生理痛の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2019年 12月23日

更新日:2024年 11月 15日

本日は生理痛について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 生理痛とは
  • 生理痛の原因
  • 生理痛の症状
  • 生理痛の改善方法
  • 生理痛のまとめ

投稿者の吉田です。

このページを書いている私は、施術スタッフや鍼灸師として9年間臨床に携わり、多くの女性利用者様のお体を対応してきました。

その経験を記事にまとめておりますので、ぜひ最後まで御覧ください。

 

生理痛とは子宮の収縮で起こる痛み

女性は妊娠や出産、授乳という女性特有の役割があります。そのため、子宮や卵管、卵巣など多数の女性特有の生殖器官が存在します。

 

女性の体は女性ホルモンの分泌に非常に大きく影響を受けています。月経は、卵胞ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンであるプロゲステロンの働きによって大体25~38日周期で起こります。

 

月経は妊娠の準備を整える過程で受精卵が厚くなった子宮内膜へ着床せず、妊娠しなかった場合、子宮内膜がはがれ落ち、血液とともに体の外へ出されることによって起こります。

 

このとき、痛みのもととなるプロスタグランジンという物質が分泌され、子宮の収縮をするのです。この痛みのもとの分泌が増えると、痛みを感じます。この痛みが生理痛です。

動けないような激しい痛みがあったり、下腹部痛だけでなく腰痛や頭痛、吐き気、下痢やめまいなどの全身症状が合わせてある場合は月経困難症と呼ばれます。背景に病気のような異常のない場合は機能性月経困難症と呼びます。出産の前で子宮頸管が非常に細かったり、プロスタグランジンの分泌が多い体質の人などが強い痛みを感じることが多いです

 

若い人に起こる強い月経痛のほとんどはこのケースです。一般的には出産が終わると月経痛が軽くなることが多いです。原因が何かの病気にある場合は器質性月経困難症と呼ばれます。

 

女性が出産した後、出産する前より月経痛が強くなったり血の量が増えたり、塊が出たり、月経の前から痛みがあったりするなどの場合は、子宮筋腫や子宮内膜症などが原因となっていることがあります。

酷い生理痛で疑われる代表疾患

激しい痛みでまず疑われるのが、"子宮内膜症"です。この症状は、本来子宮内膜が存在するべき子宮内腔以外の場所(卵巣、腹膜、腸など)に子宮内膜様組織が発生する病気です。

 

これらの組織はホルモンの影響を受けて増殖や剥離を繰り返し、炎症や癒着を引き起こします。結果、激しい痛みや不快感が生じるのが特徴です。

生理痛には個人差がある

約8割の女性が生理痛として何か痛みを感じていると言われています。女性全体の約3割弱の女性は激しい生理痛だと感じているとも言われています。

 

人によっては生理痛だけではなく、頭痛や腰痛、吐き気など様々な症状を合わせて感じることがあります。痛みや症状に関して大きな個人差があるのは、生理の仕組みに原因があります。

生理痛に対する鍼灸

鍼灸は痛みを引き起こす原因となる物質「プロスタグランジン」のレベルを調整する効果が期待できます。プロスタグランジンは子宮収縮を引き起こし、痛みの引き金となりますが、鍼灸を行うことでプロスタグランジンの分泌が調整され、過剰な子宮収縮が抑えられると考えられています。

筋肉が緩み、血管が拡張されることで、局所および全身の血流を改善する効果が期待できます。 生理痛の主な原因の一つは、子宮への血流が減少し、酸素供給が不足することです。 鍼灸による血流改善効果は、子宮周辺の血液循環を促進し、酸素供給を増やすことで、痛みの緩和につながります。

鍼灸は自律神経系に働きかけ、痛みの感覚を調整する効果が期待できます。生理痛は、交感神経の過剰な活動や、痛みの感覚を増加させる脳の信号伝達の問題に関連しています。鍼灸は、交感神経と副交感神経のバランスを整え、痛みの信号を抑制する作用があるため、痛みの緩和をもたらすとされています。

鍼刺激は、体内で内因性オピオイド(エンドルフィンやエンケファリンなど)と言われる鎮痛物質の生成を促進することが、研究で明らかになっています。これらの物質は、普段から体内で自然に作られていますが、鍼灸によって分泌が促進され、自然な形で痛みを和らげることが可能です。

子宮周囲や骨盤底筋群の筋緊張を和らげ、リラクゼーションを促進する効果があります。生理痛に伴う痛みや痙攣は、筋肉の緊張が原因の一部であるため、筋肉の弛緩を促すことで、痛みを軽減することが可能です。

