公開日:2021年 10月21日
更新日:2021年 11月 3日
本日は東洋医学ついて解説させていただきます。
医療行為を行う上で必要となるのは、解剖学や生理学といった人体構造の知識に加え、その構造に何らかの支障が出た場合の知識です。医師をはじめとし、医療従事者は人体の構造を学びますが、鍼灸師の場合、それらの知識に加え、治療を行う上で「東洋医学」の知識が基盤となります。
多くの場合「医学」と聞くと思い浮かべるのは、薬物や手術などで治療を行う「西洋医学」の方ですが、東洋医学の治療では、生薬や漢方、鍼や灸などを用います。
本記事では、東洋医学の成り立ちや、考え方、治療方針、東洋医学と西洋医学の違い、そして両者との上手な向き合い方などを紹介していきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
動画でもご説明しておりますのでこちらもご参考くださいませ。
陰陽五行説とは、紀元前3000年頃誕生した、古代中国の陰陽思想と、紀元前2000年頃の五行説が合わさり生まれたもので東洋医学の基本の思想です。宇宙のすべてを二つの陰陽と五つの元素(木・金・土・火・木)に分けられていると考えました。
陰陽説とは、我々の日常生活や自然現象、ありとあらゆる営みは全て陰陽に分けられ、また、その変化に順応することによってうまくゆくとする考えです。身近なものを陰陽で分けると、女性は「陰」、男性は「陽」。月は「陰」、太陽は「陽」。夜は「陰」、昼は「陽」。秋と冬は「陰」、春と夏は「陽」。軽いは「陰」、重いは「陽」。など、あらゆるものを陰陽に分けることができます。両者は、相互に依頼する関係にあります。夜があるから朝がある。女性がいて、男性がいる。もし世界に女性のみしかいなくなってしまえば、人類は存続することは出来ませんね。このように両者は、お互い依存し、抑制し合い、さらには相手を消耗させる関係にあります。
―陰陽の性質―
日かげは冷たく暗いですね。水は冷たく、低い方へ下る性質があります。
ここに出てきた「日陰」、「冷たい」、「暗」、「水」、「低い」、「下る」は全て「陰」に所属します。反対に、日なたは温かく明るいですね。火は温かく、高い方で上る性質があります。
ここに出てくるのは全て「陽」に所属しています。このように考えると、簡単に身近なあらゆるものを陰陽に分けることができます。
五行説とは、この世のすべての万物は「木・火・土・金・水」の5つの要素に分けることができ、5つの要素がお互いに影響しあい相手を攻撃したり生み出したりして、動き変化し、循環しているという考えです。この5つは、相克(そうこく)と相生(そうせい)の関係から成ります。
対立・矛盾する二つのものが互いに相手に勝とうと争うことを言います。
木は金に弱い。(木はのこぎりで切られる・紙は木から出来ていますが、はさみで切られてしまいます)火は水に弱い。土は木に弱い。(土の養分は木に吸われてしまうため)金は火に弱い。(金も鉄も火によって形が変わってしまうため)水は土に弱い。(水は土でせき止められるため)このようにどちらかが負けるため、成り立っている関係です。
相手を生み出していく関係を表します。木が燃えて火を生み出し→火で燃えた木が土を生み出し→土の中から長い歳月で鉱脈(金)が出来→金属の表面には水滴が付いて水を生み出し→水分や水に溶けた栄養を吸って木は生み出されます。
五行説の基本になるのは、五臓六腑といわれる内臓のようなものが体の中にあり、それらが相互して身体の機能・構造が維持されているという考えです。
西洋医学のように心臓は心臓、肝臓は肝臓というように別々に考えることはしません。互いに助け合い、ときには抑えてバランスをとっていると考えます。
五行の色体表(一部抜粋)
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
五腑 | 胆 | 小腸 | 胃 | 大腸 | 膀胱 |
五色 | 青 | 赤 | 黄 | 白 | 黒 |
