複合性局所疼痛症候群の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2023年 5月23日

更新日:2023年 6月17日

本日は複合性局所疼痛症候群について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 複合性局所疼痛症候群とは
  • 複合性局所疼痛症候群の原因
  • 複合性局所疼痛症候群の症状
  • 複合性局所疼痛症候群の改善方法
  • 複合性局所疼痛症候群のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

複合性局所疼痛症候群は焼けるような痛みやうずくような痛みが続く

複合性局所疼痛症候群は、焼けるような痛みやうずくような痛みが続き、痛みに痛みと同じ部位にある種の異常を伴うという特徴のある病気です。

 

この異常には、発汗の増加または減少、むくみ、皮膚の色や温度の変化、皮膚の損傷、脱毛、爪の割れや肥厚、筋萎縮と筋力低下、骨量の減少などがあります。

 

複合性局所疼痛症候群は、神経障害性疼痛を引き起こします。この病気では、脳と脊髄による痛みの信号の処理に異常が生じます。けがをした後に発生するのが典型的です。

 

複合性局所疼痛症候群には2つの病型があります。1型は反射性交感神経性ジストロフィーと呼ばれていたもので、2型はカウザルギーと呼ばれていたものです。

複合性局所疼痛症候群の原因は末梢神経や中枢神経の損傷や障害

複合性局所疼痛症候群の原因は、なんらかの原因で末梢神経や中枢神経が損傷や障害されたことです。 主に、外傷や手術、癌や糖尿病、帯状疱疹などがあります。

 

複合性局所疼痛症候群の1型は、神経組織以外の組織の損傷が原因で発症します。具体的な原因としては、事故で骨や軟部組織が破壊されたことや腕や脚の切断、心臓発作、脳卒中、またはがんの後であることなどがあります。

 

1型がよく発症するのは、けがをした腕や脚をギプスまたは副子で固定した後です。

 

2型は、神経組織の損傷が原因で起こります。明らかな原因がない場合もあります。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、慢性痛を伴う神経系の病気であり、特定の体の部分、特に手足に影響を及ぼすことが多いです。疼痛は通常、怪我や手術後に発症し、その原因や進行については完全には解明されていません。その一方で、その原因についての理論や説がいくつか存在します。

 

まず最初に、CRPSは通常、怪我や手術の結果として発症します。しかしながら、その怪我や手術が比較的軽度である場合でもCRPSが発症することがあります。これは、経験する疼痛がその怪我の程度に比べてはるかに強く、また持続的であることを意味します。

 

原因についての一つの説は、CRPSが中枢神経系と末梢神経系の異常な反応によって引き起こされるというものです。具体的には、体が怪我から回復するための自然な反応が誤って過敏化し、持続的な疼痛と組織の炎症を引き起こすと考えられています。

 

また、一部の専門家はCRPSが免疫系の異常反応に関連していると考えています。これは、CRPSの一部の症状が免疫系の反応、つまり腫れ、赤み、または発熱などに似ているためです。したがって、体が自身の組織に対して誤って攻撃を開始し、それがCRPSの疼痛と炎症を引き起こす可能性があるという仮説が提唱されています。

 

さらに、神経線維の損傷がCRPSの発症に寄与する可能性も考えられています。これは主に、怪我や手術後に神経線維が損傷した場合に関連しています。この損傷は、神経の過敏化や機能異常を引き起こし、過剰な疼痛信号を生み出す可能性があります。

 

最後に、遺伝的要因もCRPSの発症に関与している可能性があります。一部の研究では、特定の遺伝的変異がCRPSのリスクを高めることが示唆されています。これは、体の疼痛応答や炎症応答を制御する遺伝子が変異している場合、これらの応答が過剰になり、CRPSを引き起こす可能性があることを示しています。

 

それでもなお、これらの説すべてがCRPSの全ての人に当てはまるわけではありません。CRPSは多くの場合、個々で独特の発症と進行を見せます。したがって、これらの理論はCRPSの原因を説明するための可能性の一つであると考えるべきです。

 

CRPSの原因と進行についての理解は、現在も進行中の科学的探求の一部です。今後の研究により、CRPSの原因と改善法についての理解がさらに深まることを期待しています。

 

参考文献:

[1] Harden RN, Bruehl S, Perez RS, Birklein F, Marinus J, Maihofner C, Lubenow T, Buvanendran A, Mackey S, Graciosa J, Mogilevski M, Ramsden C, Chont M, Vatine JJ. Validation of proposed diagnostic criteria (the "Budapest Criteria") for Complex Regional Pain Syndrome. Pain. 2010;150(2):268-274. doi: 10.1016/j.pain.2010.04.030.

