公開日:2021年 9月10日
更新日:2021年 10月23日
本日は混合性結合組織病について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
混合性結合組織病は自己免疫の病気であると考えられています。
しかし、どうして自己抗体ができてしまうのかについて詳しいことは分かっていないのが現状です。さらに、抗U1-RNP抗体が体を傷つけているという証拠も特にありません。
混合性結合組織病は今の明らかになっていないことがたくさんある疾患なのです。
混合性結合組織病は、免疫系が過剰に反応し、さまざまな組織や臓器に炎症を引き起こす自己免疫性の病気の一つです。この病気の正確な原因は明確にはわかっていませんが、複数の要素が関与していると考えられています。以下に、MCTDの主な原因について詳しく説明します。
免疫系の異常
MCTDの発症には免疫系の異常が関与しています。正常な状態では、免疫系は異物や異常な細胞を検出し、排除するために正確に調節されています。しかし、MCTDでは、免疫系が過剰に活性化し、正常な組織や細胞を攻撃することがあります。
具体的には、自己抗体と呼ばれる異常な抗体が生成されます。これらの抗体は、体内のタンパク質や核酸に対して異常な反応を起こし、炎症や組織の損傷を引き起こす可能性があります。免疫系の過剰な反応と自己抗体の産生は、MCTDの病態生理の一部とされています。
遺伝的素因
MCTDは遺伝的な素因も関与している可能性があります。遺伝的な要素は、個人が免疫系に対して感受性を持つかどうかに影響を与えることがあります。特定の遺伝子の変異や遺伝的な傾向が、MCTDの発症リスクを増加させる可能性があります。
しかし、MCTDの遺伝的要素はまだ完全には解明されていません。遺伝子研究や遺伝的なリスク要因の特定により、MCTDの発症メカニズムに関するより詳細な情報が得られる可能性があります。
環境要因
環境要因もMCTDの発症に関与する可能性があります。特定の環境要因やトリガーが、MCTDの発症や症状の悪化に関与すると考えられています。以下にいくつかの環境要因の例を挙げます。
感染症: 特定のウイルスや細菌感染が、免疫系の異常な反応を引き起こし、MCTDの発症を促す可能性があります。ただし、具体的な感染症との関連性はまだ明確には確立されていません。
紫外線曝露: 長期間の紫外線曝露がMCTDの症状の悪化を引き起こす可能性があります。紫外線は免疫系を刺激し、自己抗体の生成や炎症反応を促進することが知られています。
化学物質: 一部の化学物質や有害物質に長期間曝露されることが、MCTDの発症や症状の悪化と関連する可能性があります。ただし、具体的な化学物質との関連性についてはさらなる研究が必要です。
これらの要因がMCTDの発症にどのように関与しているかは、まだ完全には解明されていません。MCTDの原因は多因子的であり、免疫系の異常、遺伝的素因、環境要因の相互作用によって引き起こされると考えられています。
混合性結合組織病の症状は、全身性エリテマトーデスや強皮症、多発性筋炎のような症状が混ざって、いろいろな症状が現れます。
現れる症状の一つは、レイノー現象です。現れる時間は数分から数十分で、冷感やしびれ感も現れます。レイノー現象は、ほとんどの混合性結合組織病で現れる症状です。
手の指や手の腫脹も現れます。これは、8〜9割に現れる特徴的な症状です。
SLEに似た症状では、多発関節炎やリンパ節腫脹、顔面紅斑や心膜炎、胸膜炎が見られます。蛋白尿や血尿などの腎炎症状が現れることもありますが、SLEに比べて程度は軽くネフローゼ症候群や腎不全が起こることは少ないです。
強皮症に似た症状では、手の指の皮膚硬化、肺線維症、食道運動機能の低下などが見られます。6〜8割に消化管病変が現れます。食道病変があると、胸焼けや食べ物を飲み込む時のつかえ感が現れます。
腸の病変があると、便秘や下痢が起こります。間質性肺疾患では乾いた咳や動いた時の動悸や息切れを感じることもあります。
多発性筋炎に似た症状では、腕や脚の筋力の低下が現れます。立ち上がれなくなったり今まで持てていた物が持てなくなったりしますが、全く立てなくなったり、寝たきりになったりすることは非常に珍しいです。
肺動脈性肺高血圧症を合わせて起こすこともあります。肺動脈性肺高血圧症は命に影響を及ぼす危険な病気です。この場合、初期症状として疲れやすくなったり動いた時に動悸や息切れを感じたりする症状が現れることが多いです。
頻度は少ないですが、無菌性髄膜炎が誘発されることもあります。無菌性髄膜炎は、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬を使うことによって起こります。肺動脈性肺高血圧症が無菌性髄膜炎を引き起こすこともあります。
