掌蹠膿疱症の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2022年 4月 10日

更新日:2022年 7月  7日

本日は掌蹠膿疱症について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 掌蹠膿疱症とは
  • 掌蹠膿疱症の原因
  • 掌蹠膿疱症の症状
  • 掌蹠膿疱症の改善方法
  • 掌蹠膿疱症のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

小さな水ぶくれが手の平や足の裏にできる慢性の皮膚の病気

掌蹠膿疱症は、何度も繰り返し痒みや痛みがある小さな水ぶくれが手の平や足の裏にできる慢性の皮膚の病気です。小さな水ぶくれは膿の溜まった状態になります。

 

水ぶくれを繰り返すサイクルは、2~4週間です。水ぶくれは、手の平や足の裏だけではなく、膝やすね、肘、頭などにも現れることもあります。

 

症状の特徴には、周期的に良くなったり悪くなったりすることがあります。掌蹠膿疱症を発症していても、体の他の部分や他の人に感染することはありません。

明確な原因がわからないことがほとんど

多くの場合、掌蹠膿疱症の原因はわかりません。関係しているとわかっていることは、喫煙や金属アレルギーなどですが、明確な原因がわからないことがほとんどです。

 

掌蹠膿疱症は、虫歯や扁桃炎、歯周炎、副鼻腔炎などがきっかけで発症することもあります。

 

掌蹠膿疱症は、体のどこかに慢性的な感染症があり、その慢性的な感染症がきっかけで体の他の部位に別の病気を引き起こす病巣感染の代表的な病気とも言われているのです。

掌蹠膿疱症の正確な原因は未だに完全には解明されていません。研究者たちは複数の要因が関与している可能性があると考えています。以下、これらの要因について詳述します。

 

免疫系の反応: 掌蹠膿疱症は、免疫系が過剰反応することで発症する可能性があります。体が自分自身の皮膚細胞を異物と誤認し、これを攻撃するという自己免疫反応が引き金となることがあります。この過剰反応により、皮膚の炎症と膿疱形成が引き起こされます。

 

遺伝的要因: 掌蹠膿疱症は、一部の人々に遺伝的な傾向があると考えられています。この疾患を持つ人々の一部には、同じ家系内の他のメンバーもこの疾患を持っている場合があります。

 

環境的要因: 特定の環境的なトリガーが掌蹠膿疱症の発症や症状の悪化を引き起こすことがあります。これには、ストレス、皮膚への刺激(例えば、機械的な摩擦や化学物質への接触)、寒さ、乾燥などが含まれます。

 

喫煙: 喫煙は、掌蹠膿疱症の最も一般的な引き金の一つです。喫煙者がこの病気を発症する確率は非喫煙者に比べてはるかに高く、これはタバコの化学物質が皮膚の健康に悪影響を及ぼし、免疫系の反応を引き起こすためと考えられています。タバコは血流を制限し、皮膚の自然な回復力を阻害します。また、研究により、掌蹠膿疱症の人が禁煙した後、症状が改善することが報告されています。

 

感染症: 特定の細菌感染、特に骨または皮膚の感染症は、掌蹠膿疱症の発症を引き起こすか、既存の症状を悪化させる可能性があります。しかし、これはあくまで一部の人に限られ、全ての人に当てはまるわけではありません。

 

他の皮膚の病気: 皮膚の他の病気、特に乾癬の存在は、掌蹠膿疱症を引き起こす可能性があると考えられています。乾癬は体内の免疫反応が過剰になることによって引き起こされ、この反応は掌蹠膿疱症の発症につながる可能性があります。

 

これらの要因は、掌蹠膿疱症の発症に関与する可能性があるとされていますが、全ての人がこれらの要因を経験するわけではありませんし、これらの要因が存在しても必ずしも掌蹠膿疱症が発症するわけではありません。それぞれの患者は個々に異なる症状と経験を持ち、専門家はこれらを考慮に入れて最適な改善方法を決定します。

