間質性肺炎の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2022年  6月23日

更新日:2024年  5月20日

本日は間質性肺炎について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 間質性肺炎とは
  • 間質性肺炎の症状
  • 間質性肺炎の原因
  • 間質性肺炎の改善方法
  • 間質性肺炎のまとめ

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

間質性肺炎は、肺の間質を中心に炎症が起きる病気の総称

間質性肺炎は、肺の間質を中心に炎症が起きる病気の総称です。肺の間質は、肺の空気が入る部分の肺胞を除いた部分で、主に肺を支える役割をしています。

 

間質性肺炎は、肺炎という名前が付く病気ですが、肺炎ではなく全く違う病気です。肺炎は肺の中で起こる病気ですが、間質性肺炎は、肺そのものに炎症が起きる病気なのです。

 

肺炎よりも間質性肺炎の方がより広い範囲で病気が起こります。そのため、肺炎よりも間質性肺炎の方が息切れなどの症状が強く現れます。間質性肺炎には、特発性肺線維症などの病気も含まれていますが、多くの場合は原因が明らかになっていません。そのため改善も難しいと言われています。

 

間質性肺炎は肺の機能がどんどん落ちていく病気で、最悪の結果が想定される病気です。病院でも様子見になったり予後不良という判断になったりします。

1番多いと言われている原因は、関節リウマチなどの膠原病

間質性肺炎の原因は多岐にわたります。

 

自己免疫疾患

リウマチ、全身性硬化症、多発性硬貨症などの自分の免疫細胞が自分の肺を傷つけてしまう病気が原因となることがあります。

 

環境因子

ほこり、かび、薬物などが原因となることがあります。

 

・感染症

ウイルスや細菌によっても間質性肺炎は発症します。

 

特発性

原因が特定できない場合もあり、この場合特発性間質性肺炎と呼ばれます。

間質性肺炎の主な原因

・特発性肺線維症(IPF)

特発性肺線維症は間質性肺炎の中でも最もよく知られたタイプであり、特定の原因がないまま線維化が進行していく病気です。中高年男性に多く見られ、喫煙歴が影響を与えると考えられています。

 

・接触性肺炎

塵肺やアスベスト肺とも呼ばれるこのタイプの肺炎は、特定の粉塵や繊維に長期間さらされることで発症する可能性があります。

 

・薬剤性肺炎

一部の薬剤が原因となり、肺に炎症を引き起こすことがあります。抗がん剤や心疾患の薬剤、一部の抗生物質や抗炎症薬がこれに該当します。

 

・全身性の病気に伴う間質性肺炎

ループスや関節リウマチ、シェーグレン症候群といった全身性の自己免疫疾患が原因で間質性肺炎が発症することがあります。

 

・感染性肺炎

細菌やウイルス、真菌の感染が原因で発症することもあります。

 

・遺伝的要因

家族に間質性肺炎の人がいる場合、遺伝的な要因により発症リスクが高まることがあります。

間質性肺炎の症状は息切れと咳

間質性肺炎は肺の間質部分に炎症が生じる病気です。間質は肺の構造を支える結合組織で酸素と二酸化炭素が交換される重要な場所です。この炎症により肺の柔軟性が失われ、呼吸が苦しくなってしまうのです。

 

初期段階の症状は軽度であることが多いため、特に問題はありません。しかし、徐々に悪化することがあります。

(例)初めは、階段を上っている時や荷物を持った時に息切れを感じるようになりますが、病気が進んでいくと、部屋の中で移動した時や服を着たり脱いだりした時にも息切れを感じるようになります。

 

主な症状は息切れ、乾いた咳、疲労感、胸の痛みで、基本的に呼吸を担当するエリアの問題が起こります。

 

息切れなどは特に運動時や階段を上るときに感じることが多く、乾いた咳は長期間続くことがあります。人にもよりますが、疲労感によって日常生活が困難になる人もいます。中には胸の痛みが強く出る人もいます。

 

間質性肺炎では、咳は現れますが痰は現れません。間質性肺炎の症状は少しずつ進みます。そのため、症状をあまり重く考えないケースも多いです。多くの場合は、特に症状がなく、胸部のレントゲンやCTの異常で間質性肺炎であることが発見されていると言われています。

 

間質性肺炎では、症状が悪くなると、安定器よりも肺機能が下がり、息切れが悪化し、咳が増えます。他にも、発熱や頻脈、倦怠感や疲労感、不眠などの症状が見られることも多いです。

 

病気が進むと、さらに肺が縮み、肺の一部が線維性成分の固まりになって繊維性成分の固まりになった部分は肺としての機能をしなくなります。すると、血液中の酸素が足りなくなり、日常生活にも影響が現れます。

間質性肺炎の主な症状

・呼吸困難

間質性肺炎の最も一般的な症状は呼吸困難です。炎症や線維化が進行することで肺の伸縮性が失われ、酸素の取り込みが難しくなります。初めは運動時のみに呼吸困難を感じることが多いですが、病状が進行すると安静時にも呼吸困難が現れるようになります。

 

