公開日:2023年 1月10日
更新日:2023年 10月11日
本日は先天性中枢性低換気症候群について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
先天性中枢性低換気症候群の原因は、遺伝子の異常です。遺伝する病気で、遺伝形式は、常染色体優性遺伝です。
先天性中枢性低換気症候群の原因は長い間わかっていませんでしたが、巨大結腸症や神経芽細胞種などの自律神経障害を合併することや家族例が存在することから、自律神経系に関係する遺伝子の異常が原因として考えられるようになりました。
そして、2003年にPHOX2B遺伝子の異常が原因であるということがわかったのです。さらに、現在では、遺伝子変異のタイプが臨床症状と関係しているということもわかっています。
先天性中枢性低換気症候群は、自律神経の異常により、特に睡眠時に適切な呼吸が行えない病態です。この病気の原因は、主に「PHOX2B」という遺伝子の変異により引き起こされるとされています。
・PHOX2B遺伝子の変異
PHOX2B遺伝子は、自律神経系の発達に重要な役割を果たしている遺伝子です。この遺伝子の変異により、自律神経系の発達が正常に行われず、呼吸に関連する神経経路が正常に機能しなくなると考えられています。PHOX2B遺伝子の変異は、主に「ポリアラニンリピート変異」と呼ばれる形で起こります。これは、遺伝子内の一部の塩基配列が繰り返しコピーされることで、異常な長さのアラニン配列が生成されることを指します。このポリアラニンリピート変異が、CCHSの発症に関与しているとされています。
・その他の遺伝的要因
PHOX2B遺伝子以外にも、CCHSの発症に関連する遺伝子が存在する可能性があります。ただし、これらの遺伝子に関する詳細な研究は現在も進行中であり、確定的なことは言えません。
・環境因子
遺伝的要因が主であるとされているCCHSですが、環境因子も発症に影響を与える可能性があります。しかし、現時点でこれらの環境因子に関する具体的な研究結果は報告されていないため、詳細なことは不明です。
以上がCCHSの主な原因とされていますが、この病気は非常に稀な疾患であり、そのメカニズムはまだ完全には解明されていません。
先天性中枢性低換気症候群の症状は、低換気です。
ほとんどの場合、新生児期に発症が見られます。生まれた時には泣くことで呼吸を認めることができますが、その後呼吸が続かなかったり生まれてから数日以内に寝ている時の無呼吸発作が見られたりします。
起きている時は、大脳などの上位中枢の呼吸調節があるために低換気になりませんが眠っている時の延髄の化学調節がメインになっている時には低換気になることが多いです。特にノンレム睡眠の時に明らかな低換気が見られます。
低換気の時には、高二酸化炭素血症や低酸素血症が見られますが、呼吸数や一回換気量などの上昇は見られません。
・睡眠時の低換気
CCHSの最も代表的な症状は、睡眠時の低換気です。特にREM睡眠時に適切な呼吸が行えず、血中の酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が上昇します。これにより、無呼吸や低換気の状態が続きます。覚醒時には、自律神経が正常に機能するため、呼吸は通常正常に行われます。
・青紫色の唇や指先
睡眠時の低換気により、血中の酸素濃度が低下すると、患者さんの唇や指先が青紫色になることがあります。これは「チアノーゼ」と呼ばれる症状であり、酸素供給が不足している状態を示しています。
・その他の自律神経異常に関連する症状
CCHSは自律神経の異常が原因であるため、呼吸以外にも様々な自律神経に関連する症状が現れることがあります。例えば、心拍数の異常、体温調節の障害、消化器系の異常などが報告されています。
・行動や学習の遅れ
中には、行動や学習の遅れが見られる場合もあります。これは、睡眠時の低換気により脳に十分な酸素が供給されないことが原因である可能性があります。
・感染症のリスク増加
呼吸器感染症にかかりやすいとされていますが、これは、呼吸が十分でないため、気道に異常が生じ、感染症にかかりやすくなることが原因です。
以上がCCHSの主な症状となります。しかし、CCHSは非常に稀な病気であり、症状の程度や種類は人により異なることがあります。
先天性中枢性低換気症候群の改善方法は、今のところありません。成長しても低換気は改善しないため、適切な呼吸管理を行い、低換気の蓄積をできるだけ避けることで、全身臓器にできるだけ影響が及ばないようにすることが大事です。