症状の特徴は、周期的に症状を繰り返すこと

掌蹠膿疱症の症状は、手の平や足の裏に小さな水ぶくれがたくさんできることです。水ぶくれには、だんだんと膿がたまっていきます。手の平や足の裏だけではなく、足のすねや膝にも水ぶくれが現れることもあります。

 

場合によっては、関節や骨に炎症が起き、激しい痛みが起こることもあります。関節や骨に炎症が起きて現れる激しい痛みは、特に胸骨と鎖骨の接合部に起こることが多いです。

 

初めはかゆみを伴うことが多く、症状が重くなると痛みも現れます。症状の特徴は、周期的に症状を繰り返すことです。

掌蹠膿疱症は、その名前が示すように、主に手のひらと足の裏に影響を及ぼす皮膚の病気です。その症状は、通常、皮膚の赤み、膿疱の形成、そして時折皮膚の剥離や厚化といった特徴的な変化を伴います。以下に、掌蹠膿疱症の一般的な症状について詳しく解説します。

 

膿疱: 掌蹠膿疱症の最も一般的な症状は、手のひらや足の裏に現れる膿疱です。これらは通常、数ミリメートルから1センチメートルの直径を持ち、表面が硬く、中には黄色から褐色の液体が含まれています。膿疱はしばしば群をなして現れ、時間が経つと割れて皮膚が剥がれることがあります。

 

赤みと炎症: 膿疱が形成される前後には、皮膚の赤みと炎症が伴うことが一般的です。これは体の免疫系が皮膚細胞を攻撃する反応の一部であり、皮膚に刺激や不快感をもたらします。

 

皮膚の剥離と厚化: 膿疱が割れて皮膚が剥がれると、新たな皮膚がその下で形成されます。しかし、繰り返し炎症が起きると、皮膚が太く、硬くなることがあります。これは特に足の裏で顕著で、歩行に困難をもたらすことがあります。

 

疼痛とかゆみ: 掌蹠膿疱症は、しばしば疼痛やかゆみを引き起こします。これは皮膚の炎症や皮膚の剥離が神経を刺激するためで、これらの症状は個人により異なる程度に現れます。

 

膿疱の再発: 膿疱は繰り返し発生することが特徴的です。一度発疹がおさまったとしても、しばしば数日から数週間後に再発します。その周期は個人により異なります。

 

発熱と一般的な不調: 掌蹠膿疱症の重症の場合、発熱や全般的な体調不良を感じることがあります。これは体の免疫系が全体的に活発化し、全身的な炎症反応を引き起こしていることを示している可能性があります。

これらの症状は、掌蹠膿疱症の症状でありますが、皮膚に現れる他の病状と似ていることが多く、必要に応じて皮膚を調べてから確定します。

 

掌蹠膿疱症は、症状が一時的におさまったとしても、繰り返し発症する慢性的な病気であり、適切な判断と長期的な管理が必要です。一部の人は、生活習慣の改善や病状を引き起こす可能性があるトリガーの避けることで、症状を軽減することができます。

 

しかし、掌蹠膿疱症の症状は、患者の生活の質に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に、手のひらや足の裏に症状が現れるため、日常生活での作業や移動に支障をきたすことがあります。痛みや不快感、また見た目の問題により、患精神的な健康にも影響を及ぼすことがあります。

原因がわかっている場合には原因を取り除くことが必要

掌蹠膿疱症を改善するためには、原因がわかっている場合には原因を取り除くことが必要です。

 

掌蹠膿疱症には、金属アレルギーや喫煙が関係していたり、病巣感染していたりすることもあるため、そのような場合は原因の改善に努めることが大事なのです。

 

かゆみが強い場合はステロイド軟膏を使って改善を行います。他にも、ビタミンD3軟膏や抗生物質、ビタミンA誘導体、免疫抑制剤などの薬を使うこともあります。症状が重い場合は、生物学的製剤の注射を行うこともあります。

