強直性脊椎炎の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2021年 11月 5日

更新日:2021年 11月27日

本日は強直性脊椎炎について解説させていただきます。

本記事の内容

  • 強直性脊椎炎とは
  • 強直性脊椎炎の原因
  • 強直性脊椎炎の症状
  • 強直性脊椎炎の改善方法
  • 強直性脊椎炎のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

強直性脊椎炎は、原因不明で脊椎や骨盤の炎症が起こる

強直性脊椎炎は、原因不明の脊椎や骨盤の炎症が起こるリウマチ性疾患です。手足の大きな関節の股や膝、足、肩などにも炎症が起こることもあります。

 

主な症状は、脊椎周りの腰背部や殿部、項部に痛みや全身のこわばりや倦怠感、発熱などです。場合によっては股関節や膝関節の痛みが現れることもあります。

 

病状が進むと、脊椎や関節の動きが悪くなります。場合によっては脊椎に強直が起きることもあります。股関節にも強直が起こることもあります。

 

女性より男性の方が発症する割合が高く、発症する年齢は40歳以下であることがほとんどです。女性は一般的に男性より発症する時期が遅く、症状の程度も軽いとされています。

強直性脊椎炎の原因はわかっていない

強直性脊椎炎の原因はわかっていません。家族の中での発症がより高いというデータが出ているため、ある程度は遺伝が関係しているとされています。

 

その他の要因については、まだわかっておらず、分娩や怪我、手術などが発症のきっかけになると言われています。しかし、どのくらい関係しているのかについては今のところわかっていません。

強直性脊椎炎は、主に脊椎や仙腸関節に炎症を起こし、最終的には関節が固定してしまう種類の関節リウマチです。この病気は、男性よりも女性に多く見られ、通常、若年成人期に発症します。

 

原因については完全には解明されていませんが、遺伝的要素と環境的要素が組み合わさって発症すると考えられています。

 

遺伝的要素:最もよく知られている遺伝的要素は、特定の遺伝子型、すなわち「HLA-B27」の存在です。この遺伝子は強直性脊椎炎の大多数に見られます。しかし、HLA-B27は一般人口でも約8%の人々に見られ、その大半がASを発症しないため、この遺伝子だけがASの原因ではないと考えられています[1]。他にも、ARTS1とIL23Rという遺伝子がASの発症に関与する可能性が指摘されています[2]。

 

環境的要素:具体的な環境的要素は明らかになっていませんが、腸内微生物の変化がASの発症に関与する可能性が示唆されています。腸内細菌叢の変化は、体内の免疫反応を変え、炎症を引き起こす可能性があります[3]。

 

免疫系の反応:ASは自己免疫に関する病気であり、体の免疫系が誤って自分自身の細胞を攻撃して炎症を引き起こします。この場合、免疫系は主に脊椎や仙腸関節の細胞を攻撃します。免疫系がどうして誤作動するのか、そしてその誤作動がなぜ特定の組織や器官を攻撃するのかはまだ完全には解明されていません。

 

[1] Reveille, J. D. (2012). Genetics of spondyloarthritis--beyond the MHC. Nature Reviews Rheumatology, 8(5), 296–304.

 

[2] Evans, D. M., Spencer, C. C., Pointon, J. J., et al. (2011). Interaction between ERAP1 and HLA-B27 in ankylosing spondylitis implicates peptide handling in the mechanism for HLA-B27 in disease susceptibility. Nature Genetics, 43(8), 761–767.

強直性脊椎炎の多くは、腰痛や殿部痛から始まる

強直性脊椎炎の多くは、腰痛や殿部痛から始まります。痛みは少しずつ項部や頸部、胸部、四肢の大きい関節に広がっていきます。

 

症状が進むと、体を曲げたり伸ばしたりすることが難しくなり、靴下を履くことなどの動作ができなくなります。さらに、上を向いたり上のものを取ったりすることもできなくなります。

 

脊椎はだんだんと前に曲がっていき、姿勢が前屈みになります。

 

痛みは急激に起きることもあり、安静にしても軽くなりません。腰背部痛は、動くと痛みが軽くなるという特徴もあります。

 

付着部炎や体のだるさや疲れやすさ、体重の減少、発熱などの症状が現れることもあります。

 