どのくらいの低換気の程度であるのかとうことはある程度予想することはできますが、実際には各ステージで呼吸状態の評価を行うことが大事です。ノンレム睡眠の時やレム睡眠の時、覚醒している時、運動している時などに評価を行います。
そして、どのステージで呼吸管理が必要になるのかということやどの程度までは低換気に耐えることができるのかを判断するのです。
呼吸管理の方法は、気管切開や鼻マスクやフェイスマスクからの呼吸管理、横隔膜ペーシングによる呼吸管理です。
気管切開からの人工呼吸管理は、最も確実に気道確保と呼吸管理を行うことができる方法です。手術が必要であったり家族の学びやサポートが必要であったりしますが、選択されることの多い方法です。
鼻マスク、フェイスマスクからの呼吸管理は、幼児期後半から学童期以降で睡眠時のみ呼吸管理が必要な場合に有効な方法です。
横隔膜ペーシングによる呼吸管理は、横隔膜を体の外から電気的に刺激して自発呼吸を起こす呼吸管理法です。呼吸の回数や呼吸の大きさを調節できる最も小さくて軽いデバイスのため、覚醒時に呼吸管理が必要な場合にお勧めの方法です。
先天性中枢性低換気症候群の改善方法は、呼吸をサポートし、血中の酸素濃度を適切な範囲に保つことが主な目的です。
・人工呼吸器の使用
特に睡眠時に適切な呼吸が行えないため、人工呼吸器を使用することが一般的です。人工呼吸器は、患者さんの呼吸をサポートし、酸素供給を保つことで、生命を維持するのに役立ちます。
・トラケオストミー
一部では、トラケオストミー(気管切開)が行われることがあります。これは、気管に穴を開け、人工呼吸器を接続することで呼吸を助ける手術です。
・酸素法
血中の酸素濃度が低下した場合、酸素を補給することで状態の改善が期待できます。酸素療法は、酸素マスクや鼻カニューレを用いて行われます。
・ダイアフラムペーシング
ダイアフラムペーシングは、ダイアフラム(横隔膜)を電気刺激することで呼吸を助ける方法です。電気刺激によりダイアフラムが動き、肺が膨張することで呼吸が行われます。
・遺伝子の改善
CCHSは、PHOX2B遺伝子の変異により発症することが知られています。そのため、将来的には遺伝子の改善が有望とされています。
・本人および家族の教育
本人やその家族への教育も非常に重要です。適切な改善方法や緊急時の対応、日常生活での注意点などを理解することで、生活の質の向上が期待できます。
以上がCCHSの主な改善法ですが、状態や年齢、症状の程度により、適切な改善法は異なる場合があります。
先天性中枢性低換気症候群の改善のためにトラケオストミーを行う場合、以下のような効果や注意事項があります。
・効果
安定した呼吸の確保:トラケオストミーにより、気管に直接空気の通り道を作ることで、呼吸が安定し、呼吸不全による合併症のリスクを減らすことができます。
人工呼吸器の使用:トラケオストミーを通じて人工呼吸器を接続することで、呼吸をサポートします。特に睡眠時の低換気状態を改善するために重要です。
・注意事項
感染予防:トラケオストミーの穴周りやチューブは清潔に保つことが重要で、感染予防のための適切なケアが必要です。
チューブの詰まり:チューブが粘液や異物で詰まると、呼吸が困難になる恐れがあります。定期的なチューブのクリーニングや交換が必要です。
トラケオストミーの穴の管理:トラケオストミーの穴は適切な大きさを保つためのケアが必要です。穴が狭くなったり閉じたりすると、再度手術が必要になることがあります。
長期的な管理:トラケオストミーは、生涯にわたる管理が必要な場合があります。特に成長や発達に伴い、チューブのサイズや種類の変更が必要な場合があります。
緊急時の対応:トラケオストミーのチューブが外れたり、詰まったりした場合の緊急対応方法を知っておくことが重要です。
トラケオストミーは、CCHSの改善において重要な選択肢の一つですが、手術や長期的な管理に関するリスクや負担もあるため、医師や専門家と十分なコンサルテーションを行い、適切な判断をすることが重要です。
症状が重い場合は、覚醒時にも低換気になります。また、場合によっては常に低換気をおこす可能性があります。
さらに、多くの場合は低換気になっても呼吸困難が起きないため、気が付かない間に繰り返し低換気を起こしていたり、運動時や呼吸器感染時などに必要な酸素供給などが行われず低換気のが悪くなったりすることがあります。
低換気が蓄積されると、全身の臓器に影響が及び臓器障害につながるため、適切な呼吸管理を行いことが大事です。
場合によっては、先天性中枢性低換気症候群によって成長発達障害、学業成績不振などが見られることも多いです。
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