公開日:2019年 12月23日
更新日:2024年 4月15日
本日は胸郭出口症候群について解説させていただきます。
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
胸郭出口症候群は、首、鎖骨、胸、腕、いずれかで神経が圧迫されて、肩、腕、手が痺れたり痛みが起こったりする状態のことで、当院で5番目に多い症状です。
胸郭出口症候群の主な原因は、鎖骨まわりの筋肉や胸、肩の筋肉の硬結です。
腕や手を動かす神経そして動脈は、鎖骨の下をくぐり、胸の筋肉を貫通し、肩、腕と通り、指の先まで行きます。そこがなんらかの原因で硬くなり神経を圧迫し痛みを起こします。
また、絞扼部位によって、「斜角筋症候群」「頸肋症候群」「肋鎖症候群」「小胸筋症候群(過外転症候群)」と4つに分けられ総称して胸郭出口症候群と言います。
鎖骨を構成する骨が盛りあがって圧迫したり、靭帯の肥厚、加齢による筋力低下や運動前のストレッチ不足、ラケットやクラブの不適切なスウィング、筋肉の酷使や長時間のデスクワークによる猫背など、その方の日常生活によって原因は様々です。
斜角筋は、前・中・後と3つに別れております。前と中の間から通っている腕の神経の間で圧迫されて症状が出るものが斜角筋症候群です。
斜角筋症候群では、上を向くと腕が痺れます。
後斜角筋の場合は、肩甲骨まわりに強い放散痛を生じます。当院では、4つの中で斜角筋症候群がいちばん多く来院されます。この症状に対する鍼灸は非常に有効です。
頚肋は、肋骨になり損ねた頚椎の横突起です。頚椎の横突起に神経が圧迫されて起こる症状が頚肋症候群です。
首を振ってビリビリする場合、頚肋症候群の可能性があります。
このケースは、骨が原因のため、鍼灸は効きません。手術をする必要性があります。そのため医師から手術を勧めらない場合、頚肋症候群ではない他の3つの可能性が高いです。
肋鎖症候群は、肋骨と鎖骨の間にある空間を通る神経が鎖骨の下で圧迫されることで発症します。
デスクワークや勉強などによる長時間の前傾姿勢が原因で起こります。姿勢の悪い人に多いという特徴がありますが、姿勢を正しくしても筋肉のクセで徐々に猫背になってしまうことが多いです。
肋鎖症候群では、胸を張ると腕に症状が出ます。この場合、鍼灸が非常に有効です。
小胸筋は、胸の前にある筋肉で、大胸筋の下にあります。小胸筋症候群では、小胸筋の下を腕の神経が通っていため小胸筋が固まって圧迫させ症状が出ます。
小胸筋症候群の原因は猫背や長時間のデスクワークです。
手をバンザイした時、手が痺れたり手の痺れが増したりする場合は小胸筋症候群です。この場合、鍼灸は非常に有効です。
胸郭出口症候群の症状は主に痛みや痺れです。
症状はわかりやすいです。腕の神経は指の背骨から出ている神経で番号が振られています。番号で、症状が出る場所が神経の領域で表現されています。
例)首の4番目から出る神経は第4脛神経、首の5番目から出る神経第5脛神経...
首には4と5があり、親指側は6、真ん中の指は7、小指側は8という番号になっているため、訴えでどの神経が圧迫されているのは一目瞭然です。
胸郭出口症候群は5つのテストを行うことで4つのタイプに振り分けることができます。
しびれや痛みを感じる方の腕を後下方に引っ張る⇒手首の親指側にある橈骨動脈の拍動が触れなくなる
⇒肋鎖症候群が陽性
顔を上に向かせ、痛みがある方の後ろを見るように首を捻り、深呼吸を行わせる⇒痛みのある腕の手首の橈骨動脈の拍動が触れなくなる
⇒斜角筋症候群が陽性
肘の関節を90度曲げて保持する姿勢をしてもらう⇒痺れの誘発、橈骨動脈の拍動が触れなくなる
⇒肋鎖症候群、小胸筋症候群が陽性
肘の関節を90度曲げて保持する姿勢をしてもらう(ライト・テストと同様)⇒手のグーとパーを交互に3分間繰り返す⇒痺れの誘発、橈骨動脈の拍動が触れなくなる
⇒肋鎖症候群、小胸筋症候群が陽性
鎖骨の上部周辺にあるくぼみを形成している斜角筋を指で圧迫する⇒肩~腕、腕~手への放散痛を訴える
⇒斜角筋症候群が陽性
胸郭出口症候群であると思い病院に行くと、レントゲンを撮った後、ヘルニアやストレートネック、腕が痺れているなどと言われ、メチコバールとロキソニンを処方して終わることがほとんどです。
病院の先生もヘルニアや骨が原因ではないため、ゆっくり運動したり休めば改善するであろうという算段なのです。鍼灸院には、薬を飲んで休んでも改善しない人が来院します。
ヘルニアなどの痺れや脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症などは、胸郭出口症候群の原因に当てはまるケースが多く、手術前の人もアプローチで胸郭出口症候群が改善することもあります。
・斜角筋症候群の場合
首の前側にある前斜角筋と中斜角筋の緊張を緩めて、腕に向かう神経の通りを広くします。
・肋鎖症候群の場合
肩甲骨と鎖骨の間を調整し、鎖骨の下の空間を広くすることで骨格矯正をおこないます。
・小胸筋症候群の場合
胸の深層部の筋肉である小胸筋を柔らかくし、長時間のデスクワークや姿勢のクセ、猫背を徐々に回復させ、前傾姿勢の改善を図ります。
