潰瘍性大腸炎の鍼灸【原因・定義・症状】

公開日:2021年  3月23日

更新日:2022年  5月 4日

本日は潰瘍性大腸炎について解説させていただきます。

☆本記事の内容

  • 潰瘍性大腸炎とは
  • 潰瘍性大腸炎の原因
  • 潰瘍性大腸炎の症状
  • 潰瘍性大腸炎の改善方法
  • 潰瘍性大腸炎のまとめ
足のしびれ、痛み

銀座そうぜん鍼灸院の宗前です。

このページを書いている私は、鍼灸師として13年、担当した利用者様数80,000人を誇り、病気の休職者300人を社会復帰できるまで回復させてきた実績があります。

 

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に潰瘍やただれができる病気

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に潰瘍やただれができる病気で、厚生労働省の特定疾患に指定されています。完全に回復することは難しい病気で、多くの場合は再発を繰り返します。

 

原因として考えられている要素はいろいろありますが、ほとんどの潰瘍性大腸炎の原因は明確にわかることはありません。

 

原因として考えられていることは、細菌やウイルス感染、酵素の欠乏、食物アレルギー、精神的な要因、遺伝などの体質などです。

潰瘍性大腸炎の人が急に増加していることに食習慣の変化が関係している

潰瘍性大腸炎の原因は、細菌やウイルス感染、酵素欠乏や食物アレルギー、精神的な要因や体質などであると考えられています。さらに近年では、免疫異常も原因の1つであると言われています。

 

以前は稀な病気と言われていましたが、最近では潰瘍性大腸炎にかかる人が急激に増えています。10年前に比べると約3倍以上の潰瘍性大腸炎の人がいると言われているほどです。

 

 近年潰瘍性大腸炎の人が急激に増えていることには、食習慣が変わったことが関係していると言われています。具体的にはお肉などの脂質の多い食事を好む人が増えていることが関係しています。

 

欧米では肉類を好む人が元々多く、潰瘍性大腸炎にかかる人が昔から多くいます。

潰瘍性大腸炎は慢性的な大腸炎であり、大腸の内側の膜が炎症を起こし、潰瘍を形成する疾患です。潰瘍性大腸炎は典型的には腹痛、下痢、便に血が混じるといった症状を引き起こします。しかし、なぜこのような症状が起こるのか、潰瘍性大腸炎の原因は何なのかという疑問について詳しく見ていきましょう。

 

免疫系の反応:科学者たちは、潰瘍性大腸炎は免疫系の異常な反応が原因であると考えています。正常な場合、免疫系は体を侵す外部の病原体、たとえば細菌やウイルスと戦うために活動します。しかし、潰瘍性大腸炎の患者では、免疫系が誤って体自身の細胞を攻撃し、大腸の内側の膜に炎症を起こすと考えられています。このような自己免疫の過剰反応が、潰瘍性大腸炎の主要な原因の1つです。

 

遺伝的要素:遺伝子の影響も潰瘍性大腸炎の発症に関与しています。研究によれば、患者の家族に潰瘍性大腸炎やクローン病の歴史がある場合、その人がこれらの病気を発症する可能性が高まることが示されています。したがって、遺伝的な要素が病気の発症に大きな役割を果たしています。

 

環境要因:潰瘍性大腸炎は、工業化された国や都市部でより一般的に見られ、生活環境や食生活、ストレスなどの生活スタイルが影響を及ぼしていると考えられています。たとえば、食事に含まれる特定の食品や添加物が大腸の内側の膜に炎症を引き起こす可能性があり、これが潰瘍性大腸炎を引き起こすという説があります。また、喫煙やストレスも潰瘍性大腸炎の発症に影響を及ぼすとされています。特にストレスは、慢性的な炎症を引き起こすための体内の炎症反応を触発する可能性があります。

 

微生物叢の影響:腸内フローラ、すなわち私たちの腸に生息する細菌群は、潰瘍性大腸炎の発症においても重要な役割を果たすと考えられています。人間の腸内には数百種類の微生物が生息しており、これらは食物の消化、免疫機能の調節、そして他の有害な細菌からの保護など、私たちの健康に大いに寄与しています。しかし、この微生物叢のバランスが乱れると、免疫系が過敏に反応し、大腸の内側の膜に炎症を引き起こす可能性があります。

