公開日:2019年 12月23日
更新日:2021年 5月 15日
今日は多系統萎縮症について解説させていただきます。
多系統萎縮症とは、非遺伝性(後天性)な脊髄小脳変性症の代表的な疾患で、小脳を含む中枢神経の多系統に変性がみられる病です。
脳内にある中枢神経細胞に含まれている神経伝達などを行うグリア細胞のうち、希突起膠細胞(オリゴテンドロサイト)とよばれる細胞に異常をきたしています。
希突起膠細胞は、神経細胞の外側を覆う軸索を作り出す働きがありますが、この働きに異常をきたすため、神経の伝達機能に異常をきたします。
発症原因やそのメカニズムは、まだ分かっていません。
※グリア細胞:人間の脳には、1,000億個を超える神経細胞があるといわれていますが、その神経細胞以外の重要な細胞がグリア細胞です。脳におけるグリア細胞の数は、神経細胞の10~50倍と見積もられ、記憶や学習という脳の高次機能を支えているのでないか、と考えられています。
脊髄小脳変性症の有病率は10万人あたり18人程度と考えられています。脊髄小脳変性症の約65%が多系統萎縮症、つまり環境や遺伝以外の要因が考えられるということです。
多系統萎縮症の症状には「運動症状」と「非運動症状」があります。
運動症状には、起立歩行時のふらつきなど、動作が遅くなる、手足が固くこわばる、転びやすい、手足がつっぱるなどのパーキンソン症状といった症状。
非運動症状は、立ちくらみや失神を起こしたり、頻尿、排尿困難、便秘などの消化管機能障害、汗が出る、呼吸障害、男性の勃起障害、睡眠障害(睡眠中の異常行動など)、認知症などが挙げられます。
自律神経症状、パーキンソン症状、小脳性運動失調の3つが存在すれば、本症の可能性を疑います。
また、病歴聴取や神経学に加えて、頭部CT・MRI、脳血流、画像、血液、遺伝子などを見て調べます。
脳MRIを行い、被殻の萎縮を反映した所見もしくは、小脳半球の萎縮や橋の横走線維の変性像を確認できれば判断できます。
多系統萎縮症の根本的な原因は、まだ解明されておらず、国の難病として指定されています。
近年の研究から考えられているのは、髄鞘(ずいしょう)を形成する神経細胞の1つ、希突起膠細胞の細胞質内に、過剰にリン酸化された※α-シヌクレインというたんぱく質が、繊維化して凝集し、細胞や核の中に存在する、本来は存在しない物質を形成するため、これが深く病態に関係しているのではないかと言われています。
※αシヌクレイン:主に脳の神経細胞に発現するタンパク質。特に神経細胞の軸索終末端に局在する機能不明のタンパク質。 パーキンソン病は神経細胞に過剰に発現したαシヌクレインが凝集・蓄積し、神経変性や細胞死を引き起こすことで発症すると考えられている。
多系統萎縮症は、運動失調が主な症状です。機能障害が起きている症状により使用される代表的な薬は異なってきます。
→所見:歩行障害(ふらつき)・四肢失調・構音障害(正しく発音が出来ない)
→薬:経口脊髄小脳変性症治療剤・甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
→所見:筋強剛(こわばり)、動作緩慢・減少、姿勢反射の障害
→薬:抗パーキンソン病薬
→所見:痙縮(つっぱり)
→薬:筋弛緩薬
→所見:起立性低血圧(めまい、 たちくらみ)・排尿障害・発汗障害 など
→薬:自律神経調整薬
鍼灸で改善することや完全に発病以前の状態に戻すことは難しいです。
しかし、上手く使っていけば日々現れる運動機能の症状を緩和させ、症状の進行を遅らせることは不可能ではありません。
症状として現れる運動失調や自律神経障害に対して、多くの効果的な方法が工夫されています。
鍼でツボを刺激することにより末梢神経の循環、小脳内の血流をよくし、症状改善を図ります。鍼は西洋医学との組み合わせにより相乗効果が認められます。
鍼灸施術によって自然に改善する力を引き出すことも一つの目的です。
この疾患は、完全に改善する改善法がまだ現在ではありません。そのため鍼灸で症状の緩和などの効果をあげていることも多いです。ためしてみる価値はあると思います。
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