受付時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
8時 ~ 21時 | 副院長 | そうぜん | そうぜん | 副院長 | そうぜん | そうぜん | 副院長 |
公開日:2019年 12月23日
更新日:2025年 9月 5日
本日は線維筋痛症について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
線維筋痛症は、検査をしても特徴的な原因が見つからないにもかかわらず、全身に強い痛みやこわばり、睡眠障害、うつ状態などが生じる病気です。
確実な原因は未だ解明されていませんが、脳の痛み信号を感じる機能に障害が起きて生じると考えられています。
脳には痛みの信号を伝える機能とその信号を抑える機能が備わっており、通常それらが上手く調整されています。
車のアクセルとブレーキをイメージしてください。なんらかの理由で脳の機能に問題が起こり、ブレーキが効かない状態、またはアクセルを踏み過ぎた状態になると、通常痛みを感じない程の弱い衝撃にも過敏になり、強い痛みを感じてしまいます。
線維筋痛症で痛みやこわばりなどの症状が見られる部位を調べても、異常は見られないのは、脳の機能障害が痛みの原因であるためです。
脳は、身体の「中枢神経系」という大きなグループに所属し、中枢神経系は大脳、脳幹、小脳、脊髄で構成されています。そのうち大脳、脳幹、小脳をひとまとめに脳と言います。
すなわち線維筋痛症は、中枢神経系の機能障害で起こる病気とも言えます。
症状の定義は、身体のあちこちに痛みが3ヶ月以上の長期にわたり出没し、強いこわばり、そして激しい倦怠感や不眠、頭痛、うつ状態など多彩な症状を伴ってくると、線維筋痛症の可能性が高いと言えます。
しかし、異常が見られないため判断が遅れることがしばしばあります。
・全身に広がる慢性的な痛み
筋繊維痛症は、体の広範囲に持続する痛みが最大の特徴です。「ズキズキ」「ピリピリ」「焼けるように痛い」「締めつけられる」など、痛みの表現は人によって異なります。痛みは日によって強さが変わり、天候やストレス、疲労で悪化することがあります。
・強い疲労感
休んでも取れない慢性的な倦怠感が続きます。「体が鉛のように重い」「何もする気が起きない」と感じる人もいます。仕事や家事など日常生活に大きな影響を及ぼします。
・睡眠障害
熟睡感が得られない、夜中に何度も目が覚めるなどの症状が見られます。眠っても疲れが取れず、翌日さらに痛みや疲労が悪化するという悪循環に陥ります。
・認知機能の不調
記憶力や集中力の低下、頭がぼんやりして思考がまとまらないなどの症状があります。「言葉が出てこない」「本を読んでも内容が頭に入らない」といった訴えもあります。
・感覚過敏
光や音、においや寒暖差などに過敏になり、衣服の刺激や軽い接触でも痛みを感じることがあります。
・その他の随伴症状
頭痛や片頭痛、過敏性腸症候群、抑うつや不安、しびれや筋肉のこわばり、自律神経症状などが見られます。
線維筋痛症の原因と考えられているのは脳の機能障害です。脳の機能障害は、心理的、社会的なストレスや外傷がきっかけとなって発症する事が多いと考えられています。
しかし、ストレスを受けた人すべてが線維筋痛症を発症する訳ではないので、未だよくわかっていないことが多いです。現在さまざまな議論、研究が行われています。
線維筋痛症の有病率は、厚生労働省研究班による2003年の住民調査で人口の約1.7%の方々が線維筋痛症であると発表されています。
関節リウマチがわが国で約0.7%(最大でも1.0%)なのに比べて、線維筋痛症は多い頻度であり、約200万人もかかっている人がいることになります。欧米では一般人口の2%前後です。決してまれな病気ではありません。
線維筋痛症がどうして起こるかは、現状ではっきりは解っていません。今現段階で考えられているのが、痛みが痛みのある局所に原因があるのではなく、脳に痛みを伝える神経システムに問題が生じたためといわれています。
健康な人の場合、多少の刺激では痛みを脳が感知しません。刺激が脳に伝わっても、脳から痛み刺激を抑える反応が起こるためです。
しかし、線維筋痛症では、あたかもアクセルが踏み込まれ、ブレーキがきかない車にたとえることができます。痛みの神経が暴走した状態にあるため多少の刺激でも痛みを感じてしまうのです。
一体なぜブレーキがきかない状態になるか、これまでまったく不明でしたが、最近日本人による研究により、脳内で痛みの神経に炎症が発生しているためであることが解ってきました。
・中枢神経の痛み処理異常
本来なら弱い刺激に過ぎないものが、脳や脊髄で強い痛みとして認識されてしまいます。これを中枢性感作と呼び、線維筋痛症の中心的な原因と考えられています。脳の痛みを抑えるシステムがうまく働かず、痛みが慢性化します。
・神経伝達物質の異常
痛みを伝えるサブスタンスPが過剰に分泌され、痛みを抑えるセロトニンやノルアドレナリンが不足するというバランスの乱れが痛みが強く続く原因のひとつとされています。
・睡眠障害