以上の4つの要素が、潰瘍性大腸炎の主な原因とされています。現在のところ、これらの要素がどのように相互作用し、どの程度の影響を及ぼすのかについては完全には解明されていません。

初期段階では多くの場合、血便の症状がある

潰瘍性大腸炎の初期段階では、直腸とS状結腸の狭い部位に炎症の範囲がとどまっています。しかし、症状が進んでいくと大腸の左半分に炎症が広がって行きます。

 

さらに症状が進むと、大腸全体に炎症が広がります。大腸全体に症状が進んでしまうと、重症であると判断されます。

 

初期段階では多くの場合、血便の症状があります。下痢や食欲不振、腹痛などの症状も合わせて見られることもあります。下痢がひどい場合は、脱水症状を起こしたり体重が減ったり、発熱したりすることもあります。

激しい炎症が長い期間続いたり、腸管壁の深くまで炎症が進んだりすると、色々な合併症が腸に起こることがあります。

 

腸に起こる合併症は、大量の出血や狭窄、腸に穴が開く穿孔などです。場合によっては、腸の中にガスや毒素がたまって大腸が膨らみ、発熱や頻脈などの全身への中毒症状が現れる中毒性巨大結腸症が起きることもあります。

 

腸以外に合併症がおこることもあります。主に、腸以外に起こる合併症は、関節や皮膚や眼の病です。

 

潰瘍性大腸炎は、症状が落ち着いている状態の時と症状が悪化している状態の時を繰り返します。

 

その状態のまま、長い時間経ってしまうと大腸がんを発症するリスクが高まります。特に10年以上経った場合、全大腸炎型に発がんのリスクが高いと言われています。

潰瘍性大腸炎は、消化器系の病気であり、大腸の粘膜に炎症と潰瘍を引き起こします。この病状はさまざまな症状を引き起こす可能性があり、その重篤さは人により大きく異なります。以下に、潰瘍性大腸炎の主要な症状について詳しく説明します。

 

腹部の痛みと下痢:潰瘍性大腸炎の最も一般的な症状の1つが、腹部の痛みとクランプ、そして下痢です。大腸が炎症を起こすと、正常な排便のプロセスが乱れ、下痢が引き起こされます。これは通常、水分を含んだ便または下痢便で、しばしば血や粘液が混じることがあります。

 

体重減少:多くの患者が体重減少を経験します。これは、炎症と下痢が栄養の吸収を妨げるためで、さらに食欲不振も体重減少を引き起こす可能性があります。

 

疲労と無力感:炎症は身体全体に影響を及ぼし、特に疲労感や全身の無力感を引き起こす可能性があります。これは炎症によるエネルギーの消耗、栄養素の欠乏、または病状が引き起こすストレスや不安によるものである可能性があります。

 

不整脈:潰瘍性大腸炎は稀に不整脈を引き起こすことがあります。これは、炎症や脱水が心臓に負担をかけ、心拍数やリズムに影響を及ぼすためです。

 

眼球炎や皮膚炎:潰瘍性大腸炎は、腸外症状として眼球炎や皮膚炎などを引き起こすことがあります。これは体の免疫反応が他の身体部位に影響を及ぼす結果とされています。

 

骨盤の痛み:一部では、炎症が腸管を超えて周辺組織や器官に広がり、骨盤の痛みを引き起こすことがあります。また、排便の際の痛みや性交時の痛みも報告されています。

 

成長遅延:小児や青少年の場合、潰瘍性大腸炎は身体の成長と発達を遅らせる可能性があります。これは主に栄養素の吸収不足や慢性的な炎症が身体のエネルギーを消耗するためです。

 

骨の脆弱性:潰瘍性大腸炎は長期的には骨密度の低下や骨折のリスクを増加させる可能性があります。これは主に慢性炎症が骨組織の再生を阻害し、また栄養吸収の問題が骨の健康に必要な栄養素の供給を制限するためです。

 

