小腸【五臓六腑・東洋医学の捉え方】

公開日:2022年 1月18日

更新日:2022年  2月2日

本日は「小腸」ついて解説させていただきます。

従来の西洋医学においての病気の診断というのは、身体診察や検査などのデータなどにより特別な原因物質のみを取り上げて、身局所的、理論的に分析していきますが、東洋医学ではそれらの原因物質のみにとらわれず、身体の不調に対する根本的な原因を探るため、患部だけではなく全身を診てから治療法を判断します。  

からだの不調を診断する際は、衰弱していると見られる臓腑の相克・相生関係にある臓腑も同時に診ていきます。両方の機能を高めることで、また衰弱しそうになった際にもカバーできる体にしようと試みます。 

☆本記事の内容

  • 東洋医学の「小腸」とは
  • 西洋医学の「小腸」とは
  • 「小腸」の機能や他の臓腑との関係性
  • 「小腸」の機能が弱っている際のサイン
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

 

動画でもご説明しておりますのでこちらもご参考くださいませ。

 

本記事は、現代医学でいう"小腸"の機能ではなく、東洋医学の観点からの「小腸」の役割について掲載しております。内容をより理解しやすくするためには、「東洋医学」の記事を先にお読み頂くことをお勧めします。

五臓六腑の「腑」とは

東洋医学の“臓腑”というのは西洋医学の臓器とは概念が似ているようで異なります。

「五臓六腑に沁みわたる」などと言いますが、これは東洋医学で、五臓(肝・心・脾・肺・腎)と六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)を意味しています。

 

食べ物や空気から栄養を作ったり運んだり、貯蔵したりする器官といえます。 食べ物や飲み物の栄養が気や血に変わる過程をたどると、まずは六腑が消化吸収を行い、 その栄養を五臓が受け取って、身体活動のガソリンともいえる気・血・津液を生みます。

“腑”とは内部が空洞の臓器のことを指します。飲み物を受け入れ、これを消化していて次の器官に送るとともに、水分の吸収や排泄に関与しています。

五臓六腑の“六腑”とは胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦のこと。対して“五臓”は 中身が詰まった臓器であり、肝・心・脾・肺・腎のことを指します。

 

西洋医学では、内臓器官を個々の独立している物質としてみていますが

東洋医学の「五臓六腑」は臓器を単なる個体としての捉え方だけではなく、生理機能の面からも含めて考えます。

「小腸」の機能

口から入った飲食物は、一旦胃に留まり、そこで大雑把な消化を行った後、小腸に送られます。

 

そして小腸では、必要な栄養素と不純物とを分け、必要な物質は吸収し、その後大腸に送り、大腸では小腸から受けとった物を大便にし外に排泄します。

 

東洋医学において小腸の機能は“泌別”と言われ、身体に要るものと要らない物を分ける働きがあると考えられてきました。小腸と大腸は管の形態をしており、形こそ似ていますが、小腸は大腸と比べ曲がり度合いが強く、細く長い傾向にあるため、飲食物の滞在時間が大腸に比べ長時間です。逆に考えてみると、小腸では、消化や栄養素の吸収、不純物の判別など多くの作業をしているため、細長く、滞在時間も長時間ということになります。

 

 “脾”のページでも解説しておりますが、脾は食べた物を上に送る働きがあります。これは、脾の上に位置する臓器で全身に血液を届けるという、生命を維持する上で最も重要な働きを担う、“心・肺”に栄養を送らなければいけないので、食べた物を栄養としていくのには脾の働きが非常に重要になっています。

逆に、小腸は食べた物を下に送る働きがあります。胃の影響を受けながら、食べた物を大腸に送ります。

西洋医学においての「小腸」

 

 

小腸は空腸と回腸を含む十二指腸までの部分を指し、長さ6メートルほどの臓器です。

食べ物は胃で消化されますが、それらをさらに分解し大切な栄養素を吸収する働きをしております。

小腸の表面には、無数の毛があり(腸絨毛という)より多くの栄養素を効率的に吸収できるような構造になっています。

吸収するのは飲食物に含まれる水や五大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラル)などです。

胃での消化は酸性のみです。膵臓から出たアルカリ性の消化液が小腸で混じることで消化が完了します。つまりどちらかが崩れると消化不良を起こします。

 