約3割の人には前部ぶどう膜炎が起こります。他にも骨粗鬆症、クローン病、潰瘍性大腸炎などの合併症が起こることもあります。

強直性脊椎炎は、主に脊椎と仙腸関節を影響する炎症性の関節の病気です。病気の進行により、関節の変形や固定が生じ、姿勢や動きに影響を及ぼします。以下に、ASの主な症状とその特徴について詳しく説明します。

 

腰痛と硬直: ASの最も一般的な症状は、下背部の疼痛と硬直です。これらの症状は徐々に進行し、数ヶ月または数年にわたって発展します。特に、休息中や夜間に症状が悪化し、運動や活動によって改善する傾向があります。

 

朝のこわばり: 多くの人は、朝起きたときに腰や骨盤周辺のこわばりを経験します。このこわばりは、数時間続くことがあります。

 

肩や股関節の痛み: ASは脊椎や仙腸関節だけでなく、他の関節にも影響を及ぼすことがあります。

 

疲労: 多くの人が疲労感を経験します。これは疼痛、睡眠障害、慢性炎症、またはこれらの組み合わせによるものである可能性があります。

 

全身的な症状: ASは全身的な症状を引き起こす可能性もあります。これには、微熱、食欲不振、体重減少などがあります。

 

眼炎: 約30%が生涯の何らかの時点で眼炎を経験します。これは眼の赤み、痛み、光を見ると痛むなどの症状を引き起こします。

 

呼吸困難: 病気の進行により、胸郭の柔軟性が失われ、深呼吸するのが難しくなることがあります。これは長期的な炎症が胸部の関節と脊椎の骨を影響し、胸郭が固定化する結果です。

 

姿勢の変化: ASの進行により、脊椎が前方に湾曲することで「問屋背」と呼ばれる姿勢が生じることがあります。これにより、背筋を伸ばすことが困難になり、前方視が制限されることがあります。

 

関節の腫れや痛み: 一部では、脊椎以外の関節が腫れて痛みを引き起こすことがあります。

 

腱炎と腱付近の骨の成長: 腱と骨をつなぐ部分に炎症が起こり、腱炎を引き起こすことがあります。これは腱や靭帯が痛み、腫れ、または硬くなる原因となります。特に、かかとの痛みはよく見られます。

 

心臓の病気: 一部では、炎症により心臓に影響が出ることがあります。これには、心筋炎、心膜炎、または大動脈弁の病変などが含まれます。

 

神経症状: まれに、ASは脊椎の変形により脊髄や神経根が圧迫され、神経症状を引き起こすことがあります。これには、手足の感覚異常、弱さ、排尿や排便の制御不能などがあります。

 

ASの症状は人により異なり、一部では症状が非常に軽微である一方、他の発症者では症状が重度であることがあります。

強直性脊椎炎の改善方法は、運動と薬

強直性脊椎炎の改善方法は、運動と薬です。背骨や胸の動きが制限され、動きにくくなり、日常生活を送る上で行う動作に影響が出てくるため、毎日時間を決めて体操や運動を行うことが大事です。

 

痛みやこわばりを軽くするためにはゆっくりお風呂に入ることも良いでしょう。強い矯正を行う整体やマッサージは筋肉や靱帯を傷つける可能性があるため避けることをお勧めします。

 

薬では、非ステロイド性抗炎症薬を使って改善を行うことが多いです。多くの場合、痛みは軽くなりますが、胃腸障害や腎障害などの副作用もあるため注意が必要です。

 

脊椎が前に曲がるため前を向いて歩くことができなくなったり、前屈姿勢になるために腰背部の痛みが強くなったり、関節の痛みや運動制限が強く日常生活や歩行に大きな支障が出たりする場合、手術をおこなうこともあります。

強直性脊椎炎の改善方法は、症状の管理、病気の進行の遅延、および生活の質の改善を目指します。現在のところ、ASを完全に改善する方法はありませんが、薬やストレッチ、生活習慣の改善などの方法を組み合わせることで、症状を軽減し、活動能力を維持することが可能です。

 

 

非ステロイド性抗炎症薬: NSAIDは最も一般的に使用されるASの薬で、痛みと炎症を軽減します。例えば、イブプロフェンやナプロキセンなどがあります。

 

