公開日:2022年 9月 3日
更新日:2025年 6月 7日
本日は多嚢胞性卵巣症候群について解説させていただきます。
☆本記事の内容
投稿者の吉田です。
このページを書いている私は、施術スタッフや鍼灸師として9年間臨床に携わり、多くの女性利用者様のお体を対応してきました。
その経験を記事にまとめておりますので、ぜひ最後まで御覧ください
多嚢胞性卵巣症候群の原因は、完全には明らかになっていません。
今のところ、脳下垂体から分泌されるホルモンと卵巣から分泌される女性ホルモンのバランスが崩れることで排卵が障害され、発症につながっていると考えられています。
そのため、多嚢胞性卵巣症候群の判断には、月経異常があること、両側の卵巣に多くの小卵胞が見えること、血中ホルモンの異常があることを確認します。
さらに、多嚢胞性卵巣症候群を発症している多くの女性は、インスリンの作用に対する細胞の反応性が下がった状態がみられます。
【1】インスリン抵抗性
インスリンは血糖を下げるホルモンですが、インスリン抵抗性とは、筋肉や脂肪細胞がインスリンの働きに反応しづらくなる状態を指します。その結果、血糖を下げるためにインスリンが過剰分泌されます。インスリンは卵巣の内側(莢膜細胞)で男性ホルモンの産生を促進します。高インスリン状態が続くと、テストステロンが過剰になり、排卵障害が起こります。
【2】視床下部-下垂体-卵巣軸の異常
通常、脳の視床下部と下垂体からGnRH → LHとFSHという性腺刺激ホルモンが放出され、卵巣を調整しています。PCOSでは、LH(黄体形成ホルモン)が過剰でFSH(卵胞刺激ホルモン)が相対的に少ないというバランスの乱れが起きやすいです。このバランスの乱れにより卵胞は成熟せずに途中で成長停止し、排卵が起きず、月経が不規則になります。
【3】アンドロゲン過剰
PCOS女性ではテストステロンやDHEA-Sといったアンドロゲン値が高いことが多いです。これは卵巣と副腎の両方から産生されます。アンドロゲンが過剰になると、毛深くなる、にきび、脂性肌になる、頭髪が薄くなるなどが起こります。
【4】遺伝的要因
PCOSは家族性に発症しやすい傾向があり、遺伝素因が存在するとされています。特にインスリン抵抗性や肥満傾向の体質が家族内でみられるケースが多いです。
【5】肥満・生活習慣の影響
肥満はインスリン抵抗性を悪化させ、ホルモンバランスも乱すため、PCOSの発症や悪化に寄与します。加えて、ストレス・睡眠不足・過食などの生活習慣も影響します。
【6】慢性炎症
最近の研究では、PCOS女性は体内に低度の慢性炎症を抱えているとされます。これがさらにインスリン抵抗性と卵巣機能の低下を促進します。
多嚢胞性卵巣症候群の症状は、月経異常や男性化です。
卵胞が育たず定期的に排卵が起きないため、無月経や希発月経などの月経異常が起きるのです。多嚢胞性卵巣症候群が不妊の原因にもなります。
男性化は、男性ホルモンの影響によって起こります。主に毛深くなったりニキビができたりします。男性ホルモンの影響によって肥満や血糖値の上昇などもみられます。
そのまま長い時間放っておくと、子宮体がんやメタボリックシンドロームなどを発症するリスクが上がるとも言われています。
□ 月経周期が35日以上または90日以上こないことがある
□ 妊娠を希望しているが1年以上できていない
□ あご・胸・お腹・背中に毛が多いと感じる
□ にきびが治らない、繰り返す
□ 髪が薄くなってきた気がする
□ 下腹部の脂肪が気になる/ダイエットしても痩せにくい
□ 首・わきなどが黒ずんでいる
→ 3つ以上当てはまる場合は、婦人科にいくことをおすすめします。
【1】月経異常・無排卵
月経が2~3ヶ月来ない、月経周期が35日以上と長い、不規則な月経
【2】不妊
妊娠を望んでもなかなかできない、排卵検査薬が反応しない、毎回排卵していない
【3】男性ホルモン過剰症状
にきび、顔、口周り、胸、お腹に体毛が濃くなる、頭頂部の髪が薄くなる
【4】体重増加・やせにくさ
特に下腹部や内臓脂肪の蓄積、食事制限や運動をしても痩せにくい
【5】黒ずみ
首の後ろ、脇、鼠径部などが灰褐色にざらざらと黒ずむ
【6】精神的・神経的な不調
抑うつ・不安傾向、PMSの悪化、眠気・集中力の低下、睡眠障害
【7】その他
血液中のLH/FSH比が2以上になる、テストステロン値が高い、抗ミュラー管ホルモンが高い、超音波で10個以上の小卵胞が“ネックレス状”に見える
多嚢胞性卵巣症候群は、長い期間そのまま放っておくと子宮体がんのリスクが高くなるといわれています。
卵巣の病気である多嚢胞性卵巣症候群によって子宮体がんのリスクが上がるのは、多嚢胞性卵巣症候群を発症すると、長い期間エストロゲンだけが子宮内膜に働きかけ続けることになるためです。
エストロゲンは子宮内膜を増殖させる働きがあり、プロゲステロンは子宮内膜の増殖を抑える働きがあります。エストロゲンとプロゲステロンが適切に分泌されることで、ホルモンのバランスを保っています。
プロゲステロンは排卵をした後に分泌されるホルモンです。そのため、排卵が起きない場合プロゲステロンは分泌されません。多嚢胞性卵巣症候群では排卵が起きないため、長い期間エストロゲンだけが子宮内膜に働くことになるのです。