神経因性疼痛の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2021年  2月 1日

更新日:2021年  5月 15日

本日は神経因性疼痛について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 神経因性疼痛とは
  • 神経因性疼痛の原因
  • 神経因性疼痛の症状
  • 神経因性疼痛の改善方法
  • 神経因性疼痛のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

神経因性疼痛は、神経障害、機能不全、一時的な神経の混乱で発症する疼痛

神経因性疼痛は、世界疼痛学会の定義によると「神経の障害、機能不全、一時的な神経の混乱により発症する疼痛」とされています。糖尿病、帯状疱疹、がんの科学的な改善など様々なものが代表的な原因にあります。

 

症状は、痛み、知覚の異常、痛覚の過敏などで、神経因性疼痛がきっかけとなり、不安や抑うつに繋がることもあります。さらに、不安や抑うつによって痛みがより強くなる場合もあります。

神経因性疼痛は痛みを伝える末梢神経の損傷や機能の異常から起こる耐えがたい慢性疼痛です。世界中で、全世界では2200 万人以上の人が苦しんでいる病気であると言われています。

 

神経因性疼痛が起こるメカニズムはいまだに不明です。そのため、有効な改善方法はありません。

原因は神経の圧迫損傷、脳と脊髄の痛みの処理の過程で起こる異常や妨害

神経因性疼痛は神経の圧迫や損傷、脳と脊髄が痛みの信号を処理する過程で起こる異常や妨害などが原因で起こります。

 

腫瘍や椎間板破裂、手首の神経の圧迫や、糖尿病などの全身に影響が出る病気、帯状疱疹などの体の一部に影響が出る病気で起こることがあるのです。

神経因性疼痛は、以前は明らかとなっている原因が分からず、痛みの原因が心の病気にあると言われていました。

 

しかし、最近では脳科学の急激な進歩によって色々な脳の機能が明らかになってきています。その結果、脳の機能の異常によって痛みの感受性を変化させ、敏感にするという可能性があると考えられています。

神経因性疼痛は、神経系の障害が原因で起こる特殊な種類の疼痛です。通常、私たちが感じる疼痛は、身体の何らかの部分が傷ついたときや病気になったときに生じます。これに対して、神経因性疼痛は、痛みを感じるための神経自体が傷ついたり、正常に機能しなくなったときに起こります。

 

神経因性疼痛の原因は様々で、それぞれが特定の神経組織に影響を与えます。以下に、一般的な神経因性疼痛の原因について詳しく説明します。

 

神経障害:慢性的な病気、特に糖尿病やヘルペスゾスタ(帯状疱疹)は神経に損傷を与え、神経因性疼痛を引き起こすことがあります。特に、糖尿病性神経障害は、高血糖により神経が長期間にわたって損傷を受け、足や手に疼痛を引き起こす一方で、帯状疱疹後神経痛は、ヘルペスゾスタウイルスによる感染が原因で生じます。

 

ストロークまたは脳損傷:脳卒中や頭部外傷など、脳への直接的な損傷は神経系の異常を引き起こし、中枢神経系の疼痛、例えば中枢性疼痛症候群を引き起こすことがあります。

 

脊髄損傷:脊髄は、私たちの身体から脳への信号を伝える神経のハイウェイです。したがって、脊髄に損傷が生じると、それが神経因性疼痛の原因となることがあります。

 

多発性硬化症:これは中枢神経系を損傷する自己免疫の病気で、脳と脊髄の神経を覆う保護膜であるミエリン鞘が破壊されます。これにより、神経信号の伝達が阻害され、疼痛や他の神経症状を引き起こします。

 

神経圧迫:神経が他の組織に圧迫されたり引っ張られたりすると、神経因性疼痛を引き起こすことがあります。これはしばしば、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、または腱鞘炎(例えばカーパルトンネル症候群)といった条件の下で起こります。

 

外傷:事故や手術などによる直接的な神経損傷も、神経因性疼痛の一因となります。

 

化学物質や薬物:化学物質による神経への損傷や、特定の薬物(例えば、一部の抗がん剤や抗ウイルス薬)が神経に毒性を示すことがあり、これらも神経因性疼痛を引き起こす可能性があります。

 

感染症:一部の感染症、特にHIV/AIDSやリーマン病などは、神経組織に損傷を与え、神経因性疼痛を引き起こすことがあります。

 