約1割には、 三叉神経障害も見られます。三叉神経障害は比較的に混合性結合組織病の特徴的な症状で、片側性で顔の下の方に現れやすいです。
混合性結合組織病は、多くの場合、免疫系の過剰反応によって引き起こされる自己免疫性の病気です。MCTDの症状は多岐にわたり、異なる組織や臓器に影響を及ぼす可能性があります。以下に、MCTDの主な症状について詳しく説明します。
全身症状
これには疲労感、倦怠感、発熱、筋肉の痛みやこわばり、関節の痛みや腫れが含まれます。これらの症状は、免疫系の過剰反応や炎症の結果として現れることがあります。
皮膚の症状
特に顔や指の先、手の甲に好発し、以下のような症状が見られることがあります。
光線疹(光線過敏性皮膚炎): 紫外線によって引き起こされる皮膚の発疹や炎症。日光にさらされると赤み、腫れ、かゆみ、水疱などの症状が現れることがあります。
手指のチンキン色: 手指の関節付近や手の甲に、紅斑や乾燥した皮膚が現れることがあります。これは、特定の自己抗体によって引き起こされるものとされています。
胸部紅斑: 胸部や頬に紅斑が出現することがあります。これは、紅斑狼瘡に似た症状であり、MCTDの特徴的な皮膚症状の一つです。
関節症状
関節の痛みや腫れ、こわばりを経験することがあります。これは関節リウマチに似た症状であり、免疫系の異常によって関節組織が攻撃される結果として現れることがあります。関節の痛みや腫れは通常、朝起きた時や長時間の活動後に悪化する傾向があります。また、関節のこわばりや可動域の制限も見られることがあります。
肺および心血管系の症状
MCTDでは、肺や心血管系に関連する症状を経験することがあります。肺炎や気管支炎、肺動脈高血圧症などの呼吸器症状が現れることがあります。また、心臓の炎症や弁膜症、心筋症などの心血管系の合併症も見られることがあります。
消化器症状
食欲不振、吐気、腹痛、下痢、食道逆流症などの症状が見られることがあります。これは、免疫系の過剰反応が消化器系の組織に炎症を引き起こす結果として現れることがあります。
神経症状
これには手のしびれや知覚の変化、筋力の低下、頭痛、てんかん発作などが含まれます。これらの症状は、神経組織への炎症や自己抗体の影響によって引き起こされることがあります。
他の症状
他にも、リンパ節の腫れ、口内炎、貧血、血小板減少症、腎臓の損傷などが含まれます。
MCTDの症状は個人によって異なり、症状の程度や範囲も異なる場合があります。また、症状は時間とともに変化することもあります。一部では、特定の症状が支配的に現れる場合もありますが、他では複数の症状が同時に現れることがあります。
混合性結合組織病は原因がわかりません。そのため、主な改善方法は、症状に対して副腎皮質ステロイドなどを使って免疫を抑制する方法です。
レイノー現象など末梢循環障害は、冷やさないことが大事です。症状がひどい場合には血管拡張薬や抗血小板薬を使います。胸膜炎や軽症筋炎などには副腎皮質ステロイドを使って改善を行います。
出血のある血小板減少症やネフローゼ症候群、重症筋炎、間質性肺炎急性増悪、中枢神経症状などがある場合は、大量の副腎皮質ステロイド大量を使って改善を行い、肺動脈性肺高血圧症には肺血管拡張薬を使って改善を行います。
無菌性髄膜炎に対しては非ステロイド性抗炎症薬など原因となる薬がある場合は薬を中止します。混合性結合組織病によって起きている場合は副腎皮質ステロイドを使って改善を行うことが多いです。
三叉神経障害には、副腎皮質ステロイドの効果はあまりないと言われているため、特発性三叉神経痛に準じてカルバマゼピン、フェニトイン、プレガバリンなどを使って改善を行います。
混合性結合組織病は、免疫系の過剰反応によって引き起こされる自己免疫性の病気であり、症状の管理と病状の進行の抑制を目指した改善方法が重要です。
1. 薬
抗炎症薬: MCTDには非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用されることがあります。これらの薬物は関節痛や炎症の軽減に効果があります。
ステロイド薬: ステロイド薬は免疫抑制効果があり、炎症を抑えるために使用されます。症状が重篤な場合や他の薬が効果的でない場合には、ステロイドの短期間の使用が検討されることもあります。
免疫抑制剤: 免疫系の過剰な反応を抑えるために、免疫抑制剤が使用されることがあります。メトトレキサートやアザチオプリンなどの薬物が一般的に使用されます。これらの薬物は免疫活性を抑制し、炎症の進行を抑える効果があります。