[2] Bruehl S. Complex regional pain syndrome. BMJ. 2015;351:h2730. doi: 10.1136/bmj.h2730.

[3] Birklein F, Schlereth T. Complex regional pain syndrome-significant progress in understanding. Pain. 2015;156 Suppl 1:S94-S103. doi: 10.1097/01.j.pain.0000460344.54470.20.

[4] Borchers AT, Gershwin ME. Complex regional pain syndrome: a comprehensive and critical review. Autoimmun Rev. 2014;13(3):242-265. doi: 10.1016/j.autrev.2013.10.006.

[5] de Mos M, Huygen FJ, Dieleman JP, Koopman JS, Stricker BH, Sturkenboom MC. Medical history and the onset of complex regional pain syndrome (CRPS).

多く見られる症状は、焼けるような痛みやうずく痛み

複合性局所疼痛症候群の症状は人によって大きく異なります。多く見られる症状は、焼けるような痛みやうずく痛みです。基本的に痛みは、腕、脚、手足などのけがをした四肢に現れます。

 

そのとき起こったけがから考えられるよりも強い痛みを感じることが多いです。痛みは、精神的ストレスや気温の変化があると悪化することがあります。また、接触に対しても非常に敏感になり、何かに少し触れただけで強い痛みを感じるようになります。

 

症状のある部位は、赤くなる、斑点ができる、青白くなる、光沢が出る、腫れるなどの症状が見られることもあります。

 

痛みのために症状がある部位を使わなくなった場合は、関節を正常に動かせなくなり、筋肉が拘縮し瘢痕組織が形成される場合もあります。

 

他にも、毛髪が抜けたり、爪にひびが入ったり爪が厚くなったり、骨の密度が低下したりすることもあります。指が曲がったりジストニアが起こったりすることもあります。

 

汗をかく量が普段より増えたり減ったりすることもあります。その場合は、普段より暑く感じたり寒く感じたりすることがあります。

 

複合性局所疼痛症候群は、経過の予測が難しい病気でもあります。そのため、多くの人が痛みなどの症状に合わせて抑うつ、不安、怒りなどの症状も現れます。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、一般には怪我や手術後に発症する神経系の病気です。主に手や足といった特定の部分に影響を及ぼし、非常に激しい痛みを引き起こします。しかし、CRPSの症状は疼痛だけにとどまらず、多彩で、時間とともに変化します。

 

疼痛: CRPSの最も一般的な症状は慢性的な疼痛です。これは通常、特定の手または足に集中しており、しばしば怪我や手術を受けた部位から始まります。疼痛は、しばしば「燃えるような」、「刺すような」、または「鋭い」痛みと表現されます。また、痛みは物理的な接触、例えば衣服による軽い摩擦によっても引き起こされることがあります。

 

感覚の変化: CRPSはしばしば感覚の変化を伴います。患者は温度の変化を感じることがあり、触れた物が異常に熱く、または冷たく感じることがあります。また、痛みを感じる部位の周囲の皮膚が異常に敏感になることもあります。

 

皮膚の変化: CRPSは皮膚の変化も引き起こすことがあります。これには、皮膚の色の変化(赤く、青く、または白くなる)、皮膚の温度の変化、または皮膚の薄くなることが含まれます。また、皮膚は、乾燥、亀裂、または皮膚の光沢の変化を経験することもあります。

 

関節と筋肉の問題: 長期間にわたるCRPSは関節の硬直や腫れを引き起こすことがあり、これにより関節の動きが制限されることがあります。さらに、筋力の減少や筋肉の萎縮も報告されています。これは一部で慢性的な疼痛や運動の困難により、影響を受けている肢をあまり動かさなくなるために起こります。

 

骨と皮膚の変化: 長期間のCRPSは骨と皮膚の変化を引き起こすことがあります。これは通常、X線や他のイメージングテストを受けるときに観察されます。骨は薄く、弱くなることがあり、皮膚は時間とともに細く、光沢があり、厚くなることがあります。

 

自律神経系の異常: 自律神経系は体温、発汗、血流などの体の機能を制御します。CRPS患者は、影響を受けている部位の異常な発汗や血流の変化を経験することがあります。

 

以上がCRPSの主な症状ですが、それぞれで症状の重度や持続時間は異なります。ある人にはある症状が重要である一方で、他では他の症状が重要であるということがよくあります。また、CRPSの症状は時間とともに変化し、新しい症状が出現することもあります。

 

CRPSは非常に個別化した病気であり、それぞれが独自の経験を持つため、理解するのは困難です。しかし、それらの症状を理解することで、より適切な判断と改善の進行につながることを期待しています。

 

参考文献:

[1] Bruehl S. An update on the pathophysiology of complex regional pain syndrome. Anesthesiology. 2010;113(3):713-725. doi:10.1097/ALN.0b013e3181e3db38.

