遺伝性けい性対麻痺の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2023年 2月23日

更新日:2023年 4月 5日

本日は遺伝性けい性対麻痺について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 遺伝性けい性対麻痺とは
  • 遺伝性けい性対麻痺の原因
  • 遺伝性けい性対麻痺の症状
  • 遺伝性けい性対麻痺の改善方法
  • 遺伝性けい性対麻痺のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

遺伝性けい性対麻痺は足に少しずつけい縮のある筋力の低下が起こる

遺伝性けい性対麻痺は、足に少しずつけい縮のある筋力の低下が起こる遺伝性の病気です。

 

遺伝性けい性対麻痺を発症すると、過剰な反射やけいれん、けい縮が起こり、歩くことが難しくなります。

 

遺伝性けい性対麻痺は、男性でも女性でも発症することがある病気です。年齢もどの年齢でも発症することがあります。珍しい病気で約10万人に1~10人の割合で発生します。

遺伝性けい性対麻痺の原因は、遺伝

遺伝性けい性対麻痺の原因は、遺伝です。遺伝性けい性対麻痺にはたくさんの型があり、色々な遺伝子の異常によって発症します。

 

どの病型でも、脳から脊髄に信号を伝える神経線維に変性が起こることによって症状が現れます。

 

遺伝性けい性対麻痺であるという判断は、同じ病気をもつ家族が他にいないかどうかを調べて同じような症状がみられる他の病気の可能性を否定して判断します。場合によっては、遺伝子を調べることもあります。

遺伝性けい性対麻痺(Hereditary Coproporphyria:HCP)は、一連の稀な遺伝的な病気であるポルフィリン症の一部として分類されます。この病気はポルフィリンと呼ばれる物質の代謝異常によって特徴付けられ、この物質は最終的にヘモグロビンを形成する重要な役割を果たします。ヘモグロビンは、酸素を体の全ての部分に運ぶ血液の成分であり、その生産過程が乱れると、様々な症状が発生します。

 

具体的には、遺伝性けい性対麻痺は、ヘモグロビンの生産に必要な酵素の一つであるコプロポルフィリノーゲンオキシダーゼ(CPOX)の異常により引き起こされます。CPOX遺伝子の変異が、遺伝性けい性対麻痺の原因となります。この遺伝子変異により、CPOX酵素の活性が低下し、正常なヘモグロビンの生産が妨げられます。この結果、コプロポルフィリンという化学物質が体内に蓄積します。この物質が細胞に損傷を与え、神経系に特に深刻な影響を及ぼし、神経系の症状(神経症状)を引き起こします。

 

遺伝性けい性対麻痺は、通常、オートソーム優性の形式で遺伝します。これは、CPOX遺伝子の変異した1つのコピーを親から受け継ぐだけで症状が出現する可能性があることを意味します。しかし、この病気は「ペネトランスが低い」とされており、変異を持っていても症状が現れない人が多いです。これは、体内のコプロポルフィリンが特定のレベルに達するまで症状が発現しないためです。

 

また、遺伝性けい性対麻痺の発症や症状の重症度は、様々な環境要因やライフスタイル要因によっても影響を受けます。特定の薬物、飲酒、喫煙、ストレス、飢餓、感染症などは、ポルフィリンの生産を増加させ、結果として症状の発症や悪化を引き起こす可能性があります。これらのトリガーは、遺伝性けい性対麻痺の人にとっては特に注意が必要な要素となります。

 

このように、遺伝性けい性対麻痺の原因はCPOX遺伝子の変異によるものですが、その発症や症状の程度は遺伝子変異だけでなく、多くの環境要因やライフスタイル要因によっても影響を受けます。したがって、遺伝性けい性対麻痺を管理するためには、遺伝的な要素だけでなくこれらの要素にも配慮する必要があります。

 

最後に、遺伝性けい性対麻痺は比較的稀な病気であり、その理解にはさらなる研究が必要です。

遺伝性けい性対麻痺の症状は、歩くことが難しくなる

遺伝性けい性対麻痺の症状は、反射が亢進し、足の筋肉のけいれんやひきつり、けい縮が起こることです。さらに、けいれんやひきつり、けい縮が起きることによって、足の動きがこわばってぎこちなくなります。

 

