公開日:2021年 9月23日
更新日:2024年 6月21日
本日は若年性特発性関節炎について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
若年性特発性関節炎は、16歳未満に起こる原因不明の慢性の関節の炎症のことです。英語表記では、JIAと呼びます。
若年性特発性関節炎は、7つの病型に分けられています。中でも小児期発症特有の病型は、全身型と少関節炎、リウマトイド因子陰性多関節炎とリウマトイド因子陽性多関節炎です。
若年性特発性関節炎は、子供1万人に1人にみられるということがわかっています。成人期になっても約6割の若年性特発性関節炎の人は通院などの病院での改善が必要です。
全体では、若年性特発性関節炎の人は大体8000人いると言われています。日本では全身型が1番多く、若年性特発性関節炎全体の約3割~4割です。
若年性特発性関節炎の原因はわかっていません。遺伝によって起こることはないと言われています。
全身型の場合、発症に男女の差はなく1~5歳に多いと言われています。少関節炎の場合は1~5歳に多く、男子より女子に多いです。
リウマトイド因子陰性多関節炎の場合はどの年齢でも発症する可能性がありますが、中でも2歳と7歳に発症にピークを迎えます。男子より女子に多く、リウマトイド因子陰性多関節炎の女子は男子の2倍であると言われています。
リウマトイド因子陽性多関節炎の場合、8~14歳に発症することが多く男子より女子が約5~6倍多いです。
1. 遺伝的要因
・家族歴
家族歴:若年性特発性関節炎を持つ子供の家族には、他の自己免疫疾患や関節炎を持つ人がいることがあり、遺伝的素因が関与していることが示唆されています。
・特定の遺伝子
HLA遺伝子:HLA(ヒト白血球抗原)遺伝子の特定のバリアントが、若年性特発性関節炎のリスクを高めることが知られています。HLA-B27などの遺伝子は、自己免疫反応に関与する重要な役割を果たします。
2. 免疫系の異常
・自己免疫反応
自己免疫反応:若年性特発性関節炎は自己免疫疾患であり、免疫系が誤って自己の関節組織を攻撃することによって炎症が引き起こされます。免疫系が過剰に反応し、関節の滑膜(関節内の膜)に炎症を引き起こします。
・炎症性サイトカイン
炎症性サイトカイン:TNF-α、IL-1、IL-6などの炎症性サイトカインが、関節炎の発症と進行に関与しています。これらのサイトカインは、炎症反応を引き起こし、関節の損傷を促進します。
3. 環境要因
・感染症
感染症:特定のウイルスや細菌感染が、若年性特発性関節炎の発症を誘発する可能性があります。感染症が免疫系を刺激し、自己免疫反応を引き起こすことがあります。
・ストレス
ストレス:心理的ストレスや身体的ストレスが、免疫系に影響を与え、関節炎の発症を促進することがあります。
4. その他の要因
・ホルモン
ホルモン:成長期におけるホルモンの変化が、若年性特発性関節炎の発症に関与している可能性があります。特に思春期のホルモン変化が影響を与えることが考えられます。
・栄養状態
栄養状態:栄養のバランスが崩れると、免疫系の機能に影響を与え、若年性特発性関節炎のリスクが増加する可能性があります。
若年性特発性関節炎は、病型によって症状が違います。
全身型は、1か所以上の部分に関節炎が起こります。さらに、2週間以上続く発熱があります。皮膚の発疹、全身のリンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫れ、漿膜炎の症状のうち1つ以上の症状が現れます。
発熱は1日中ではありません。急に40℃以上の高熱になり、自然とすぐに下がります。発熱のない時は元気で、発熱すると寒気が起こります。
長い期間にわたって全身の炎症が続くと、心臓や肺を包む膜に水が貯まったり血液の固まり方が悪くなったりいろいろな臓器に障害が起こったりする可能性があり、非常に危険な状態になることもあります。
少関節炎は、1~4か所の部分に関節炎が起こります。リウマトイド因子陰性多関節炎とリウマトイド因子陽性多関節炎は、5か所以上の部分に起こります。
関節型は、指にある小さな関節から膝や手首、肩などの大きな関節まで様々な部分に関節炎が起こります。腫れや痛みによって関節を動かさなくなったり、歩き方がぎこちなくなったりすることも多いです。
1. 関節に関連する症状
・関節の腫れ
腫れ:炎症によって関節が腫れ、通常は痛みや圧痛を伴います。腫れは一つの関節に限られることもあれば、複数の関節に広がることもあります。
・関節の痛み