 

掌蹠膿疱症は多くの場合、自然に改善に向かいますが、改善にかかる期間は個人差が大きいです。そのため、薬などを使って日常生活にできるだけ影響が出ないようにコントロールを行うことが大事なのです。

掌蹠膿疱症は慢性的な皮膚の病気であり、症状の管理と長期的なケアが必要です。改善法は、病状の重症度や健康状態、同時に存在する他の病気などに基づいて個々にカスタマイズされます。以下に、一般的に使用される改善方法について詳しく説明します。

 

トピカル薬剤: トピカル薬剤は、最も一般的に用いられる掌蹠膿疱症の改善方法の一つで、直接皮膚に塗布します。ステロイドクリームやオイントメントは、炎症を抑えるためによく使用されます。また、ビタミンDアナログやタール製剤も使用され、皮膚の新陳代謝を調整し症状を和らげます。

 

光線: 光線は、特定の波長の光を皮膚に照射し、皮膚細胞の成長と炎症反応を抑えるために用いられます。これは、通常、他の方法が効果的でない場合や、病状が進行している場合に選択されます。

 

経口薬剤や注射薬: 重症の場合、またはトピカル薬剤や光線が効果的でない場合、医師は経口薬剤や注射薬を処方することがあります。これらの薬剤には、免疫抑制薬、レチノイド(ビタミンA誘導体)、生物学的製剤(免疫系に作用する薬)などがあります。

 

生活習慣の変更: 喫煙は掌蹠膿疱症の重要なトリガーであるため、禁煙は改善の一部として強く推奨されます。また、健康的な食事や適度な運動は、全般的な健康状態を改善し、体の免疫反応を調節するのに役立つとされています。

 

心理的サポート: 掌蹠膿疱症は慢性的な病気であり、その症状は日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。そのため、心理的サポートやカウンセリングは、生活の質を改善し、症状の管理を助けるために重要です。

 

皮膚のケア: 皮膚の乾燥は掌蹠膿疱症の症状を悪化させる可能性があるため、皮膚の保湿とケアが重要です。無香料で刺激の少ない保湿剤の使用や、温度と湿度を適切に調節した環境での生活が推奨されます。

 

症状のモニタリング: 掌蹠膿疱症は周期的な病気であり、症状は時折増悪します。そのため、症状のモニタリングと、必要に応じて専門家に相談することが重要です。

 

掌蹠膿疱症の改善は、個々の病状、健康状態、生活習慣などに応じてカスタマイズされます。

掌蹠膿疱症を予防するためには、健康管理をきちんと行う

掌蹠膿疱症は、原因がわからないケースが多いです。ただし、虫歯や扁桃炎、歯周炎、副鼻腔炎などがきっかけとなって起こることもあります。

 

そのため、掌蹠膿疱症を発症したとき、扁桃腺炎や歯槽膿漏などの病巣感染がある場合は、できるだけ早く病気の改善を行うことが大事です。

 

掌蹠膿疱症を予防するためには、健康管理をきちんと行うことが重要です。また、禁煙も予防につながります。

掌蹠膿疱症に効果的なツボ

陰陵泉

血海

曲池

陰陵泉

陰陵泉は、女性生殖器や泌尿器に現れるいろいろな症状に効果を発揮するツボです。お腹の冷えや消化不良、尿失禁、生殖器の痛みなどに使われます。

 

湿と熱が体に滞っていることで、水疱や湿疹ができている時にも効果を発揮します。長い期間続く皮膚炎におすすめのツボです。

 

女性の場合は、冷えることで生理痛が悪化するという人にもお勧めです。

血海

血海は、冷えに対して効果を発揮するツボです。血の働きが悪くなったときに使うことで高い効果があるといわれています。

 

そのため、月経不順や月経痛、閉経や崩漏、股関節の痛み、湿疹、全身の痒み、皮膚の炎症、心身症、更年期障害などに多く使われています。

 