これらの条件は、神経組織のどの部分が影響を受けているか、どの神経経路が関与しているかにより、異なる種類の神経因性疼痛を引き起こします。例えば、末梢神経(体の表面近くを走る神経)が影響を受けた場合、疼痛は通常、損傷した神経が供給する身体の特定の部分に限定されます。これに対して、脊髄や脳などの中枢神経系が影響を受けた場合、疼痛は広範囲にわたる可能性があります。

神経因性疼痛では、痛み、知覚異常、痛覚過敏が起こる

神経因性疼痛で感じる痛みには、灼熱痛や電撃痛、さされるような痛みや締め付けられるような痛み、しびれる痛みなどがあります。深くうずくような痛みを感じることもあります。

 

神経因性疼痛では、痛みの他に知覚異常や痛覚過敏も起こります。知覚異常は、 弱い刺激を強い痛みに感じてしまうアロディニアの症状が起き、痛覚過敏は、痛みや刺激に対して刺激の強さによっては普通感じると思われるよりも強い痛みに感じてしまうような症状が起きます。

 

触覚や低温に対して過敏になるため、場合によっては、軽く触られただけでも痛みを感じることもあります。

動くと痛むような症状がある時、痛みがある部分の体の部位は動かしたくなくなることが一般的です。その結果、痛みがある部位を制御している筋肉は使われず衰えてしまいます。筋肉が衰えてしまうと運動にも制限が出てしまうことになります。

 

神経因性神経系によって神経が痛みに敏感な構造に変わってしまいます。すると、痛みの原因はなくなっても、その後も長い間に渡って痛みが続きます。

神経因性疼痛は、その特異性と多様性により、他の痛みとは異なる体験をもたらします。神経系が損傷を受けると、痛みの感じ方、その性質、その場所、そしてそれがどのように変化するかが変わることがあります。以下では、神経因性疼痛の主要な症状について詳しく説明します。

 

疼痛の種類:神経因性疼痛は、しばしば独特の特徴を持つ疼痛として表現されます。それは、「焼けつくような」、「鋭い」、「突き刺すような」、「切りつけるような」、「電撃のような」、「刺激する」、「鈍い」などと形容されます。

 

異常な感覚:神経因性疼痛は、異常な感覚、特に異常な痛み感覚(アロディニア)や異常な疼痛感覚(ハイパルジーシア)と関連していることがあります。アロディニアは、通常は痛みを伴わない刺激が痛みを引き起こす状態を指します。例えば、軽い触れる、風、温度変化などが痛みを引き起こすことがあります。一方、ハイパルジーシアは、軽度の痛みを強く感じる状態を指します。

 

間欠的または持続的な疼痛:神経因性疼痛は、間欠的(断続的)または持続的(連続的)な疼痛として現れることがあります。間欠的な疼痛は突然始まり、しばしば急激に終わる一方、持続的な疼痛は一定のレベルで続き、時間の経過とともに悪化することがあります。

 

疼痛の位置:神経因性疼痛は、特定の神経の供給範囲(神経分布)内で感じられることが一般的です。したがって、その場所はは人により異なり、影響を受ける神経によります。例えば、帯状疱疹後神経痛の場合、疼痛は帯状疱疹の際に影響を受けた神経の経路に沿って感じられます。

 

夜間の症状の増加:神経因性疼痛は、夜間に悪化する傾向があります。これは、日中の活動が脳を刺激し、一時的に疼痛の感覚を軽減するためと考えられています。

 

伴う症状:神経因性疼痛は、しばしば他の神経症状と共に現れます。これには、感覚の変化(例えば、感覚の鈍化、ピンと針の感覚、四肢の麻痺または弱さ)、自律神経の症状(例えば、発汗異常、ほてり、冷え)、または運動機能の損失が含まれます。

 

これらの症状がある場合は、医師または専門家に相談することを強くお勧めします。これらの症状は、神経損傷の可能性を示す重要な警告信号であり、早期に対応することで、さらなる損傷を防ぐことが可能となるからです。

 

また、神経因性疼痛は、個々の人の日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。疼痛が持続的であるか、頻繁に発生する場合、日常生活の活動、睡眠、集中力、情緒状態に影響を及ぼす可能性があります。これらの影響は、慢性的な疼痛がもたらす身体的な負担だけでなく、精神的、感情的な負担も含んでいます。

 

