記憶障害の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2021年 8月23日

更新日:2021年 5月 9

本日は記憶障害について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 記憶障害とは
  • 記憶障害の原因
  • 記憶障害の症状
  • 記憶障害の改善方法
  • 記憶障害のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

記憶障害は、体験したことや過去の記憶が抜け落ちてしまう障害

記憶障害は、自分が体験した出来事や過去の記憶が抜け落ちてしまう障害です。記憶障害は、記憶が抜けている自覚はありません。

 

今まで当たり前に行っていたことや親しい人の情報、自分の情報などの記憶が抜けてしまうため、日常生活に支障が出ます。

 

人の名前や普段使っているものの置き場所をなかなか思い出せないというようなことから始まることが多いです。

 

症状が進むと、火を消し忘れたり、外出する時に鍵をかけ忘れたりすることがあり、大きな事故や事件につながる可能性があります。

記憶障害が起こる原因は非常にいろいろある

記憶障害が起こる原因は非常にいろいろあります。

 

記憶障害の原因となる病気や外傷には、軽度認知障害、認知症、うつ病、脳卒中や脳外傷、低酸素脳症などによる高次脳機能障害、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などがあります。

 

さらに甲状腺機能の低下やビタミン欠乏症、加齢なども記憶障害の原因となることがあります。

 

高齢者の場合は、記憶障害の中でも特に認知症が原因で起こる記憶障害が多いです。

・加齢による影響

脳の老化: 加齢に伴って脳の神経細胞が減少することで神経伝達のスピードも低下します。特に海馬は記憶に関わる部分で萎縮しやすく、短期記憶や新しい情報を覚える能力が衰えていきます。

認知症の一因: アルツハイマー型認知症などによって記憶障害を引き起こすことがあります。

 

脳の損傷や病気

頭部外傷: 事故や転倒で脳に損傷を受けると、記憶障害が発生することがあります。特に海馬や前頭葉を損傷した場合、大きな影響が現れます。

脳卒中: 脳卒中により脳内の血流が遮断されると、酸素供給が不足し、記憶を管理する脳の部位が損傷を受けることがあります。

脳腫瘍: 脳腫瘍が記憶や認知機能に関わる部分に影響を及ぼすと、記憶障害が発生することがあります。

 

精神的・心理的要因

ストレスやうつ病: 高いストレスや抑うつ状態は、集中力や記憶力の低下を引き起こしやすくなります。特に慢性的なストレスは、脳の記憶に関わる部分に悪影響を与えるということが分かっています。

不安障害やPTSD: 過去のトラウマが原因によって記憶が断片的に消失したり忘れてしまうこともあります。

 

アルコールや薬物の影響

長期的なアルコール摂取: アルコール依存症では、ビタミンB1不足が原因でウェルニッケ・コルサコフ症候群と呼ばれる記憶障害が発生することがあります。この症候群は短期記憶や長期記憶に影響を与えます。

薬物の副作用: 睡眠薬、抗不安薬などは、長期的に使用すると記憶力が低下することがあります。

 

睡眠不足や生活習慣

慢性的な睡眠不足: 睡眠中は記憶の定着が行われるため、睡眠が不足すると新しい情報の記憶が難しくなります。また、疲れは集中力や記憶力の低下に繋がります。

不適切な生活習慣:不規則な食事や運動不足は脳の働きに悪影響を与えることがあり、記憶力の低下につながることがあります。

 

神経変性疾患

アルツハイマー病: 記憶障害を引き起こす最も一般的な神経変性疾患です。特に短期記憶が最初に影響を受けますがだんだん長期記憶にも影響が出てきます。

パーキンソン病やハンチントン病: これらの神経変性疾患も記憶障害を引き起こすことがありますが、主に運動機能の低下に加えて、認知機能や記憶に影響を及ぼすことが多いです。

 

ホルモンや代謝の異常

甲状腺機能の異常: 甲状腺ホルモンの分泌異常は、記憶障害を引き起こすことがあります。特に、甲状腺機能低下症は認知機能の低下が見られることが多い病気です。

糖尿病: 高血糖が持続すると、神経系にダメージを与え、記憶力の低下や認知機能の障害を引き起こすリスクが高まります。

 

ビタミンや栄養不足

ビタミンB12不足: ビタミンB12は神経の健康を保つために重要で、不足すると神経伝達が正常に行われず、記憶障害が発生しやすくなります。

栄養不足全般: 健康的な脳機能には、バランスの良い食事が必要です。不適切な栄養摂取は、脳機能や記憶力に悪影響を与える可能性があります。

記憶障害の症状は、過去の記憶が抜け落ちてしまうこと

記憶障害の症状は、過去の記憶が抜け落ちてしまうことです。どの部分の記憶が抜け落ちるかによって種類があります。

 

短期記憶障害では、数十秒から1分程度の短い記憶に障害が起きます。そのため、日付や曜日が分からない、何度も同じことを聞くなどの症状が現れます。

 

長期記憶障害では数分から数ヶ月の近い過去や年単位で蓄えられた記憶に障害が起きるため、通った学校の名前や家族の名前や家族の顔などを忘れることがあります。

 