痛み:関節が炎症を起こすことで痛みが生じます。痛みは動作時に増すことが多いですが、安静時にも感じることがあります。
・関節のこわばり
こわばり:特に朝起きたときや長時間座った後に関節が硬く感じ、動かしにくくなります。これを「朝のこわばり」と呼びます。
・関節の可動域制限
可動域の制限:炎症や腫れにより、関節の動きが制限されることがあります。これにより、日常生活の動作が困難になることがあります。
・発熱と倦怠感
発熱:関節の炎症に伴って、軽度の発熱が見られることがあります。
倦怠感:慢性的な炎症により、全身的な倦怠感や疲労感を感じることがあります
2. 関節外の症状
・発疹
皮膚の発疹:特定のJIAタイプ(全身型JIA)では、皮膚に発疹が現れることがあります。発疹は一過性で、熱があるときに出やすいです。
・眼の症状
ぶどう膜炎:眼のぶどう膜に炎症が起こることがあります。視力低下、眼の痛み、充血などの症状が見られます。定期的な眼科検査が推奨されます。
・成長の遅れ
成長遅滞:慢性的な炎症やステロイド治療の影響で、成長が遅れることがあります。これにより、身長が低くなることがあります。
・リンパ節の腫れ
リンパ節腫脹:特に全身型JIAでは、首や腋の下などのリンパ節が腫れることがあります。
・肝脾腫
肝脾腫:肝臓や脾臓が腫れることがあります。これも全身型JIAに多く見られる症状です。
3. JIAのタイプ別の特徴的な症状
・全身型JIA
高熱:高い熱が周期的に現れます。通常、1日1回か2回、夕方や夜にピークになります。
発疹:高熱とともに、淡いピンク色の発疹が出現します。
・少関節型JIA
関節炎:主に1~4つの関節に炎症が見られます。膝や足首が影響を受けやすいです。
眼の合併症:ぶどう膜炎が発症するリスクが高く、定期的な眼科検査が重要です。
・多関節型JIA
多発性関節炎:5つ以上の関節に炎症が見られます。手首、膝、足首、指など、多くの関節が影響を受けます。
対称性:左右対称に関節炎が現れることが多いです。
若年性特発性関節炎の改善方法は、非ステロイド抗炎症薬を使うことです。非ステロイド抗炎症薬を使うことで関節の痛みや腫れを軽くするのです。
全身型はステロイドの使用が改善の中心です。症状が強い時は、たくさんの量のステロイドを使い、症状が弱くなったら時間をかけて量を減らしていきます。ほとんど人は、症状の改善とともにステロイドを中止することができます。
ステロイドでも症状が落ち着かなかったりステロイドを減らすと症状が再発したり、関節炎が長引いたりする場合は、抗IL-6受容体抗体製剤や抗IL-1抗体製剤を使って改善を行います。
関節型はメトトレキサートが改善の中心です。関節炎が落ち着かず関節の破壊が進んでしまう場合はTNF受容体製剤や抗TNF抗体製剤、T細胞選択的共刺激調節剤などを使って改善を行います。
1. 薬
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
用途:痛みと炎症の軽減
代表的な薬剤:イブプロフェン、ナプロキセン
効果:関節の腫れや痛みを緩和する
副作用:胃腸障害、腎機能への影響など
・コルチコステロイド
用途:重度の炎症の緩和
代表的な薬剤:プレドニゾロン
効果:強力な抗炎症作用を持ち、急性症状のコントロールに有効
副作用:体重増加、骨密度低下、免疫抑制など
投与方法:内服、注射、点滴
・免疫抑制薬
用途:免疫系の過剰反応の抑制
代表的な薬剤:メトトレキサート
効果:炎症の抑制、病気の進行を遅らせる
副作用:肝機能障害、口内炎、感染リスクの増加など
・生物学的製剤
用途:特定の炎症性分子をターゲットにする
代表的な薬剤:エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ
効果:TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインを抑制
副作用:感染リスクの増加、注射部位の反応など
2. リハビリテーションと理学的な方法
・運動
目的:関節の柔軟性と筋力を維持・向上させる
方法:ストレッチング、強化運動、水中運動など
効果:関節の可動域を維持し、日常生活の動作を改善
・作業
目的:日常生活の動作を支援する
方法:関節を保護するための適切な動作や姿勢の指導、補助具の使用
効果:自立した生活を維持し、痛みを軽減
・温熱と寒冷
温熱:関節の柔軟性を高めるために温める
寒冷:炎症や痛みを軽減するために冷やす
3. 生活習慣の改善
・栄養管理
バランスの取れた食事:抗炎症作用を持つ食品(魚、ナッツ、オリーブオイルなど)を含めたバランスの良い食事