熱や発汗:潰瘍性大腸炎の病期によっては、一部の患者が発熱を経験します。これは体が炎症に反応し、免疫システムが病原体と戦うために熱を生成するためです。

 

これらの症状はすべての人に一様に現れるわけではなく、症状の程度や種類は病状や体質によります。潰瘍性大腸炎は、症状が出たり消えたりする特徴的なリミッションとフレアのパターンを持っています。

改善目標は、炎症を抑えて症状を軽くする、炎症のない状態を維持する

潰瘍性大腸炎の改善において主な目標は、大腸の炎症を抑えて症状を抑え軽くすること、炎症のない状態を維持することです。そのためには、腸の炎症を抑える薬を使い改善を行います。

 

基本的には、炎症抑制薬を使います。炎症が強い場合は、ステロイドを使って改善を行います。他にも、免疫調節薬や抗体製剤などを使うこともあります。

 

それだけでは効果が見られない場合や重症の場合、重大な合併症が起こっている場合は手術が必要です。

 

基本的には、手術で大腸を全て摘出します。現在は、肛門を温存しておき自分の肛門で自然に排便することができるようにする手術が多く行われています。

潰瘍性大腸炎は、慢性的な大腸炎であり、その改善は通常、症状の管理と病気の再発防止を目指します。以下では、現在の潰瘍性大腸炎の主な改善法について詳しく説明します。

 

薬:潰瘍性大腸炎の改善の第一選択肢は通常、薬です。最も一般的に使用される薬は以下のとおりです。

 

アミノサリチル酸(5-ASA)製剤:これは大腸の炎症を抑えるための主要な薬物であり、メサラジンなどがあります。

コルチコステロイド:これらは強力な抗炎症作用を持ち、潰瘍性大腸炎の急性期の改善に使用されます。

免疫抑制薬:これらは免疫システムの活動を抑えることで炎症を抑制します。アザチオプリンや6-メルカプトプリンなどがあります。

生物学的薬剤:これらは特定の免疫反応をブロックすることで炎症を抑制します。インフリキシマブやアダリムマブなどが含まれます。

手術:薬が効果不足であったり、重篤な副作用がある場合、または大腸癌のリスクが高まる場合などには、手術が検討されます。最も一般的な手術は全大腸切除術であり、大腸全体が取り除かれます。近年では、生活の質を維持するためにイレオアナル鼓腸吻合が行われることもあります。この手術では小腸の一部を用いて新たな直腸を形成します。

 

ダイエットと生活習慣の変更:食事の変更や生活習慣の調整が症状の改善に役立つことがあります。これには、食物繊維の摂取を調節する、乳製品の摂取を控える、小分けに食事を摂る、適度な運動を行うなどが含まれます。

 

代替方法と補完方法:一部では、ヨガや瞑想などのリラクゼーションテクニック、アクプンクチャ、プロバイオティクスやオメガ-3脂肪酸などのサプリメントを用いて症状を管理します。これらの方法は伝統的な改善方法と一緒に使われることが多く、それ自体で潰瘍性大腸炎を改善するものではありません。

 

心理社会的サポート:潰瘍性大腸炎は身体的な苦痛だけでなく、精神的なストレスも引き起こします。心理的な介入、カウンセリング、サポートグループなどは、自身の病状に対処し、生活の質を向上させるための重要なリソースとなります。

 

潰瘍性大腸炎の改善は、個々ぼ病状、症状の重篤さ、病状が進行する速さ、生活スタイルなどにより異なります。

病院での改善と合わせて鍼灸で改善を行うことも効果的

潰瘍性大腸炎を改善するためには、食事や薬、心理的な方法、手術などがあります。それらの改善方法と合わせて、鍼灸を行うことも改善に効果を発揮します。

 

鍼灸で潰瘍性大腸炎の改善に取り組む場合は、症状を和らげること、症状が進むことを遅らせること、早く回復するためのサポートを目的として行います。

 

潰瘍性大腸炎は日常生活の中で、支障が起こったり悩んだりすることも多いです。潰瘍性大腸炎の改善には、精神的にケアすることも非常に重要です。病院での改善と合わせて鍼灸での改善に取り組むこともお勧めします。