五感(感覚) | 目 | 舌 | 口 | 鼻 | 耳 |
五液 | 涙 | 汗 | 涎(よだれ) | 涕(鼻水) | 唾 |
五香(体臭)※1 | 臊(そう) | 焦(しょう) | 香(こう) | 腥(せい) | 腐(ふ) |
五志(感情) | 怒 | 喜 | 思 | 悲 | 恐 |
五主 (体の部分) | 筋 | 血脈 | 肌肉 | 皮毛 | 骨 |
五味(味覚) | 酸 | 苦 | 甘 | 辛 | 鹹※2 |
※1 臊(そう)→油くさい、焦(しょう)→焦げくさい、香(こう)→香ばしい、腥(せい)→魚のような生臭いにおい 、腐(ふ)→腐ったようなにおい
※2 鹹(から)い:塩辛い味
このように、人体の生理的現象や感情・感覚などすべて五行に分けることができます。
そしてそこから、からだのどこが悪いのかを突き詰めていくのが東洋医学の考え方です。
例えば、視力の低下は肝の疲れ。味覚異常や舌の炎症は心の疲れ。
唇にツヤがなくなるのは脾の疲れ。嗅覚低下・鼻の炎症は肺の疲れ。耳が遠く、耳鳴りがすれば腎の疲れ。と考えられます。世界中を混乱させた、新型コロナウイルスは呼吸器系に影響を及ぼしますが、東洋医学の考え方で “肺”の不調は嗅覚低下や炎症を引き起こすと考えられてきていました。このように結び付けていくと、人体に起こる様々な不調を、東洋医学と結び付けていきやすのではないでしょうか。
東洋医学と西洋医学では、まず診察の方法から大きく異なります。
西洋医学では、身体診察や検査などのデータから身体の状態を科学的、局所的、理論的に分析し、症状の原因となっている病巣や病因を排除することで治療します。
対し東洋医学では、不調の原因が何であるのかを考え、その原因を突き止めます。身体の不調に対する根本的な原因を探るため、患部だけではなく全身を診てから治療法を判断します。患部以外の状態が、病気やケガの原因になることがあるからです。
身体の不調が何をもって「治った」と言えるのか、両者はその考え方の違いにあります。
人間の身体を機械に例えて考えてみましょう。
『 機械が故障して止まってしまいました。
原因はネジが外れてしまっていたからでした。
そのため、ネジをはめたら動き出しました。
西洋医学の場合は、そのネジをはめて動き出せば治ったということになります。
東洋医学の場合は、なぜネジが外れたかの原因を探ります。
機械のネジは全体の振動が大きく、その影響で外れた可能性があります。
そうなると、ネジをはめてもまた外れてしまうことが考えられます。
よって、振動を抑えることをしていきます。 』
東洋医学では、機械を安定させて振動を抑えることにより、ネジが外れにくくなることで治ったと考えます。
局所的に対処するのか、原因を突き止めるのか、目的や考え方の違いにあります。
鍼灸師は、東洋療法を用いる数少ない国家資格であり
前述したような知識を基に、診断や治療法を組み立てていきます。
そして、人体各所に張り巡らされた経穴(ツボ)に対して、鍼や灸を用いて刺激を与え、循環機能を改善し、身体のバランスを整えていきます。
鍼灸師以外に、漢方を扱う薬剤師や、あん摩マッサージ指圧師も、東洋療法は学んでいますが、診断・治療のメインとして考えることは少ないでしょう。
当院では、それらに加え西洋医学的観点からのアプローチも並行に考え治療を行っていきます。
東洋の考えと西洋の医学こそ、相互関係にあるのではないでしょうか。
東洋医学のみでは治せない病気も多く、西洋医学のみでは診断できない病気もあります。
両者を上手く併用し、ご自身の身体と付き合っていくのがベストです。
本ページをまとめます。
11時から21時
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
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11時~21時迄 | ◯ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
年末年始