胸郭出口症候群の利用者様210例のうち、改善したケースは200例で、回復率は90パーセントの好成績を残しております。
なかなか改善しない胸郭出口症候群は、複数のパターンが複雑に絡みあって起きている場合もありますが、平均5回の鍼灸で効果が出ることが多いです。
胸郭出口症候群でやってはいけないことはストレッチとマッサージです。
揉むと筋肉は硬くなります。これは、人間の体は刺激が加わるとその刺激が次いつ来ても良いように守ろうとするためです。特に痛みを感じているときは押されたり伸ばしたりすると痛みが強くなることもあります。
すると、症状が取れないことになります。マッサージやストレッチをすると一時的に楽にはなりますが、その後つらくなり、またマッサージに行くということをを繰り返すことになります。当院では、その悪循環の後、よくなってないことに気がつき始めて来院されるケースがほとんどです。
当院では、首、肩、腕のマッサージ、ストレッチは全てやめてもらう方針で改善を行なっています。
胸郭出口症候群では、自分の力でほぐすことが大事です。
手を4本指にして斜角筋を軽く押します。
この時、腕に響く人は基本的にここはいじらないでください。腕に響く場合は手遅れのためセルフケアを行うには遅いです。
鎖骨周りを押します。
手を4本にして腕と胴体のつなぎ目を押します。
押しては欲しいですが響くことが多いです。響く場合は、斜角筋で影響を受けている状態です。その場合はいじらないでください。
基本的に胸郭出口症候群は時間が経てば良くなりますが、多くの人が半年から1年以内に再発を繰り返します。長い人は2年後に再発することもあります。
腕が痺れて落ち着くことを繰り返す間、マッサージに行ったり首を伸ばしたりしてもらうが、俯瞰してみるとあまり良くなっていないことがほとんどです。
そのため、当院では原因となっている部分、神経、構造を全て改善させて欲しいと言っています。鍼灸で改善し切れば再発はありません。
セルフケアは楽になるのであれば行い、悪化する場合は行わないことが大事です。
・気舎
・欠盆
・中府
・気戸
気舎は、気管支の炎症や咳、胃のむかつきや吐き気に効果があるツボです。つわりに悩んでいる人やしゃっくりが止まらないときにもおすすめです。
首から肩にかけてのこり、寝違えにも有効といわれています。気舎は、胸郭出口症候群の中でも、先天性の頚肋によって圧迫が起こっている場合や頚肋から伸びる腱索によって圧迫が起こっている場合に効果的です。
欠盆は、咽喉の腫れや痛み、頚部リンパ結核、胸苦しい咳などに効果があるツボです。
他にも、頭痛や目の疲れ、寝違えなどにも使われることが多いです。欠盆は、胸郭出口症候群の中でも、前斜角筋と中斜角筋によって圧迫が起こっている場合に効果的です。
中府は、呼吸の機能を高める効果のあるツボです。 喘息や咳などの症状を和らげて、楽に呼吸が行うことができるようにする効果があります。
中府を刺激することは、胸の筋肉をほぐすことにつながるため、背筋が伸びやすくなります。背筋が伸びやすくなると、背中のこりや張りの改善にもつながります。
中府は、胸郭出口症候群の中でも烏口突起と小胸筋によって圧迫が起こっている場合に効果的です。
気戸は、気を晴らしたり、気合を入れたりするというような気を促す効果があります。気戸の気には空気や気持ちという意味があり、その場所の空気と自分の気持ちが合わないとき、気を一致させる働きがあると言われています。
他にも、肺や喉、呼吸器の機能を高める効果があるため、喘息や肋間神経痛、肩こり、心臓の病気などに対しても効果的です。
気戸は、胸郭出口症候群の中でも肋骨と鎖骨によって圧迫が起こっている場合に効果的です。
気舎は、鎖骨の内端の上際のくぼみにあるツボです。喉仏の下の胸の骨のくぼみから左右両方の指幅2本分横にあります。
押すときは、少し弱めの力で約3〜5秒間ゆっくりと押します。押しながら、息もゆっくり吐くと良いでしょう。5〜6回繰り返し押すことをお勧めします。
気舎は、左右両方にありますが、両方同時に行うのではなく、必ず片方ずつ行うようにしましょう。
欠盆は、乳首のライン上の鎖骨中央の上にある大きなへこみにあります。
押すときは、人差し指か中指の腹でゆっくりと押し、ゆっくりと円を描くように動かします。1回30秒ほど行いましょう。3回ほど繰り返すと良いです。力は痛くない程度がお勧めです。
中府は、鎖骨の外側の端にある下のくぼみから指の幅1本分下へ降りた場所にあります。
押すときは、つぼの反対側の指を使って押します。息を吐いた時にゆっくりとツボを押すことをお勧めします。力加減は、気持ちが良いと思う程度の強さが良いでしょう。
気戸は、乳頭から真っ直ぐ上に上がって、鎖骨に当たる場所にあります。
押すときは、人差し指と中指を揃えてツボにあて、背中の方に向かって押します。ゆっくりと息を吐きながら10秒くらい押しましょう。 この動作を3回ほど繰り返します。
肩こりによって息苦しさを感じている時には、3回ほどツボ押しを繰り返した後、胸元から首に手のひらを滑らせてマッサージすると効果的です。
11時から21時
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