以上が神経因性疼痛の一般的な症状についての説明です。しかし、神経因性疼痛は個々の人によって異なる形で現れ、その経験は人それぞれです。

現在、神経因性疼痛の改善法は確立されていない

現在、神経因性疼痛の改善法は確立されていません。そのため、改善に難しいことがある場合も多いです。神経障害性疼痛を改善するには、まず原因となっている疾患に対しての改善をする必要があります。

 

例えば、糖尿病が原因で神経因性疼痛が起きている場合、血糖値のコントロールを改善することによって痛みの原因となっている神経の損傷が進むスピードが遅くなることがあるのです。

 

原因となっている病気に対しての改善をしていくため、改善方法としては色々あります。

神経因性疼痛の改善には、痛み止めや抗うつ薬、抗てんかん薬などの薬や理学的な方法が使われます。必要な場合は手術をすることもあります。

 

神経因性疼痛の改善で主に使われる薬は、抗うつ薬や抗てんかん薬などの鎮痛補助薬やオピオイド鎮痛薬、カプサイシンクリームなどの外用薬、リドカインを含むパッチ剤などです。

 

しかし、薬を使っても、部分的な痛みしか和らぐことがないことが多いです。そのため、神経障害性疼痛の改善に薬が効果を発揮するのは一般的に半数未満だと言われています。

神経因性疼痛の改善は困難であることがしばしばあり、その痛みを完全に消すことは難しいかもしれません。しかし、改善方法は痛みを軽減し、日常生活の質を改善するために重要です。以下では、現在利用可能な神経因性疼痛の主要な改善法について説明します。

 

薬:神経因性疼痛の改善の主な一部は薬です。抗てんかん薬(例えば、ガバペンチンやプレガバリン)、抗うつ薬(例えば、アミトリプチリンやドゥロキセチン)、局所鎮痛薬(リドカインパッチやカプサイシンクリーム)、オピオイド薬、筋弛緩剤などがよく用いられます。これらの薬は神経の信号伝達を変化させて疼痛を緩和するか、あるいは痛みを感じる能力を減らします。

 

物理的な方法:神経因性疼痛を軽減するためのもう一つの戦略は物理的な方法です。これには、運動、マッサージ、熱、冷却、または電気刺激などが含まれます。これらの方法は、自分自身の痛みを管理する技術を学び、また神経の健康を促進するために有用です。

 

侵襲的方法:神経因性疼痛が薬や物理的な方法に反応しない場合、より侵襲的な方法が考慮されることがあります。これらには、神経ブロック(特定の神経への薬物注射による痛みのブロック)、神経刺激(スパイナルコード刺激や末梢神経刺激など)、外科手術(神経分解術や神経移植など)、または医薬品を直接神経に注入するためのポンプの埋め込みがあります。

 

痛管理クリニックと心理的なアプローチ:慢性的な神経因性疼痛を持つ人々は、疼痛管理クリニックでの多職種によるアプローチや心理的なアプローチから利益を得ることがあります。これには、瞑想、リラクゼーション技術、生活習慣の変更など色々な方法が含まれます。

 

補完、代替療方法:一部では、ヨガ、アクパンクチャ、マインドフルネス瞑想、カイロプラクティック、ハーブサプリメントなどの補完、代替方法から疼痛軽減の恩恵を受けることがあります。これらの改善方法がすべての人に効果があるわけではありませんが、疼痛管理の一部として有用であると報告している人もいます。

神経因性疼痛の改善方法は個々によって大きく異なります。改善方法の選択は、疼痛の原因、痛みの程度、病歴、同時に存在する他の健康問題、および個々の生活スタイルや嗜好に基づいています。そのため、医師や専門家と密接に協力し、効果的な疼痛管理計画を作成することが重要です。

 

これらの方法は完全な解決策ではなく、神経因性疼痛を完全に取り除くことは難しいかもしれません。しかし、これらの方法は痛みを軽減し、生活の質を向上させるための道具です。疼痛管理は一過性のプロセスではなく、慢性的な疼痛に対処するための長期的な戦略が必要となります。そのため、自身の体の信号を理解し、自身の体が何を必要としているかを理解することが重要です。

改善方法によって期待できること

理学的な方法や作業的な方法で神経因性疼痛の改善をする場合、痛みのある部位を動かし続けることで、筋肉の萎縮を防具ことができること、関節の可動域を広げたり維持したりすること、より円滑に日常生活を送れるようにすること、痛みのある部位の感受性を下げることなどが期待できます。

 

神経に圧迫がある場合の損傷による痛みに対しては手術が有効なこともあり、一部の慢性の神経障害性疼痛には電極を脊髄の上などに置いて電流を流す電気刺激も有効なことがあります。

