公開日:2019年 12月23日
更新日:2021年 5月 15日
本日はラムゼイハント症候群について解説させていただきます。
ラムゼイハント症候群とは、帯状疱疹・水痘帯状疱疹ウイルスの感染によって顔面神経麻痺や耳周囲の水ぶくれ・難聴、めまいを引き起こす病気です。
顔面神経麻痺をきたす病気の中で、最も多いのはベル麻痺で60~75%を占めますが、次に頻度が多いのがこのラムゼイハント症候群症候群で、約20%を占めます。
・片側の顔面麻痺
顔の片側が麻痺し、まぶたや口角が下がったり、目を完全に閉じることが難しくなったりします。この麻痺により、食事や飲み物が口から漏れることもあります。顔の非対称は、笑ったり話したりする時に目立つことがあります。
・耳の痛みと発疹
一般的には症状が出る側の耳に鋭い痛みが生じます。耳の奥や耳周囲に痛みが現れます。痛みのある耳やその周り、耳の内部や耳たぶに小さな水疱が現れることもあります。この発疹は唇や口の中にも広がることもあります。
・聴覚異常
症状がある方の耳に耳鳴りが発生することがあります。聴力が低下し、音が聞こえにくくなることもあります。音に対して敏感になり聴覚過敏が現れることもあります。
・めまい・平衡感覚の異常
目が回るような感覚や、ふらつきを感じることもあります。また、体がバランスを取りにくくなり、歩行が不安定になることがあります。このような症状は転倒のリスクが増えるなど日常生活に支障をきたします。
・味覚異常
食べ物の味を感じにくくなったり違和感を感じたり、舌にしびれが出たりすることがあります。
同じく顔面神経麻痺の症状が現れる「ベル麻痺」との鑑別が付きにくいですが、
見極めるためにまず耳を見ます。ラムゼイハント症候群の場合、耳周辺に疱疹が見られます。
程度の具合は個人差がありますが、その他下記のような症状が引き起こされます。
顔面神経麻痺の症状↓
帯状疱疹症状↓
聴神経症状↓
ラムゼイハント症候群は、同じく顔面の麻痺が見られる「ベル麻痺」とよく間違えられることが多いですが、両者の違いは、麻痺を引き起こす原因となる「ウイルス」です。
【ベル麻痺】
ヘルペスウイルス、帯状疱疹が一般的なベル麻痺の原因です。その他、流行性耳下腺炎、風疹、単核球症、そしてインフルエンザの原因ウイルスにより発症することもあります。
【ラムゼイハント症候群】
小児期に発症した水疱瘡ウイルスが体内に潜伏し、再活性化してしまうことにより神経の炎症をきたします。腫れた神経が顔面神経管の中で絞扼し顔面神経麻痺を起こすのです。また、周囲の脳神経にも炎症をきたし、耳の発赤・水疱や耳痛、難聴、めまいなどを引き起こします。
ラムゼイ・ハント症候群は、特に顔面神経(第7脳神経)にある神経節でウイルスが再活性化することで発症します。
免疫力が低下すると、潜伏していたウイルスが再活性化しやすくなります。特に、加齢、慢性的なストレス、糖尿病やがん、HIV感染などの病気を発症している場合は、免疫システムを弱めるとより発症のリスクが高まります。
抗がん剤による病気の改善を受けていたりステロイドを使っていたりすると免疫力が低下している状態になるためラムゼイ・ハント症候群を発症しやすいと言われています。
主に60歳以上の高齢者に発症しやすいとされていますが、どの年齢でも発症の可能性はあります。帯状疱疹の既往がある人や水痘を経験している人も再発するリスクが少し高くなるとされています。
改善を行う以前に、しっかりとベル麻痺との鑑別をするため、まず耳周囲の症状がないかを見て調べます。しかし、時に帯状疱疹を伴わない場合があり、その場合は区別がつかないため血液でウイルスの増殖を調べる必要があります。
【薬】
ウイルスによる感染症への薬として、抗ヘルペスウイルス薬や神経の炎症を抑える、むくみを解消するステロイド薬が用いられます。
痛みに対しての薬は、三叉神経痛でも用いられる、カルバマゼピン(神経痛に対する鎮痛薬)や、神経に働いて鎮痛作用のあるノルトリプチリン、ガバペンチンを使います。
薬を用いても一向に良くなる兆しが見られない場合、手術を要する場合もあります。
ラムゼイハント症候群は、ベル麻痺と比較し、なかなか改善しません。
自然に改善するのはベル麻痺は70%なのに対しラムゼイハント症候群は30%ほどで、初期から十分に改善を行っても60%ほどになります。(ベル麻痺90%)
早期発見・改善そして、処置後のケアがその後の麻痺を残さないために大切になってきます。
・抗ウイルス薬の使用
病院では一般的にアシクロビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス薬が処方されます。発症から早期に服用することで、ウイルスの増殖を抑え、症状の悪化や重症化を防ぐ効果が期待されます。
・ステロイド薬の使用
顔面神経の炎症を抑えるためにはプレゾニンなどのステロイド薬を短期間使用します。特に抗ウイルス薬と併用することで効果が高まるとされています。
・鎮痛薬・抗不安薬
耳の痛みや発疹がひどい場合には、鎮痛薬が使用されることもあります。アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの市販の痛み止めでも効果的です。
・リハビリテーション
顔の筋肉を鍛えるエクササイズを行ったり理学療法を通じてバランスを改善する訓練を行ったりすることもあります。
・眼の保護
顔面麻痺によって目が完全に閉じられない場合、目の乾燥や角膜の損傷を防ぐために人工涙液や保湿剤を使います。また、就寝中や外出時には、目を保護するために眼帯を使うことも勧められています。
・生活習慣の改善とストレス管理
免疫力を高めるために、十分な休息とバランスの取れた食事を心掛けることが大事です。さらにストレスは免疫機能を低下させてしまいます。リラクゼーション法や軽い運動などストレス発散方法を見つけましょう。
ベル麻痺に比べて回復は遅い特徴があるのに加え、症状の程度により施術効果の出方や経過は異なりますが、耳の疱疹や耳痛、また難聴や平衡感覚障害に対して鍼灸施術は非常に効果的です。
顔面、そして耳や側頭部中心に鍼灸施術を行い、炎症をきたしている顔面神経の鎮静と血流改善を目指します。
専門家のもとでのリハビリテーションを併用しながら、麻痺が少しでも残らないよう一緒に努めていきましょう。
顔面の障害というのは、見た目が変わってしまうため、非常に精神的にもダメージを受けやすいです。ストレスや不安が重なり不眠になり、さらに治癒しにくくなってしまう可能性もあります。
脳や顔面の鍼灸は、顔面の血流改善により改善を見込むだけでなく、全身に張り巡らされている自律神経の調整も行うので、ストレスや不安な気持ちに上手く対処できるようお力になれると思います。