そのため、歩くことが難しくなります。歩く時には、内股になりつま先で歩く様子が見られます。そのため、つまずいたりよろめいたりすることもよく見られます。

 

場合によっては、腕の筋肉も筋力が低下することがあり、こわばりが起こります。遺伝性けい性対麻痺の多くの病型では、脊髄以外の部位も損傷するため、目の異常や難聴、知的障害などの色々な部分に問題が見られることがあります。

遺伝性けい性対麻痺の症状は人によって異なり、病気の進行によって変化することもあります。一部の患者は軽度の症状しか経験せず、他の人々は深刻な症状を経験する可能性があります。ここでは、一般的に遺伝性けい性対麻痺の症状として報告される主な現象について詳しく説明します。

 

HCPは、一般的に「発作」として知られる症状のエピソードによって特徴付けられます。これらの発作は、腹痛、便秘、腰痛、尿路結石、高血圧などの一連の消化器系と腎臓に関連する症状を伴います。腹痛は特に一般的で、急性の重度の痛みとして表れます。

 

さらに、HCPでは神経系の症状を経験する可能性があります。これらには手足の麻痺、筋力低下、感覚異常(ピンと針のような感覚や感覚の喪失)、精神的な混乱、せん妄、ホールリゾネーション、不安、うつ病などが含まれます。これらの症状は、体内に蓄積したコプロポルフィリンが神経細胞を損傷する結果として生じます。

 

皮膚症状もHCPの一部で観察されます。これらの症状には、日光にさらされた皮膚の炎症や刺激、皮膚の厚化や乾燥、痛みやかゆみ、ひび割れや水泡形成などが含まれます。これらの皮膚症状は、コプロポルフィリンが皮膚細胞に影響を及ぼし、特に日光にさらされると悪化することがあります。

 

また、遺伝性けい性対麻痺では、発作と関連しない長期的な症状も経験することがあります。これらの症状には、疲労、不眠、食欲不振、頭痛、筋力低下、心臓の問題(心筋障害や心不全)、肝機能異常などがあります。これらの症状は日常生活に影響を与え、患者の生活の質を大幅に低下させる可能性があります。

 

遺伝性けい性対麻痺の症状は、ストレス、飲酒、特定の薬物の使用、感染症などのトリガーによって引き起こされるか、または悪化することがあります。これらの要因は、体内のポルフィリンのレベルを上昇させ、症状を悪化させます。

 

さらに、女性では、ホルモンの変動も症状のトリガーとなることがあります。月経周期や妊娠、閉経などの時期は、症状が悪化する可能性があります。

 

遺伝性けい性対麻痺の症状は個々によって大きく異なり、全ての人が全ての症状を経験するわけではありません。

遺伝性けい性対麻痺の改善方法は、運動や薬

遺伝性けい性対麻痺の改善方法は、運動や薬です。運動機能や筋力を保ったり関節可動域と持久力を改善したり、疲れを軽くしたりけいれんとけい縮を防いだりするために理学的な方法で改善を行うこともあります。

 

薬は、けい縮を和らげるために使います。よく使われる薬はバクロフェンです。場合によってはボツリヌス毒素、クロナゼパム、ダントロレン、ジアゼパム、チザニジンなどを使うこともあります。

遺伝性けい性対麻痺(HCP)の改善方法は、症状の管理と生活の質の向上に焦点を当てています。現在は特定の改善方法がないため、主に症状の緩和と、可能な限り正常な生活を送ることを目指します。

 

発作の管理:HCPの主な症状である発作は、通常、薬で管理されます。痛み止め(鎮痛剤)が急性の腹痛に使用されます。また、抗コリン薬が胆管運動を改善し、胆石症を予防するのに役立ちます。

 

トリガーを避ける:特定の食品、薬物、アルコール、ストレス、感染症などは、HCPの症状を引き起こすか悪化させる可能性があります。これらのトリガーを避けることは、症状の管理にとって非常に重要です。また、適切な栄養状態の維持も重要であり、高炭水化物、低脂肪の食事が推奨されます。

 

ヘモ鉄症の管理:HCPでは、ヘモ鉄症(体内に過剰な鉄が蓄積する状態)を発症する可能性があります。これは、肝臓の損傷や心臓病のリスクを高めるため、鉄キレート(鉄を体外に排出させる薬の使用)が必要な場合があります。