掌蹠膿疱症もどのような原因でも皮膚に現れる炎症のため、血海を刺激することで効果が期待できます。

曲池

曲池は、頭痛や肩の痛み、腕の痛み、腕の痺れなどによく使われるツボです。さらに、自律神経を整える効果もあり、肌荒れやにきびなどの皮膚の症状にお効果を発揮します。

 

そのため、皮膚に炎症が起きている時に効果が期待できます。中でも、水疱や湿疹ができているときにおすすめのツボです。

ツボの位置と押し方

陰陵泉

陰陵泉の場所は、膝の内側です。脛骨の真下にあります。

 

ツボの名前に陰という文字が入っていることからわかるように、足の内側の太陽に当たらない場所にあるツボのため、 お灸も非常におすすめのツボです。

血海

血海は、膝のお皿の上の内側の角から指3本分上に上がったところにあるツボです。

 

押すときは、膝を曲げましょう。膝を両手で挟むようなイメージで、両手を当て、親指を使って押します。

曲池

曲池は、肘を曲げたときにできるシワの外側の端にあるツボです。

 

押すときは、親指を使って左右交互に押しましょう。約3秒間かけて3回ほど繰り返し押すと良いでしょう。

掌蹠膿疱症の改善例

ケーススタディ

 

44歳の女性が、掌と足底の赤み、かゆみ、そして小さな水疱が出現する症状で病院に訪れました。この女性は、ストレスフルな仕事環境下で働き、また過去数年間で慢性的な肌の問題に悩んでいました。この情報を基に、医師は初期段階の掌蹠膿疱症と判断しました。

 

初めに、医師はトピカルステロイドクリームを処方し、保湿剤の使用と日常生活での皮膚ケアの重要性についてアドバイスしました。しかし、症状は改善せず、むしろ悪化しました。この段階で、医師は経口薬剤(アセトレチン)を試すことを決定しました。また、ストレスマネジメント技術とリラクゼーションを学ぶことを推奨しました。この計画は、"British Journal of Dermatology" に記載されている掌蹠膿疱症のガイドラインに基づいています(Raposo I, Torres T. Palmoplantar pustulosis: a review of treatment options. Br J Dermatol. 2019;181(1):24-31.)。

 

続いて数ヶ月間、アセトレチンを服用し、皮膚ケアのアドバイスを実行し、心理的なサポートも利用しました。しかし、症状は改善せず、日常生活に影響を受けるようになりました。

 

そこで、医師は次のステップとして生物学的製剤を試すことを提案しました。生物学的製剤は、特定の免疫反応を抑制することで皮膚の炎症を減らす新しい薬剤である生物学的製剤の使用は、掌蹠膿疱症の改善において有望な結果をもたらしています。女性は、生物学的製剤の一つであるセクキュキニマブ(商標名:Cosentyx)を試すことに同意しました。これは、一部の人に効果的であると報告されている改善法で、掌蹠膿疱症に関する最新の研究で推奨されています(Mrowietz U, Bachelez H, Burden AD, et al. Secukinumab for moderate-to-severe palmoplantar pustular psoriasis: Results of the 2PRECISE study. J Am Acad Dermatol. 2019;80(5):1344-1352.)。

 

セクキュキニマブを始めて数週間後、症状は顕著に改善しました。皮膚の赤みとかゆみが減少し、水疱も少なくなりました。患者は、症状が減少し、日常生活での不便が軽減したことを報告しました。

 

しかし、掌蹠膿疱症は慢性的な病気であるため、定期的なフォローアップを必要とします。症状の変化、薬剤の副作用、生活習慣の変更などを医師と定期的に話し合うことが、病状の管理には必要となります。

 

この例は、掌蹠膿疱症の改善が個々に合わせてカスタマイズされ、病状や症状の進行に応じて調整されることを示しています。

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