公開日:2021年 5月23日
更新日:2022年 1月14日
今日は気分循環性障害について解説させていただきます。
☆本記事の内容
・気分循環性障害とは
・気分循環性障害の原因
・気分循環性障害の症状
・気分循環性障害の改善方法
・気分循環性障害のまとめ
気分循環性障害は、気分が不安定になり、軽い躁状態と軽い抑うつ状態を規則的に繰り返す病気です。
躁状態と抑うつ状態の間は、それぞれの症状が現れますが、症状はそれほど重くありません。躁うつ病とも似ていますが、躁うつ病に比べて、気分循環性障害は症状が軽く気分変動も激しくありません。
症状が軽く気分の変動も激しくないことから、気分循環性障害は気がつくことが難しい病気です。気分の不安定さが異常であるということになかなか気がつくことができないのです。
好発年齢は、5〜25歳であるとされていますが、何歳であっても発症する可能性はあります。
気分循環性障害の原因は明らかになっていません。
しかし、気分循環性障害を発症している人の家族にも気持ちの浮き沈みが激しい人がいるケースも多く見られることから、遺伝的なことも関係があると考えられています。
他にも、家庭状況や子どもの頃の体験などの影響も発症に関係していると言われています。
家族が役割を果たせていない家庭で育った場合や幼少期のトラウマによって感情のコントロールができずに育った場合に起きやすいのです。
・ 遺伝的要因
気分循環性障害や双極性障害の家族歴がある場合、発症リスクが高まります。特に親や兄弟に同じ障害がある場合に、遺伝的な関連が強く示唆されています。
・神経伝達物質の不均衡
セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が気分調節に重要な役割を果たします。セロトニンやドーパミンの機能異常が、気分の変動に寄与していると考えられています。
・脳の構造と機能
前頭葉、扁桃体、海馬など、感情制御や気分調節に関与する領域の機能異常が報告されています。ストレスホルモンの過剰分泌が、気分の変動を引き起こす可能性があります。
・感情的に敏感な人
他人の感情に敏感で、喜びや悲しみを強く感じる人は感情の振れ幅が大きいため、気分の波が慢性的に続きやすいです。
・衝動的な性格
衝動的に行動する傾向が強い人は軽躁状態での無謀な行動が、トラブルやストレスを引き起こしやすいです。
・完璧主義
自分自身や周囲に高い期待を持ち、それを達成できないと強い挫折感を感じる人は成果や結果へのこだわりが過剰で、気分変動を悪化させることがあります。
気分循環性障害の症状は、軽い躁状態と軽いうつ状態を繰り返すことです。症状は双極性障害と似ていますが、双極性障害ほど症状は重くありません。
気分循環性障害では、特にきっかけとなる出来事がなくても気分が動揺するようになります。
気分の不安定さによって、人間関係の構築に問題が起きることも多いです。人間関係が壊れたり仕事を辞めてしまったりして、アルコールや薬物依存につながってしまうこともあります。
性格の問題であると思い詰めて、自殺を考えほど苦しんでしまうこともあります。不安障害や摂食障害などいろいろな精神的な病気につながることがあります。
・軽躁状態の症状
軽躁状態は、通常の気分よりも明るく、活動的な状態が続きますが、社会的・職業的機能に大きな支障をきたすほどではありません。ただし、周囲からは「少し異常」と見られることがあります。
① 気分の高揚
明るく、幸福感が増す。周囲から見て過度に楽観的、または興奮しているように見える。
② エネルギーと活動の増加
睡眠時間が少なくても疲れを感じない。過剰に活動的になり、次々と新しいことに手を出す。
③ 話し方の変化
話すスピードが速くなり、周囲の人がついていけないことがある。次々と話題が変わる。
④ 自信過剰
自分の能力を過大評価し、無謀な行動を取る。
⑤ 衝動的な行動
リスクを考慮せずに行動する。
⑥ 注意散漫
一つのことに集中できず、次々と別のことに興味を移す。
・軽度の抑うつ状態の症状
軽度の抑うつ状態は、重度の抑うつエピソードほど深刻ではありませんが、日常生活に支障をきたします。
① 気分の低下
常に悲しみや空虚感を感じる。周囲の出来事や人間関係に対して興味や喜びを感じられない。
② 疲労感とエネルギー不足
小さなことでも疲れる。何かを始めるのが困難。
③ 睡眠の問題
過眠または不眠。
④ 自尊心の低下
自分を過小評価する。過去の失敗について繰り返し考える。
⑤ 集中力の低下
仕事や学業に集中できない。決断が遅れる、または間違った決定を下す。
⑥ 食欲の変化
食欲不振または過食。体重の増減が見られる。
・軽躁状態と抑うつ状態の交互のパターン