消化不良の状態では、身体は満足な栄養分を吸収できません。

ー免疫機能に深く関わるー

小腸でもう一つ重要なのが免疫システム。身体の免疫の約50%は小腸に集中しています。

小腸には“パイエル板”という組織が存在しますが、そこにいる免疫細胞は異物を見つけ出すとその情報を司令部である細胞に伝達します。

細胞の司令部から異物を攻撃する細胞へ情報が伝わり、抗体をつくりだす細胞が活動を始めます。この細胞が作った抗体が異物を攻撃する働きをします。

 

これらの免疫システムの仕組みをコントロールするために働くのが腸内環境に住む善玉菌です。

病原体やウイルスの侵入を防ぐため抗体の一つであるIgAというタンパク質が働いています

IgAは鼻汁、涙腺、唾液、消化管、膣など、全身の粘膜に存在しており、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合し、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化して感染しないように阻止しているのです。

 

そして、そのIgAの産生を増強するのが短鎖脂肪酸という腸内細菌によって作り出される物質です。

 

短鎖脂肪酸を作り出す細菌は食物繊維やオリゴ糖をエサとしています。腸内細菌に分解されることで生成され、大腸の蠕動運動をも促す働きをします。

短鎖脂肪酸は食酢やバターなどの食品にも含まれていますが、バターは高カロリーですし、食酢には強い刺激がありますので、短鎖脂肪酸のメリットよりも偏った食事バンスのデメリットが上回ってしまう恐れがあります。

短鎖脂肪酸を生成しやすい身体を作るためには、腸内細菌を増やす食品を積極的に摂取するのがよいでしょう。

別の臓腑との関係性

東洋医学の五行の関係では、胃と小腸は「相性関係」にあります。つまりどちらかが不調だともう片方も崩れてしまいます。

 

そして小腸では必要な栄養や水を吸収しますが、水は吸収したら津液となり、全身に送り込まれます。水分を排泄させる機能は腎が関わるので、小腸と腎は協調して働いています。

 

小腸は飲食物から水と栄養素、排泄させる不純物を分けていくのですが、それらの物を変化させて分けていくためには、エネルギーとなる熱が必要になるので、“心”と表裏の関係にあります。心の熱は下に向い、腎を温めると同時に小腸のエネルギーとなり、身体に入ってきた飲食物を液体と固形物とに分けています。

「小腸」が弱っている際のサイン 

前述したように、小腸は胃で軽く消化されていた食べ物・水分を更に消化・吸収し、必要な栄養素・水分と、要らないものに分けています。そして栄養素は吸収をし、不要な固形物や水分をそれぞれ大腸と膀胱に送ります。

小腸の機能が衰弱してしまうとこの一連の流れに影響を及ぼします。小腸の尿量調節と水分吸収の機能により、尿の量や便の硬さが決まっているので、液状の便・もしくは乾燥した便、尿が少ない、尿が濃い、尿道の痛み、などが続く場合、悲鳴を上げているサインだと考えてよいでしょう。

 

また、小腸は※“心”と表裏の関係にあると説明しましたが、両者は循環器、神経や心に影響を及ぼす部分です。そのため心や小腸に不調が出やすい人は、デリケートな方、またはストレスフルな環境に置かれている方に多く見られます。悩み過ぎて眠れない、心配事があり胸が重くる、といったような状態が続くと、小腸や心の機能が低下しているサインであり、排尿便の機能低下や動悸や息切れ、悪汗などといった症状も顕著に表れやすくなります。

※「心」のページをご覧ください

東洋医学は検査器具がない時代に成立したものです。

人体の機能や働きを、人の精神活動や自然など外から推測し、実際の身体の構造、症状と合わせながら成り立ってきました。

そして現代の中医学は、現代医学の働きも合わせながら上手く整合性を取っています。現代医学と東洋医学のエッセンスをそれぞれ融合しつつ、それぞれの身体に合う治療法を一緒に考えていきましょう。

まとめ

本ページをまとめます。

  • 小腸は身体に要るものと要らない物を分ける働きがある
  • 小腸は免疫機能に深く関わっている
  • 小腸は“心”と表裏関係にあり、神経やこころに影響を及ぼしやすい

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