生理痛はホルモンの不均衡によって引き起こされることが多く、特にエストロゲンやプロゲステロンのバランスが崩れると、痛みが悪化することがあります。鍼灸は、体内のホルモンバランスを改善する効果があり、これが生理痛の緩和に作用します。

心理的なリラクゼーションとストレス軽減にも効果があります。ストレスや不安が生理痛を悪化させる要因になることがあり、鍼灸によって精神的なリラックス状態を促進することで、生理痛の症状が和らぐことが期待されます。

生理痛に対する鍼灸のまとめ

生理痛に対する鍼灸は、痛みの原因となるプロスタグランジンの調整、血流の改善、神経系の調整、内因性オピオイドの生成促進、筋肉の緊張緩和、ホルモンバランスの調整、そしてストレス軽減など、さまざまなメカニズムを通じて効果を発揮します。これにより、より快適な月経期間を過ごすことが可能になります。

生理痛に効くツボ

・合谷

・関元

膈兪

次髎

腎兪

三陰交

足三里

血海

陰陵泉

太衝

・失眠

合谷

合谷は、谷の合間という意味を持っています。合谷の合は親指と人差し指が出会う位置という意味をしており、合谷の谷は親指と人差し指を開く時にできる間が深い谷のように見えることから合谷と言われています。

 

合谷は万能のツボと呼ばれています。いろいろなことに対して効果を発揮するツボなのです。

 

生理痛だけではなく、疲れ目や肩こりなどの首から上の疲れにも効果的です。自律神経の乱れを正常に戻し、落ち着いた気持ちにする効果もあり、疲れやストレスなどの悩みを抱えている人にもおすすめです。

 

他にも、風邪のひきはじめや頭痛、鼻血、鼻水、歯の痛み、視力の低下などにも有効で、合谷は非常に幅広い症状に対して効果が期待できるツボなのです。

 

さらに、合谷は全身に365個あるとされているツボの中でも、最も脳に刺激が伝わりやすいと言われているツボです。

関元

関元の関は、門を司るかんぬきという意味があり、関元の元は、大本や初めという意味があります。関元は、健康の源である元気の関所であり、全身の気の巡りにとって非常に大切な場所なのです。

 

関元は、男女を問わず泌尿器の症状に効果を発揮するツボです。中でも生理痛など女性器の症状に効果的です。

 

下腹部に血液を送る効果があるため、体を温めたい時にもおすすめのツボです。生理痛の上場が重い人は、生理痛が始まった後にツボを押すのではなく、日ごろから関元を温めたりマッサージしたりすることもおすすめです。

膈兪

膈兪の膈は胸とお腹を分けるという意味があり横隔膜のことを意味しています。膈兪の兪は注ぐやめぐるという意味をしています。膈兪は横隔膜に活動エネルギーが注ぐ場所という意味なのです。

 

そのため、膈兪は横隔膜の変調を調整するという効果があり、生理痛だけではなくしゃっくりなどの症状にも効果的です。

 

膈兪を押すことで、血流の循環を促し、交感神経の緊張をほぐす効果もあります。血の巡りを良くしたいときや冷え性を改善したいときなどにも効果的です。

ツボの位置と押し方

合谷

合谷は、親指と人差し指の骨の交わったところから、少し人差し指寄りにあるへこんだ場所にあります。

押し方は、親指を合谷にあてて、やや強めに押しもみます。強すぎると良くないため、気持ちいいと感じるくらいの強さで押すことがおすすめです。両手それぞれ約30回、押してもむことを繰り返しましょう。

関元

関元は、人差し指をおへその上に置き、指4本下の小指があたっている部分にあります。おへその下に手を置いて、指4本分下と覚えると覚えやすいです。

 

押し方は、両手を重ねて、優しくつぼを押して離す動作を約1〜2分繰り返します。仰向けに寝て押すと押しやすいため、おすすめです。関元と関元の周りを、円を描くように優しく撫でてマッサージする方法もおすすめです。

膈兪

膈兪は、肩甲骨の下の背骨から外に5cm離れた場所にあります。

押し方は、中指のはらで5~6秒程度押します。何度か繰り返して押すことがおすすめです。 固い場合は強めに押すようにし、柔らかい場合は優しく押すようにすると良いでしょう。

生理痛のツボ押しで大事なこと

生理痛を改善するためにツボ押しを行う場合は、心地よいと感じる力加減で行うことが大事です。

中には強く押せば効くと思っている人もいると思いますが、ツボ押しするときの力が強すぎてしまうと、交感神経が優位になり体が緊張状態になってしまいます。そのため、心地いいと感じる力加減が非常に大事なのです。

体には気血が流れるルートがあります。そのため、ツボの流れに沿ってツボを押すとより効果が期待できます。

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