公開日:2022年 6月 5日
更新日:2025年 7月 8日
本日は外傷性肩関節脱臼について解説させていただきます。
本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
外傷性肩関節脱臼の原因は、関節で肩甲骨に連結されていた上腕骨頭が関節の外に押し出されることです。
上腕骨頭が関節の外に押し出される要因は、肩関節が外部から強い力を受けて外転させられたり伸展させられたり外旋させられたりすることなどです。
そのため、外傷性肩関節脱臼は、肩関節が外部から強い力を受けることの多いラグビーやアメリカンフットボールや柔道、レスリングなどのコンタクトスポーツ、スキーやスノーボードなどで起こることが多いです。
ラグビーやアメリカンフットボールや柔道、レスリングなどのコンタクトスポーツでは競技を行なっているときに受ける強い衝撃で発生することが多く、スキーやスノーボードなどでは転倒したときにかかる力で発生することが多いのです。
転んだり、交通事故にあったりした時に起こることもあります。1度脱臼が起こると、その後は弱い力でも脱臼が起こることが増えるケースが多いです。
① 転倒、転落
手をついて転んだときに、肩に強い衝撃が加わります。特に腕を外側に広げた状態と後ろにそらした状態で倒れると脱臼しやすいです。
② 接触型スポーツ
ラグビー、柔道、アメフトなどでのタックルや投げ技による強い力で腕が押し出されたりねじられるような方向に外力が加わったりすることが原因になります。
③ 交通事故
バイクや自転車、自動車事故などでの肩部打撲などが原因で起こります。シートベルトで上腕が固定されながら体が前方に投げ出されると、肩関節に剪断力がかかります。
④ 重い物を支えようとしたとき
高いところの荷物を支えようとして、肩に引っ張る力がかかります。特に高齢者では骨や靭帯が弱っており、比較的軽い力でも脱臼することがあります。
外傷性肩関節脱臼の症状は、肩関節の痛みや腫れ、変形です。さらに、関節の可動域の制限も起こります。
脱臼した時に神経に損傷が起こると、肩にしびれや血行障害が現れることもあります。
上腕骨頭が外れる方向で多い方向は、肩の前です。肩の前方方向に外れる脱臼を前方脱臼と言い、より多い頻度で起こります。肩の後ろに外れることもあり、これを後方脱臼と言います。
1. 激しい肩の痛み
発生直後から急激で鋭い痛みが起こります。特に肩の前方~外側に強い痛みが起こり、肩が抜けた、ズレた感じがすると訴えることが多いです。
2. 肩の変形
通常の肩の丸みが消失し、平坦、角ばったような印象になります。前方脱臼では、鎖骨の下あたりに上腕骨頭が触れることもあります。
3. 自力で腕が動かせない
自分で動かすことが著しく制限され、角度によっては激痛で全く動かせなくなります。他人が動かしても激しい抵抗があります。
4. しびれや知覚鈍麻
特に腋窩神経が圧迫または伸展されることで生じやすいです。肩の外側にしびれや感覚の低下が起こります。重症例では筋力低下や麻痺を伴うこともあります。
5. 腫脹、内出血
脱臼に伴って血管や軟部組織が損傷します。数時間以内に肩〜腕にかけて腫れや皮下出血班が見られることもあります。
外傷性肩関節脱臼の改善方法は、徒手で整復術を行うことです。関節が適切な位置に戻ったら、エックス線撮影で整復位を確認し、固定を行います。
固定する期間は4週間ほどで、固定するためには包帯や三角巾、肩専用の装具などを使います。固定期間が終わったら、リハビリテーションを行い、肩の動きを改善します。
スポーツ選手に外傷性肩関節脱臼が起こった場合は、競技に早く復帰するために手術を行うこともあります。
・脱臼直後の整復
ヒポクラテス法・・・仰向けで寝かせ、医師が足を脇にかけて牽引する方法
コッヘル法・・・腕を屈曲、外旋、内転しながら整復する
スタイムソン法・・・うつ伏せで重りをぶら下げて自然に整復させる
・固定
三角巾またはアームスリングで肩関節を内旋位で固定します。一部の若年スポーツ選手では外旋位固定も行います。固定期間は通常2〜3週間前後です。
・リハビリ
2〜3週目は振り子運動、肩甲帯の軽い可動域訓練、4〜6週目はチューブを使った回旋筋強化、6週〜3ヶ月はプランク、自重トレーニング、日常復帰に向けた動作訓練を行います。
・痛みと炎症の緩和
鍼刺激によりエンドルフィンが放出されます。脱臼後の肩周囲のズキズキした痛みや安静時痛や夜間痛、リハビリ中の刺すような鋭い痛みに効果的です。
・筋緊張の改善、可動域の拡大
鍼やお灸によって、拘縮している筋膜や関節包をゆるめます。反射的に筋スパズムを抑制し、関節の動きやすさが向上します。肩甲帯の動きが改善し、代償運動も減ります。肩を動かそうとすると引っかかる感じがあるときやリハビリで動かしにくさ、違和感があるとき、筋肉が硬くてストレッチが進まないときに効果的です。
・リハビリ効果の底上げ
鍼灸で血流と神経反射を整えてからリハビリを行うと、運動の効果が高まりやすいです。筋肉の滑走性を高めることで、関節可動域訓練の痛みも減少します。
・自律神経調整と全身の回復促進
外傷後は交感神経が緊張しやすく、痛みや不眠、不安が出やすいです。鍼灸により副交感神経優位の状態に切り替わり、リカバリーが進みやすくなります。睡眠の質向上や疲労感の軽減も期待できます。
・再発予防のサポート
肩甲帯や体幹のバランスを整えて再脱臼しにくい身体づくりをしてくれます。症状のある側だけでなく、姿勢の崩れも調整可能です。
改善のために、リハビリテーションを行い、肩の働きが改善した後も、脱臼を繰り返すことが多いです。改善した後、関節の修復が十分できていない時期に運動を始めると再発が起こりやすくなります。
再発を防ぐためには、固定期間を守ることが大事なのです。手術を受けた場合は、手術の後約3週間は装具を使って肩をできるだけ安静に保つことも大事です。
競技に復帰する時期は、競技の特性や手術後の経過によって違います。医師の指導にきちんと従い、再発を防ぐことが重要なのです。