[2] Harden RN, Oaklander AL, Burton AW, Perez RS, Richardson K, Swan M, Barthel J, Costa B, Graciosa JR, Bruehl S. Complex regional pain syndrome: practical diagnostic and treatment guidelines, 4th edition. Pain Med. 2013;14(2):180-229. doi:10.1111/pme.12033.

[3] Bean DJ, Johnson MH, Heiss-Dunlop W, Lee AC, Kydd RR. Extent of recovery in the first 12 months of complex regional

複合性局所疼痛症候群の改善には複数の方法を組み合わせる

複合性局所疼痛症候群の改善方法は、理学的な方法や作業、神経ブロック、神経や脊髄への刺激、痛み止めなどです。抑うつなどの症状がある場合は精神的にも改善を行います。鏡を使ったり鍼灸を行ったりすることもあります。

 

通常、複合性局所疼痛症候群を改善するためには、複数の方法を組み合わせて用います。改善を行う目的は、問題のある腕や脚を動かしやすくすることです。

 

理学的な方法は、痛みのある部位を動かして筋肉が萎縮しないようにしたり、関節可動域を維持したり広げたりすることによって、使われない関節の周りに瘢痕組織が形成されないようにしたり、痛みに対する感受性を低下させたり、より円滑な生活を送ったりすることができるために行う方法です。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、疼痛管理と機能回復の難しさから、改善の挑戦的な問題となっています。これは特に、現在の改善方法が全ての場合に効果的でない場合、または一部が改善に耐性を持つ場合に当てはまります。しかし、幅広い改善のオプションが存在し、それぞれの特定の症状や生活状況に合わせてカスタマイズされます。

 

薬: CRPSの初期の改善では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、コルチコステロイド、抗てんかん薬、抗うつ薬、オピオイドなどの薬が含まれます。これらは痛みを管理し、炎症を抑制し、神経の過敏化を減少させることを目的としています。

 

物理的な方法: 物理的な方法は、CRPSの改善に非常に重要な役割を果たします。これは、筋力の改善、関節の可動域の拡大、日常生活活動の改善を目的としています。さらに、グレーデッド・モーター・イメージングや鏡といった特別な技術は、神経の再組織化を促進し、身体の感覚のマッピングを改善するのに役立ちます。

 

神経遮断: 特定の神経への麻酔薬の注入により、一時的に疼痛伝達を遮断することで痛みを緩和します。これには、シンパテクトミーと呼ばれる手術的なアプローチもありますが、副作用のリスクがあります。

 

侵襲的な改善法: これらには、スパイナルコードスティミュレーション、神経刺激、内部鎮痛薬ポンプの挿入などが含まれます。これらは通常、他の方法に反応しない場合に対して行われます。スパイナルコードスティミュレーションは、電極を脊髄に植え込むことで、痛みの伝達を遮断しようとします。内部鎮痛薬ポンプは、痛みをコントロールするための鎮痛薬を直接脊髄液に送り込む装置です。

 

心理的な改善方法: CRPSは精神的健康にも影響を及ぼす可能性があるため、心理的な改善は痛み管理プログラムの重要な一部です。CBTは痛みと向き合う方法を教え、痛みと上手く共存する方法を見つけるのを助けます。また、リラクゼーションテクニックやマインドフルネス瞑想もストレスを軽減し、疼痛の感じ方を改善するのに役立ちます。

 

代替法: アキュパンクチャ、バイオフィードバック、ヒプノセラピーなどの代替法が、一部にとっては有用な補完的な方法となることがあります。

 

改善を行う上での目標は、痛みを管理し、機能を回復し、生活の質を改善することです。しかし、CRPSの改善方法は一人ひとり異なり、それぞれに最も適したプランは、その症状、健康状態、生活状況によって異なります。

 

なお、新たな改善方法の研究が続けられており、これには神経成長因子(NGF)の阻害剤や、免疫系を調節する方法が含まれます。

 

参考文献:

[1] Bruehl S. An update on the pathophysiology of complex regional pain syndrome. Anesthesiology. 2010;113(3):713-725.

[2] Moseley GL. Graded motor imagery for pathologic pain: a randomized controlled trial. Neurology. 2006;67(12):2129-2134.

