肝【五臓六腑・東洋医学の捉え方】

公開日:2021年 11月14日

更新日:2021年  11月14日

本日は「肝」ついて解説させていただきます。

東洋医学の“臓腑”というのは西洋医学の臓器とは概念が似ているようで異なります。

「五臓六腑」は、食べ物や空気から気・血・津液を作ったり運んだり、貯蔵したりする各器官といえます。 食べ物や飲み物の栄養が気や血に変わる過程をたどると、まずは六腑が消化吸収を行い、 その栄養を五臓が受け取って、気・血・津液を生みます。

人体においてどのような働きをしているのか、東洋医学も西洋医学も最終的には結論が似ているため、混乱しないよう最後までお読みいただければ幸いです。

☆本記事の内容

  • 東洋医学の「肝」とは
  • 西洋医学の「肝臓」と東洋医学の「肝」
  • 「肝」の機能や他の臓腑との関係性
  • 「肝臓」が弱っている際のサイン
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

 

動画でもご説明しておりますのでこちらもご参考くださいませ。

 

「肝」とは

東洋医学の「五臓六腑」は人体を生理機能の面からとらえたものになります。
対して西洋医学では、内臓を物質とみています。

肝は全身の気の流れをスムーズにし感情の調節を行い、自律神経系によって体全体の機能が順調に行われるように調節する働きをします。

 

古代中国では、五臓それぞれの役割を国政に例えました。「肝」は「将軍の官」とされ、身体という国において実権を持つ存在と考えました。

心は王様。脾は金庫番。肺は大臣。腎は大工。といったように、これらの役割分担が一つでも欠けてしまえば国がまわらないように人体においても五つは相互関係にあると考えました。

身体に栄養を行き渡らせる役割を持つ肝は、内側から心身を強く保つために最も重要な臓器といっても過言ではありません。

「肝」の機能

東洋医学のページで紹介しました、『五行説』の中で、木、火、土、金、水それぞれに属している臓腑がありますが、「肝」は木に属します。樹木の性質に例えられ、大地の榮養分を吸収し、太陽のエネルギーを浴びて育ち、上に向かって、枝葉を伸ばし、広げる性質を持っています。

 

臓腑それぞれに対応する季節もあります。春、夏、長夏、秋、冬。方位については、東、南、中、西、北。気については、風、暑、湿、燥、寒です。

 

春は「肝」が活発に働きます。植物や木々がいきいきと芽生える春は、身体も自然の流れと同じくスムーズに成長しのびのびと、気が隅々まで行き渡る季節です。

 

大地の養分は、「腎」や「脾」が作り出す精に該当し、太陽からのエネルギーが、心の陽気に該当します。体の内部から隅々まで気血を配り、発散力を供給する機能を担うのが肝臓です。 

肝の役割は、外に伸びやかに広がる力常にを提供します。 発汗における外に向かう力、排尿の際の外に向かう力、射精時の外に向かう力を肝が提供し、 発汗において肺が、排尿や射精において腎が、肝の外向きの力に拮抗して、調節を行います。

筋肉や眼と関連がある

「肝」は筋の収縮弛緩のタイミングの調節をしているので、肝が衰え、血が不足すると、筋の引きつりや痙攣、 手足のシビレ感などを引き起こし、体を思うように動かすことができなくなります。

また、精神神経疾患に特有な眼光、興奮時の眼瞼充血など肝と関係する病気の時に現れます。視力の維持にも関わり、肝の造血作用は、目を潤し、しっかりと見る事ための力を担います。 イラついたり、カッカしたり、肝の熱が強すぎると、目が乾燥してきます。

 

白目が黄色っぽくなり、黒目も潤みがちになるというといわれています。

他の臓腑との関係性

「肝」と「脾胃」

五行でいう相互関係にある「脾」には、物を上昇させる昇清作用、胃は、不純物や混ざり物を下に押し流す降濁作用があります。この働きのペアで、食べ物から体に必要な物を取り込んで不要な物を体外に排泄しています。 「肝」の全身に気を行き渡らせる機能は、脾胃の気の昇降を助けますので、肝が弱ると、脾胃にも影響を与えます。 肝と脾の連携が乱れて、脾から肝への受け渡しがうまくいかないと、必要な物を上昇させられずに、眩暈やふらつき、倦怠感、胃重感を起こし、吸収の流れが押し戻されて、下痢になります。

 

肝の上昇の気が胃に悪さをすると、下に降りるべき物が降りませんから、便秘や服満感を感じ、さらに押し上げられると、 むかむか、ゲップ、嘔吐といった症状が起きます。

「肝」と「胆」の関係

肝は五行の木に属し、胆と表裏の関係、つまりは兄弟のような関係にあります。体のおおよそ中央にあることや、性格や感情を左右することから、「肝が据わっている」、「肝心」、「度肝を抜かれる」