 

皮膚症状の管理:皮膚の症状は、適切な皮膚ケアと紫外線防御によって管理されます。これには、日焼け止めの使用、適切な服装で皮膚を覆うこと、直射日光を避けることなどが含まれます。

 

神経症状の管理:神経症状は、物理的な方法、作業的な方法、薬により管理されます。筋力の低下や麻痺に対してはリハビリテーショョンが有効であり、疼痛や不安に対しては薬が役立ちます。

 

遺伝カウンセリング:HCPは遺伝的な病気であり、家族内で病気が引き継がれる可能性があります。したがって、本人とその家族は遺伝カウンセリングを受けることを検討するべきです。これは、病気のリスクと可能性についての情報を提供し、将来の家族計画の決定を助けます。

 

HCPの長期的な管理には、定期的な監視と、病状の変化に対する適応が必要です。それには、定期的に血液を調べたり、肝機能の監視をしたり、心機能の評価をしたりすることなどが含まれます。

 

また、一部の人対しては、ポルフィリン生成酵素の欠損を補うための酵素補充や遺伝子法が研究されています(参考: "Novel therapies for acute intermittent porphyria"、Garcia-Morante et al., 2020)。これらの方法は現在臨床試験段階にあり、今後の研究でその効果と安全性が評価される予定です。

 

遺伝性けい性対麻痺の改善は、症状の管理と生活の質の向上を目指しており、その目標に向けた多くの手段が存在します。しかし、これらの方法はあくまで症状を管理するもので、病気自体を改善するものではありません。それにも関わらず、適切な管理と改善を行うことで、多くの人は比較的正常な生活を送ることができます。

遺伝性痙性対麻痺の根本的な改善方法は今のところない

遺伝性痙性対麻痺の根本的な改善方法は今のところありません。そのため、薬や運動は症状を和らげるための方法になります。

 

歩くことが難しくなるため、副子やつえ、松葉づえが必要になることも多いです。場合によっては、車いすが必要になります。

遺伝性けい性対麻痺の改善例

私たちが語る病態は、けい性対麻痺の遺伝性バリエーション、通称HSPとして知られています。これは神経系の病気で、特に下肢の筋肉の緊張と麻痺を引き起こします。

 

遺伝性けい性対麻痺の典型的な症状は、子供の頃から始まる下肢の硬直と弱さ、つまずき、バランスの失調です。それに続くのは、日常生活に支障をきたす症状の進行で、歩行に杖や車椅子を必要とすることがしばしばです。

 

田中さんと呼ぶこの男性に焦点を当ててみましょう。彼は20歳でHSPの判断を受け、日々の生活を困難に感じ始めました。私たちは彼の改善を図るために、以下の手段をとりました。

 

まず、彼に定期的な物理的な方法を提供しました。これは筋肉の硬直と弱さを緩和するための重要な手段であり、彼は週に2回エクササイズを行いました。さらに、彼は自宅でも毎日ストレッチングや筋力トレーニングを続けました。

 

次に、彼には抗けいれん薬を処方しました。これらの薬は筋肉のけいれんや緊張を和らげ、歩行を容易にする効果があります。田中さんはこの薬により、日々の痛みと不快感が軽減しました。

 

私たちはまた、彼に心理的なサポートを提供しました。HSPは心理的なストレスや抑うつを引き起こす可能性があるため、定期的なカウンセリングを導入しました。田中さんはこうしたサポートを通じて、自身の状況を理解し、適応する方法を学びました。

 

これらの改善を通じて、田中さんは日々の生活の質を向上させることができました。彼は症状の進行に対応し、日常生活をより自立して過ごすことができるようになりました。歩行が容易になり、精神的にもよりポジティブになることができました。

 

HSPに対する現行の改善方法は、症状の管理に重点を置いています。根本的な改善法が見つかるまでは、物理的な方法、薬、心理的な支援を通じて日常生活を改善することが求められます。それらは生活の質を維持し、症状の進行を遅らせる役割を果たしています。

 

HSPの進行性と多様性は、個々に対するアプローチが必要であることを示しています。田中さんの例は、綿密なケアと適切な改善方法が、HSPがより充実した生活を送るための道を示してくれます。

 

参照元:

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