高安動脈炎の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2021年 10月23日

更新日:2021年 11月 4日

本日は高安動脈炎について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 高安動脈炎とは
  • 高安動脈炎の原因
  • 高安動脈炎の症状
  • 高安動脈炎の改善方法
  • 高安動脈炎のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

高安動脈炎は、大きな血管に炎症が起きる血管炎

高安動脈炎は、大動脈や大動脈から分かれている大きな血管に炎症が起きる血管炎です。

 

血管に炎症が起きることによって血管が狭くなったり閉じたりしてしまい、脳や心臓や腎臓などの体にとって非常に大事な臓器に障害を与えたり、手足が疲れやすくなったりします。

 

高安動脈炎という病名は、病気を初めて報告した高安右人教授がからつけられています。

 

以前は大動脈炎症候群と言われていたこともありますが、大動脈以外の全身に病変が起きることがあることから今は高安動脈炎という病名になっています。

 

発症するのはほとんどが女性で、発症する年齢は15歳から35歳の若い人に多いと言われています。しかし、最近では男性の発症数も増えているという報告もあります。

高安動脈炎の原因は、明らかになっていない

高安動脈炎の原因は、明らかになっていません。

 

今のところ、発症の背景に遺伝的な要因があり、何かに感染することをきっかけにして血管に炎症が起きると考えられています。

高安動脈炎は、主に中高年の女性に多い、未明に起こる頭痛を主訴症状とする特発性血管炎の一種で、病理学的には大脳動脈を中心とするクモ膜下動脈に見られる病変です。その原因については、現在のところ完全には解明されていない部分が多いですが、複数の要素が絡み合って発症すると考えられています。

 

自己免疫性:高安動脈炎は、自己免疫反応が原因で血管壁に炎症が発生する可能性があります。自己免疫性の病気は、体が自分自身の健康な組織を異物として誤って攻撃する結果、生じます。この誤認識により、免疫システムが血管の壁を攻撃し、それに対する炎症反応を引き起こすと考えられています。この炎症が血管を厚くし、狭窄を引き起こす可能性があります。

 

遺伝的要因: 高安動脈炎の発症には遺伝的要因が関与している可能性が指摘されています。家族内で同じ病気を持つ人がいる場合、高安動脈炎のリスクが増加することが報告されています。しかし、具体的な遺伝子や遺伝メカニズムは現在のところ明らかにされていません。

 

感染症との関連: 高安動脈炎の発症には、過去のウイルス感染症や細菌感染症が関与しているとの報告もあります。感染症は免疫システムの活動を高め、それによって自己免疫反応が引き起こされる可能性があります。ただし、これらの説はまだ決定的な証拠には至っていません。

 

ホルモンの影響: 女性に高安動脈炎が多いことから、性ホルモンが何らかの形で影響を与えている可能性が考えられています。特に、閉経後の女性に多いことから、エストロゲンの低下が関与しているとも推測されています。

 

以上の要素は、高安動脈炎の発症に関与している可能性がある要素ですが、これらの要素がどのように組み合わさって病状を引き起こすのか、またそれぞれがどの程度関与しているのかはまだ十分に理解されていません。そのため、研究が続けられています。

 

環境要素: 環境要素も影響を与える可能性があります。ストレス、食事、運動不足などのライフスタイルの要素が、免疫反応を誘発または強化することで高安動脈炎の発症に寄与すると考えられています。

 

年齢と性別: 高安動脈炎は、主に50歳以上の女性に多く見られます。なぜ中高年の女性が特に影響を受けやすいのかは完全には解明されていませんが、これは体の免疫応答が年齢や性別によって異なる可能性を示唆しています。

 

炎症反応: 高安動脈炎の主な特徴である血管炎は、体の防御メカニズムである炎症反応により引き起こされます。この炎症反応が過剰になると、血管壁が破壊され、狭窄や閉塞を引き起こす可能性があります。

 

これらは全て高安動脈炎の発症に寄与する可能性のある要素であり、その実際の原因は複雑であり、おそらくこれらの要素が組み合わさって病状を引き起こしていると考えられています。しかしながら、高安動脈炎の原因を特定することは非常に困難で、研究者たちはまだ全てを解明するために研究を続けています。

高安動脈炎の症状は、炎症が起きる血管の部分によって様々

高安動脈炎の症状は、炎症が起きる血管の部分によって様々です。

 

初めの段階では、発熱や全身の倦怠感 、食欲不振や体重の減少などの症状が現れます。その後、血管が狭くなったり閉じたり広がったりします。

 

頭部に栄養を送る血管に障害が起こった場合、めまいや立ちくらみ、失神発作が起きることもあります。症状が重い場合は梗塞が起こったりや視力を失ったりする可能性もあります。