抗マラリア薬: 抗マラリア薬であるヒドロキシクロロキンは、免疫調節作用や炎症抑制作用があり、MCTDの症状の改善に役立つことが報告されています。
2. 症状に対して行う方法
疼痛管理: 関節痛や筋肉痛などの痛みを軽減するために、鎮痛剤が使用されることがあります。適切な鎮痛剤の選択と使用法は、症状と個別の要件に基づいて行われます。
皮膚症状の管理: 皮膚症状に対しては、保湿剤やステロイドクリームの使用が一般的な方法として使用されます。日焼け止めや適切な皮膚の保護も重要です。
呼吸器症状の管理: 呼吸器症状に対しては、気管支拡張剤やステロイド吸入薬が使用されることがあります。肺炎や気管支炎などの合併症に対しては、適切な抗生物質が処方されることもあります。
心血管系の管理: 心血管系の症状には、心臓の炎症や弁膜症の治療が含まれます。これには抗炎症薬や免疫抑制剤の使用が検討されることもあります。
3. サポート
経済的および感情的なサポート: 生活にも広範な影響を及ぼすことがあります。経済的な問題や心理的なストレスに対しては、社会的な支援やカウンセリングを提供することが重要です。
適切な運動とリハビリテーション: 適度な運動やリハビリテーションプログラムは、関節の可動域を維持し、筋力を向上させるのに役立ちます。適切な運動プランは、症状と体力に応じて設計されます。
定期的なフォローアップ: MCTDの管理には、定期的なフォローアップが重要です。また、定期的に調べることも大事です。これにより、病状のモニタリング、薬の効果の評価、合併症の早期発見と管理が可能となります。
改善の計画は個別に応じて調整されます。
混合性結合組織病で現れるSLEや多発性筋炎に似た症状は改善を行うことでよくなります。
しかし、レイノー現象や手指腫脹、強皮症に似た症状は副腎皮質ステロイドは残ることが多いと言われています。改善を行っている時、副腎皮質ステロイドなどの量を減らしているときに再び症状が現れることも多いです。
混合性結合組織病は以前は命の危険はあまりないとされていました。しかし、1997年の調査で5年生存率が93.7%と命に関わる場合もあるということがわかりました。
命に関わる危険があることは感染症です。中でも1番多いのは呼吸器感染症です。さらに、肺動脈性肺高血圧症は命に関わるリスクが4.5倍以上上がるということもわかっています。
ケース1: 関節痛と皮膚症状が主訴の場合
Aは、関節痛と皮膚の乾燥、発疹を主訴として受診し、MCTDの判断が確定しました。Aの改善の計画は以下の通りでした。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の処方:関節痛の軽減のために、痛みや炎症を抑えるNSAIDsが処方されました。
ステロイドクリームの使用:皮膚の乾燥や発疹の症状を緩和するために、Aにはステロイドクリームが処方されました。これにより、皮膚の状態が改善しました。
定期的なフォローアップ:Aは定期的なフォローアップを受け、症状の経過をモニタリングしました。必要に応じて計画の調整が行われました。
ケース2: 呼吸器症状と心血管症状が主訴の場合
Bは、呼吸困難や心臓の痛みを主訴とし、MCTDによる肺炎と心臓の炎症が確認されました。Bの改善の計画は以下の通りでした。
入院:Bは入院し、適切な酸素の補充や抗生物質が行われました。肺炎の症状は改善し、呼吸器症状が軽減しました。
免疫抑制剤の開始:肺炎の改善後、Bは免疫抑制剤(メトトレキサート)の処方を開始しました。これにより、免疫系の過剰反応が抑えられ、心臓の炎症が軽減しました。
心血管症状の管理:心臓の痛みや不整脈などの症状の管理のために、必要に応じて心血管専門医との協力が行われました。必要に応じて、抗炎症薬や免疫抑制剤の調整が行われました。
フォローアップ:Bは退院後、定期的なフォローアップを受け、症状や炎症の経過をモニタリングしました。必要に応じて改善計画の調整が行われました。
ケース3: 全身症状と腎臓症状が主訴の場合
Cは、全身的な症状(倦怠感、発熱、関節痛)および腎臓の異常を主訴とし、MCTDによる腎臓の損傷が確認されました。Cの改善の計画は以下の通りでした。
ステロイドの開始:全身症状および腎臓の損傷の管理のために、高用量のステロイド薬(プレドニゾロン)が処方されました。
免疫抑制剤の追加:ステロイドのみでは症状の管理が不十分であったため、免疫抑制剤(シクロフォスファミド)が追加されました。これにより、免疫系の過剰反応が抑えられ、腎臓の損傷が進行するのを防ぐことができました。
腎臓専門医との協力:Cは腎臓専門医との協力のもと、腎機能のモニタリングと改善の調整が行われました。
サポート:必要に応じて、腎臓保護のための特定の食事指導や液体摂取量の調整が行われました。