など、「肝胆」のつく慣用句は非常に多いのです。また、大切な事という意味で「肝心要」という言葉があります。それだけ肝は身体の中でも重要な働きをしているという意味なのです。

西洋医学においての「肝臓」

西洋医学においての「肝臓」の役割は大きく3つあります。代謝・解毒・胆汁の生成です。

私たちは食べ物からの栄養素をそのまま利用することはできません。

口から入れた食べ物は、胃や腸で分解され、そこから肝臓に吸収された栄養素を利用しやすい物質にして貯蔵しておきます。次に、必要に応じて、それらをさらに分解しエネルギーを作り出します。

 

アルコールの飲み過ぎや、暴飲暴食などで必要以上のエネルギーを摂取してしまうと、肝臓に脂肪が多く蓄積し、肝臓機能の低下の原因にもなります。

ー肝機能が低下している時のサインー

肝臓には神経が通っていないため、多少弱っていても自覚症状が現れにくく『沈黙の臓器』と言われております。

 

①疲労感や脱力感

→肝臓で解毒されるはずのアンモニアなどを始めとした毒素や疲労物質が体内に蓄積し代謝機能が落ちることで、身体全体へのエネルギー供給が滞り疲れやすくなります。

きちんと睡眠時間は確保できているのにもかかわらず疲れが取れにくい場合は肝機能が弱っていることを疑いましょう

 

②白目や皮膚の黄ばみ

血中を流れる黄色い色素「ビリルビン」が何らかの原因で血液中に増加し、白目や全身の皮膚に黄ばみが出る症状のことを黄疸と言いますね。肝機能が障害されると増えたビリルビンを処理できなくなるためこのような症状が出ます。

 

③尿が黄色くなる

尿は肝臓で血液がろ過されることで作られますが、ビリルビンがうまくろ過されなかった場合血液中に増え、最終的に尿に交じり黄色くなります。

 

④体のかゆみ

血中にビリルビンが増えることで皮膚の末梢神経に刺激されかゆみとなって現れます

 

⑤足のこむら返り

五行の中で「筋」は「肝」に属します。肝機能が滞ると足のこむら返りを起こしやすいですが、これはビタミンB1B2やビタミンDの代謝障害による症状といわれています。

 

⑥手

親指の付け根の膨らみ、小指の付け根の膨らんだところが斑状に赤くなっていたら慢性肝炎や肝硬変などの病気が進行している可能性があります。

そのような場合は、直ちに病院を受診しましょう。

東洋医学の「肝」と西洋医学の「肝臓」

●東洋医学の「

全身に栄養分を届ける。病気に対して抵抗する機能を発揮し、「血を宿すところ」とされ、血の貯蔵庫であるとされる。精神作用として、性格・感情を司り「」を宿すとされる。根気や意志・想像力に深く関わっている。そのため肝が充実していれば、何事にも積極的で物怖じせず、仕事のできる人間になるが、肝に問題があると、持久力がなく、些細なことに動じやすく、優柔不断で、短期で怒りっぽくなるとされている。

●西洋医学の「肝臓

代謝・解毒・胆汁の生成。肝臓で分解された物質は血液中をめぐり、全身の器官や臓器に送り出される。栄養素を効率よく利用しやすい形に分解・合成するはたらきを代謝といい、なんらかの原因で肝機能が低下するとその働きも低下してしまう。すると食べ物を、必要なエネルギーや物質に分解できにくくなり、代謝異常が現れる。

前述したように、「肝」と「肝臓」自体の捉え方は異なりますが、機能の捉え方は非常に似ています。吸収された栄養分を全身に行き渡らせるという意味では同じことを言っていますね。「東洋医学」の記事で紹介したように、東洋医学が生まれたのはおおよそ2000年前です。当時人々は、人間の身体を自然の万物として捉え、病気の治療法を徐々に確立させていきました。また、古代東洋では亡くなった方の身体を解剖することは法律で禁止されていました。

 

後に西洋で、人体の解剖を繰り返し、現在の西洋医学の形が生まれましたが、その何千年も前から肝が人体においての流れをスムーズにするものだということが分かっていたというのは非常に高度なことなのではないでしょうか。

まとめ

本ページをまとめます。

  • 東洋医学の「肝」の捉え方
  • 「肝」の機能は全身の流れをスムーズにする
  • 脾胃と密接な関係にあり、胆とは兄弟関係
  • 西洋医学の「肝臓」と東洋医学の「肝」は捉え方が異なる

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