他にも、自分が体験したことに障害が起きるエピソード記憶の障害や花や動物の名前、歴史上の人物の名前など学んできた知識を忘れる意味記憶障害、家事や習っていたことができなくなる手続き記憶障害などがあります。

・短期記憶の障害

短期記憶は、数秒から数分間の情報を保持する能力です。この記憶が障害されると、新しい情報をすぐに忘れてしまう、直前の会話の内容を覚えていないなどの問題が発生します。

 

長期記憶の障害

長期記憶は、長期間にわたって保持される情報です。特に過去の経験やスキルに関わります。長期記憶に問題があると、過去の出来事や、長年覚えていた情報を忘れてしまうことがあります。

 

エピソード記憶の障害

エピソード記憶とは、特定の出来事や経験に関する記憶のことです。エピソード記憶に障害があると、旅行やパーティーなど、自分が経験した具体的な出来事の詳細を思い出すのが難しくなります。

 

意味記憶の障害

意味記憶は、言語や知識、一般常識に関わる記憶のことです。意味記憶が障害されると、基本的な知識や単語の意味を忘れてしまうことがあり、会話や思考に支障をきたすことがあります。

 

手続き記憶の障害

手続き記憶は、自転車の乗り方や楽器の演奏など、習慣的な行動やスキルに関わる記憶です。手続き記憶に障害があると、かつては慣れていた作業ができなくなり、再学習が必要になる場合があります。

 

見当識障害

見当識とは、自分がいる場所や時間、状況などを認識する能力です。見当識障害があると、時間や場所の認識が難しくなり、混乱しやすくなります。

 

記憶の再生や再認が難しくなる

記憶を取り出すことに問題があると、特定の情報を思い出せなかったり、誰かが話している内容に関連する自分の体験を思い出せなくなります。

 

逆行性健忘

逆行性健忘は、発症する以前の記憶が失われる症状で、特に過去数年間の出来事を忘れてしまうことが多いです。記憶が部分的に欠落することがあり、過去の出来事をうまく再構成できないことがあります。

 

前向性健忘

前向性健忘は、新しい情報を覚えられなくなる症状です。新しい記憶がうまく作られないため、何かを学んでもすぐに忘れてしまいます。

 

誤認や偽の記憶

記憶障害が進行すると、実際には起こっていない出来事や間違った情報を記憶することがあります。これは錯誤記憶と呼ばれ、特に高齢者でよく見られる症状です。

 

物忘れ

物忘れは、一般的な記憶障害の症状です。そのため、加齢による自然な変化と区別が難しいこともあります。特に日常生活で頻繁に忘れ物が増えたり、約束を忘れることが増える場合、記憶障害が疑われます。

記憶障害を改善するには、記憶障害の原因である病気の改善を行う

記憶障害を改善するためには、記憶障害の原因である病気の改善を行います。甲状腺機能低下症が原因の場合は甲状腺ホルモンを補充したり、ビタミンB12欠乏症が原因の場合はビタミンB12を補充したりするのです。

 

しかし、記憶障害には改善することができないものもあります。改善できない記憶障害の1つは認知症が原因の記憶障害です。認知症の場合は抗認知症薬を使ったりリハビリテーションなどを行い、記憶障害が進まないようにすることを目的に改善を行います

・生活習慣の改善

バランスの良い食事: 脳の健康に必要なビタミンB群、オメガ3脂肪酸、抗酸化物質を含む食品を積極的に摂取することで、記憶力をサポートできます。

十分な睡眠: 睡眠中に記憶が整理・定着されるため、質の良い睡眠を確保することが重要です。寝る前のリラックス法や規則正しい生活リズムを整えることで、記憶力を維持できます。

適度な運動: 運動は脳の血流を促進し、認知機能を改善する効果があるとされています。ウォーキングやストレッチ、軽いエクササイズなどを日常に取り入れることで、記憶力をサポートします。

 

記憶力サポート薬、抗うつ薬や抗不安薬、ビタミンサプリメントなどが使われます。

 

・記憶トレーニングや認知リハビリ

頭を使う活動で脳を鍛えたり、メモや日記を書く習慣をつけて情報の記憶定着を助けたり、記憶する内容をイメージで視覚化したり覚えたい情報を自分に関連づけて覚える方法で覚えたりします。

 

・認知行動療法

記憶障害の一因にストレスや不安が含まれる場合、認知行動療法を通じて考え方や行動のパターンを修正することで、不安やストレスを軽減し、記憶力の向上が期待できます。また、ストレスは記憶に悪影響を与えるため、ストレス管理法を学ぶことで、心の安定を保ち、記憶力を維持できます。

 

日常生活での工夫

スマートフォンのアプリやリマインダー機能を使ったり、整理整頓を行って忘れ物を防いだり繰り返し行うことで情報を長期記憶に定着しやすくしたりします。

記憶障害の改善に使う薬

1. アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

例:ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン

この薬は、アルツハイマー型認知症などで見られる記憶障害の進行を遅らせ、記憶や認知機能を改善する効果が期待されます。アセチルコリンという神経伝達物質の分解を抑え、脳内での神経伝達を活発にするため、認知機能や記憶力が一時的に向上する可能性があります。