・せき

炎症や線維化により気道が刺激されると、せきが引き起こされることがあります。せきは通常乾いたせきで、痰を伴わないことが多いですが、場合によっては痰が出ることもあります。

 

・喘鳴

呼吸時にヒューヒュー、ゴーゴーといった音が聞こえることがあります。これは肺の線維化により気道が狭くなることで引き起こされる現象で、医師が聴診器で聞くことができることが多いです。

 

・胸痛

間質性肺炎では、胸部に痛みを感じることがあります。胸痛は通常軽度で、日常生活に大きな影響を与えることは少ないですが、場合によっては激しい痛みを感じることもあります。

 

・疲労感

肺の機能が低下すると、身体が十分な酸素を取り込めなくなり、疲労感が現れることがあります。疲労感は慢性的に続くことが多く、日常生活に影響を与えることがあります。

 

・体重減少

間質性肺炎では、病状が進行すると体重が減少することがあります。これは食欲不振が原因であることが多いですが、時には栄養の吸収不良が原因であることもあります。

 

・その他の症状

頻脈、肺高血圧、心不全、肺の感染症、皮膚の変化(紫色になるなど)。

間質性肺炎の改善方法は、薬

間質性肺炎の改善方法は、薬です。間質性肺炎の種類や発症した人の状況に合わせていくつかの薬を組み合わせて改善に取り組むこともあります。

 

薬を使うだけではなかなか改善しない場合は、現れている症状に合わせて呼吸リハビリテーションを行ったり、酸素を吸入したりします。

 

病気が進むスピードがかなりゆっくりである場合は、経過観察を行うだけのこともあります。

 

今のところ、ほとんどの間質性肺炎は完全に改善することはありません。間質性肺炎は、病気とうまく付き合って生活することが大事なのです。

間質性肺炎の主な改善方法

1. 薬

間質性肺炎の改善において最も一般的な方法は薬です。

ステロイド:ステロイドは、間質性肺炎に伴う炎症を抑えるために使用されます。プレドニゾロンなどのステロイドがよく用いられます。ステロイドの効果は個人差があり、一部では効果が期待できる一方で、他では効果が限定的である場合があります。

免疫抑制剤:免疫抑制剤は、ステロイドと併用することで、ステロイドの量を減らすことができる場合があります。免疫抑制剤には、アザチオプリンやシクロスポリンなどがあります。

抗線維化薬:ピルフェニドンやニンテダニブは、間質性肺炎の線維化を抑制する薬です。これらの薬は、病状の進行を遅らせる効果が期待できます。

 

2. 酸素

進行した間質性肺炎では、酸素の取り込みが難しくなるため、酸素での改善が必要になる場合があります。この方法は生活の質を改善するための重要な方法の一つです。

 

3. リハビリテーション

リハビリテーションは、呼吸機能の改善や維持、疲労感の軽減を目的として行われます。リハビリテーションには、運動や呼吸リハビリテーションなどがあります。

 

4. 介入法

間質性肺炎に伴う合併症の改善として、介入法が行われることがあります。例えば、肺高血圧がある場合には、血管拡張薬による改善が行われることがあります。

 

5. 肺移植

進行した間質性肺炎で薬や他の方法が効果がない場合には、肺移植が最後の選択肢となる場合があります。肺移植は、その効果が大きい一方で、移植後の拒絶反応や感染症などのリスクがあります。

 

6. 生活習慣の改善

喫煙や過度な飲酒、過重な運動は肺の機能を悪化させる原因となります。したがって、これらの生活習慣の改善が重要です。また、バランスの取れた食事が重要です。

間質性肺炎の改善に使用される薬

1. ステロイド

名前:プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンなど

使用場面:ステロイドは間質性肺炎による炎症を抑制するために用いられます。主にサルコイドーシスや過敏性肺炎、薬剤性肺炎などの改善に用いられることが多いです。

 

2. 免疫抑制剤

名前:アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレートモフェチルなど

使用場面:免疫抑制剤はステロイドと併用することで、ステロイドの量を減らすことができる場合があります。サルコイドーシスや過敏性肺炎などの改善に用いられることがあります。

 

3. 抗線維化薬

名前:ピルフェニドン、ニンテダニブ

使用場面:抗線維化薬は、肺の線維化を抑制することで、病状の進行を遅らせる効果が期待できます。特に特発性肺線維症(IPF)の改善に用いられます。

 

4. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

名前:イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブなど

使用場面:NSAIDsは痛みや炎症を軽減するために用いられることがあります。

 

5. 抗菌薬

名前:トリメトプリム/スルファメトキサゾール(Bactrim)、アジスロマイシンなど

使用場面:感染症が合併している場合や、感染症の予防のために使用されます。

 

6. 抗ウイルス薬

名前:アシクロビル、オセルタミビルなど

使用場面:ウイルス感染症が合併している場合や、ウイルス感染症の予防のために使用されます。

間質性肺炎の判断に重要なKL−6
 

KL−6は、糖鎖抗原の一種で間質性肺炎の活動性を評価するための重要な指標の1つになります。MUCと呼ばれる糖タンパク質の1種で肺の上皮細胞や腺細胞から分泌されます。

