アラジール症候群の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2021年 11月23日

更新日:2025年  7月 7日

本日はアラジール症候群について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • アラジール症候群とは
  • アラジール症候群の原因
  • アラジール症候群の症状
  • アラジール症候群の改善方法
  • アラジール症候群のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

アラジール症候群は、生まれつき色々な臓器に合併症が現れる病気

アラジール症候群は、生まれつき肝臓や心臓などの色々な臓器に合併症が現れる病気です。

 

主に肝臓、心臓や血管、眼、椎骨、特徴的な顔の5つの症候によって判断されます。しかし、症状は人によって異なり、5つ全てが現れるわけではありません。

 

日本では約200~300人の人が発症していると言われていますが、症状の程度はが非常に幅ひろいため、判断されていない人も含めるともう少し多いと考えられます。

アラジール症候群で現れる症状や症状の程度は様々

アラジール症候群の原因は、遺伝子の変異です。JAG1という遺伝子が変異することで発症しますが、NOTCH2という染色体の変異によって発症することも稀にあります。

 

しかし、全ての人に遺伝子の変異があるわけではなく、遺伝子の変異があっても症状が非常に軽く日常生活を送る上で問題がない人もいます。

主な原因

主な原因は、NOTCHシグナル経路の異常です。関与する遺伝子はJAG1で、遺伝子の変異は約90%以上です。NOTCH2遺伝子の変異で起こる割合は約1%〜2%です。遺伝形式は常染色体優性遺伝で、新生突然変異で発症することもあります。

 

NOTCHシグナル経路は、細胞分化、臓器発生、血管形成に重要なシグナルです。JAG1またはNOTCH2に異常があると、胆管形成異常や動脈、心臓弁の形成異常 、脊椎や骨の分化異常、腎臓や顔面の形態異常などが起こります。

アラジール症候群で現れる症状や症状の程度は様々

アラジール症候群では非常に色々な症状が現れます。さらに症状の程度も非常に軽い場合から重い場合まで幅広いです。

 

発症に気がつくきっかけとして多い症状は、生まれてから早い段階で起こる黄疸です。他にも心雑音などの心臓の病気がきっかけで気がつくこともあります。

 

胆汁うっ滞によって起こる痒みやビタミン吸収の障害によって起こる出血や骨折などの症状が早くから起こり、その後、幼児期になると特徴的な顔つきが目立ちはじめます。

 

場合によっては発達の遅れや成長障害が現れることもあります。

主な症状

・肝臓

最も典型的な症状の一つで、新生児期~乳児期からの黄疸やかゆみ、脂肪便、骨の発育不良、出血傾向、視覚障害、肝腫大などがみられます。進行例では肝硬変や門脈圧亢進症などが現れ、肝移植が必要になるケースもあります。

 

・心臓

約90%に何らかの心血管異常を認めます。最も多いのは肺動脈狭窄で、他にもFallot四徴症、大動脈縮窄症、心室中隔欠損などがみられます。チアノーゼや呼吸困難、心雑音などの症状があります。

 

・顔貌の特徴

とがったアゴや幅広い額、両目が離れている、先細りの鼻、薄い唇などがみられ、成長とともに特徴が顕著になります。

 

・骨の異常

蝶形椎がみられます。これは通常症状は特にありません。他にも指の関節異常、短指症などがみられます。

 

・眼の異常

後部胎生輪部異常、角膜の周囲に白い輪などがみられ、視力自体は正常なことが多いです。

 

腎、血管の異常

腎発育不全、腎動脈狭窄、脳血管異常などがみられます。

 

・成長障害、発達遅滞

胆汁うっ滞による栄養吸収不良や骨代謝異常などがみられます。

胆汁うっ滞がある場合はビタミンKを内服したり点滴したりする

アラジール症候群では、人によって様々な症状が現れるため、改善方法も人によって様々です。

 

胆汁うっ滞がある場合は脂溶性ビタミンの吸収が悪くなり色々な問題が起こるため、ビタミンKを内服したり点滴したりします。胆汁の流れを進める利胆剤を使ったり胆汁うっ滞による痒みを軽くする薬を使ったりすることもあります。

 

脂質の吸収を良くして成長を促すために特殊なミルクを使うこともあります。

 

胆汁うっ滞が続き肝硬変が起こった場合や激しい痒みや成長障害がある場合、何度も骨折を繰り返す場合などには肝移植を行うこともあります。

 

重症の心臓病がある場合は手術、重症の腎臓病がある場合は透析や腎移植などが必要になることもあります。

主な改善方法

・肝臓症状の管理

胆管低形成による胆汁うっ滞が中心症状であり、ここへの対応が重要です。主な改善方法は、胆汁酸流出促進薬やウルソデオキシコール酸です。かゆみ対策としては、コレスチラミン、リファンピシン、セロトニン再取り込み阻害薬を使用します。脂溶性ビタミン補充、高カロリーで中鎖脂肪酸食も大事です。

 

・重度の肝障害への対応

肝硬変や胆汁うっ滞が制御不能になった場合肝移植が唯一の根本的改善法です。

 

心臓の病気の対応

合併する心奇形を改善するためには外科的手術を行います。心不全がある場合は利尿薬や強心薬を使用します。

 

・骨異常、成長障害への対策

脂溶性ビタミンDやカルシウム補給、骨変形や脊柱異常は定期モニタリングとリハビリ、栄養管理で成長促進も行います。

 

・腎、血管異常への対応

腎機能低下の場合降圧薬を使います。腎動脈狭窄なら血管形成術を行います。脳血管異常の場合血管への定期MRIで出血リスク管理を行います。

 

・皮膚のかゆみやストレスへの補完法

温熱や刺激回避、鍼灸やマッサージ 、心理的サポートを行います。

鍼灸の効果

・かゆみの軽減

アラジール症候群では胆汁うっ滞によるかゆみが強く、夜眠れない、掻き壊しによる皮膚炎が問題になります。鍼灸では自律神経調整により、交感神経過緊張を緩和、皮膚血流を改善します。鍼刺激により脊髄レベルでの痛覚、痒覚ゲートコントロールが働き、かゆみを感じにくくすることができます。

 

・消化吸収サポート、胃腸機能改善

胆汁うっ滞により脂肪吸収が悪く、栄養不良や成長障害が起こりやすいため、鍼灸で腹部、背部への鍼で迷走神経を活性化し消化機能改善を行います。

 

慢性疲労、だるさの軽減

肝機能低下や栄養不足による倦怠感をサポートします。鍼灸で気血の巡りを整え、代謝を高め、副交感神経優位にすることで全身の疲労感を和らげることができます。

 

・精神的不安、睡眠障害の改善

色々な症状や不安によって不眠やストレスを感じてしまうため、鍼灸でセロトニンやエンドルフィン分泌を促進し不安や痛み、かゆみを和らげます。

乳幼児期は体重や成長に注意し、成人後はお酒やタバコに注意する

アラジール症候群を発症した場合、乳児期に体重がきちんと増えているかということや順調に発達しているかどうかを大人が確認することが大切です。

 

そして症状に合わせて食事を工夫したり水分や塩分に気をつけたりすることが必要になります。

 

成人した後は、アルコールのとりすぎに注意しましょう。これは、肝臓に負担になるためです。タバコも動脈硬化の原因となるため、避けることをお勧めします。

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