公開日:2019年 10月 2日
更新日:2021年 10月 8日
本日はフリードライヒ運動失調症について解説させていただきます。
☆本記事の内容
銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。
このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。
フリードライヒ運動失調症は、脊髄小脳変性症の1つです。発症して初めに感じる症状は歩きにくさで、その後、運動機能障害が進んでいきます。
1860年代に最初に発見した医師であるニコラス・フリードライヒの名前から病名がつけられました。
運動のバランスを司っている小脳や脊髄に異常が起き、小脳や脊髄が萎縮してしまうことによって運動の機能に障害が起こるのです。症状が進むと多くの場合は車椅子で生活することになります。
フリードライヒ運動失調症は、遺伝性の疾患で、常染色体劣性遺伝をします。今のところ日本では報告されていない疾患ですが、米国では、約5万人に1人の割合で発症していると言われています。
フリードライヒ運動失調症の原因は、遺伝です。常染色体劣性遺伝として発症することが多いです。
しかし、血縁関係のある人の中にフリードライヒ運動失調症を発症した人がいなくても遺伝子の突然変異によって発症することもあります。この場合、神経系や心臓、膵臓に存在する蛋白質として知られる遺伝子が突然変異することが原因で起こります。
フリードライヒ運動失調症は、常染色体劣性遺伝で伝わる病気です。両親からそれぞれ異常な遺伝子を受け継ぐことで発症します。原因となる遺伝子はFXN遺伝子で、この遺伝子はフラタキシと呼ばれるタンパク質を生成する役割を持っています。FXN遺伝子にあるGAAリピートの異常増幅が主な原因で、普通はGAAの繰り返しが5~33回なのが66~1700回以上も繰り返されることがあり、これがフラタキシン遺伝子の働きを妨げます。
両親ともにFXN遺伝子の変異を1つずつ保有している場合、子どもがFAを発症する確率は25%と言われています。同じ家族内で複数の発症者が見られることもありますが、家族歴がなくても新たに変異が起こって発症することもあります。
フリードライヒ運動失調症の主な症状は、ふらつきなどの運動失調症状と手足の感覚の異常などの末梢神経障害です。
フリードライヒ運動失調症を発症すると、まず歩きにくさが起こります。その後運動機能の障害が進み、車椅子での生活になることも多いです。
症状が進むと構音障害や眼球運動障害、心臓の障害などが現れます。場合によっては不整脈などの症状が現れ、命に危険が及ぶこともあります。
側湾症が起こるなど体の変形が起こったり、合併症として糖尿病を起こしたりすることもあります。
・運動失調
フリードライヒ運動失調症の1番顕著な症状です。運動失調は小脳や脊髄の後索が損傷することで発生します。歩行や手足の動きが不安定になります。
多くの人は初期症状として歩行障害が起こります。歩行が不安定になってくると足を広げてバランスを取るようになり、進行すると階段の上り下りや日常的な歩行が困難になり、最終的には車椅子が必要になることがあります。
だんだんと手や足の動きが滑らかでなくなり、細かい動作が難しくなります。特に細かい作業に影響が出るようになります。日常生活ではボタンを留めたり字を書いたり食事をしたりすることが難しくなってきます。立ち上がる時などにバランスを保つことが難しくなり、転倒のリスクも高まります。
・深部感覚の喪失
フリードライヒ運動失調症では、脊髄の後索が損傷されるため、自分の手足の位置を正確に把握する能力が低下します。自分の手足がどこにあるのかを感じることが難しくなり、物を掴む時には目で確認しながら行うようになります。
動作もぎこちなくなります。目を閉じた状態ではさらに不安定になることがあります。振動を感じる能力も低下し、足や手に置いた物の動きがわかりにくくなります。
・筋力低下
筋力低下は、特に下肢で顕著に現れます。神経細胞へのダメージが筋肉に伝わり、筋力が失われていきます。歩行や階段の上り下りが難しくなります。症状が進むと車椅子が必要になります。手や腕の力も徐々に弱まり下肢だけでなく上肢にも症状が現れます。物を持ち上げたり手を伸ばしたりすることが難しくなります。さらに、小さな動作でも異常に疲労感を感じるようになります。
・骨格の異常
多くの場合、骨格の異常がみられます。これらの異常は、神経障害に伴う筋肉の不均衡や発育の遅れによるものとされています。主に、脊柱側弯症、足の変形、関節硬直などがみられます。
・心臓の異常
約3分の2の人に心臓疾患の合併が見られます。フラタキシンの欠乏が心筋細胞に影響を与え、さまざまな心臓の問題を引き起こします。心筋症や不整脈、心不全が現れます。
・糖尿病
一部の人はフラタキシンが欠乏することで膵臓のβ細胞が損傷されインスリン分泌が低下し糖尿病が現れます。
・聴覚、視覚、言語障害
聴力が障害では特に高音域の音が聞き取りにくくなる場合があります。視覚障害は視神経の萎縮によって起こります。
フリードライヒ運動失調症の根本的な改善方法はありません。
主に症状として現れる運動機能の障害に対して、障害の進むスピードを遅らせることや運動機能を改善したり保ったりすることを目的として改善を行います。方法としては、セレジストの内服やリハビリテーションです。
不整脈や心不全が起こることもあり、死につながる危険も十分にあるため注意が必要です。
・リハビリテーション
筋力やバランスを維持するための運動が推奨されます。特に初期段階では、転倒リスクを減らすためのバランストレーニングが有効です。車椅子や歩行器、足装具などが運動機能の低下に対応するために補助具を使うこともあります。
・心臓の管理
βブロッカーやACE阻害薬、抗不整脈薬などを使って改善を行うことがあります。
・骨格のサポートと管理
症状が軽度の場合は装具を使って進行を抑えることがあります。重度の場合は手術が必要になることがあります。
・栄養とサプリメント
ビタミンE、ビタミンC、コエンザイムQ10などの抗酸化物質がミトコンドリアの健康をサポートするために使用されます。低栄養や体重減少を防ぐため、栄養士の指導のもとで食事の調整も行います。
・アイデベノン
ミトコンドリアのエネルギー代謝をサポートする薬で、心筋症の進行を抑えるために使用されます。一部の研究では、運動機能の改善にも効果が期待されています。
・ オメガ-3脂肪酸
一般的にサプリメントとして利用されることが多いですが、抗炎症作用と神経保護効果があるため改善に使われることもあります。心臓や神経系の保護や炎症による症状の悪化を抑える効果があります。
・ミトコンドリア機能を補助する薬
RT001という臨床試験中の新薬があります。これはミトコンドリアの酸化ストレスを軽減するために開発されています。
・試験中の遺伝子の薬
現在、FXN遺伝子の異常を修正するための遺伝子の改善方法の開発が進んでいます。
フリードライヒ運動障害の可能性がある場合、神経伝導を調べたりMRIや血液、遺伝子などを調べて判断します。
性別の差はなく、男女ともに同じくらいの割合で発症する可能性があります。一般的には5歳から15歳の年齢で発症することが多いですが、18ヶ月から30歳代で発症することもあります。
初めに不随意のつま先の屈曲や足の内反によって歩きにくさを感じることが多いため、違和感を感じた時にすぐに病院に行くことをおすすめします。