公開日:2021年 6月 3日
更新日:2025年 8月 5日
本日はカルチノイド症候群について解説させていただきます。
☆本記事の内容
目次
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
一般的にカルチノイド症候群は、神経内分泌細胞からできたセロトニンをつくる内分泌活性のある悪性腫瘍が原因です。
カルチノイド症候群の症状は、セロトニン、ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジン、ポリペプチドホルモンなどのホルモンの働きによって引き起こされています。
内分泌活性を持っているカルチノイド腫瘍は、アミンやポリペプチドを生産します。そのことによってカルチノイド症候群の症状が現れるのです。
しかし、消化管の別の部位に起きた腫瘍が原因となることもあります。特に虫垂や直腸が原因となりやすく、他にも膵臓や気管支、性腺にできた腫瘍が原因になることもあります。
珍しいケースでは、肺の燕麦細胞がんや膵島細胞がん、甲状腺髄様がんなどの非常に悪性度の高い特定の腫瘍が原因となることもあります。
① 腫瘍がセロトニンなどを分泌
腫瘍細胞は神経内分泌細胞に似た性質を持ち、ホルモン様物質を合成、分泌します。
主な分泌物質
セロトニン … 血管拡張・腸管運動促進
ヒスタミン … 血管透過性亢進・紅潮
ブラジキニン … 血管拡張・血圧低下
タキキニン類
プロスタグランジン
② 肝臓の代謝バリアをすり抜ける
通常、消化管由来のセロトニンは門脈を通じて肝臓で分解されるため、全身症状は出ません。しかし、以下の場合に肝臓での代謝を回避して全身に回ります。
肝転移がある
原発が肺や卵巣など門脈系以外である
肝機能が著しく低下している
カルチノイド症候群の主な症状は、痙攣痛と下痢です。この症状は、腫瘍が腸を詰まらせることによって起きます。
カルチノイド症候群で初めに現れることが多い症状は不快な紅潮、腹部の痙攣、下痢です。不快な紅潮は、血管が広がることによって起きるもので、頭頸部に現れることが多いです。紅潮によって、皮膚の色が赤色やすみれ色、紫色に変わることがあります。
腹部の痙攣と下痢は、腸の収縮が過剰になることによって起こります。腸で栄養をきちんと吸収できないため低栄養になり、脂肪性の匂いの強い脂肪便が見られます。
心臓も傷ついてしまった場合は、脚の浮腫など右心不全の症状が見られたり、肺に空気がうまく流れることができなくなり喘鳴や息切れなどの症状が現れたりすることもあります。男性の場合は、勃起障害が起こることもあります。
① 顔面紅潮
突然、顔や頸部が赤くなり、温かく感じます。数分〜数時間続き、日に何度も起こることもあります。セロトニン、ブラジキニン、ヒスタミンが血管を拡張して発症します。
② 下痢
水様性で慢性的、時に1日数回〜10回以上起こります。セロトニンが腸管蠕動と分泌を亢進させるためです。栄養吸収不良を伴い、体重減少や脱水を引き起こすこともあります。
③ 喘鳴、呼吸困難
気道平滑筋の収縮や粘膜浮腫によって起こる喘息に似た発作性の呼吸症状です。主にヒスタミンやセロトニンの作用で起こります。
④ カルチノイド心臓病
長期的に高濃度のセロトニンにさらされることで、三尖弁閉鎖不全、肺動脈弁狭窄など右心系の線維化が進行します。
⑤ 皮膚や全身の症状
顔面や頚部の熱感、灼熱感、血圧低下、発作後の倦怠感が起こります。
カルチノイド症候群の改善方法は、手術か薬です。腫瘍を取り除くことでカルチノイド症候群の改善が可能な場合は、手術によって腫瘍を取り除きます。薬は、カルチノイド症候群の症状を和らげることを目的として使用します。
腫瘍を取り除くことで改善する可能性があるのは、カルチノイド腫瘍が虫垂や小腸、直腸、肺などの特定の1箇所に限定されている場合です。
腫瘍が肝臓に転移している場合は、手術をしたとしてもカルチノイド症候群を改善することは難しいです。しかし、手術をすることで症状が和らぐことはあります。
放射線などはカルチノイド腫瘍にはあまり効果がありません。しかし、ストレプトゾシンやフルオロウラシルのように特定の薬を使うことで、症状を和らげることができるのです。紅潮の症状は、オクトレオチドで改善することができます。
・根本的な改善方法
腫瘍の除去、抑制です。カルチノイド症候群はカルチノイド腫瘍が産生するホルモン類の過剰分泌が原因なので、まずは腫瘍そのものを減らすことが重要です。
① 外科的切除
腫瘍が局所に限局していれば完全切除を目指します。肝転移があっても、可能な場合は転移巣も切除します。
② 肝動脈塞栓術、肝動注化学法
肝転移が多く切除できない場合に、肝動脈から腫瘍の栄養血管を塞いで腫瘍縮小を狙います。塞栓と同時に抗がん剤を注入する場合もあります。
③ 分子標的・放射性同位元素法
PRRTはソマトスタチン受容体に結合する放射性物質を投与し、腫瘍細胞を選択的に破壊する方法です。分子標的薬も症例に応じて使用します。
・症状のコントロール(ホルモン過剰の抑制)
① ソマトスタチンアナログ
オクトレオチド、ランレオチドでセロトニンや他の活性ペプチドの分泌を抑制します・紅潮、下痢、喘鳴などの発作を軽減し、心臓の病気の進行を遅らせます。
② インターフェロンα
腫瘍増殖抑制とホルモン分泌抑制の両方に作用します。ソマトスタチンアナログとの併用もあります。
③ 下痢への対処法
ロペラミド、整腸剤を使います。消化吸収不良に対しては栄養補助を行います。
④ 紅潮・血圧変動への対応
発作時には静脈路確保し、生理食塩水・昇圧薬などで対応します。手術や麻酔前にはオクトレオチドを予防的に投与し、カルチノイドクリーゼを防ぎます。
カルチノイド症候群はホルモン産生腫瘍由来のため鍼灸で直接腫瘍を改善することはできません。しかし、鍼灸は、症状緩和やQOL向上には有用な可能性があります。
下痢の緩和:脾経・胃経の経穴で消化機能を整える。
ストレス軽減:交感神経過緊張を抑える。
倦怠感・免疫サポート:気血を補う。
紅潮発作の緩和補助:自律神経調整により血管反応の急激な変化を抑制。
カルチノイド腫瘍は、胃や小腸にできると顔面紅潮や下痢などのカルチノイド症候群の症状が現れます。
しかし、大腸にできた場合は、腫瘍が大きくなり表面に潰瘍ができると血便が見られるようになりますが、大きくなるまでは症状が現れることはほとんどありません。
そのため、大腸のカルチノイド腫瘍のほとんどは、他の症状で大腸内視鏡などをした時、偶然見つかります。