公開日:2022年 6月23日
更新日:2024年 11月 7日
本日はオリーブ橋小脳萎縮症について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
オリーブ橋小脳萎縮症の原因は明らかになっていません。わかっていることは、発症した人の脳内の細胞に特徴的なたんぱく質の凝集があることです。
乏突起膠細胞や神経細胞の中にαシヌクレインという蛋白質が凝集した特殊なたんぱく質の凝集が作られていることがわかっています。
いくつかの遺伝子が発症に関わっているということもわかっており、現在も詳しい原因について研究が続けられています。
オリーブ橋小脳萎縮症は通常、遺伝はしませんが非常に珍しいケースで血縁者に発症が見られることもあります。
・遺伝的要因
オリーブ橋小脳萎縮症は、親から子へ50%の確率で遺伝します。常染色体優性小脳失調症の一部として分類される場合があります。両親からそれぞれ異常な遺伝子を受け継ぐことで発症するのは比較的稀で、進行が緩やかなケースが多いです。SPTBN2遺伝子やATXN遺伝子の異常が関与します。特に、ATXN1、ATXN2、ATXN3、ATXN7、ATXN10などの遺伝子変異が、オリーブ橋小脳萎縮症を引き起こすことがあります。
・異常タンパク質の蓄積
遺伝子変異によって異常なタンパク質が生成され、神経細胞に蓄積します。この蓄積が神経細胞を損傷し、最終的に小脳や橋の神経組織が萎縮します。
・ミトコンドリアの異常
遺伝子変異や環境要因により、細胞内のエネルギーを生成するミトコンドリアの機能が低下します。ミトコンドリア機能不全が酸化ストレスを増大させ、神経細胞の損傷を引き起こします。
・細胞内カルシウム濃度の異常
神経細胞のカルシウム調節が異常になると、神経の興奮性が増大し、細胞死を引き起こします。
・プロテインミスフォールディング
異常なタンパク質が正しく折りたたまれず、神経細胞内に蓄積します。これにより、神経細胞の機能が損なわれ、最終的に死滅します。
・酸化ストレス
フリーラジカルが神経細胞を損傷します。遺伝的素因を持つ場合、酸化ストレスに対する耐性が低下している場合があります。
・加齢
オリーブ橋小脳萎縮症の多くは、40〜50代で発症することが多く、加齢が神経細胞の退行現象を助長します。
・トキシンや薬剤
一部の化学物質や薬剤が神経変性を加速する可能性があります。
・慢性ストレス
ストレスホルモンの増加が神経細胞に悪影響を与えることがあります。
オリーブ橋小脳萎縮症の症状は、起立や歩行のふらつきなどの小脳症状です。ふらつき以外にも呂律が回らなくなったり手の細かい動きに障害が起きたりします。
オリーブ橋小脳萎縮症では、箸を使ったり、ボタンをかけたり外したり、字を書いたりするような日常の何気ない動作がスムーズにできなくなるのです。
その後、自律神経の症状が現れ、立ちくらみが起こったり尿の排出が難しくなったり便秘が起こったりします。
そして、表情が乏しくなり筋肉が硬って、動作が遅くなり緩慢になっていきます。
・小脳性運動失調
小脳が萎縮することで、運動の協調性が損なわれ、スムーズな動きが困難になります。足を広げて不安定に歩くようになり、体のバランスを取るのが難しく、転倒しやすくなります。ボタンを留める、字を書くなどが困難になり、動作がぎこちなくなったり言葉の抑揚が失われたりします。
・眼球運動障害
眼球が滑らかに動かず、物を見る際に焦点が合わなくなります。
・筋力低下と筋緊張異常
筋肉の異常が生じ、運動能力がさらに制限されます。主に四肢の筋力が低下し、歩行や日常的な動作が困難になります。筋肉が硬直して動きがぎこちなくなったり体幹の筋肉の緊張が異常になることで体の姿勢が歪んだりします。
・自律神経障害
自律神経系に影響が及ぶことで、体内のさまざまな調整機能が損なわれます。起立性低血圧や排尿障害、便秘や発汗異常などが見られます。
・不随意運動
小脳以外の神経系に影響が及ぶことで、不随意な運動が発生します。ふるえや舞踏運動、ジストニアなどが起こります。
・精神的および認知的症状
神経変性が進行することで、認知機能や精神状態に影響が及ぶ場合があります。記憶障害や注意力の低下、抑うつ、情緒不安定などが見られます。
他にも手足のしびれや感覚鈍麻、複視、嚥下障害などが見られます。
オリーブ橋小脳萎縮症の根本的な改善方法はありません。そのため、現れている症状に対して改善を行うことになります。
小脳性の運動失調はリハビリテーションを行うことで、一時的に改善することがあります。
症状によって転びやすい状態になるため、廊下や階段に手すりをつけたり、杖や歩行器、車椅子などを使ったりすることもあります。
障害の程度に合わせて周りの環境を整えることで日常生活を送りやすくすることは非常に大事になります。
・薬
アミノピリジン:小脳性運動失調を改善する可能性がある薬で、神経伝達を促進し、運動協調性を若干改善する効果が期待されています。
イデベノン:ミトコンドリア機能を改善し、酸化ストレスを軽減する作用がある抗酸化薬です。
バクロフェン:筋肉の緊張やけいれんを軽減します。
クロナゼパム:振戦や筋緊張を緩和する効果が期待されます。
抗うつ薬:抑うつや不安症状の緩和に用いられます。
認知機能改善薬:一部では、アルツハイマー病の薬が記憶障害の改善に効果を示すことがあります。
・理学療法とリハビリテーション
バランストレーニング:バランス感覚を鍛える練習として片足立ち、まっすぐ歩く練習などを行います。
協調運動のリハビリ:手先の訓練として物を掴む、細かい作業を行います。軽いエクササイズやストレッチで筋肉を維持します。
筋力トレーニング:体幹の筋力を強化し、転倒を防止します。
柔軟性の維持:関節や筋肉の柔軟性を保つためにストレッチを行います。
・補助具の活用
歩行器、杖、車椅子などを使用し、安全に移動できるようにします。
・作業療法
日常生活動作の練習:食事、着替え、入浴などの動作をスムーズに行える方法を学びます。
補助具の使用指導:食事用の特殊スプーンや、着替え用の補助具などを活用します。
住宅改修の提案:手すりの設置や段差の解消を行い、自宅環境を安全に整えます。
・言語療法
構音障害の改善:発音練習や呼吸と発声の調整を行い、話しやすさを改善します。
補助コミュニケーション手段:符号言語やコミュニケーションデバイスを利用します。
・嚥下訓練
飲み込みの能力を維持し、窒息や誤嚥性肺炎を防ぐために舌や喉の筋肉を鍛える訓練を行います。
・栄養管理
嚥下障害や食欲低下により栄養不足になるリスクが高いため、適切な栄養管理が必要です。柔らかい食事や高カロリー食を取り入れたり栄養士の指導を受け、必要な栄養を補うサプリメントを利用したりします。
令和元年度末の統計では、多系統萎縮症を発症している人は全国に約11,387人いるということがわかっています。その後、令和4年度末(2022年)には10,808人と報告されています。その中でも、オリーブ橋小脳萎縮症の割合は非常に多く、約7〜8割の人はオリーブ橋小脳萎縮症であるといわれています。
オリーブ橋小脳萎縮症を発症する時期は成年期です。特に発症が多い年代は50歳代であるといわれています。