吐き気、嘔吐、食欲不振などの消化器系の症状がよく見られます。場合によってはめまい、筋肉のこわばり、ふらつきが生じることがあります。

 

NMDA受容体拮抗薬

例:メマンチン

NMDA受容体拮抗薬は、過剰なカルシウムの流入によって神経細胞が損傷するのを防ぎ、神経細胞を保護することで認知機能をサポートします。興奮状態や不安感を軽減するため、記憶力の低下が進行していても落ち着いた生活を送りやすくなることが期待されます。

頭痛やめまい、便秘などの副作用が生じることがあります。一部では、眠気や混乱が見られるため、日中の活動に影響を与える可能性があります。

 

抗うつ薬

例:セルトラリン、フルオキセチンなどのSSRI

 抗うつ薬は気分を安定させ、うつ症状の改善を助けることで、記憶力や集中力の向上が期待できます。不安や緊張を和らげ、気分の安定を図ることで、認知機能の改善が期待されます。

吐き気、下痢、便秘、食欲減退などがよく見られます。服用初期に特に多い副作用ですが、徐々に慣れてくることが多いです。性欲減退、勃起不全、オーガズム障害など、性機能に影響を及ぼすことがあります。長期間使用した場合、急に服用を中止すると不快な離脱症状が現れることがあります。

 

抗不安薬

例:ベンゾジアゼピン系薬、ジアゼパム、ロラゼパム

抗不安薬は比較的早く効果が現れ、不安感をすぐに軽減できるため、緊張や不安が原因で記憶が集中できない人には有効です。筋肉の緊張を和らげる効果もあり、ストレスによる心身のこわばりが改善されることが期待されます。

ベンゾジアゼピン系薬は依存性が高く、長期的な使用は依存症リスクを高めます。眠気、注意力の低下が起きます。長期間使用すると、耐性がついてしまいます。

 

ビタミンB12サプリメント

ビタミンB12は神経機能の正常化に重要であり、記憶力低下の改善に役立つことが期待されます。ビタミンB12不足が原因の記憶障害の場合は特に効果的です。

ビタミンB12補給による改善効果はゆっくりと現れるため、短期間で効果は期待できません。

正しく理解してサポートすることが大切

記憶障害が起きると非常に不安になります。そのため、家族など近くにいる人は記憶障害について正しく理解してサポートすることが大切です。

 

記憶障害が起きても本人は記憶が間違っているという自覚はありません。そのため、間違っていても周りの人が合わせたり良い部分を褒めたりすることで自信や安心感を感じることができる環境を作ることが大切です。

 

使うものを分かりやすい位置においたり、カレンダーや貼り紙などを使い予定や注意事項などを確認しやすい状態にしたりと生活を送りやすい環境にすることで不安を減らすことができます。

 

さらに、新しいことを覚えるときは繰り返し練習すると良いでしょう。記憶障害では、日常生活を送るために周りのサポートが非常に大切なのです。

記憶障害に効果的なツボ

四神聡

神庭

百会

四神聡

 四神聡の神は精神という意味を持っており、 四神聡の聡は聡明という意味を持っています。四神聡は、精神落ち着かせ、自律神経のバランスを正しい状態にする効果のあるツボなのです。

 

そのため、刺激をすることで、頭がすっきりすると言われています。頭痛や不眠、めまいや健忘に効果的で、脳を活発にし、記憶力をアップするツボなのです。

神庭

神庭は、精神や感情を落ち着かせてくれるツボです。気持ちを和ませる効果があるため、不眠症やストレス、頭痛などに対してよく使われています。

 

さらにシワの改善や脳を活性化させるための効果もあります。そのため、記憶障害にも効果が期待できるのです。

百会

百会は、自律神経を整える効果があります。そのため、疲れや抜け毛、肩こりや頭痛に対して使われることが多いツボです。さらに、自律神経を整えることで、リラックス効果もあります。

 

脳を活性化するツボでもあり、記憶力を上げたいときにも使われるため、記憶障害に対しても効果が期待できます。

ツボの場所と押し方

四神聡

四神聡は、頭にあるツボで、百会から前後左右に親指の幅1本分進んだところにあります。

 

押すときは、四神聡だけを押しても良いですが、ときどき頭皮全体を動かすようにすると良いでしょう。

神庭

神庭は、前頭部にあり、鼻の真ん中を通る線上の頭髪の生え際から少し入った場所にあります。

 

押すときは、ゆっくりと垂直に深く押すイメージで押しましょう。痛気持ち良さを感じた部分でやめると効果的です。

百会

百会は、頭頂部のほぼ真ん中にあり、左右の耳から直線で上に手を進ませた頭の頂点にあります。

 

押すときは、両手の中指を使って押します。息を吐きながら、気持ちいいと感じるくらいの力加減で押しましょう。

 

リラックスしたいときや気持ちを落ち着かせたいときは、お風呂上がりなどに押すと、より高いリラックス効果が期待できます。

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