公開日:2021年 10月 2日
更新日:2021年 11月20日
本日は巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の原因は今のところわかっていません。
遺伝的な異常の報告や親子で発症しているという例もないため、原因は遺伝ではないとされています。
巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症は非常に稀な先天性の病気で、腸管の運動性の欠如を伴います。この症候群は通常、生まれつき存在する巨大な膀胱、短小な結腸、そして不完全なまたは全くない腸の蠕動という3つの主要な特徴で定義されます。
MMIHSの正確な原因は未だに完全には理解されていませんが、遺伝的な要素が関与していることが示唆されています。最近の研究では、この症候群は遺伝子変異の結果として発生することが明らかになっています。具体的には、ACTG2(アクチンガンマ2、滑らかな筋肉)という遺伝子の変異がMMIHSと関連していることが示されています(Halim, D., et al. "De novo and inherited ACTG2 mutations cause familial visceral myopathy, trichomegaly and progressive facial aging." Journal of Medical Genetics, 2014)。
ACTG2は滑らかな筋肉細胞において働く遺伝子で、主に消化管などの器官に影響を与えます。この遺伝子の変異は、滑らかな筋肉の形成と機能に影響を与え、特に腸の蠕動に大きな影響を及ぼします。これはMMIHSの主要な症状である腸管の蠕動不全の一因と考えられます。
MMIHSは遺伝的な病気であると同時に、一部の症例では新規(de novo)の突然変異として発生します。これは親から子への遺伝ではなく、精子や卵子の形成中または受精後の早い段階で発生する変異を指します。このため、MMIHSは予測や予防が困難な病気とされています。
以上のように、MMIHSの原因はACTG2遺伝子の変異によるものと考えられていますが、全て場合でこの遺伝子変異が見つかっているわけではなく、原因として他の遺伝子や生物学的メカニズムも関与している可能性があります。一部のMMIHSの患者では、特定の遺伝子変異が確認できないため、他の未知の遺伝子変異や環境要素が発症に影響を与えていると考えられます。今後の研究によって、これらの要素についての理解が深まることが期待されます。
巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の症状は、生まれてすぐ腸閉塞のような症状がでることです。腹部の張りは非常に大きく、排泄にも障害が起き便もほとんど出ません。
食事や空気をうまく肛門の方へ送ることができないため、腸閉塞のような症状ができるのです。繰り返し嘔吐も起きるため、ミルクを飲んでも吐いてしまいます。
そのままに放っておくと消化管が破れたり、腸の中で細菌が繁殖し腸炎を起こしたりすることもあります。
巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症は、非常に稀な遺伝性の病気で、新生児や乳幼児期に発症します。以下に、その主な症状について説明します。
巨大膀胱: MMIHSでは通常、生まれつき巨大な膀胱を持っています。巨大膀胱は腹部の膨らみとして現れ、膀胱から尿が自然に排出されないため、頻繁に尿路感染を起こす可能性があります。
短小結腸: 短小結腸は、結腸が異常に小さく、通常よりも蠕動運動が少ない状態を指します。これにより、食物の消化や吸収が困難となり、栄養不足や体重増加の問題を引き起こすことがあります。
腸管蠕動不全: MMIHSの最も重要な特徴は、腸の蠕動運動の欠如です。これは、食物の消化と排泄が困難となる原因であり、腹痛、腹部膨満感、嘔吐、便秘などの症状を引き起こす可能性があります。
これらの症状は患者の生活の質を大きく低下させ、重篤な健康問題を引き起こす可能性があります。例えば、栄養不足は成長と発達の遅れを引き起こし、尿路感染は腎臓への損傷を引き起こす可能性があります。
また、MMIHSでは通常、その他の消化器系の問題も抱えています。これには、胃食道逆流症、肝臓の問題、膵炎、または腸閉塞などが含まれます。MMIHSは非常に重篤な病気であり、生命を脅かす可能性もあります。
便秘と腹痛: MMIHSではほとんどが便秘に悩まされます。腸の運動が不十分であるため、便の排出が困難で、しばしば腹痛を引き起こします。
尿路と腎臓の問題: 巨大膀胱により、尿が適切に排出されず、尿路感染症や腎機能不全を引き起こす可能性があります。
成長遅滞: これらの消化器系の問題は、しばしば栄養の吸収不良を引き起こし、体重増加の遅れや成長の遅れを引き起こす可能性があります。
重要なことは、MMIHSは生まれつきの病気であり、生後すぐに症状を示すことが多いということです。
巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症を改善する根本的な方法はありません。起こっている症状に対して改善を行なっていくことになります。
ミルクや食事が十分にとれないため、カテーテルを入れ栄養となる点滴を行う中心静脈栄養が必要になることが多いです。中心静脈栄養は一般的に長い期間自宅で行うことになります。
腸閉塞に対しては、腸瘻や人工肛門が必要になることが多いです。腸瘻のタイプは症状の程度に合わせて様々であるため、人によって違います。場合によっては、胃瘻や小腸瘻チューブ腸瘻という方法を行うこともあります。
巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の改善方法は、非常に複雑で、症状の重さや全体的な健康状態により変わります。
保存的方法: MMIHSの改善方法はまず、症状の管理から始まります。これには、尿路感染の予防と改善、栄養状態の管理、腸の動きを改善するための薬などが含まれます。例えば、抗生物質は尿路感染の予防と改善に用いられ、特定の薬は膀胱の収縮を減少させて尿の排出を促進することがあります。
栄養管理: MMIHSではしばしば経管栄養を必要とします。これは、腸の蠕動運動が不足しているため、経口摂取した食物を適切に消化、吸収できないためです。栄養補給は患者の成長と発達を支え、全体的な健康状態を改善します。
手術: 保存的方法が効果的でない場合や、尿路感染や腸閉塞などの重篤な合併症が発生した場合、手術が必要となることがあります。例えば、膀胱の異常な大きさを修正するための手術や、腸の動きを改善するための手術などがあります。
腸移植: 重篤な症例では、腸移植が必要となることがあります。これは、自身の腸が適切に機能しない場合に、健康なドナーから腸を移植する手術です。腸移植は複雑な手術であり、拒絶反応や感染症などのリスクがありますが、適切な場合には生活の質を大幅に改善する可能性があります。
遺伝カウンセリング: MMIHSは遺伝性の病気であるため、本人とその家族は遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。遺伝カウンセリングは、遺伝性の病気のリスクや調べ方、改善のオプションなどについて詳しく説明します。また、将来の兄弟が同様の病気を発症するリスクについても議論します。
これらの改善法は全て、一人一人の具体的な症状や健康状態に応じてカスタマイズされます。MMIHSの改善はチームアプローチが必要であり、小児科医、腎臓専門医、泌尿器科医、消化器科医、栄養士、遺伝カウンセラーなど、多くの専門家が協力して最適な計画を作成します。
巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症では改善のために中心静脈栄養をしている場合が多いです。中心静脈栄養は管理が非常に重要です。
カテーテルや輸液に菌が入った場合重症な敗血症が起こったり、水分や栄養の補充がうまくできない場合脱水や低血糖、電解質異常が起こったりすることもあるのです。
腸瘻や人工肛門を作っている場合、ケアと十分な消化管の減圧重要になります。巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の改善を行なっているときにも様々なことに注意して行うことが大事なのです。
アキコのケース
彼女は生まれたときから腹部が膨らんで見え、食事を摂るのに問題がありました。赤ちゃんの頃から頻繁に嘔吐し、成長が他の子どもたちよりも遅れていました。何ヶ月もの調べた後、彼女はMMIHSと判断されました。
彼女の改善は、まず症状の管理から始まりました。アキコの母親には、感染予防のために、特に厳密な衛生管理と、抗生物質の適切な使用について指導しました。また、アキコが十分な栄養を摂取できるように、特別な経管栄養(胃や小腸に直接食物を供給する管)が彼女に施されました。
その結果、アキコの健康状態は一時的に安定しましたが、それでも頻繁に尿路感染や腸閉塞を経験しました。このため、私たちは、彼女の膀胱の異常な大きさを修正し、腸の動きを改善する手術を行うことを決定しました。手術は成功し、アキコの症状は大幅に改善されました。
しかし、アキコの腸の蠕動運動は依然として不十分で、彼女の成長と発達に必要な栄養素を摂取するのに困難が残っていました。このため、最終的には彼女に腸移植が必要となりました。腸移植は複雑な手術であり、拒絶反応や感染症などのリスクがありますが、この手術によりアキコの生活の質は大幅に改善しました。
彼女の改善はまだ続いていますが、最近では彼女自身が食事を摂ることができるようになり、生活の質が大幅に改善しています。彼女の両親は、彼女が通常の学校生活を送れるようになったことをとても喜んでいます。アキコの治療は一家全体の努力が必要であり、彼女の両親は彼女が抱える困難に対応するための力を見つけることができました。
この経験は、MMIHSの改善が単なる病状の管理だけでなく、本人とその家族全体のケアを必要とすることを示しています。また、個人に最適な方法を見つけるためには、多職種間の協力が不可欠であることを再確認しました。
参照資料:
"Megacystis Microcolon Intestinal Hypoperistalsis Syndrome". National Organization for Rare Disorders. (リンク)
"Megacystis microcolon intestinal hypoperistalsis syndrome". Genetic and Rare Diseases Information Center (GARD). (リンク)
"Megacystis-microcolon-intestinal hypoperistalsis syndrome". Orphanet. (リンク)
"Megacystis-microcolon-intestinal hypoperistalsis syndrome: a case report". J Med Case Rep. 2018. (リンク)
"Megacystis Microcolon Intestinal Hypoperistalsis Syndrome". Medscape. (リンク)
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