公開日:2019年 12月23日
更新日:2021年 5月 15日
本日はブラウンセカール症候群について解説させていただきます。
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
脊髄というのは,親指くらいの太さです。
左右が12mmくらい。これが8~9mmくらいと小さなものですが、神経の束がぎっしり詰まっています。ランダムに 詰まっているのではなくて通っている場所が決まっているので、脊髄のどの箇所が障害されたかによって症状が異なります。
・運動麻痺
運動麻痺は脳と違って障害を受けた側と同じ側に現れます。
脊髄障害のレベルはさまざまですが、障害を受けた部分ではなく下肢に運動麻痺が生じます。
一方、腕の動きに問題は起こりません。車いすスポーツ競技をしている方の上半身の筋肉や骨格が逞しいのは、このためです。
・感覚麻痺
感覚には大きく4つ、温度・痛み・触覚(ものに触れたときの感覚)・振動覚(震えを感じる感覚)があります。
これらは皮膚の感覚を感じる器官から脊髄に入り、脳に達してはじめて熱や痛みとして感じるようになりますが、感覚ごとで脊髄の中の通り道が異なります。
温度や痛みの感覚:右手で感じた痛み・熱さや冷たさは、脊髄の中に入るとすぐに反対側の脊髄に移って脳まで上がります。
振動覚:右手で感じる震えは、脊髄の中に入ると同じ右側の脊髄の背側を上がって脳に達します。
障害の受けた脊髄の部位と同じ側で振動覚は低下、反対側は、障害のある部分より下肢の温度覚や痛覚、触覚の感覚が鈍ります。
よく動く方の足の感覚がわかりにくく、動かない方の足の感覚の方がよくわかるという感じです。
脊髄の損傷が起こった側の体の運動機能が失われ、麻痺が生じます。損傷した側の筋力が著しく低下します。筋力の低下によって歩行や立位が不安定になり、転倒のリスクも高まります。、重度の場合、完全に動かなくなることもあります。
損傷側の体の深部感覚が失われるため、目を閉じた状態で腕や脚の位置を認識できなくなることがあります。脊髄の反対側を通る痛みや温度感覚の神経経路が遮断されることによって損傷した側とは反対側の体において、痛みや温度を感じにくくなる、またはまったく感じなくなることがあります。たとえば、熱いものや冷たいものを触っても、その感覚を認識できなくなることがあります。
重度の場合、膀胱や腸のコントロールが難しくなることもあり、尿失禁や便秘が発生することがあります。筋肉が硬直することがあります。
片側の腫瘍・血行障害などが原因で発症します。
また、傷や鋭的外傷による損傷や転落による衝撃、圧迫ように外傷が原因の場合など、いずれにしても脊髄の半分に損傷が見られた場合発症します。
脊髄が損傷を受けると、損傷脊髄支配神経節以下の下肢に運動麻痺・感覚麻痺をきたすだけでなく迷走神経を除く自律神経が中枢からのコントロールを失い自律神経失調障害も発症します。
一般的に胸腰髄損傷では、下肢麻痺。頚髄損傷では、四肢麻痺となります。
・外傷性脊髄損傷(交通事故、スポーツ事故、刺し傷、銃創など)
先天性脊柱管狭窄症ブラウン・セカール症候群の最も一般的な原因は、脊髄の片側が物理的な外傷によって損傷することです。例えば、交通事故やスポーツ事故、刺し傷、銃創などが直接的な原因になります。外傷によって脊髄の半側が部分的に損傷したり、完全に損傷したりすることで神経信号の伝達が遮断されることで症状が現れます。
・脊髄腫瘍(脊髄内腫瘍や髄膜腫など)
脊髄内や脊髄を取り囲む組織に腫瘍ができた場合、その腫瘍が脊髄の片側を圧迫して症状を引き起こすことがあります。
・骨腫瘍やがんの脊椎転移
骨腫瘍やがんの脊椎転移によって、脊髄が一方的に圧迫されることが原因になることもあります。
・脊髄炎(結核性脊髄炎、梅毒性脊髄炎、帯状疱疹による炎症など)
脊髄に感染が起こり、炎症を引き起こすことで、ブラウンセカール症候群を発症することがあります。
・脊髄膿瘍
脊髄の近くに膿がたまる脊髄膿瘍も、脊髄の片側を圧迫することで神経機能を損なうことがあります。
・重度の椎間板ヘルニア
椎間板が脊髄に強く圧迫を加えると脊髄の片側に損傷を引き起こして症状が現れることがあります。
・脊髄血管障害(脊髄の血流の遮断や出血)
脊髄を供給する血管が詰まったり、出血したりすると、脊髄の片側に血流が十分に行き渡らなくなることで神経組織が損傷を受け、発症の原因となることがあります。
ブラウンセカール症候群が劇的に改善する薬はありません。この病気の主な改善方法は、リハビリです。訴える症状や年齢によって行うリハビリを考える必要があります。
①高齢者の不全麻痺
運動麻痺と温痛覚障害の左右差を見つつ、残存筋の筋力強化を行います。
②麻痺によりしびれを強く訴える場合
両下肢の装具装置での歩行訓練や、器具を装置し上肢の残存筋の筋力強化を徹底することにより麻痺回復が望めます。
③50代以前の脊髄損傷の場合
損傷している脊髄部位を見極め、もし大腿四頭筋の随意運動が可能なら、短下肢装具を用いて歩行訓練を行うことが出来ます。
④円錐部(Th11~L1辺り)の損傷の場合
まだらな筋力残存の場合があり、筋力強化訓練のきめ細かさが必要になります。
ブラウンセカール症候群では、原因に応じて改善を行うことも必要です。刺し傷や銃創、事故による外傷が原因の場合、手術が行われます。脊髄腫瘍が原因で神経が圧迫されている場合、腫瘍の除去手術が最も有効です・
結核や梅毒、帯状疱疹などの感染症が原因の場合は、適切な抗菌薬や抗ウイルス薬の投与が必要になります。血流障害が原因の場合、血栓を溶解する薬や、手術によって血流を回復させる改善方法が行われることがあります。
脊髄損傷による炎症を抑えるために、ステロイド薬を投与されることもあります。他にも、損傷による痛みや不快感を和らげるために鎮痛薬を使ったり、筋肉の硬直を和らげるために筋弛緩薬を使ったりすることがあります。
ブラウンセカール症候群そのものを鍼灸で改善することはできません。
しかし、障害されている部位や麻痺・しびれが生じている部位を見極め、刺鍼することにより運動の可動域を高めることは可能です。また、リハビリによる上肢の筋疲労や可動域を上げることが可能です。
前述したように、ブラウンセカール症候群になると、自律神経が中枢からのコントロールを失い自律神経失調障害も発症します。その場合、自律神経の調整は鍼灸施術が非常に効果的です。