。そのため、量を減らすときは、慎重に減らしていくことが大事です。
原因となった薬ではなくても、発症後に使った薬に対して反応が現れることも多いため、改善に使う薬の選択にも注意が必要です。
薬剤性過敏症症候群の改善方法は、個々の症状と全体的な健康状態に応じて調整されます。以下に主な改善方法を列挙し、その効果や注意点について解説します。
薬物の中止:DRESSを引き起こす可能性のある薬物の中止が最初の改善方法となります。これは全ての人に適用され、直ちに行われるべきです。薬物の中止が症状の改善につながることが多く、新たな症状の出現を防ぎます。ただし、一部の薬は突然中止すると別の問題を引き起こす可能性があるため、医師の指示に従うことが重要です。
ステロイド:ステロイドは強力な抗炎症薬であり、DRESSの改善に広く用いられます。ステロイドは炎症を抑え、免疫反応を制御します。これにより、DRESSによる症状が改善します。ステロイドは通常、経口または静脈内に投与され、症状が改善するまで用いられます。その後、ステロイドの量は徐々に減らされます。急激にステロイドを中止すると副作用が発生する可能性があるため、医師の指示に従ってください。
薬:発熱や痒みなどの症状に対して痒みを緩和するために抗ヒスタミン薬などが使用されることがあります。
内臓器官の機能のサポート:肝臓、腎臓、心臓などの内臓器官に影響を及ぼす場合、それらの機能をサポートすることが必要になることがあります。特定の薬物や、場合によっては透析などが含まれます。
免疫抑制:ステロイドに反応しない場合や、重篤な症状のある場合には、さらに強力な免疫抑制薬が使用されることがあります。これらの薬は、体の免疫反応を抑制し、炎症を減少させます。その一方で、免疫系の活動を抑えるため、感染症への抵抗力が減少する可能性があります。したがって、これらの薬は慎重に使用され、定期的にモニタリングされます。
再活性化ウイルスへの対策:DRESS症候群では、体の免疫応答が薬物に集中しているため、ヘルペスウイルスなどの既存のウイルス感染が再活性化することがあります。このため、抗ウイルス薬が予防的または症状が出た時点で投与されることがあります。
DRESS症候群は、その症状の重さや全身への影響により、重篤な健康問題を引き起こす可能性があるため、早期の認識と適切な改善が重要となります。
薬剤性過敏症症候群の改善には、ガンマグロブリンを大量に使う方法も行われています。他にも、重症の場合は、血漿を交換する方法が行われることもあります。
一般的に、HHV-6に対して抗ウィルス薬を投与する必要はありません。しかし、サイトメガロウィルスが検出された場合や症状が悪くなっている場合は、ガンシクロビールなどの抗ウィルス薬を投与することもあります。
薬剤性過敏症症候群の改善を行なった後、1型糖尿病や自己免疫疾患を発症することもあるため、注意が必要です。
薬剤性過敏症症候群は個々の症状と状態により改善法が変わるため、具体的なケースを紹介し、その治療過程を解説します。
【症例】
30歳の男性が、新たに開始した抗てんかん薬の服用開始から2週間後に発熱と発疹を訴えて病院を訪れました。発熱、広範な発疹、リンパ節の腫脹、血液検査での好酸球と肝酵素の増加が確認されました。これらの症状から、医師はDRESS症候群の可能性を疑いました。
【改善】
医師はまず、症状の原因となった抗てんかん薬の使用を直ちに中止しました。この薬物中止がDRESSの最初の改善法となります。そして、症状を軽減するために、経口ステロイドを開始しました。このステロイドは、炎症を抑え、免疫反応を制御するためのものです。
状態はステロイドにより徐々に改善し、発熱と発疹が消失しました。血液を調べたの結果も徐々に改善し、特に好酸球数と肝酵素レベルが正常に戻りました。
その後、ステロイドは医師の指示に従って徐々に減量されました。ステロイドの減量中も症状は再発せず、退院できました。
【結論】
このケースでは、DRESS症候群は原因となった薬物の中止とステロイドにより、効果的に改善されました。しかし、DRESS症候群は潜在的に生命を脅かす可能性もあります。そのため、新たな薬物を開始した後に異常な症状を経験した場合、すぐに病院に行くことが重要です。
引用元:DRESS症候群については、以下の文献が詳細な説明と事例を提供しています。
Cacoub P, Musette P, Descamps V, et al. The DRESS syndrome: a literature review. Am J Med. 2011;124(7):588-597. doi:10.1016/j.amjmed.2011.01.017
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Walsh S, Diaz-Cano S, Higgins E, et al. Drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms: is cutaneous phenotype a prognostic marker for outcome? A review of clinicopathological features of 27 cases. Br J Dermatol. 2013;168(2):391-401. doi:10.1111/bjd.12076