深い睡眠が妨げられると、脳の疲労回復が不十分になり、痛みの感受性が高まります。線維筋痛症の方には熟眠感のない睡眠や夜間の中途覚醒が多く報告されています。
・ストレスと自律神経の乱れ
精神的、身体的ストレスが発症のきっかけになることがあります。自律神経のバランスが乱れ、交感神経が過剰に働くことで、筋肉の緊張や血流不全が痛みを悪化させます。
・遺伝的要因
家族内での発症が多く、遺伝的素因が関与している可能性があります。痛みに関わる神経伝達物質の受容体遺伝子などが研究されています。
・外傷、感染、手術など
交通事故や大きな手術、ウイルス感染などをきっかけに発症するケースもあります。これらの身体的ストレス
改善には、薬と薬以外があります。
薬:リリカ(神経障害性疼痛に有効)、サインバルタ(抗うつ薬に分類される)、トリプタノール(アミトリプチリン)、弱オピオイド系のトラマール、トラムセット(トラマドール)、ノルスパンテープ(ブプレノルフィン)などその他として、ノイロトロピン(ワクシニアウィルス接種家兎炎症皮膚抽出液)、カロナール(アセトアミノフェン)などが使用されます。
一般的な鎮痛薬であるロキソニン(ロキソプロフェン)、ボルタレンや副腎皮質ステロイドホルモンは有効ではありません。
これら薬が病状に応じて、単独もしくは2種類や3種類併用で使用されます。しかし、薬で痛みの完全な消失は困難なゆえ、痛みを一定レベルに和らげるのみである認識が必要です。
薬でないもの:運動と精神・心理の改善方法があります。欧米では積極的に行われている運動として、段階的有酸素運動、レジスタンス運動、瞑想運動(ヨガ、太極拳、気功)などがあります。
わが国では制度の違いと、線維筋痛症に特化した指導者がいないことから、実施することが困難です。
自分で行えるものとして、ヨガや温熱、和音の改善方法などがあります。精神、心理の改善方法として認知行動も有効であるとされています。そしてわが国では痛みに対する鍼灸が行われています。
鍼刺激によってエンドルフィンが分泌され、鎮痛作用が働くとされています。脳内や脊髄の痛み抑制システムが活性化され、痛みの過敏さを緩和する効果が期待されます。臨床研究でも痛みの強さが軽減したという報告が多くあります。
線維筋痛症の方は交感神経が優位に働きすぎています。鍼灸は副交感神経を高める作用があり、心拍数や血流、筋緊張の改善を通じて、痛みや疲労感をやわらげます。
また、鍼灸によって睡眠を促すことで脳の疲労が回復しやすくなり、痛みや倦怠感の軽減にもつながります。鍼灸のリラクゼーション効果は、自律神経と脳内神経伝達物質のバランスが整い、気分の安定にもつながります。
鍼灸は比較的安全性が高く、副作用が少ない方法です。ただし線維筋痛症の方は痛みに過敏なため、鍼刺激に反応して一時的に痛みが強くなるケースがあります。これによって鍼灸で悪化したと思われることもあります。痛みが一時的に強くなる反応は、瞑眩反応や好転反応と呼ばれるもので、多くは1~2日で自然に落ち着きます。
東洋医学では、線維筋痛症に見られる全身の痛みや疲労、睡眠障害、情緒不安定などを全身の気血のめぐりが乱れている証としてとらえられています。東洋医学的な考え方では、気血の流れを整えることを重視して改善を行います。
・足三里
・合谷
・大椎
足三里は線維筋痛症の症状の軽減に有効とされています。足三里に刺激をすることで、線維筋痛症の痛みを和らげるという報告もされており、症状の緩和に期待できるツボです。
足三里に刺激をすると、腓骨神経から脊髄を通じて脳に刺激が伝達され、痛みの抑制が起こると言われています。
合谷は、自律神経に作用すると考えられているツボです。肩こりや頭痛などの色々な症状に対して効果が期待できる万能のツボと言われています。
合谷は脳への刺激が伝わりやすい場所であるため、リラックス効果や集中力のアップにも効果的です。
大椎は、免疫力を高めるツボで疲労回復にも役立つと考えられています。冷え性や自律神経の乱れ、皮膚の発疹などにも効果を発揮するといるツボです。
刺激をすることで体全体を温め、首や肩こり、頭痛、鼻づまり、風邪の初期症状の緩和に効果があるともされているツボです。
足三里は膝のお皿のすぐ下にあるツボです。向こうずねの骨のすぐ外側にあるくぼんだ部分にあります。
押すときは両方の母指を重ねて押しましょう。中指の腹で押しても良いです。少し痛みを感じるくらいの強さで押しましょう。
合谷は、手の甲側の親指と人差し指の骨が交差する手前のくぼみにあるツボです。押すと響く感覚があると思います。
押すときは反対側の手を使って少し圧迫感を感じるくらいの強さで押しましょう。骨に向かって響くような感覚がある場所を5秒ほど押し、ゆっくり離しましょう。
大椎は、首を前に曲げたときに首と背中の境目あたりで一番大きく飛び出ている骨のすぐ下のくぼみにあります。
押すときは指で気持ち良いと感じる強さで押します。ツボ周辺をぐるぐる回すように押したり、息を吐きながら押したりする方法がおすすめです。体を温める効果を得たい場合は、カイロを貼ったりお風呂のシャワーで少し熱めのお湯を当てたりする方法も良いでしょう。