 

KL−6は間質性肺炎などの肺疾患で血中濃度が上昇することが知られています。これは、肺の上皮細胞が損傷、炎症が起こると血中に放出されるためです。よって、KL−6の濃度は肺の間質、上皮細胞の損傷や炎症の程度を反映します。

 

特に判断や活動性の評価、改善の効果のモニタリングに使われます。調べる方法は、血液を調べることです。静脈から血液サンプルを摂取し酸素免疫測定法でKL−6の値を見ていきます。

KL−6の正常値はおおよそ500u/ml以下です。具体的な基準は機関によって違いますが、軽度上昇は500〜1000u/ml、中等度上昇は1000〜2000u/ml、高度上昇は2000u/ml以上と言われています。KL−6の値が高いほど、間質性肺炎などの活動性が高い可能性があります

 

KL−6は、鍼灸で下げることが可能です。

K L−6が高い値を出す病気

・肺がん

・サルコイドーシス

・慢性閉塞性肺疾患

鍼灸とKL-6

間質性肺炎で当院に来院している方は現在5名です。

 

その中の1人はKL-6が1500u/mlまで上がりましたが、鍼灸によって1000を切って現在は900u/mlまで下がっています。この方は80代の人のため、あまり年齢によって回復できないなど年齢の差はありません。

 

他の4名は500u/ml以下ですが、悪化させたくないために月1回来院しています。

KL−6は鍼灸で下げることができます。これは、鍼灸をすると脳が傷つけられたと認識して鍼をしたところの回復力が増すためです。

 

間質と上皮細胞の中で起きている炎症があったとして、炎症が鍼によって止まってしまえばKL−6も下がります。

 

何が原因で炎症が起きているのかを判断することが必要ですが、当院では特発性の人がほとんどのため、肺の炎症がおさまれば力になれるという認識のもとで鍼灸でのアプローチを行っています。

間質性肺炎は鍼灸の見せ所です。多くの人が呼吸しにくい状態になっていたり慢性的な息切れや咳、だるさに苦しめられています。

 

福島県の医大で教授をしている鈴木教授は、鍼灸師でもあります。鈴木教授は、慢性閉塞性肺疾患に対する鍼灸の有効性をまとめた論文を発表しています。それほど、肺疾患に関して鍼灸は非常に有効なのです。

KL−6を下げる方法

肺兪と三焦兪にせんねん灸をすることです。自分で行うにはなかなか難しい場所ではありますが、家族などに行ってもらうと良いでしょう。

・肺兪

肺の機能を促進させ、刺激すると肺の再生力が上がり元の機能を取り戻しやすいとされているツボです。

 

・三焦

炎症症状がベースになるため、炎症を止めなければいけません。炎症を止める糖質コルチコイドというホルモンがあります。炎症を止めるためにはこのホルモンをたくさん分泌させなければいけないため、副腎皮質というエリアに刺激を与えていかなければいけません。そのために役立つツボです。

間質性肺炎に効果的なツボ

・肺兪

・尺沢

・中脘

・腎兪

・関元

肺兪

肺兪は、ツボの名前に肺が入っていることからもわかるように、風邪や喘息の症状などに効果を発揮するツボです。

 

咳がひどく、息苦しい時などにも非常に効果的です。肺兪は、肺の調子が悪い時に触ると硬くを感じます。

 

間質性肺炎は肺に炎症が起こるため、肺兪を刺激することで症状が和らぐことが期待できます。

尺沢

尺沢は、肺の気の流れの上にあるツボです。肺の気の流れの上にあるということは、東洋医学では咳に関係すると言われています。

 

そのため、尺沢を刺激することは、咳に効果があると言われています。そのため、間質性肺炎の咳の症状にも効果が期待できます。

中脘

中脘の効果は、消化機能をあげることと、胃腸の調整をすることです。お腹全体が張っている時や胃がつかえている感覚がある時にも効果的です。

 

中脘には、横隔膜の動きをスムーズにする働きもあります。横隔膜の動きがスムーズになると、呼吸機能が高まることにつながります。そのため、間質性肺炎にも効果が期待できます。

ツボの位置と押し方

肺兪

肺兪は、背骨と肩甲骨の間の2分の1の部分で、肩甲骨の高さ2分の1の部分にあります。

 

押すときは、誰かに押してもらうと良いでしょう。使い捨てカイロで温める方法も効果的です。使い捨てカイロで肺兪を温めることで、胸まで温まり呼吸がしやすくなります。

尺沢

尺沢は、肘を曲げた時に出来る内側のシワの上にシワの中央から指約2本分親指側に進んだ場所にあるかたい腱の外側にあります。

 

押すときは、内側から肘を包み込むようにして、親指を使って少し強めの力で押します。押したまま、肘を曲げたり伸ばしたりすることもおすすめです。

中脘

中脘は、臍に小指をあて、親指までの指幅5本の場所にあります。探すときは、親指があたっている場所を指で触ったときへこんでいる場所を探しましょう。

 

押して刺激をすることもおすすめですが、カイロや温タオル、お灸などで温めることも非常に効果的です。

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