公開日:2021年 8月 5日
更新日:2025年 7月 1日
本日は脊椎過敏症について解説させていただきます。
本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
脊椎過敏症の原因はいまだに明らかになっていないことも多いです。現在考えられている原因としては、自律神経の失調などの精神的や肉体的なストレスです。
発症しやすい年齢が20代のであることなどから心因性の要因が関係していると考えられています。
臨床的な特徴では、棘突起についている筋や腱、靱帯などの張力が大きく関係していると考えられています。
① 中枢性感作
もっとも中核にあると考えられるのが脳や脊髄の痛みの感受性が過剰になっている状態です。脊髄後角や視床など、痛みを中継する部位が過敏化し、通常の触刺激や圧刺激でも痛みとして誤って認識されます。この状態は、長期間のストレスや慢性疼痛によって引き起こされやすいです。
② 筋膜、軟部組織の癒着と神経過敏化
脊椎の周囲には深層筋膜、靭帯、椎間関節包、神経根などが密集しています。筋膜や結合組織が慢性炎症や過用で癒着すると、神経終末が刺激されやすくなります。自律神経が密に走行しており、これが興奮していると過敏さが増し、小さな外力でも神経痛様の痛みが出ます。
③ 交感神経の過緊張と血流障害
背骨周囲には、交感神経の節や神経節後線維が多く分布しています。交感神経が優位になると血管が収縮し、筋や神経が酸欠状態になります。酸欠が続くと、C線維などの侵害受容器が活性化しやすくなり触れるだけで過剰な痛み反応が起きます。
④ 心理、情動ストレスの影響
精神的な緊張が身体の痛覚に強く影響を与えることは、近年の脳科学研究でも明らかです。ストレスや不安、過去のトラウマで扁桃体や前帯状皮質が活性化し、痛覚増幅します。防衛反応として身体が常に警戒状態になり、背骨に触れるだけでびくっとするのです。
⑤ 脊椎の構造異常・機能障害
軽度の椎間板ヘルニアや椎間関節症、背骨の歪みなどが背景にあると、脊椎周囲の小関節や神経根が軽く圧迫されただけで鋭い痛みを感じることがあります。
脊椎過敏症の症状は、脊椎に沿って圧痛や叩打痛が起こることです。さらに、自律神経が不安定な状態になります。
背骨に痛みを感じ、背骨を触ったときに棘突起を指で押すと強い痛みが現れます。しかし脊椎過敏症では、病院に行き脊椎や靱帯、脊髄などを調べても特に異常は見つかりません。
1. 背骨に触れるだけで痛い、不快
服の上から軽く触れるだけでも痛い、ゾワッとする、ヒリヒリするなどと感じます。指圧やマッサージに強い拒否感や痛みがあり、鍼灸や整体の施術が受け入れられないほど敏感なこともあります。
2. 背中や腰のピリピリ・ジンジンとした感覚
神経に沿ったような痛みや火照り、灼熱感などが起こります。何もしてないのに背骨が気になったり痛いと感じたりします。
3. こわばり、筋緊張が強い
常に背筋が張っている感覚や緊張型頭痛や首こりと併発することも多いです。朝起きたときから背中が硬いと感じます。
4. 慢性的な疲労感やだるさ
背骨を中心に全身がだるく感じます。エネルギーが背骨で詰まってる感じや流れが悪い感じと訴える人もいます。立っていても座っていても休まらない感覚がします。
5. 姿勢が崩れる、猫背、反り腰
背中の過敏により、無意識に身体をかばって不自然な姿勢になります。背骨に違和感があるから背筋を伸ばせず骨盤や肩甲骨の動きも制限されることがあります。
6. 精神的な不調
背中に常に意識が向いてしまい、不安や過敏、パニック感を併発することもあります。背中の感覚が怖い、自分の体を信用できない感じがすると表現されることもあります。
7. 皮膚感覚の異常
背中の皮膚が異常に敏感になり、風が当たるだけで痛みを感じることもあります。
脊椎過敏症の多くは、特別な改善方法は必要ないとされています。痛みの原因がストレスにあると考えられているため、改善にはストレスをとることが必要であると言われています。
筋肉や精神を安定させるために薬を使うこともあります。
① 中枢神経の過敏状態をリセットする
脊椎過敏症では通常なら痛くない刺激を脳が危険と誤解して過剰反応しています。この誤作動を脳にもう危険ではないと再学習させることが重要です。安全で心地よい刺激を繰り返し与え、脳の防衛モードを解除しましょう。
② 筋膜、深部組織の癒着、滑走不全の解放
長年のコリや姿勢の崩れ、ストレスで、背中の筋膜や筋肉が硬く縮んだまま固着している状態が神経末端を常に刺激し脳が異常と認識し過敏反応になるため、鍼灸による筋膜リリースやストレッチや軽運動、温灸や呼吸法などで血流改善することが効果的です。
③ 自律神経バランスの再構築
交感神経が優位になりやすく、常に背骨が警戒状態になるため、わずかな刺激でも危険と体が反応してしまいます。鍼灸や就寝前の腹式呼吸、瞑想や冷え対策が効果的です。
④ 心理的、情動的なストレス緩和
ストレスやトラウマがあると、脳は背中を守るべき場所として過剰に防衛しようとします。その結果、触れられることへの拒否反応や痛みの誇張が起こります。心理的な安心の積み重ねが大事です。鍼灸師との信頼関係を築き、毎回嫌なことが起こらない体験を脳に覚えさせるというようなことが必要です。
⑤ 生活習慣、環境改善
背筋を反らせるのではなく楽に保つ意識をする、背中が圧迫されないようマットレスや枕を見直す、血流や自律神経に影響するため冷たいものやカフェイン過剰は避ける、軽い散歩や水泳などは全身循環を促進するなどがオススメです。
1. 脳と脊髄の過敏状態を鎮める
脊椎過敏の多くは、痛みや触覚に対する脳の誤反応が原因です。鍼灸はこれを脳にとって安全な刺激でリセットすることができます。
2. 交感神経の緊張を緩める
背中の過敏症状は、交感神経が常に高ぶっている状態で起きやすいです。鍼灸は、特に副交感神経を優位に導くのが得意です。
3. 筋膜や軟部組織の癒着をリリース
背骨周囲の筋膜、腱、靭帯、関節包などが癒着、滑走不全を起こしていると、触れるだけで痛くなります。鍼灸では、これらの滑走障害をピンポイントで改善することが可能です。
4. 皮膚感覚の異常に対応できる
皮膚や表層の神経終末が過敏になっている場合、強刺激や押圧は逆効果です。鍼灸は、触れるか触れないか程度の微細な刺激が可能で、過敏症に特化した調整ができます。
5. 体が安全だと脳に再学習させる体験ができる
鍼灸は単に刺激を与えるのではなく、安心の記憶を身体に刻む方法です。今日の刺激は痛くなかった、背中を触られても大丈夫だったという経験が、次回以降の安心につながり、それにより、脳の警戒反応が弱まり、背中の過敏さが減少します。
一般的には、背中に痛みがあり病院で調べても特に異常が見つからない場合、脊椎過敏症であると判断されます。
脊椎過敏症はストレスがなくなっただけで症状が安定することもあると言われています。環境のストレスだけでなく、1度痛みを感じるとまた当たったら痛いと思ってしまうこと自体がストレスとなって悪循環を繰り返すこともあります。
そのため、改善のためには当たっても痛くないと思えるようにすることも必要です。