[3] Stanton-HicksM, Baron R, Boas R, et al. Complex Regional Pain Syndromes: guidelines for therapy. Clin J Pain. 1998;14(2):155-166.

[4] Kemler MA, de Vet HC, Barendse GA, Van Den Wildenberg FA, van Kleef M. The effect of spinal cord stimulation in patients with chronic reflex sympathetic dystrophy: two years' follow-up of the randomized controlled trial. Ann Neurol. 2004;55(1):13-18.

[5] Williams AC, Eccleston C, Morley S. Psychological therapies for the management of chronic pain (excluding headache) in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD007407.

[6] Lee DH, Lee KJ, Cho KI, Noh EC, Jang JH, Kim YC, Kang DH. The effect of biofeedback training on cranio-cervical flexion in patients with chronic neck pain. J Phys Ther Sci. 2016;28(2):566-569.

[7] Moseley GL, Butler DS. Fifteen Years of Explaining Pain: The Past, Present, and Future. J Pain. 2015;16(9):807-813.

 

CRPSは改善が困難な病気ですが、一貫したアプローチと個々の症状に対応した改善プランにより、痛みの管理と生活の質の改善が可能となります。

リハビリテーションを取り入れることが推奨されている

複合性局所疼痛症候群は、外傷を受けた後や手術を行った後に発症する病気で、大きな痛みと障害を伴う病気です。複合性局所疼痛症候群は、特定の神経損傷がない1型と、特定可能な神経損傷がある2型の2種類の病型があります。

 

ガイドラインでは、複合性局所疼痛症候群の改善の一環としてリハビリテーションを取り入れることが推奨されています。複合性局所疼痛症候群に対して行うリハビリテーションには、運動や教育など色々なアプローチがあります。

複合性局所疼痛症候群の改善例

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は疼痛と身体機能障害によって生活を大いに困難にする可能性があります。しかし、適切な改善とリハビリテーションプロセスを通じて、多くの場合は自身の症状を管理し、生活の質を改善することができます。以下に、このような改善の適用例をご紹介します。

 

・サラさん(仮名)、38歳、CRPS(タイプI)2年経過のケース

 

症状:左手首に過度の疼痛、腫れ、皮膚の色と温度の変化、そして制限された可動域が見られる。

 

改善開始時の主訴:痛みが強く、日常生活で困難を感じている。特に物をつかむことや手を使う作業が難しい。

 

サラさんは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ガバペンチン(神経痛に効果的な薬)、そして抗うつ薬を処方されました。これらの薬物は、痛みの管理と心情の安定に役立つことが期待されます。サラさんは週に2回、物理的な改善を受けることになりました。これには、軽いストレッチング、筋力トレーニング、そして関節の可動域を増やすエクササイズが含まれます。また、鏡を使う神経再教育技術も行いました。さらにCBTを導入しました。このセラピーは、サラさんが痛みとどのように向き合うかを再考するのに役立ちました。ストレス管理とリラクゼーション技術も一緒に教えられました。

 

3ヶ月後、サラさんは痛みが少しずつ和らぎ、日常生活での手の使用も改善してきたと報告しました。特に、物理的な方法と鏡を使う方法が彼女の症状の改善に効果的だと感じました。また、CBTはサラさんが痛みとどのように向き合うかを理解するのに役立ちました。彼女は自分の痛みを管理し、日常生活での問題に対処する新しい方法を学びました。

 

6ヶ月後、サラさんの痛みはさらに減少し、手の機能も大幅に改善されました。彼女はより独立した生活を送ることができ、以前のように家事をこなすこともできるようになりました。彼女は自身の進歩に対して自信を持つようになり、改善への積極性も増しました。

 

12ヶ月後、サラさんは彼女の状態が大幅に改善されたと報告しました。彼女の痛みは管理可能なレベルになり、日常活動を行う能力も大幅に回復しました。彼女は再び自分の職業に就くことができ、自分の生活を取り戻すことができました。

 

サラさんの事例は、痛みを克服し、生活の質を改善することが可能であることを示しています。個々のための包括的かつ個別化された計画は、疼痛の管理、機能の回復、そしてより良い生活のための重要なステップとなります。

 

最終的に、CRPSの改善は困難かもしれませんが、適切な改善とケアによって、多くの場合は症状を管理し、日常生活を再び楽しむことができます。これは一歩一歩のプロセスであり、本人の努力とチームのサポートが重要です。

おすすめ記事

営業時間

11時から21時

営業日
 

11時~21時迄

休業日

年末年始

お問合せ
080-1802-9798