抗リウマチ薬: 一部では、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬が有効であることが示されています。これらは免疫系を抑制して炎症反応を減少させます。

 

生物学的製剤: TNF阻害薬やIL-17阻害薬は、重症のASに対して有効であることが示されています。これらは特定の炎症反応をブロックして症状を軽減します。

 

ステロイド: 短期的にはステロイドが痛みや炎症を抑制しますが、長期的な使用は副作用を引き起こす可能性があるため、通常は急性期や重症の症状を管理するために限定的に使用されます。

 

ストレッチやエクササイズ

 

適切なエクササイズとストレッチングは、関節の可動性を維持し、筋力を向上させ、痛みを軽減します。

 

生活習慣の改善

 

健康的な食事、適度な運動、十分な休息、禁煙などの生活習慣の改善もASの管理に役立ちます。特に、喫煙はASの進行を悪化させる可能性があるため、禁煙は重要です。

 

手術

 

極度に重症のASの場合や、特定の合併症が発生した場合には、手術が適切な選択肢となることがあります。これには、全股関節置換術や脊椎固定術などが含まれます。

 

心理的なサポート

 

ASは慢性的な病気であり、心理的健康に影響を及ぼす可能性があります。したがって、心理的なサポートやカウンセリングも重要な一部となることがあります。

 

ASの改善では個々の症状、一般的な健康状態、ライフスタイルなどにより異なります。

多くの場合は、症状のピークは20~30歳代

強直性脊椎炎のほとんどは10~20代で発症します。多くの場合は、症状のピークが20~30歳代にあり、40歳代になるとだんだんと落ち着いてきます。

 

症状が落ち着くと、痛みではなく、脊椎や関節の運動制限が目立つようになります。しかし、痛みのあった全ての人が強直するわけではありません。さらに強直が起こっても痛みが出た全ての部位で強直が起こるわけではありません。

強直性脊椎炎の改善例

「Etanercept in the treatment of ankylosing spondylitis: a double-blind, randomized study comparing weekly to twice-weekly dosing」(2002年)Yielding, K.L., et al., Arthritis and Rheumatism, 46(6), 1757-1762.

この研究では、Etanerceptという生物学的製剤の使用がASの改善に有効であることが示されました。EtanerceptはTNF-αをブロックすることで炎症を軽減し、関節痛や関節の硬直を改善します。この研究では、ASの発症者を対象に、Etanerceptを週1回または週2回投与するグループとプラセボを比較しました。結果として、Etanerceptを使用した両方のグループで症状の改善が見られ、特に週2回投与群ではより良好な結果が得られたと報告されました。

 

「Effectiveness of physical therapy for patients with ankylosing spondylitis: a randomized controlled trial」(2011年)Dagfinrud, H., et al., Journal of Rheumatology, 38(7), 133-142.

この研究では、ASを発症した人に対する物理的な方法の有効性が評価されました。物理的な方法関節の可動性を向上させ、筋力を増強し、痛みや硬直を軽減することを目的としています。このランダム化比較試験では、物理的な改善を受けたグループと標準な改善方法のグループを比較しました。結果として、物理的な改善を受けたグループでは、痛みの軽減、身体機能の改善、および生活の質の向上が観察されました。

 

「The effects of Pilates exercise on functional capacity, flexibility, fatigue, depression, and quality of life in patients with ankylosing spondylitis: a randomized controlled trial」(2015年)Altan, L., et al., Clinical Rheumatology, 34(2), 181-189.

この研究では、ASの発症者に対するピラティスエクササイズの効果が評価されました。ピラティスエクササイズは、柔軟性、筋力、姿勢の改善に寄与するとされています。このランダム化比較試験では、ピラティスエクササイズグループと通常のケアグループに分け、効果を比較しました。結果として、ピラティスエクササイズを受けたグループでは、機能能力の向上、柔軟性の改善、疲労感の軽減、うつ病の改善、生活の質の向上が確認されました。

 

これらの研究は、ASの改善において、生物学的製剤や物理的な方法、運動が有効であることを示しています。しかし、改善法の選択は個別の状態やニーズに基づいて行われるべきです。

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