気分循環性障害の特徴は、軽躁状態と軽度の抑うつ状態が交互に現れることです。
① 交互の頻度
気分の変動は数日から数週間単位で起こる場合があります。良い日と悪い日が交互に現れる。
② 完全な回復がない
軽躁状態でも抑うつ状態でもない通常の気分の期間が短い。気分が常に揺れ動いている感覚がある。
・社会的・職業的な影響
① 対人関係の問題
気分の変動によって、他者との関係が不安定になる。軽躁状態では過度に親しげに振る舞い、抑うつ状態では孤立することがある。
② 職業的なパフォーマンスの低下
軽躁状態では無謀な行動を取り、抑うつ状態では集中力ややる気を失う。長期的には信用や評価を損なうことがある。
③ 自己破壊的行動
衝動的な行動や過剰な感情表現によって、トラブルを引き起こすことがある。
気分循環性障害の改善方法は、薬と精神的な方法、生活習慣の改善です。改善方法は、躁状態と抑うつ状態の症状の強さによって選ばれます。
一般的に使われる薬は、気分安定剤と抗躁薬です。気分循環性障害は、うつ病や双極Ⅱ型障害につながることもあります。そのため症状や経過をきちんと間接することが重要です。
精神的な方法で行われることは、物事の捉え方や現実の受け止め方などの認知に焦点を当てて、行動パターンを変えることです。行動パターンが変わると気持ちが楽になることが多いのです。
思考や行動の癖を自分自身で認識し、ストレスに耐えることのできる心と体にしていくことが大事です。
気分循環性障害では認知に偏りがあります。自分の認知を自分自身で認識し、偏りを正すことが必要になるのです。
・気分安定薬
気分の波を安定させることを目的に使われます。
リチウム: 気分変動を抑え、躁や抑うつへの移行を防ぐ。
バルプロ酸: 軽躁状態の症状を軽減。
・抗うつ薬
抑うつ症状を軽減するために使われます。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬): フルオキセチン、セルトラリン。
・抗不安薬
不安感や神経過敏を軽減するために使われます。
ジアゼパム、ロラゼパム:睡眠の改善や過剰な不安感の緩和。
健康的な毎日を送ることも気分循環性障害の改善には非常に重要です。そのため、生活習慣の見直しも効果的であると言われています。
睡眠時間を決めたり、適度な運動を続けたり、栄養のある食事をしたり、アルコールの摂取をやめたり、少しでも生活習慣を規則正しくすることで改善につながるのです。
気分循環性障害の改善には長い時間がかかります。焦らずに気長に病気と向き合って改善を続けていきましょう。
・睡眠の改善
① 規則的な睡眠スケジュールを守る
毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣をつける。
② 質の高い睡眠を確保
就寝前の1時間はリラックスできる活動を行う。スマホやPCなどの電子機器を就寝直前に使用しない。
③ 睡眠環境の整備
暗く静かな寝室を保つ。快適な寝具を使用する。
・適度な運動
① 定期的な有酸素運動
ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどを週3~5回行う。
② ストレッチやヨガ
軽い運動で心身をリラックスさせる。
③ 無理のない運動量を設定
無理なく続けられる範囲で運動する。
・健康的な食生活
① バランスの取れた食事
野菜、果物、全粒穀物、タンパク質、健康的な脂肪をバランスよく摂取する。
② セロトニンを増やす食品の摂取
バナナ、ナッツ、魚、豆類、乳製品などを取り入れる。
③ カフェインとアルコールを控える
コーヒーやエナジードリンクの摂取を減らし、アルコールも控える。
④ 食事時間を規則的にする
毎日決まった時間に食事を摂る。
・ストレス管理
① リラクゼーション法を取り入れる
マインドフルネス瞑想や深呼吸、アロマセラピーを日常生活に取り入れる。
② 趣味やリフレッシュの時間を確保
好きな趣味やリラックスできる活動を取り入れる。
③ 過度な負担を避ける
スケジュールを詰め込みすぎない。
・規則的な生活リズムの確立
① 一貫したスケジュールを維持
起床、食事、運動、仕事、休息、就寝の時間を毎日ほぼ一定に保つ。
② 休息の確保
無理をせず、適切な休息を取る。
気分循環性障害は、気まぐれな人に見られてしまうことも多いです。自分自身でも病気であるということに気が付きにくいです。
他人と上手にコミュニケーションが取れない、気分が不安定で自己嫌悪になる、などの悩みを抱えている場合は気分順循環性障害を疑いがあります。
気分の不安定さが生活に影響していると思う場合は、病院に相談に行くことをお勧めします。適切に改善を行うことで、生きやすくなる可能性が十分にあります。