潰瘍性大腸炎に効果的なツボ

中脘 

大腸兪

・天枢

・足三里

・関元

中脘

中脘は、消化器官に現れるいろいろな症状に対して効果を発揮するツボです。食べ過ぎた時や食欲がない時にも使われることが多いツボです。

 

胃腸の働きを活発にする効果があることから胃腸の病気を改善するためにも役立つとされています。そのため、潰瘍性大腸炎の改善にも効果が期待できます。

大腸兪

大腸兪というツボの名前の由来は、腸の症状を整える効果が高いことであると言われています。そのため、潰瘍性大腸炎には効果が期待できるツボです。

 

他にも、腰が痛い時や腰がだるい時などにも効果を発揮します。坐骨神経痛の改善にも使われるツボです。

天枢

天枢は、胃腸の機能を整える効果があります。吐き気や嘔吐、腹部の違和感や腹部の張りなどに効果的であるため、潰瘍性大腸炎によって現れる症状を和らげるためにも役立つことが期待できます。

 

胃腸の機能を整えてくれるため、便秘や下痢などに対してもよく使われるツボです。

ツボの場所と押し方

中脘

中脘は、みぞおちと臍を結ぶ縦線上にあるツボで、臍から指4本分上に上がったところにあります。

 

押すときは、呼吸を止めずに優しく押しましょう。中脘はお腹にあるツボで、胃腸に対して作用するツボのため、満腹の時に押さないことも大事です。

大腸兪

大腸兪は、腰の骨のいちばん上を結んだ線の高さにあるツボで、背骨から左右に指2本分外に進んだところにあります。

 

押すときは、親指を使って押します。両手を腰に当てて押すと圧を加えやすくお勧めです。

天枢

天枢は、臍から指3本外に進んだ場所の左右両側にあるツボです。

 

押すときは、ゆっくりと押しましょう。押した後にのの字を書くようにすると、脂肪が落ちやすくなる効果も期待できます。

潰瘍性大腸炎の改善例

潰瘍性大腸炎は個々にとって独特な病状を示すため、その改善も人によって異なります。

 

例1: 若い女性、20代前半

 

彼女は慢性的な下痢と腹痛を訴えました。アミノサリチル酸製剤(5-ASA)を処方され、症状はこの薬で大部分がコントロールされ、積極的なライフスタイルを維持することができました。彼女はまた、特定の食品が症状を悪化させることに気付き、それらを避けるようになりました。

 

参照文献: (D'Haens G. et al., 2019. The London Position Statement of the World Congress of Gastroenterology on Biological Therapy for IBD with the European Crohn's and Colitis Organization: When to Start, When to Stop, Which Drug to Choose, and How to Predict Response? Am J Gastroenterol. 114(1): 18–35.)

 

例2: 中年男性、50代

 

彼は重度の腹痛と下痢、体重減少、疲労を経験し、コルチコステロイドと免疫抑制薬の両方を処方されました。しかし、彼の症状はこれらで改善せず、また、大腸癌のリスクが増加していたため、全大腸切除術とイレオアナル鼓腸吻合手術(Jポーチ手術)を受けました。手術後、彼の生活の質は大幅に向上しました。

 

参照文献: (Meagher AP. et al., 1998. J Gastroenterol Hepatol. 13(11): 1070-1073.)

 

例3: 老年女性、70代

 

彼女は軽度の潰瘍性大腸炎で、既に高血圧と糖尿病の管理に努めていました。医師は彼女に5-ASAを処方しましたが、その他の強力な薬物は彼女の他の病気との相互作用を避けるために避けられました。彼女はまた、栄養士と一緒に食事を計画し、症状を管理しながら全体的な健康状態も改善しました。

 

参照文献: (Mazzuoli S. et al., 2012. Treatment of inflammatory bowel disease in the elderly. World J Gastrointest Pharmacol Ther. 3(3): 44–54.)

 

以上の例は、年齢、病状の重篤さ、共存する他の健康状態、そして生活スタイルがどのように潰瘍性大腸炎の改善に影響を及ぼすかを示しています。また、これらの例は薬だけでなく、手術、食事、そして全体的な健康管理が病状の管理にどれだけ重要であるかを示しています。

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