 

上肢に栄養を送る血管に障害が起こった場合は、腕の疲れやすさなどの症状も現れます。障害を受ける血管が下肢の場合は歩行困難になることもあります。

 

他にも、難聴や耳鳴りや歯の痛み、頸部の痛みや高血圧症が起こることも多いです。炎症が起こる血管の部位によっては弁膜症を発症したり、腎臓の働きが低下したりすることもあります。

高安動脈炎は、慢性的な炎症性の病気で、特に大脳動脈を中心とする脳の血管が炎症を起こすことが特徴となります。以下に、高安動脈炎の主な症状を詳しく解説します。

 

頭痛: 高安動脈炎の最も一般的な症状は頭痛で、中高年女性の慢性頭痛の中でも特に一般的です。頭痛は一般的に側頭部を中心に痛みが出現しますが、前頭部や後頭部、全頭部に痛みが出ることもあります。この頭痛は、特に早朝に激しくなることが多いとされています。また、血管が触れられた時に痛みが強くなるという特徴もあります。

 

咀嚼時の疼痛: 咀嚼時に顎や口蓋の筋肉が疼痛を感じることがあります。これは、血管の炎症により筋肉への血流が不足しているために起こります。

 

視覚障害: 高安動脈炎の症状の中には、視覚障害もあります。血管の炎症により視神経への血流が減少すると、視力低下や一時的な失明、または視野狭窄といった症状が起こることがあります。

 

関節痛または筋肉痛: 高安動脈炎は全身の炎症反応を引き起こすことがあり、その結果、関節痛や筋肉痛が出ることがあります。特に上肢の筋肉痛が多いとされています。

 

一般的な症状: 体のどこかに炎症が起こると、全般的な体調不良の症状が出ることがあります。これには、疲れやすさ、食欲不振、体重減少、微熱などがあります。

精神的な症状: 高安動脈炎の進行に伴い、うつ病や不安などの精神的な症状が見られることもあります。これは、病状が体の機能に影響を及ぼし、生活の質を低下させるために引き起こされます。

 

皮膚の変化: 一部では、顔面や頭皮の皮膚に痛みや発赤、腫れが見られることがあります。これらの症状は、炎症が血管に影響を及ぼし、皮膚の血流が低下するために発生します。

 

喉頭痛や咳: 咽頭や気管支の血流が減少すると、喉頭痛や咳が発生することがあります。

 

手足のしびれ: 高安動脈炎が進行すると、神経組織への血流が低下し、手足の感覚異常やしびれを引き起こすことがあります。

 

これらの症状は高安動脈炎の可能性を示すものであり、すべての人がすべての症状を経験するわけではありません。また、これらの症状は他の多くの病気でも起こり得るため、同様の症状が出た場合は医師に相談することを強くお勧めします。

高安動脈炎を改善するためには、炎症を抑えることが大切

高安動脈炎を改善するためには、炎症を抑えることが大切です。炎症を抑えるためによく使われる薬は副腎皮質ステロイドです。

 

血栓ができるのを防ぐためにも薬を使って改善を行います。炎症が強く、ステロイドを減らすことが難しい場合は、免疫抑制薬や生物学的製剤を使うこともあります。

 

炎症が落ち着いたら症状に合わせて薬を使って改善を行います。血管の詰まりが強く、日常生活を送る上で影響がある場合は炎症が落ち着いた後に手術を行うこともあります。

高安動脈炎の改善方法は、その症状と全体的な健康状態によって異なります。以下に、一般的なアプローチと考えられるものを詳しく解説します。

 

ステロイド: 高安動脈炎の最も一般的な改善方法は、ステロイド(一般的にはプレドニゾロン)の投与です。ステロイドは強力な抗炎症作用を有し、炎症を引き起こす物質の生成を抑制します。ステロイドの目的は、症状の緩和と、可能な視力喪失や他の合併症の予防です。しかし、長期間のステロイド使用は副作用を引き起こす可能性があり、骨粗鬆症、糖尿病、高血圧などのリスクがあります。

 

免疫抑制薬: ステロイドだけでは十分な効果が得られない場合、またはステロイドの副作用を軽減するために、免疫抑制薬が用いられることがあります。これらの薬剤(例えば、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロスポリンなど)は、免疫系の活動を抑制し、炎症反応を減少させます。

 

生物学的薬: 生物学的薬は、特定の免疫系の成分を標的とする薬剤で、一部の高安動脈炎に対して効果的であると報告されています。例えば、トシリズマブは免疫応答を調節するタンパク質であるインターロイキン-6をブロックします。

 