カルシウムとビタミンDの補給:骨密度の低下を防ぐために重要
・体重管理
適正体重の維持:関節への負担を軽減するために重要
・適度な運動
定期的な運動:関節の可動域を維持し、全身の健康を促進
4. 手術
・関節内注射
用途:局所的な炎症を抑えるため
方法:コルチコステロイドの関節内注射
・関節鏡視下手術
用途:関節内の異常を修復するため
方法:関節鏡を使用した最小侵襲手術
・関節置換術
用途:重度の関節破壊の場合に、関節機能を回復させるため
方法:人工関節への置換
5. 心理的支援
・カウンセリング
目的:病気の影響を受ける子供と家族の心理的サポート
方法:個別カウンセリング、グループセラピー
・支援グループ
目的:同じ病気を持つ子供や家族同士の交流とサポート
方法:支援グループの参加、オンラインフォーラム
1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
用途
痛みと炎症の軽減:関節の腫れや痛みを緩和するために使用されます。
代表的な薬剤
イブプロフェン
ナプロキセン
メロキシカム
効果
炎症の抑制:炎症を引き起こすプロスタグランジンの生成を抑制します。
痛みの緩和:痛みを和らげ、日常生活の動作を助けます。
副作用
胃腸障害:胃痛、胃潰瘍、出血など。
腎機能への影響:長期使用により腎機能が低下する可能性があります。
2. コルチコステロイド
用途
重度の炎症の緩和:急性の炎症症状を迅速に抑えるために使用されます。
代表的な薬剤
プレドニゾロン
デキサメタゾン
効果
強力な抗炎症作用:炎症性サイトカインの生成を抑制し、関節の腫れや痛みを迅速に緩和します。
副作用
体重増加:食欲増進とともに体重が増加することがあります。
骨密度の低下:長期使用により骨密度が低下し、骨折のリスクが増加します。
免疫抑制:感染症にかかりやすくなる可能性があります。
投与方法
内服:錠剤として服用します。
注射:関節内または筋肉内に注射します。
3. 免疫抑制薬
用途
免疫系の過剰反応の抑制:長期的な炎症管理を目的とします。
代表的な薬剤
メトトレキサート
アザチオプリン
シクロスポリン
効果
免疫反応の抑制:自己免疫反応を抑制し、関節の炎症を減少させます。
病気の進行を遅らせる:関節の損傷を防ぐため、病気の進行を遅らせる効果があります。
副作用
肝機能障害:定期的な血液の調べで肝機能をモニタリングする必要があります。
口内炎:口内の痛みや潰瘍が発生することがあります。
感染リスクの増加:免疫抑制による感染症のリスクが高まります。
投与方法
内服:錠剤やカプセルとして服用します。
注射:皮下注射や筋肉内注射として投与されます。
4. 生物学的製剤
用途
特定の炎症性分子をターゲットにする:TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインを直接抑制します。
代表的な薬剤
エタネルセプト
アダリムマブ
インフリキシマブ
トシリズマブ
効果
高い効果:炎症を強力に抑制し、関節の腫れや痛みを大幅に減少させます。
病気の進行抑制:関節の損傷を防ぎ、長期的な関節機能を維持します。
副作用
感染リスクの増加:特に重篤な感染症(結核、真菌感染症など)のリスクが高まります。
注射部位の反応:注射部位に赤み、痛み、腫れなどの局所反応が現れることがあります。
アレルギー反応:発疹、かゆみ、息切れなどのアレルギー反応が発生することがあります。
投与方法
皮下注射:自宅で自己注射することが一般的です。
静脈内投与:点滴による投与が行われます。
関節炎が続いているときは、関節を保護することが大切です。関節に負担のかかる運動や動作は避けましょう。
関節炎が落ち着いている時は、ストレッチや散歩などの軽く体を動かす習慣を作ることが大切になります。
どのくらい運動をするのかについては、医師やリハビリの担当者と相談をして行いましょう。
若年性特発性関節炎は風邪や疲れやストレスで症状や病気の勢いが悪化することがあります。そのため、病気に感染しないように対策をしっかりと行い、十分な睡眠や栄養バランスの良い食事を取ることが大切です。
改善を行なっている間も気になる症状がある時はすぐに医者に相談することも非常に大切です。
11時から21時
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11時~21時迄 | ◯ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
年末年始