 

痛みの信号を伝えたり増やしたりする神経の経路を断つために神経ブロックも改善に使用されることがあります。神経ブロックは、様々な方法があり、薬で和らげることができないくらいに程度が重い持続性の痛みに対して使われます。

神経因性疼痛の痛みはハンセン病の後遺症から訴えられることも多いです。この痛みは、らい菌による神経の損傷が原因で起こる神経因性疼痛であると考えられています

 

そのため、ハンセン病の後遺症が原因で起こる神経痛を改善するためには、神経因性疼痛を改善するための知識を持って改善を行うことが必要です。

神経因性疼痛の改善例

神経因性疼痛は複雑であり、個々の患者に対する最良の改善方法は疼痛の原因、痛みの程度、個々の体質や生活習慣などによって大きく変わります。以下に、神経因性疼痛の改善の実際の症例を紹介します。

 

症例1:帯状疱疹後神経痛(PHN)

ジョージさん(仮名)は、70代男性で、帯状疱疹後神経痛(PHN)に悩まされていました。その疼痛は、強烈で断続的であり、特に夜間に悪化しました。ジョージさんは、初めて一般的な鎮痛薬を試みましたが、それだけでは痛みを十分にコントロールすることができませんでした。そこで、医師は神経因性疼痛に特化した薬であるガバペンチンを処方しました。この薬は数日から数週間で効果を発揮し、ジョージさんの疼痛は大幅に軽減されました。

 

症例2:脊髄損傷による神経因性疼痛

マリアさん(仮名)は、車の事故により脊髄を損傷し、慢性的な神経因性疼痛を経験しています。マリアさんの痛みは強烈であり、一部の身体活動を制限していました。彼女は最初に抗うつ薬のアミトリプチリンを試みましたが、十分な痛みの軽減を経験できませんでした。そこで、医師は次にガバペンチンを追加しましたが、これも痛みを十分にコントロールできませんでした。その後、侵襲的な改善方法であるスパイナルコード刺激を試みたところ、彼女の痛みは大幅に軽減しました。

 

症例3:糖尿病性神経痛

トムさん(仮名)は、糖尿病性神経痛に苦しんでいる60代の男性です。疼痛は主に足に現れ、特に夜間に悪化します。痛みは「刺すような」、「燃えるような」もので、糖尿病管理と並行して疼痛管理が必要となりました。トムさんには最初、ドゥロキセチンという抗うつ薬が処方されました。この薬は神経因性疼痛によく使われるもので、トムさんの疼痛はそれにより部分的に改善されました。その後、リドカインパッチが追加され、更なる痛みの軽減が図られました。

 

症例4:慢性頭痛

エマさん(仮名)は、頭痛に悩まされる若い女性です。彼女の頭痛は非常に強く、日常生活に支障をきたしていました。初期の改善方法として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が処方されましたが、頭痛の頻度と強度はほとんど変わりませんでした。その後、エマさんは神経ブロックという改善方法を受けました。これは、特定の神経に薬物を直接注射するもので、一部に対しては効果的です。エマさんはこの改善方法により、一時的ながら疼痛が大幅に軽減されました。

以上のような症例は、神経因性疼痛の改善が一つの解決策に依存するものではなく、痛みの性質や原因、個々の反応などに応じて多角的なアプローチが必要であることを示しています。それぞれの改善方法がすべての人に効果的であるわけではなく、通常、何が最も効果的であるかを見つけるためには時間と試行錯誤が必要です。専門家との緊密な協力により、一人ひとりに最適な改善方法を見つけることができます。

 

本人が自分の体を理解し、何が効果的であるかを判断する能力は、成功した疼痛管理にとって非常に重要です。痛みは我々の体が何かが間違っていると警告する一種の信号です。神経因性疼痛は非常に厄介で、しばしば適切な管理が求められます。本人が自分の症状をよく理解し、痛みを最小限に抑え、日常生活を可能な限り快適に過ごすために何が必要かを把握することは不可欠です。チームと発症した人が一緒になって、痛みの緩和と生活の質の向上を図ることが最良の結果を生むでしょう。

 

最後に、神経因性疼痛の改善は決して一人で行うものではありません。信頼できる専門家との連携は、適切な改善方法を見つける上で非常に重要です。専門家はあなたが経験している痛みの原因を理解し、最も効果的な改善方法を提案するためのツールを提供します。

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