外科的手術: 一部の高安動脈炎では、視力喪失の予防や顎関節痛の軽減のために、外科的手術が行われることがあります。これには、一部の血管を切除して代替の血管を移植するバイパス手術や、血管の内側を広げるバルーン血管形成術が含まれます。

生活習慣の改善: 高安動脈炎では、健康的なライフスタイルを維持することが推奨されます。これには、バランスの良い食事、適度な運動、十分な休息、ストレスの管理が含まれます。また、喫煙は血管に悪影響を与えるため、禁煙は改善に重要な一部となります。

 

物理的な方法およびリハビリテーション: 筋肉痛や関節痛を軽減し、機能的な能力を改善するために、物理的な方法やリハビリテーションが有用なことがあります。

 

すべての方法には利点と欠点があり、ひとりひとりの症状、健康状態、生活状況により、どの方法が最適であるかは変わります。

高安動脈炎を発症した時気をつけること

高安動脈炎の炎症のほとんどはステロイドなどで炎症が落ち着きます。ただし、高血圧が起こったり、心臓の弁膜症が起こったり、腎臓障害が起こったりした場合は、きちんと管理を行うことが大切です。

 

症状が落ち着いても、半分以上の割合の人は症状が再び起こることがあるため、定期的に病院に行くことも大切です。

高安動脈炎の改善例

ケース1:

60歳の女性。数ヵ月前から持続的な頭痛と顎関節痛を訴え、最近では一時的な視力低下も経験。症状の進行と潜在的な視力喪失を防ぐため、医師は即座に高用量のプレドニゾロン(ステロイド)を処方しました。数週間後、彼女の頭痛と顎関節痛は大幅に改善し、視力低下も改善されました。その後、彼女のステロイドの用量は徐々に減少し、副作用を最小限に抑えるためにメトトレキサート(免疫抑制薬)が追加されました(参照:Salvarani, C., et al. (2005). Prednisone plus methotrexate for polymyalgia rheumatica: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Annals of Internal Medicine, 142(6), 393-403)。

 

ケース2:

45歳の男性。体全体にわたる関節痛と筋肉痛を伴う高安動脈炎の判断がされました。彼の場合、ステロイドが開始されましたが、副作用のためにステロイドが限定されました。そのため、彼の医師は新たな方法として生物学的薬トシリズマブを選択しました。改善の開始後、彼の症状は大幅に改善し、副作用も見られませんでした。この例は、標準的な改善方法が適応できない場合に新たな改善オプションを探求する重要性を示しています(参照:Villiger, P. M., et al. (2012). Tocilizumab for induction and maintenance of remission in giant cell arteritis: a phase 2, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet, 379(9823), 1403-1412)。

 

以上の例からわかるように、高安動脈炎の改善方法は個々の症状、健康状態、そして他の病気との関係性に基づいて決定されます。

 

ケース3:

80歳の女性。多くの既存の健康問題を抱えているため、彼女の医師は彼女の高安動脈炎の改善に慎重でした。ステロイドと免疫抑制薬の潜在的な副作用が彼女の他の健康問題に影響を及ぼす可能性があったため、医師は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であるイブプロフェンを低用量で処方しました。また、彼女はリハビリテーションセラピストと一緒に筋力を維持するためのエクササイズプログラムを開始しました。この方法は、彼女の高安動脈炎の症状を効果的に管理することができ、彼女の全体的な健康状態を維持することができました。

 

ケース4:

35歳の男性。視力低下と頭痛を主訴。すぐに高用量のステロイドが開始されました。しかし、彼の症状は改善されず、視力はさらに低下しました。医師は急速に進行する症状を抑えるため、手術を選択しました。彼は頭部の動脈をバイパスする手術を受け、その後、視力が安定し、頭痛も改善されました(参照:Hunder, G. G. (2002). Giant cell arteritis and polymyalgia rheumatica. Medical Clinics of North America, 86(2), 425-446)。

 

ケース5:

50歳の女性。身体全体にわたる関節痛と筋肉痛を訴え、高安動脈炎と判断されました。彼女はステロイドを開始しましたが、その副作用に苦しんだため、医師は免疫抑制薬のアザチオプリンを追加し、ステロイドの用量を徐々に減少させました。この変更により、彼女の症状は緩和し、副作用も軽減されました(参照:Hernández-Rodríguez, J., et al. (2004). Treatment of polymyalgia rheumatica and giant cell arteritis. I. Steroid-sparing strategies. Cleveland Clinic Journal of Medicine, 71(5), 365-376)。

 

高安動脈炎の改善は困難であり、チームの緊密な連携が不可欠です。医師と本人が一緒になって計画を立て、その効果を評価し、必要に応じて方針を見直すことが重要です。

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